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介護保険の地域支援事業における在宅医療・介護連携推進事業の手引きについて
老老発1025第1号
介護保険の地域支援事業における在宅医療・介護連携推進事業の手引きについて
老老発1025第1号
介護保険の地域支援事業における在宅医療・介護連携推進事業の手引きについて (老老発1025第1号)
発出日:平成29年10月25日
更新日:平成29年10月25日
更新日:平成29年10月25日
老老発1025第1号
平成29年10月25日
各
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都道府県
指定都市
中 核 市
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介護保険主管部(局)長 殿
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厚生労働省老健局老人保健課長
( 公 印 省 略 )
介護保険の地域支援事業における在宅医療・介護連携推進事業の手引きについて
平成27年3月31日付け老老発0331第5号厚生労働省老健局老人保健課長通知によりお示ししてきた標記の手引きについて、今般、別紙のとおり改訂したところであるので、御了知の上、管内各市町村に周知を図るとともに、実施の参考にされたい。
なお、本事業については、平成30年度に全ての市町村で実施されるところであるが、実施するだけでなく、郡市区医師会等と連携し、地域包括ケアシステムの構築の推進をはかられたい。
別紙
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在宅医療・介護連携推進事業の手引き
Ver.2
厚生労働省
老健局老人保健課
平成29年10月
目 次
一 在宅医療・介護連携推進事業の基本的な考え方 ………………………… 1
(1)事業の背景および改訂の趣旨 …………………………………………… 1
(2)事業の進め方 ……………………………………………………………… 4
・進め方のイメージ
・在宅医療・介護連携推進事業のPDCAサイクル
・在宅医療・介護連携推進事業における評価指標の考え方
二 在宅医療・介護連携推進事業の具体的取組について …………………… 13
(ア)地域の医療・介護の資源の把握 …………………………………… 15
(イ)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討 ……………… 19
(ウ)切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進 ……… 21
(エ)医療・介護関係者の情報共有の支援 ……………………………… 24
(オ)在宅医療・介護連携に関する相談支援 …………………………… 27
(カ)医療・介護関係者の研修 …………………………………………… 29
(キ)地域住民への普及啓発 ……………………………………………… 34
(ク)在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携 ……………… 36
三 在宅医療・介護連携推進事業の実施に当たっての留意事項……………… 38
四 都道府県の役割について …………………………………………………… 40
一 在宅医療・介護連携推進事業の基本的な考え方
(1)事業の背景および改訂の趣旨
【事業の背景】
○ 高齢者は加齢に伴い、慢性疾患による受療が多い、複数の疾病にかかりやすい、要介護の発生率が高い、認知症の発生率が高い等の特徴を有しており、医療と介護の両方を必要とすることが多い。
○ いわゆる団塊の世代が75歳以上となる2025年を目処に、医療と介護の両方を必要とする状態の高齢者が、住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の医療・介護の関係団体が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療と介護を一体的に提供するために必要な支援を行うことが求められる。
図1:在宅医療・介護連携の推進
○ このため、医療・介護の関係団体が連携し、多職種協働により在宅医療・介護を一体的に提供できる体制を構築するため、都道府県や保健所の支援の下、市区町村が中心となって、地域の郡市区医師会等と緊密に連携しながら、地域の関係団体の連携体制を構築することが重要である。
図2:在宅医療・介護連携推進事業
○ 在宅医療と介護の連携については、従来から問われ続けてきた重要課題の一つであるが、それぞれを支える保険制度が異なることなどにより、多職種間の相互の理解や情報の共有が十分にできていないことなど、必ずしも円滑に連携がなされていないという課題があった。
○ このような背景の下、在宅医療と介護を一体的に提供するために必要な支援については、これまで、厚生労働省在宅医療連携拠点事業委託費を活用した在宅医療連携拠点事業(平成23・24年度)、地域医療再生臨時特例交付金を活用した在宅医療連携推進事業(平成25年度~平成27年度)において実施されてきたところである。これらの成果を踏まえ、平成26年介護保険法改正により市区町村が実施する地域支援事業の包括的支援事業における在宅医療・介護連携推進事業として位置づけ、全国的に取り組むこととなった(平成27年度~)。
○ 本事業は図2の記載にある(ア)から(ク)の8つ事業項目で構成されている。
○ 本事業では、平成27年度以降取組が開始され、平成30年4月にはすべての市区町村で本事業のすべての事業項目について取り組むこととしている。
○ 市区町村は、本事業の8つの事業項目を活用し、地域の実情に応じた在宅医療と介護の連携体制の構築、充実を図っていくことが期待される。
【手引き改訂の趣旨】
