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「介護保険施設等運営指導マニュアルについて(通知)」の一部改正について
老発0704第7号

「介護保険施設等運営指導マニュアルについて(通知)」の一部改正について (老発0704第7号)

発出日:令和6年7月4日
更新日:令和6年7月4日
老発0704第7号
令和6年7月4日
 
 
各  
都道府県知事
 
市(区)町村長
  殿
 
 
 
厚生労働省老健局長
(公印省略)
 
 
「介護保険施設等運営指導マニュアルについて(通知)」の一部改正について
 
 
介護保険施設等運営指導マニュアルについては、令和4年3月31日付け老発0331第7号当職通知によりお示ししていますが、今般、当該マニュアル本文について、別紙1新旧対照表のとおり、当該マニュアル別添(従前は別添1)の「確認項目及び確認文書」を別紙2のとおり、その一部を改正することとしましたので通知いたします。
なお、当該マニュアル別添2の「各種加算等自己点検シート」及び別添3の「各種加算・減算適用要件等一覧」については、今般の改正により削除しますので併せて通知いたします。
 
 

 
別紙1 介護保険施設等運営指導マニュアル 新旧対照表
※3頁
2 指導は行政指導
指導とは、文字通り行政が行う指導、つまり、行政手続法(平成5年法律第88号)第32条に基づく行政指導であり、行政機関が相手方に一定の作為又は不作為を行わせようとする行為です。
※3頁
2 指導は行政指導
指導とは、文字通り行政が行う指導、つまり、行政手続法(平成5年法律第88号)(以下「行政手続法」という。)第32条に基づく行政指導であり、行政機関が相手方に一定の作為又は不作為を行わせようとする行為です。
(略)
 
※5頁
2 行政調査に基づく指導
法第23条又は法第24条に規定する文書や物件の提示や提出の求めや質問等の調査権限は、行政手続法第32条の行政指導の一般原則から除外された(行政手続法第3条第1項第14)事実上の行為又は事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするための法令上の手続(=行政調査)であり、行政機関はこれにより情報を収集した結果に基づき必要な行政指導を行います。また、これらの行政調査の権限の種類は法に限定列挙されているため、これら以外の行為はできません。
(略)
 
※5頁
2 行政調査に基づく指導
法第23条又は法第24条に規定する文書や物件の提示や提出の求めや質問等の調査権限は、行政手続法第32条の行政指導の一般原則から除外された(行政手続法第3条第1項第14)事実上の行為又は事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするための法令上の手続(=行政調査)であり、行政機関はこれにより情報を収集した結果に基づき必要な行政指導を行います。また、これらの行政調査の権限の種類は法に限定列挙されているため、これら以外の行為はできません。
(略)
 
※8頁
(2)オンライン等の活用
この集団指導は、基本的には介護保険施設等の管理者等を一か所に集合させて行うことを想定していますが、オンライン等の活用、つまり自治体のホームページへの資料の掲載や説明動画の配信等による実施も可能です。ただし、集団指導はあくまでも行政指導であることから、情報の伝達漏れを防ぐため、資料の閲覧や動画の視聴状況の把握が必要です。不参加者に対しては、使用した資料の送付や説明動画のホームページ掲載であればそのURLを周知する等、集団指導の内容を確実に伝達するとともに、資料の閲覧や動画の視聴がなされたこと確認が必要です。なお、オンライン等の活用により集団指導を行う場合であっても、参加者からの質問には必ず答えるようにしましょう。
(略)
 
※8頁
(2)オンライン等の活用
この集団指導は、基本的には介護保険施設等の管理者等を一か所に集合させて行うことを想定していますが、オンライン等の活用、つまり自治体のホームページへの資料の掲載や説明動画の配信等による実施も可能です。ただし、集団指導はあくまでも行政指導であることから、情報の伝達漏れを防ぐため、資料の閲覧や動画の視聴状況の把握が必要です。不参加者に対しては、使用した資料の送付や説明動画のホームページ掲載であればそのURLを周知する等、集団指導の内容を確実に伝達するとともに、資料の閲覧や動画の視聴がなされたこと確認する工夫が必要です。なお、オンライン等の活用により集団指導を行う場合であっても、参加者からの質問には必ず答えるようにしましょう。
 