○ 平成27年度から開始できる市区町村は順次、(ア)~(ク)の事業項目が開始してきたところだが、より地域の実情にあった在宅医療と介護の連携の推進のためには、市区町村は、地域の課題を把握・分析した上で課題解決に資する対応策を実施することが望まれる。
○ 同様の理由から、都道府県による市区町村支援、具体的には、当該市区町村に関する在宅医療や介護資源のデータ等の提供、事業に関する研修・情報提供、郡市区医師会等関係団体との調整や広域的な医療介護連携に関する協議などの支援が期待されている。
○ 厚生労働省が設置する社会保障審議会介護保険部会では本事業について、下記の事項が実施されることが適当との意見※があり、これらの趣旨を踏まえ手引きの改訂を行うこととした。
・ 地域の医療介護連携の実態把握、課題の検討、課題に応じた施策立案に至る方法についての具体化
・ 市区町村では取組が困難な医療介護に関するデータの収集分析、在宅医療にかかる体制整備、広域的な入退院時の連携等、都道府県が実施すべき市区町村支援の取組について、地域の医療に精通した郡市区医師会等との連携や保健所の活用により市区町村支援の充実
・ 都道府県が策定する介護保険事業支援計画に、在宅医療・介護連携推進事業に対して都道府県の介護部局及び医療部局の双方が市区町村支援に取り組むこととするとともに、住宅部局をはじめとした関係部局との連携を進めていくことが重要
・ 在宅医療・介護連携の推進に有効と考えられる市区町村や都道府県の取り組みに関する情報提供
※「介護保険制度の見直しに関する意見」(平成28年12月9日社会保障審議会介護保険部会)P21
○ なお、各地域での在宅医療・介護連携の推進に係る(ア)から(ク)についての先進的な取組事例、実施体制や予算、取組のポイント等については、下記の調査研究事業を参考にしていただきたい。
「地域包括ケアシステム構築に向けた在宅医療・介護連携の推進における、実践的な市区町村支援ツールの作成に関する調査研究事業」(平成26年度厚生労働省老人保健健康増進等事業 野村総合研究所)
(2)事業の進め方
【進め方のイメージ】
○ 在宅医療・介護連携推進事業の8つの事業項目は、住民に在宅医療サービスと介護サービスを一体的に提供するための、地域における在宅医療と介護の連携体制を構築する手段である。
○ 地域の実情に合わせた在宅医療と介護の連携体制を構築し、維持、充実していくためには、地域の医療介護連携の実態把握、課題の検討、課題に応じた施策立案、実施に至る過程を意識して取り組むことが重要である。
図3:在宅医療・介護連携推進事業の8つの事業項目の進め方のイメージ
富士通総研「地域の実情に応じた在宅医療・介護連携を推進するための多職種研修プログラムによる調査研究事業」報告書を一部改変(平成27年度老人保健健康増進等事業)
○ 各地域における医療・介護提供体制のあるべき姿(目標)や進め方の全体像を医療・介護の関係者と共有した上で、各取組を一体的に行うことが重要である。
○ 本事業の8つの事業項目の取組順序としては、まずは「(ア)地域の医療・介護の資源の把握」により地域の実態を把握し、「(イ)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討」で地域の医療・介護関係者と実態の共有、課題の抽出、対応策の検討を実施し、(ウ)から(ク)の事業項目を活用して実施することが効果的な事業の進め方として考えられる。
○ また、「(カ)医療・介護関係者の研修」については、医療・介護に従事する人材の育成・教育の効果にとどまらず、「顔の見える関係」等の医療・介護の関係者のネットワーク化が図られ、地域の医療・介護連携全体を推進する効果が期待できる。
【在宅医療・介護連携推進事業におけるPDCAサイクル】
○ 地域の実情にあった在宅医療と介護の連携の推進のためには、その実施方法について、市区町村の課題を把握・分析した上で課題解決に資する対応策を具体化することが求められる。
○ 「地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業における在宅医療・介護連携推進事業の実施状況及び先進事例等に関する調査研究事業」報告書では、以下の様に、在宅医療・介護連携推進事業におけるPDCAサイクルが示されている。
図4:在宅医療・介護連携推進事業におけるPDCAサイクル
※上記図4の詳細は「地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業における在宅医療・介護連携推進事業の実施状況および先進事例等に関する調査研究事業」(平成28年度老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業)を参照いただきたい。
○ 本事業の8つの事業項目とPDCA サイクルの関連は下記となる。
・【計画(Plan)】→「(ア)地域の医療・介護の資源の把握」及び「(イ)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討」を活用し実施することが可能。
・【実行(Do)】→(ウ)から(ク)を活用し【計画(Plan)】で検討された対応策を実施。
・【評価(Check)】【改善(Act)】→「(イ)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討」を活用。
【計画(Plan)】
○ 本事業における【計画(Plan)】は下記の6つのプロセスが存在する。
①現状の把握(定量的な現状把握)
②現状の把握(定性的な現状把握)
③課題の抽出
④目指す理想像の検討
⑤取組内容の検討
⑥指標の設定
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① 現状の把握(定量的な現状把握)
○ 医療機関数等地域の医療・介護の資源量や人口動態等の定量的な情報把握することは、地域の現状把握だけではなく、課題の抽出や今後の施策の検討の基礎資料として活用することできる。
○ 情報収集の方法としては、市区町村・都道府県や郡市区医師会等関係団体が所持している既存データの収集・整理や、郡市区医師会等関係団体を通じたアンケート調査等の実施が考えられる。
② 現状の把握(定性的な現状把握)
○ 医療・介護関係者が普段感じていたり抱えていたりする課題、住民の在宅療養や介護に対する思いや満足度等の把握により、①の定量的な現状把握の数値としては現れない連携の実態や住民のニーズ等を掴むことでき、課題の抽出や今後の施策の検討に資する資料となる。
○ 情報収集の方法としては、医療・介護関係者については、医師会等関係団体と協力しアンケート調査や関係団体へのヒアリングの実施、住民については既存の調査(住民意識調査等)や新規で調査を行う等が考えられる。
③ 課題の抽出
○ 上記の①現状の把握(定量的な現状把握)で得られた情報は、視覚的に経時的な変化、地域間比較等の解釈ができるように整理する。
○ ②現状の把握(定性的な現状把握)で得られた情報は、職種ごとにまとめたり課題を類型化したり等、地域の医療・介護の関係者と共有しやすくまとめることが重要。
○ 共有された情報を元に地域の医療・介護の関係者と、市区町村における強みや弱みを整理し、課題の抽出を行う。
④ 目指す理想像の検討
○ 目指す理想像の検討については、③課題の抽出と同時に実施することになるもので、「なぜ在宅医療と介護の連携に取り組む必要があるのか」という認識の共有を市区町村と地域の医療・介護関係者間で図るとともに、目標と課題に則した対応策の立案やその実効性を高めるために重要である。
○ 目指す理想像は長期目標になることから、③課題の抽出で出された課題に対する短期目標も設定していく必要がある。
⑤ 取組内容の検討
○ 上記③課題の抽出、④目指す理想像の検討の結果を踏まえ、課題に応じた対応策を検討する。検討された取組は、優先順位や短期的に取り組むもの、長期的に取り組むもの等を明確にすると共に、誰がいつ、実施していくか役割分担をすることも重要である。
○ 8つの事業項目は、課題の解決や理想像を目指すための取組を履行する手段であることに注意されたい。
⑥ 指標の設定
○ 地域の連携状況の分析や事業の進捗管理の指標・データと、目標となる評価指標の設定が必要となる。評価指標の考え方は次項を参照いただきたい。
○ 【計画(Plan)】の段階で分析や対応策に基づいた指標を設定することで【実行(Do)】後の【評価(Check)】が円滑になる。
○ 設定された指標で【評価(Check)】し、地域の医療・介護関係者が集まる会議へ定期的に提示、報告し、取組内容の改善を図ることが重要である。
【在宅医療・介護連携推進事業における評価指標の考え方】
○ 本事業における指標のイメージは「地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業における在宅医療・介護連携推進事業の実施状況および先進事例等に関する調査研究事業」(平成28年度老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業)報告書に、下記の図3のように考え方が示されている。指標例の詳細については本手引きの参考資料および報告書を参照いただきたい。
図5:在宅医療・介護連携推進事業における指標のイメージ
※実績値は「後期高齢者1万人対」など人数比で把握するようにして、規模の異なる市町村間での横比較ができるようにする必要あり
出所)地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業における在宅医療・介護連携推進事業の実施状況および先進事例等に関する調査研究事業
(平成28年度老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業野村総合研究所)
地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業における在宅医療・介護連携推進事業の実施状況および先進事例等に関する調査研究事業(平成28年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業 野村総合研究所)
○ 在宅医療・介護連携の取組おける指標については、市区町村における課題や取組内容、医療・介護の連携の場面(入退院支援、日常の療養支援、急変時の対応、看取り)に応じて必要な指標を検討、選択することが重要である。
○ 設定する指標は大きく2つの目的があり、1つは、「地域の課題の分析や事業の進捗状況を確認するための指標」であり、もう1つは、「在宅医療・介護連携推進事業を進めた結果、どれだけ目標に迫ったかを示すための指標」に大別される。
「地域の課題の分析や事業の進捗状況を確認するための指標」
【在宅医療】
○ 地域内の在宅医療の提供体制を把握するためのストラクチャー指標である。
○ 在宅医療に関連する、病院・診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション等が該当する。
○ 例えば、指標例に在宅療養支援診療所数等が含まれるが、必ずしも訪問診療や往診を実施しているとは限らないといった、サービス提供の実績とは必ずしも一致しない点に注意が必要であるため、プロセス指標の【在宅医療サービスの実績】と関連付けて解釈する必要がある。
【在宅介護】
○ 地域内の在宅介護の提供体制を把握するためのストラクチャー指標である。
○ 在宅介護に係る介護事業所数等が該当する。
【住民の意識・ニーズ】
○ 住民が在宅療養・介護に関してどのようなニーズを持っているかを捉えるための指標であり、住民への普及啓発状況や目標の達成状況等を把握するためのプロセス指標である。
○ 在宅療養・介護や在宅看取りの希望割合等が該当するが、希望を実現できる選択肢が地域の住民に提供されているかを把握することも重要である。
【在宅医療サービスの実績】
○ 地域内に在宅医療サービスが実際にどの程度提供されているかを把握するための指標である。
○ 地域の医療機関における訪問診療の実績等、在宅医療サービスがどの程度提供されているかを把握することで、例えば、ストラクチャー指標の増加施策が意味を為しているかどうかといった点を評価できるようになる。