※9頁
(1)運営指導の実施
運営指導は、都道府県又は市町村が主体となり、都道府県又は市町村がその指定、許可の権限を持つ全ての介護保険施設等を対象に、計画的、かつ個別に原則実地により行います。
 
※9頁
(1)運営指導の実施
運営指導は、都道府県又は市町村が主体となり、都道府県又は市町村がその指定、許可の権限を持つ全ての介護保険施設等を対象に、計画的、かつ個別に原則実地により行います。この指導はこれまで実地指導としてきましたが、後述するように、今後は実地で行わない場合もあることから、運営指導と名称を改めたところです。
 
※10頁
(2)介護保険施設等による自己点検
(略)
運営指導においては、少なくとも介護保険施設等指導指針に定める確認項目及び確認文書(内容の詳細は本マニュアルで設定。別添を参照。)の範囲のものについては、介護保険施設等自身で点検すべきものです。
 
※10頁
(2)介護保険施設等による自己点検
(略)
運営指導においては、少なくとも介護保険施設等指導指針に定める確認項目及び確認文書(内容の詳細は本マニュアルで設定。別添1を参照。)の範囲のものについては、介護保険施設等自身で点検すべきものです。
(略)
行政機関は、まずは介護保険施設等が自らの意思で自己点検を行うことができるよう支援を行う必要があります。
(略)
行政機関は、まずは介護保険施設等が自らの意思で自己点検を行うことができるよう支援を行う必要があります。本マニュアルには、介護報酬に関するものとして、別添2「各種加算等自己点検シート」、別添3「各種加算・減算適用要件等一覧」を掲載していますので、適宜活用してください。
 
※11頁
(3)確認項目及び確認文書
別添「確認項目及び確認文書」を定めた目的は、介護保険施設等の増加や自治体間での確認項目や実施状況の差異の解消のため、運営指導の標準化や効率化を図る必要があり、それにより多くの事業所に対して運営指導を行うことでサービスの質の確保や利用者の保護を図ることです。
 
※11頁
(3)確認項目及び確認文書
別添1「確認項目及び確認文書」は、実地指導の標準化・効率化等の運用指針(以下「標準化・効率化指針」という。)で示した「標準確認項目・標準確認文書」を見直し、改めて介護保険施設等指導指針に位置付けた上で本マニュアルにおいて全サービスについて定めたところです。
その目的は、標準化・効率化指針で示したとおり、介護サービス事業者の増加や自治体間での確認項目や実施状況の差異の解消のため、運営指導の標準化や効率化を図る必要があり、それにより多くの事業所に対して運営指導を行うことでサービスの質の確保や利用者の保護を図ることです。
(略)
前者は、適切なケアマネジメント・プロセスに基づいたサービスが提供され、かつ高齢者虐待や適切な手続きを経ていない身体的拘束等(身体拘束及びその他の制限。以下同じ。)が行われていない状況かどうかに着目し利用者へ行うサービスの適正性を確認するものです。また、後者は、利用者に対し適切なサービスが行われるよう、介護保険施設等としての体制を確認するものです。
(略)
前者は、適切なケアマネジメント・プロセスに基づいたサービスが提供され、かつ高齢者虐待や不適切な身体的拘束等(身体拘束及びその他の制限。以下同じ。)が行われていない状況かどうかに着目し利用者へ行うサービスの適正性を確認するものです。また、後者は、利用者に対し適切なサービスが行われるよう、介護保険施設等としての体制を確認するものです。
(略)
 
※11頁
(1)介護サービスの実施状況指導
(略)
この指導では、確認項目及び確認文書によるケアマネジメント・プロセスに基づくサービス実施の確認の他、特に施設系サービスや居住系サービス、通所系サービスにおいては、サービスを受ける利用者の生活実態の把握により、サービスの適正性の確認や高齢者虐待及び適切な手続きを経ていない身体的拘束等の発見や防止について、行政機関の担当者が現場で実態を目視し、関係者から状況を聴取することにより確認することを想定しています。
(略)
 