○ 実績の把握方法としては、医療レセプトを活用して診療報酬の算定状況を分析することや、郡市区医師会等関係団体と協力し、医療機関へのアンケート調査等を実施することで把握することができる。
【連携に係る診療報酬】
○ 地域内の連携状況を医療面から把握するための指標である。【在宅医療サービスの実績】と同様に、ストラクチャー指標で表される提供体制の上で、どれほどの連携が為されているかを把握するためのプロセス指標である。
○ 把握するには医療レセプトを活用することで把握することができる。
【連携に係る介護報酬】
○ 地域内の連携状況を介護面から把握するための指標である。上述した在宅医療サービスの実績や連携に係る診療報酬と同様に、ストラクチャー指標で表される提供体制の上で、どれほどの連携が為されているかを把握するためのプロセス指標である。
○ 把握するには介護レセプトを活用することで把握することができる。
【市区町村の取組】
○ 在宅医療・介護連携推進事業において、市区町村が実施した取組内容を定量的に把握するための指標である。研修や講習などの実施回数を量的に把握し、その実施状況がどれほどの成果(アウトカム)につながったか評価するために用いられる。
○ 実施回数以外に研修や普及啓発等の参加者に対するアンケートにより、質的な評価を実施していくことも重要である。
【入退院時の連携】
○ 入退院時の連携状況の実績を把握するための指標である。
○ 指標の把握は、例えば、アンケート調査により、入院時の介護支援専門員から医療機関に対する入院時情報提供率や退院時の医療機関から介護支援専門員に対する退院調整率の実績、退院時カンファレンスの状況等を把握することが考えられる。
【場所別の死亡数(率)】
○ 自宅や老人ホーム等での死亡状況を評価するための指標である。
○ 人口動態により把握できる自宅・老人ホームでの死亡者数は、自死や事故死等、訪問診療や居宅サービスを利用していない者の死亡数が含まれている一方、訪問診療や居宅サービスを利用していたが救急搬送され病院で死亡した者の数等は含まれないこととなり、活用する際は、こうしたデータの持つ性質に十分留意し、地域の医療・介護関係者と共有する必要がある。
「在宅医療・介護連携推進事業を進めた結果、どれだけ目標に迫ったかを示すための指標」
○ 【計画(Plan)】の④目指す理想像の検討で地域の医療・介護関係者と共有されている目標に応じた指標となる。
【生活満足度・従事者満足度】
○ 在宅生活を送る住民の生活満足度(QOL 等)を測定する指標である。
○ 住民のQOL のほか、在宅医療と介護の連携の推進が地域の医療・介護関係者に与える副次的な効果として、在宅医療と介護の連携を支える地域の医療・介護関係者の仕事や連携状況に関する充実度(従事者満足度)についても把握することで連携の質を支え手視点で評価することも可能である。
○ データの取得については住民に対するアンケート調査や郡市区医師会等関係団体を通じたアンケート調査等により把握することができる。
【要介護高齢者の在宅療養率】
○ 要介護者がどれだけ在宅で療養できているかを示す指標である。
○ 在宅医療・介護連携推進事業で在宅療養・介護を支える連携体制を構築した際に、【住民の意識・ニーズ】で把握される在宅療養の希望にどれだけ近づけているかを評価するものである。
○ 在宅療養率を集計している自治体では、在宅の定義について、要介護3以上の要介護認定を持つ高齢者において、①入院外かつ介護保健施設外の住民、②入院外かつ介護保健施設または自宅の住民等の両者で評価している。
二 在宅医療・介護連携推進事業の具体的取組について
○ 在宅医療・介護連携推進事業は、(ア)地域の医療・介護の資源の把握、(イ)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討、(ウ)切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進、(エ)医療・介護関係者の情報共有の支援、(オ)在宅医療・介護連携に関する相談支援、(カ)医療・介護関係者の研修、(キ)地域住民への普及啓発(ク)在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携、の8つの取組からなる。
○ 本事業の円滑な実施のため、市区町村の行政組織内に、在宅医療・介護連携の推進に関する業務についての担当部署を決定し、市区町村が主体的に協議を進め、それぞれの取組を実施していくことが重要である。
○ 地域の実情やそれぞれの取組の専門性に鑑みて委託が可能であるが、委託する場合においても、市区町村が、在宅医療・介護連携推進事業の全体の取組を管理・調整していくことが必要である。
○ また、本事業を推進するにあたっては、市区町村が、事業実施に係る検討段階から、郡市区医師会等の地域における医療・介護の関係団体等(以下「関係団体等」という)と協議するなど、本事業の円滑な実施に向けて、地域における医療・介護関係者と連携することが重要である。
○ 特に取組の初期段階で地域の医療・介護の資源の把握や、市区町村や郡市区医師会等関係団体が既存で取り組んでいる事項について把握、整理し、地域の実情や市区町村における8つの事業項目の取組の進捗状況について地域の医療・介護関係者と共有することが重要である。
○ 市区町村や郡市区医師会等関係団体が既に取り組んでいる事項を8つの事業項目で活用し、更に充実させることも重要な視点である。
○ 本事業の取組における成果物の周知等においても、医療関係者への周知は郡市区医師会等、介護関係者への周知には地域包括支援センター等の幅広い関与、協力を得つつ進めていくことが重要である。
○ 本事業の取組は、複数の市区町村による実施が効果的・効率的であると考えられる場合は、共同実施が可能である。
○ 以降は、当該事業における(ア)から(ク)の具体的取組について取りまとめたので、市区町村における取組の参考にしていただきたい。
○ 在宅医療・介護連携推進事業は、地域にあわせた在宅医療と介護の連携体制を構築することが目的である。既存の取り組みも活かしながら、事業項目に取り組むことが望ましい。
○ 本手引きで記載されている8つの事業項目それぞれの趣旨を十分に理解し、地域の実情にあった取組を郡市区医師会等関係団体とともに協議し、取り組んでいくことが重要である。
(ア)地域の医療・介護の資源の把握
地域の医療機関、介護事業所等の住所・連絡先、機能等を把握し、これまでに自治体等が把握している情報と合わせて、地域の医療・介護関係者と共有する。
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▼ 本事業項目の概要
1.地域の医療機関、介護事業所等の住所・連絡先、機能等の情報収集
2.地域の医療・介護の資源の情報の整理(リストやマップ等の作成)
3.地域の医療・介護関係者との情報の共有と活用
【目的】
(1)市区町村が地域の在宅医療・介護連携の現状を把握し、医療・介護関係者の連携支援に関する施策の立案等に活用するとともに、医療・介護関係者がそれぞれの役割等について理解を深めること。
(2)地域の医療・介護関係者の連携に必要な情報を提供することにより、地域の医療・介護関係者が、照会先や協力依頼先を適切に選択、連絡できるようにすること。
(3)地域の医療・介護の資源に関して把握した情報を活用して、地域住民の医療・介護へのアクセスの向上を支援すること。
【ポイント】
1.地域の病院・診療所・歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護事業所等の住所、連絡先、機能等の情報収集
(1)医療機関に関する事項については、地域包括ケア「見える化」システムや医療機能情報提供制度(医療情報ネット、薬局機能情報提供制度)等の、既に公表されている事項を活用し、既存の公表情報等で把握できない事項については、必要に応じて調査を行う。専門的な事項が必要な場合は、必要に応じて地域の医療・介護関係者の意見を参考にして調査する。
(2)調査を実施する場合は、関係団体等との事前の相談等を踏まえ、調査実施や回答者の負担等を考慮して調査する。
2.地域の医療・介護の資源の情報の整理(リストやマップ等の作成)
(1)把握した情報は、情報を活用する対象者の類型ごと(市区町村等の行政機関及び地域の医療・介護関係者等向け、地域住民向け等)に提供する内容を検討する。提供する内容、情報の整理方法については地域の医療・介護関係者と協議の上、決定する事が望ましい。
(2)リストやマップ等は使途を明確にした上で媒体を選択し、作成する。
3.地域の医療・介護の関係者との共有と活用
(1)把握した情報を地域の医療・介護関係者に対して提供する際には、提供する情報について、地域の医療・介護関係者の理解と同意、協力を得た上で行うこと。
(2)地域住民に対して提供する情報は、医療・介護関係者へ提供する情報と異なる場合があるため、地域住民にとって必要な情報に限定する。
【実施内容・実施方法】
1.地域の医療機関、介護事業所等の住所、連絡先、機能等の情報収集
(1)地域の医療・介護の資源に関して、まず、既存の情報や関係団体等が所有する情報等を整理する。整理された情報を参考に把握事項と把握方法を検討する。
(2)次に、整理した情報から把握すべき事項を抽出し、それ以外の事項について調査を実施する場合は、既に取り組んでいる市区町村の実施例を参考にするなど、調査事項・調査方法・活用方法を検討する。
(3)調査を実施する場合は、調査事項等の検討について地域の医療・介護関係者と検討した上で、協力を得つつ医療機関・介護事業所を対象に調査を実施する。
(4)調査結果等を基に、地域の医療・介護の資源の現状を取りまとめる。
2.地域の医療・介護の資源の情報の整理(リストやマップ等の作成)
(1)医療・介護関係者に対しての情報提供
把握した情報が在宅医療・介護連携の推進に資する情報かどうか精査した上で、地域の医療・介護関係者と情報共有が図れる効果的な媒体(リストやマップ等)を選択・作成し、地域の医療・介護関係者や地域包括支援センター等と共有する。なお、在宅医療・介護連携に関する相談支援の窓口等で、実際に連携支援を担う担当者の把握と連絡方法、及びそれらを情報提供することも有効であることに留意する。
(2)地域住民に対する情報提供
把握した情報が住民にとって必要な情報かどうか、更に住民に対する提供が医療・介護関係者の連携の支障とならないか精査した上で、住民向けのリストやマップ等必要な媒体を作成し、住民に配布する。必要に応じて、市区町村等の広報誌、ホームページに掲載して、住民に情報提供する。
(参考)表1 地域の医療・介護の資源の把握事項と把握方法
分野
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把握事項
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把握方法
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在宅医療
(訪問診療を行う医療機関、訪問薬剤管理指導を行う薬局)
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<基礎情報>
・医療機関名、薬局名
・住所
・電話番号
・FAX番号
・診療日・診療時間、営業日・営業時間
・診療科
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・医療機能情報提供制度
・薬局機能情報提供制度
(厚生労働省ホームページ)
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<訪問診療等の対応>
・在宅患者訪問診療
・往診
・歯科訪問診療
・訪問薬剤管理指導
・時間外における対応
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<対応可能な診療内容>
・在宅ターミナルケアの対応
・中心静脈栄養
・経管栄養
・気管切開部の処置
・疼痛の管理
・レスピレーター(人工呼吸器)等