※12頁
(1)介護サービスの実施状況指導
(略)
この指導では、確認項目及び確認文書によるケアマネジメント・プロセスに基づくサービス実施の確認の他、特に施設系サービスや居住系サービス、通所系サービスにおいては、サービスを受ける利用者の生活実態の把握により、サービスの適正性の確認や高齢者虐待及び不適切な身体的拘束等の発見や防止について、行政機関の担当者が現場で実態を目視し、関係者から状況を聴取することにより確認することを想定しています。
 
※13頁
4 運営指導の実施頻度
(略)
〈3年に1回以上の実施が望ましい介護保険施設等〉
 
※14頁
4 運営指導の実施頻度
(略)
〈3年に1回以上の実施が望ましい介護保険施設等〉
サービスの分類
介護保険施設等の種類
居住系サービス(地域密着型サービスを含む)
特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護
施設系サービス
(地域密着型サービス)
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
施設サービス
介護老人福祉施設、老人保健施設、介護医療院
サービスの分類
介護保険施設等の種類
居住系サービス(地域密着型サービスを含む)
特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護
施設系サービス
(地域密着型サービス)
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
施設サービス
介護老人福祉施設、老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設
 
5 運営指導に関する留意点
(1)運営指導の実施通知
(略)
また、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号)(以下「高齢者虐待防止法」という。)に基づき市町村が虐待有と認めた場合若しくは高齢者虐待等により利用者の生命又は身体の安全に危害を及ぼしている疑いがあると認められる場合(以下「人格尊重義務違反」という。)は、法第23条又は法第24条に基づく運営指導ではなく、事前に通告を行うことなく速やかに監査(立入検査等)を行い事実関係の確認が必要です。
 
5 運営指導に関する留意点
(1)運営指導の実施通知
(略)
また、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号)(以下「高齢者虐待防止法」という。)に基づき市町村が虐待の認定を行った場合若しくは高齢者虐待等により利用者の生命又は身体の安全に危害を及ぼしている疑いがあると認められる場合(以下「人格尊重義務違反」という。)は、法第23条又は法第24条に基づく運営指導ではなく、事前に通告を行うことなく速やかに監査(立入検査等)を行い事実関係の確認が必要です。
 
※23頁
4 高齢者虐待等がある又はその疑いがある場合
運営指導の過程で、高齢者虐待や、適切な手続きを経ていない身体的拘束等が行われている場合やその疑いがある場合は、利用者の生命又は身体の安全に危害を及ぼしている可能性があると捉え、直ちに監査に変更し、事実関係を確認する必要があります。
 
※23頁
4 高齢者虐待等がある又はその疑いがある場合
運営指導の過程で、高齢者虐待や、不当な身体的拘束等が行われている場合やその疑いがある場合は、利用者の生命又は身体の安全に危害を及ぼしている可能性があると捉え、直ちに監査に変更し、事実関係を確認する必要があります。
 
※29頁
4 所要時間の短縮等
本マニュアルでは、標準化・効率化の観点から運営指導時における確認項目及び確認文書を定めています。運営指導における確認すべき事項や見るべき文書を絞ったことにより、一の介護保険施設等あたりの所要時間の短縮を進めることができると考えられます。
 
※29頁
4 所要時間の短縮等
本マニュアルでは、標準化・効率化指針の趣旨及び内容を踏まえ、運営指導時における確認項目及び確認文書を定めています。運営指導における確認すべき事項や見るべき文書を絞ったことにより、一の介護保険施設等あたりの所要時間の短縮を進めることができると考えられます。
(略)
 
※39頁
(略)
一つの見方としては、これらの計画は利用者の同意を得なければならないということから、指導にあたる行政機関の担当者自身が利用者や利用者家族の立場でこのサービス内容に同意できるかどうか、というのが一つの判断基準になるでしょう。なぜそのような介護を行うのかという点については必ずその理由があるはずです。利用者やその家族の立場に立ち、自分なりに納得するまで介護支援専門員から詳細な説明を受けましょう。
(略)
 