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||
訪問看護
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<基礎情報>
・事業所名
・住所
・電話番号
・FAX番号
・サービス提供日・時間・定休日
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・介護情報公表システム
(厚生労働省ホームページ)
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<体制等>
・緊急時の訪問体制の有無
(緊急時訪問看護加算の届出)
・看取りの対応の有無
(ターミナルケア体制の届出)
・気管切開患者等への対応の有無
(特別管理体制の届出)
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||
介護
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<基礎情報>
・事業所名
・住所
・電話番号
・FAX番号
・サービス提供日・時間・定休日
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・介護情報公表システム
(厚生労働省ホームページ)
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<提供する介護等>
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【留意事項】
(1)時間が経過するにつれて調査時の内容と異なる可能性があることから、定期的に最新の情報に更新する。
(2)医療機関・介護事業所等の調査を実施する場合には、調査を円滑に実施するため、事前に関係団体等に説明し、協力を得るとともに、情報提供の可否、提供する情報内容については、提出先から同意を得ておく。
(3)医療・介護関係者や住民に提供する情報の内容については、事前に関係団体等に事実関係の確認を求めるなど、地域の医療・介護の関係各者に内容を確認してもらうことが望ましい。
(4)(イ)の協議に参画する関係団体等が有する資源情報について、可能な限り情報提供を受けることが望ましい。
(イ)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討
地域の医療・介護関係者等が参画する会議を開催し、在宅医療・介護連携の現状の把握と課題の抽出、対応策等の検討を行う。
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▼ 本事業項目の概要
1.事業項目「(ア)地域の医療・介護の資源の把握」で得られた情報や市区町村・都道府県および各関係団体が所持している既存の情報やデータ、在宅医療・介護連携に関連する既存の取組について集約する。
2.地域の医療・介護の関係団体等が参画する会議を開催する。
3.会議で地域の医療・介護の関係団体等と現状や課題、対応策、地域で目指す理想像(目標)を共有する。
【目的】
在宅医療と介護の連携に関する地域の課題を抽出し、その対応策を検討すること。
【ポイント】
(1)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策を検討する会議の開催事務について委託することは差し支えないが、議題等、会議の開催前後に検討が必要となる事項については、市区町村が主体的に取組む必要がある。
(2)地域の医療・介護の関係団体等に参画を求め、地域の医療・介護の関係団体等と現状や課題、対応策、地域で目指す理想像(目標)を共有する。
(3)課題及び対応策についての検討の結果、それぞれの事項について更なる検討が必要とされた場合は、ワーキンググループ等を設置する。
(4)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策を検討する会議のワーキンググループ等は、(ア)から(ク)の他の事業項目の実施に係る検討の場として活用される。
【実施内容・実施方法】
(1)在宅医療及び介護の提供状況((ア)の結果)、在宅医療・介護連携の取組の現状や市区町村および各関係団体の既存の取組を集約し、市区町村が在宅医療・介護連携の課題(情報共有のルール策定、切れ目のない在宅医療・在宅介護の提供体制の構築、医療・介護のネットワークづくり、医療・介護関係者や、その連携担当者等の顔の見える関係づくり、住民啓発等)を抽出する。
(2)市区町村は、(1)で抽出された課題を元に対応策の案を検討する。
(3)地域の医療・介護関係者を参集し、当該事業項目に係る会議を開催する。当該会議では、(1)で集約した情報や抽出された課題、(2)で検討した対応策の案、地域で目指す理想像(目標)について検討・共有する。
(4)検討された対応策の実施に係る市区町村や郡市区医師会等関係団体等の役割やスケジュール等の検討をする。
【留意事項】
(1)会議の構成員については、郡市区医師会等の医療関係者、介護関係者、地域包括支援センター等に加え、地域の実情に応じて、訪問看護事業所、訪問歯科診療を行う歯科医療機関、在宅への訪問薬剤管理指導を行う薬局等の参加を求めることが望ましい。
(2)課題を抽出する際は、重要度及び優先順位も考慮する。
(3)必要に応じて、在宅医療や介護を提供している者等からヒアリングを行うことも考えられる。
(4)検討する議題に応じて、在宅医療・介護連携に関する有識者、医療機関等の入退院支援の担当者、都道府県関係部局、保健所等の担当者等の参加を求めることが望ましい。
(5)会議の進行等に当たっては、特定の関係者に発言が偏ることがないよう、関係者の専門性の違い等に配慮しつつ広く関係者の発言を求める。
(6)会議は定期的に開催すること。ただし、開催頻度は地域の実情に応じて決定することで差し支えない。
(7)医療・介護関係者が参画する会議を開催し、地域の在宅医療・介護連携の課題とその対応策について検討することが主旨であるため、地域の実情に応じて既存の会議を活用することも差し支えない。
(8)特に、地域ケア会議については、議題、出席者の職種、回数等が当該事業の主旨を満たすものであれば、活用を検討していただき差し支えない。ただし、その場合であっても、医療・介護関係者が参画する会議を開催する前に、市区町村が課題の整理や対応策について検討することが必要である。
(ウ)切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制の構築推進
地域の医療・介護関係者の協力を得ながら、切れ目なく在宅医療と在宅介護が一体的に提供される体制の構築に向けて、必要な具体的取組を企画・立案する。
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▼ 本事業項目の概要
1.地域における住民等が必要とする、切れ目のない在宅医療と在宅介護のサービス提供体制を想定・検討する。
2.1で検討された場面において、地域の医療・介護関係者の協力を得ながら、必要な具体的な取組を企画・立案する。
【目的】
医療と介護が必要になっても、住み慣れた地域で可能な限り暮らし続けることができるよう、地域の医療・介護関係者の協力を得ながら、在宅医療と在宅介護が夜間・休日、容態急変時の対応等、切れ目なく提供される体制の構築を目指した取組を行うこと。
【ポイント】
(1)当該事項については、地域の在宅医療と介護の資源状況等、地域の実情に応じた様々な取組が考えられるので、(ア)で得られた情報や(イ)で検討した事項を踏まえ、地域で必要となる提供体制の構築に向けた検討を行い、地域の実情に応じた取組を行う。
(2)医療・介護関係者の主体的な協力を得られるよう働きかけることが重要である。
【実施内容・実施方法】
(1)地域の医療・介護の提供状況について、市区町村や郡市区医師会等関係団体が把握している既存情報や、(ア)で得られた情報等を活用して確認する。
(2)地域の医療・介護関係者等の協力を得ながら、切れ目なく在宅医療と在宅介護が提供される体制構築のために必要な取組を検討する。なお、必要な取組については、市区町村等が、事前に把握した情報に基づき検討し、(イ)で設置した会議等を利用して、更に地域の医療・介護関係者を集めて検討する。
(3)市区町村は、検討した必要な取組について、地域の医療・介護関係者の理解と協力を得た上で、実現に向けた着実な進捗管理に努める。
【留意事項】
(1)地域医療の状況等に関する理解が必要なこと、訪問診療・往診を行う医療機関の協力が求められること等から、取組の検討・実施に当たっては関係団体等に委託することも可能。
(2)切れ目なく在宅医療と在宅介護を提供するための体制は、表2のような取組が例として考えられるため参考にされたい。ただし、必要な取組は、患者・利用者の状態や、その家族、介護者の状況、地域の医療・介護の資源状況等によって異なることから、表2の取組に限らず、地域の実情に応じて必要な体制を構築することが重要である。
なお、検討した仕組みや取組が救急体制に関わる場合は、救急搬送を行う消防組織と情報共有を行うことも効果的である。
(3)地域支援事業交付金の対象となる本事業項目の支出は、切れ目なく在宅医療と在宅介護が一体的に提供される体制の構築を推進する取組についての検討に係る費用を対象とする。例えば、主治医・副主治医制の運営のための経費(医師への手当て等)、夜間・休日に医療機関が診療体制を確保するための経費(医療機関の協力金等)は、本事業項目の対象経費とならないので注意すること。
(参考)表2 切れ目のない在宅医療と在宅介護が提供される体制の構築推進に向けた取組例
例1)主治医・副主治医制の導入による体制の構築
① (イ)の会議における内容を踏まえ、切れ目なく在宅医療と在宅介護が提供される体制の構築に向けた取組の一つとして、主治医・副主治医制の導入の検討について、郡市区医師会に説明し、検討について協力を得られるよう働きかける。
② 導入についての検討後、市区町村及び郡市区医師会の共同の呼びかけにより、地域の医療機関、訪問診療・往診を提供する医療機関が参画する会議を設け、郡市区医師会の先導の下、主治医・副主治医制の導入に係る以下の事項等について検討する。
・賛同する医療機関の対応可能な曜日・時間帯・疾患等を考慮した副主治医の決定方法及び対応順の決定方法について
・患者情報及び緊急時の対応について、主治医・副主治医で共有するためのカンファレンスの開催について
・介護支援専門員等の介護関係者等への周知及び共有方法について
※実際に本仕組みを活用する際には、主治医から、患者・利用者及び家族に主治医・副主治医制について説明し、同意を得た上で、副主治医への連絡方法等について説明する。また、当該患者・利用者への介護の提供に関わる介護支援専門員等の介護関係者とも共有する。
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例2)在宅療養中の患者・利用者についての急変時診療医療機関の確保
① (イ)の会議における内容を踏まえ、切れ目なく在宅医療と在宅介護が提供される体制の構築に向けた取組の一つとして、在宅療養中の患者・利用者についての急変時診療医療機関の確保体制の導入の検討について、郡市区医師会に説明し、検討についての協力を得られるよう働きかける。
② 導入についての検討後、市区町村及び郡市区医師会の共同の呼びかけにより、地域の医療機関、訪問診療・往診を提供する医療機関が参画する会議を設け、郡市区医師会の先導の下、急変時診療医療機関の確保の導入に係る以下の事項等について検討する。
・緊急時の診療希望患者の登録方法や、主治医と急変時診療医療機関との連絡方法、診療希望患者についての事前の情報共有の方法等の運用や書式について
・地域の病院・診療所等の医療関係者等及び介護支援専門員等の介護関係者等への周知及び共有方法について
※実際に本仕組みを活用する際には、主治医から、患者・利用者及び家族に急変時の診療医療機関の確保について説明し、同意を得た上で、急変時診療医療機関への連絡方法等について説明する。また、当該患者・利用者への介護の提供に関わる介護事業所等の介護関係者とも共有する。