※39頁
(略)
一つの見方としては、これらの計画は利用者や利用者家族の同意を得なければならないということから、指導にあたる行政機関の担当者自身が利用者や利用者家族の立場でこのサービス内容に同意できるかどうか、というのが一つの判断基準になるでしょう。なぜそのような介護を行うのかという点については必ずその理由があるはずです。利用者やその家族の立場に立ち、自分なりに納得するまで介護支援専門員から詳細な説明を受けましょう。
 
※40頁
(4)高齢者虐待への対応
高齢者虐待防止法では、高齢者の養護者の他、養介護施設従事者等による虐待の防止について規定しています。同法第24条では、市町村長又は都道府県知事は、高齢者虐待に関する通報等(虐待に関する届出や報告を含む)を受けた場合は、養介護施設従事者等による高齢者虐待の防止及び当該高齢者の保護を図るため、老人福祉法又は介護保険法の規定による権限を適切に行使するものとされており、特に介護保険法では、高齢者虐待は人格尊重義務違反に該当し、状況によっては指定取消等の行政処分となる可能性もあるため、そのような事案があれば、適切に監査を行い、事実関係を確認することになります。運営指導においては、利用者の様子や従業者の態度等を巡回時に確認しますので、虐待若しくはその予兆がないかよく観察しましょう。
 
※40頁
(4)高齢者虐待の防止
高齢者虐待防止法では、高齢者の養護者の他、養介護施設従事者等による虐待の防止について規定されています。また、高齢者虐待は、介護保険法では、人格尊重義務違反に該当し、状況によっては指定取消等の行政処分となる可能性もあるため、そのような事案があれば、基本的には監査を行い、事実関係を確認することになります。運営指導においては、利用者の様子や従業者の態度等を巡回時に確認しますので、虐待若しくはその予兆がないかよく観察しましょう。
また、特に高齢者虐待の担当部署と介護保険施設等に対する指導監督の担当部署が異なる場合は、事案が生じた場合は情報共有を図る等、随時連携して対応するよう留意してください。
なお、養介護施設従事者等による高齢者虐待の定義は次のとおりです。
また、特に高齢者虐待の担当部署と介護保険施設等に対する指導監督の担当部署が異なる場合は、事案が生じた場合は情報共有を図る等、随時連携して対応するよう留意してください。
なお、養介護施設従事者による高齢者虐待の定義は次のとおりです。
 
※41頁~47頁
(5)身体的拘束等の廃止
ア 身体的拘束等とは
(略)
介護保険制度の中では、全てのサービス種別のそれぞれの運営基準(厚生労働省令)においてサービスの提供にあたっては、当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為(以下「身体的拘束等」という。)を行ってはならない旨規定されています。
このように運営基準に身体的拘束等の原則禁止規定が置かれた上で、例外的に身体的拘束等を行う場合の要件が規定されています。
原則禁止である身体的拘束等をやむを得ず行う場合は、あくまで当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合に限られ、介護職員等の従業者の不足等、介護保険施設等の側の理由は排除されています。
 
※41頁~47頁
(5)身体的拘束等の廃止
ア 身体的拘束等とは
(略)
介護保険制度の中では、サービス種別毎のそれぞれの運営基準(厚生労働省令)によって対象事業について「サービスの提供にあたっては、当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等その他入所者(利用者)の行動を制限する行為を行ってはならない。」旨規定されています。
このように身体的拘束等の原則禁止規定が置かれた上で、例外的に身体拘束を行う場合の要件が規定されています。
なお、例外的に身体的拘束等を行うことができる場合の要件の規定があるサービス種別は次のとおりです。
(削除)
◎例外的に身体的拘束等を行う場合の要件の規定があるサービス種別一覧
◯(介護予防)短期入所生活介護 
◯(介護予防)短期入所療養介護
◯(介護予防)特定施設入居者生活介護 
◯介護老人福祉施設
◯介護老人保健施設 
◯介護療養型医療施設
◯(介護予防)小規模多機能型居宅介護
◯(介護予防)認知症対応型共同生活介護
◯看護小規模多機能型居宅介護
◯地域密着型特定施設入居者生活介護 
◯地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
◯介護医療院
 
これらを見て気づかれると思いますが、以上のサービス種別以外のサービスにおいては、身体的拘束等を行うことがそもそも想定されていないということです。
例えば、訪問介護は利用者が管理するエリアである住居に立ち入ることになりますが、他人の家でその住人である人の身体を拘束して移動の自由を制限することは極めて異常な事態と言わざるを得ず、状況によっては前述の刑法上の責任を問われる可能性があります。
また、介護保険制度において身体的拘束等が原則禁止されているのは、運営基準で禁止されているから、という理由だけではありません。身体的拘束等は、利用者本人にとって身体的、精神的、社会的弊害をもたらし、利用者の自立を阻害する行為です。そしてそれは例外的に身体的拘束等を行う場合であっても、身体的拘束等を行う以上、それらの弊害が軽減されるわけではありません。行政機関は、特にこの点に留意し、身体的拘束等の廃止に関し、介護保険施設等の理解が深まるよう説明を尽くさなくてはなりません。
また、介護保険制度において身体的拘束等が原則禁止されているのは、基準で禁止されているから、という理由だけではありません。身体的拘束等は、利用者本人にとって身体的、精神的、社会的弊害をもたらし、利用者の自立を阻害することになります。そしてそれは例外的に身体的拘束等を行う場合であっても、身体的拘束等を行う以上、それらの弊害が軽減されるわけではありません。行政機関は、特にこの点に留意し、身体的拘束等の廃止に関し、介護保険施設等の理解が深まるよう説明を尽くさなくてはなりません。
 
イ 例外的に身体的拘束等を行う場合の要件
上記のとおり、身体的拘束等は原則禁止ですが、例外的に身体的拘束等を行うことが運営基準上、一定の条件の下で認められています。ここでは運営指導中に身体的拘束等が行われていたときの対応について解説します。
 
イ 例外的に身体的拘束等を行う場合の要件
上記のとおり、身体的拘束等は原則禁止ですが、上記の一覧にあるサービス種別においては、例外的に身体的拘束等を行うことが認められており、その場合の考え方は次のとおりです。繰り返しますが、上記の一覧にあるサービス種別以外のサービスではこの後の考え方等は該当しません。
もしもそのような事業所に対する運営指導で身体的拘束等を発見した場合は、十分な説明を行い、直ちに身体的拘束等を中止するよう指導します。
 
① 緊急やむを得ない場合の手続きについて
運営指導で身体的拘束等を発見した場合は、まずはその記録の提示を求め、内容を確認します。そしてその記録の内容から、発見した身体的拘束等が、下記の「例外的に身体的拘束等を行う場合の要件」(切迫性、非代替性及び一時性の三つの要件を全て満たすこと)に該当することを事業所又は施設全体で極めて慎重に手続きを行ったどうかを確認します。これはその要件(身体的拘束等の態様及び時間、その際の入所者等の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由等の記録のほか、サービス種別により身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会、身体的拘束等の適正化のための指針の整備、身体的拘束等の適正化のための研修の定期実施が運営基準上義務づけられている)への適合性を確認する前提として、そもそも例外的に身体的拘束等を行うべき事案であるかどうかが問題となるからです。
身体的拘束等の態様等の記録があれば、第一義的には身体的拘束等を行う手続に問題はありませんが、その記録の内容からしてそもそも緊急やむを得ない場合といえるのか判断するため管理者等に対してその状況に関する報告を求めます。
一方、身体的拘束等を行っているにもかかわらず記録がない場合についても上記と同様に、そもそも緊急やむを得ない場合の身体的拘束等といえるのか、管理者等からの状況報告等により判断しなくてはなりません。
以上のいずれの場合でも、もしも、下記の例外的に身体的拘束等を行う場合の要件に明らかに合致していないか又は合致していない疑いがある場合は、適切な手続きを経ていない身体的拘束等は高齢者虐待防止法に規定する身体的虐待に該当する可能性が高いことから、直ちに身体的拘束等を中止するよう指導するとともに、必要に応じて運営指導から監査(立入検査)に変更し、事実関係を確認します。
 
(新設)
(略)
 
②身体的拘束等の適正化を図るための措置(形式的要件)
例外的に身体的拘束等を行う場合の要件として、その記録の他、対象サービスにおいては、当該運営基準に3つの形式的要件が定められており、これらの要件は全て満たす必要があります。
 
◎身体的拘束等の適正化を図るための措置
 
身体的拘束等の実施の有無にかかわらず全ての措置を講じていること
 
①身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3月に1回以上開催するとともに、その結果について、介護職員その他の従業者に周知徹底を図ること
②身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること
③介護職員その他の従業者に身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること
(略)
 
(新設)
(削除)
例外的に身体的拘束等を行うことが認められているサービス種別の事業所又は施設において、身体的拘束等が行われている場合は、まずはこの三つの要件をすべて満たしているか、管理者等から状況説明を受けるとともに身体的拘束等に関する記録を見て確認します。身体的拘束等に関する記録がない場合は、身体的拘束等を行う理由や検討経過がわからず運営基準違反ともなるため、直ちに身体的拘束等を中止するよう指導します。もしもやむを得ない理由があり、引き続き身体的拘束等を行うためには、この三つの要件に該当するか否かを十分検討し、当該要件を満たす場合に初めて身体的拘束等を行うことができます。また、各運営基準に基づき、その手続きとして、次のとおり、必要な内容の記録を
◎身体的拘束等を例外的に行う場合に必要な手続き
身体的拘束等に関して、その態様及び時間、その際の利用者(又は入所者)の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録すること
残さなければなりません。
 
ウ 身体拘束廃止未実施減算及び高齢者虐待防止未実施減算
上記のとおり、身体的拘束等を適切に行うためには必要な記録等の適正な手続きを行うことが必要であるとともに、上記対象サービスにおいては身体的拘束等の適正化を図るための全ての措置を講じることが必須となっています。当該記録がなければ当然のこととして、記録があったとしてもこれらを行っていなければ、報酬請求上の措置として身体拘束廃止未実施減算が適用されることになります。なお、その対象は身体拘束廃止未実施減算の対象施設等に限られます。
 
ウ 身体拘束廃止未実施減算
上記のとおり、身体的拘束等を適切に行うためには必要な記録を行うことが必要であるとともに、平成30年度基準改正により、身体的拘束等の適正化を図るための措置を講じることが必須となっています。当該記録があったとしてもこれらを行っていなければ、報酬基準及び解釈通知の規定による報酬請求上の措置として身体拘束廃止未実施減算が適用されることになります。なお、その対象は身体拘束廃止未実施減算の対象施設等に限られます。
 
(削除)
 
◎身体的拘束等の適正化を図るための措置
 
身体的拘束等の実施の有無にかかわらず全ての措置を講じていること
・身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3月に1回以上開催するとともに、その結果について、介護職員その他の従業者に周知徹底を図ること
・身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること
・介護職員その他の従業者に身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること
◎身体拘束廃止未実施減算の対象施設等
◯介護老人福祉施設 
◯介護老人保健施設
◯介護療養型医療施設
◯(介護予防)特定施設入居者生活介護
◯地域密着型特定施設入居者生活介護
◯地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
◯(介護予防)認知症対応型共同生活介護
◯介護医療院
身体拘束廃止未実施減算の対象施設等に対する運営指導で、身体的拘束等の実施の有無にかかわらず(有の場合はその記録が必要)、身体的拘束等の適正化を図るための措置がとられていないことが認められた場合は、速やかにその措置をとるよう指導するとともに、身体拘束廃止未実施減算を適用します。
 
 
また、緊急やむを得ない理由の記録の有無及び3つの形式的要件の有無にかかわらず、緊急やむを得ない理由に該当しない身体的拘束等を行っていた場合は、そもそも身体的拘束等を行ってはならない事案であるため、高齢者虐待防止法に規定する身体的虐待の可能性が高いことから、監査を実施し、事実を確認し、高齢者虐待の事実が確認できれば介護保険法に規定する行政処分の事由である人格尊重義務違反に該当します。なお、虐待の発生又はその再発を防止するための措置(高齢者虐待防止対策検討委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者の配置)についても、全てのサービスにおいて義務付けとなっていることから、措置を講じた記録が確認できなければ、報酬請求上の措置として高齢者虐待防止措置未実施減算*が適用されることになります。
*(介護予防)居宅療養管理指導と(介護予防)福祉用具貸与を除く
 
 
(新設)
◎身体拘束廃止未実施減算の適用の考え方 (対象事業のみ)
(略)
3 身体拘束廃止未実施減算の適用
① 上記2の状態を把握した場合は、速やかに「改善計画」を市町村長に提出するよう指導するとともに、「事実が生じた月」から3月後に改善計画に基づく結果の報告を提出するよう指導する。なお、「改善計画」が速やかに提出されない場合は、身体的拘束等を例外的に行う場合に必要な手続きを行うこと及び身体的拘束等の適正化を図るための措置を講じることが、身体拘束廃止未実施減算の解除の要件であることを理解させ、提出を促す。
※減算期間は最低3月となる。
(略)
 
4 改善状況の確認
「事実が生じた月」から3月後に、事業者からの「改善計画」に基づく報告に基づき、改善状況を確認する。
これにより改善が認められた場合は、改善が認められた日の属する月を「改善が認められた月」として、同月まで身体拘束廃止未実施減算を行う。
ただし、事業者からの「改善計画」に基づく報告がない、又は、改善状況が不十分である場合には、改善が認められないものとし、引き続き改善が認められるまで(改善が認められた月まで)身体拘束廃止未実施減算を行う。
*1の②以降は、高齢者虐待防止措置未実施減算においても同様である。
◎身体拘束廃止未実施減算の適用 (対象事業のみ)
(略)
3 身体拘束廃止未実施減算の適用
①上記2の状態を把握した場合は、速やかに「改善計画」を市町村長に提出するよう指導するとともに、「事実が生じた月」から3月後に改善計画に基づく結果の報告を提出するよう指導する。なお、「改善計画」が速やかに提出されない場合は、身体的拘束等を例外的に行う場合に必要な手続きを行うこと及び身体的拘束等の適正化を図るための措置を講じることが、身体拘束廃止未実施減算の解除の要件であることを理解させ、提出を促す。
 
(略)
 
4 改善状況の確認
「事実が生じた月」から3月後に、事業者からの「改善計画」に基づく報告に基づき、改善状況を確認する。
これにより改善が認められた場合は、改善が認められた日の属する月を「改善が認められた月」として、同月まで身体拘束廃止未実施減算を行う。
ただし、事業者からの「改善計画」に基づく報告がない、又は、改善状況が不十分である場合には、改善が認められないものとし、引き続き改善が認められるまで(改善が認められた月まで)身体拘束廃止未実施減算を行う。
 
 
 
身体拘束廃止未実施減算及び高齢者虐待防止措置未実施減算は、高齢者虐待の防止、身体的拘束の廃止又は適正な運用を確保するため、現時点で一定の条件に該当していない場合に、それが改善されるまでの間、将来に向かって報酬を減算するものです。つまり、この減算の仕組みは、他の減算の仕組みと違い、未来に向かって運用の改善を促すことが最大の目的です。
そのため運営指導において、過去における適切な手続きを経ていない身体的拘束の取り扱いや、高齢者虐待防止措置及び身体的拘束等の適正化のための措置の未実施が認められた場合であっても、運営指導で行政機関がそれを発見した日の属する月が「事実が生じた月」となります。これにより過去に遡及して当該減算を適用することはできず、速やかに提出させることになる「改善計画」についても、あくまで今後の「計画」であることから、遡っての提出はできないことに注意が必要です。
 
 
身体拘束廃止未実施減算は、身体的拘束の廃止又は適正な運用を確保するため、現時点で一定の条件に該当していない場合に、それが改善されるまでの間、将来に向かって報酬を減算するものです。つまり、この減算の仕組みは、他の減算の仕組みと違い、未来に向かって運用の改善を促すことが最大の目的です。
そのため運営指導において、過去における不適切な身体的拘束の取り扱いが認められた場合であっても、運営指導で行政機関がそれを発見した日の属する月が「事実が生じた月」となります。
これにより過去に遡及して当該減算を適用することはできず、速やかに提出させることになる「改善計画」についても、あくまで今後の「計画」であることから、遡っての提出はできないことに注意が必要です。
 
※49頁
2 確認項目・確認文書
(略)
なお、運営基準に定められる義務規定の中には、規定されてから一定期間は努力義務とされることがあります。これらの規定に関しては集団指導で周知するほか、運営指導実施時に、まだ準備中であるような介護保険施設等に対しては、義務化されるまでに対応できるよう確実に周知しましょう。(別添「確認項目及び確認文書」においては、義務化までに期間が定められている項目について、その旨を記載しています。)次に主な確認項目についてポイント解説します。
 
※49頁
2 確認項目・確認文書
(略)
なお、令和3年度改正により運営基準に定められた規定のうち、令和6年4月1日から義務化されるものがあります。
これらの規定は、令和6年3月31日までは努力義務ですが、実施について現在まだ準備中であるような介護保険施設等については、令和6年3月31日までの間に、対応できるよう準備しなくてはなりません。令和6年4月1日以降、運営基準違反とならないようにするために、関係する規定については集団指導及び運営指導で確実に周知しましょう。次に主な確認項目についてポイント解説します。
 
※50頁
(2)非常災害対策
自然災害が頻発するわが国では、介護保険施設等においても、利用者及び従業者の生命を守る上で、非常災害(火災、風水害、地震等)対応のマニュアルや対応計画は必須です。それらに基づき避難・救出等の訓練が定期的に行われているかを確認します。
 
※50頁
(2)非常災害対策
自然災害が頻発するわが国では、介護保険施設等においても、利用者及び従業者の生命を守る上で、非常災害(火災、風水害、地震等)対応のマニュアルや対応計画は必須です。それらに基づき避難・救出等の訓練が行われているかを確認します。
 
※51頁
◎確認項目を補完するヒアリング例
(略)
□記録や文書から確認
・運営規程や重要事項説明書に記載されていることに齟齬はないか/最新か。
・災害対策訓練が適切に行われているか(火災年2回以上、地震、風水害など)。
いわゆる事故対応マニュアル(名称は問わず)やそれに準じるものが用意されているか。
・保険者への事故報告は適切に行われているか。
・身体拘束廃止のための体制整備が適切に行われているか。等
 
※51頁
◎確認項目を補完するヒアリング例
(略)
□記録や文書から確認
・運営規程や重要事項説明書に記載されていることに齟齬はないか/最新か。
・災害対策訓練が適切に行われているか(火災年2回以上、地震、風水害など)。
・事故対応マニュアルやそれに準じるものが用意されているか。
・保険者への事故報告は適切に行われているか。
・身体拘束廃止のための体制整備が適切に行われているか。等
 
※53頁
(2)加算・減算
(略)
報酬請求指導に当たっては、加算及び減算の種類が多岐にわたることから、基本的な考え方、請求の方法等について理解に努め、介護保険施設等の管理者等からの照会や相談に応じることができるようにしましょう。ただし、介護保険施設等ごとに異なった指導となると介護報酬請求上も問題となることから、指導内容に疑義があるときは国又は都道府県に照会するなどし、統一的な指導方針となるよう努めましょう。
 
※52頁
(2)加算・減算
(略)
報酬請求指導に当たっては、加算及び減算の種類が多岐にわたることから、各種加算・減算適用要件等一覧等を参照して基本的な考え方、請求の方法等について理解に努め、介護保険施設等の管理者等からの照会や相談に応じることができるようにしましょう。ただし、介護保険施設等ごとに異なった指導となると介護報酬請求上も問題となることから、指導内容に疑義があるときは国又は都道府県に照会するなどし、統一的な指導方針となるよう努めましょう。
(略)
 
(削除)
(略)
 
※57頁
別添1
確認項目及び確認文書
別添2
各種加算等自己点検シート
別添3
各種加算・減算適用要件等一覧
 
 
 
 
 
マニュアル本文(令和6年7月改訂) HTML PDF
別添 確認項目及び確認文書 HTML PDF
 
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