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例3)訪問診療・往診を提供する医療機関と訪問看護ステーションとの連携体制の構築
① (イ)の会議における内容を踏まえ、切れ目なく在宅医療と在宅介護が提供される体制の構築に向けた取組の一つとして、訪問診療・往診を提供する医療機関と訪問看護ステーションとの連携体制について、郡市区医師会に説明し、検討について協力を得られるよう働きかける。
② 導入についての検討後、地域の医療機関、訪問診療・往診を提供する医療機関及び訪問看護ステーションが参画する会議を設け、連携体制の構築に向け、以下の事項等について検討する。
・訪問診療・往診を提供する医療機関と訪問看護ステーションの連携により対応する患者情報の共有方法について
・夜間・休日及び容態急変時等の対応について
・介護支援専門員等の介護関係者等への周知及び共有方法について
※実際に本仕組みを活用する際には、主治医から、訪問看護ステーションとの連携体制について説明し、同意を得た上で、夜間休日等における連絡方法等について説明する。また、当該患者・利用者への介護の提供に関わる介護支援専門員等の介護関係者とも共有する。
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(エ)医療・介護関係者の情報共有の支援
情報共有の手順等を含めた情報共有ツールを整備するなど、地域の医療・介護関係者間の情報共有を支援する。
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▼ 本事業項目の概要
1.情報共有ツール※の確認・作成
2.情報共有ツールの導入支援と活用状況の把握
※情報共有ツール:情報共有を目的として使用される、情報共有シート、連絡帳、地域連携クリティカルパス等
【目的】
患者・利用者の在宅療養生活を支えるために、患者・利用者の状態の変化等に応じて、医療・介護関係者間で速やかな情報共有が行われること。
【ポイント】
1.情報共有ツールの確認・作成
(1)地域の医療・介護関係者と協力して、既存で使用されている情報共有ツールを収集、活用状況を確認し、地域で充実又は作成するべきツールを検討する。
(2)情報共有ツールが既に作成されているが、十分に活用されていない場合は、共有する情報の内容や活用方法等について、医療・介護関係者の双方の理解が得られるよう十分に意見を聴取し、より多くの関係者に利用されるように改善する。
(3)情報共有ツールを新たに作成する場合は、作成するツールの用途を明確にし、医療・介護関係者が利用しやすい様式等を具体的に検討した上で、作成する。また、必要に応じてそれらの手引き等の作成も考慮する。
(4)作成した情報共有ツールの成果物だけを関係者に周知するのではなく、情報共有ツールの検討段階においても可能な限り情報提供し、関係者間で作成の経過を共有する。それによって、情報共有ツールの利活用を促す(情報共有ツールを活用する意欲や愛着を高める)ことが期待できる。
2.情報共有ツールの導入支援と活用状況の把握
(1)作成した情報共有ツールや既存の情報共有ツールが幅広く活用されるよう説明会の開催や手引き等の配布などの導入支援を行うとともに、その活用状況をアンケート等により定期的に把握、評価し、その結果を踏まえた改善を図る。
(2)関係する医療機関等や介護事業所で実際に従事する地域の医療・介護関係者は、職員の交代が頻繁にありえることから、情報共有ツールに関して、定期的な周知や事業所内での利活用を奨励する。
(3)情報共有ツールの活用状況を把握する方法として、例えば、利用している医療機関等及び介護事業所の数(人数、事業所数など)を集計する等、可能な限り利用状況を数値化することが重要である(数値化することで、使用状況の評価や改善が容易となる)。
【実施内容・実施方法】
(1)情報共有ツールの作成に当たっては、まず、地域における既存の情報共有ツールとその活用状況を把握する。
(2)既存ツールの活用・改善等の可能性や新たな情報共有ツール作成の必要性について、(イ)の会議の下に、関係する医療機関等や介護事業所の代表、情報共有の有識者等からなるワーキンググループを設置し、検討する。(地域の実情に応じて、既存の情報共有ツールの改善等でも差し支えない。)
(3)ワーキンググループにおいて、情報共有の方法、(情報共有シート、連絡帳、地域連携クリティカルパス、ファックス、電子メール等)内容等を検討し、情報共有ツールの様式、使用方法、活用・手順等を定めた手引き(利用者の個人情報の取扱いを含む)等を策定する。なお、これらの決定に当たっては、実際に情報共有ツールを使用する地域の医療・介護関係者等の意見を十分に踏まえる。
(4)地域の医療・介護関係者を対象に、使用方法の説明等、情報共有ツールの導入を支援するための研修会を開催するとともに、情報共有ツールの使用方法や情報共有の手順等を定めた手引き等を地域の医療・介護関係者に配布する。
(5)アンケート調査、ヒアリング等によって、情報共有ツールの活用状況とその効果、うまく活用できた事例やできなかった事例等について把握し、改善すべき点がないかなどについて検討を行う。また、必要に応じて、情報共有ツールの内容、手引き等を改定する。なお、改定等で変更が生じた場合には、関係者に十分周知する。
【留意事項】
(1)医療・介護関係者間で共有すべき情報には、具体的には、表3のような内容が考えられる。なお、医療・介護関係者間で、患者・利用者とその家族が、どのような療養生活を希望しているのか、まず、共通認識を図ることが重要である。
(2)医療・介護関係者間で共有すべき情報を検討する際には、迅速かつ適切な対応が必要である高齢者虐待の未然防止や早期発見の観点からも検討することが重要である。
(3)ICTを活用した情報共有ツールの導入を検討する際には、ICT導入や活用による費用対効果、その地域の多くの医療・介護関係者にとって実際に使いやすいツールであるか等について慎重に検討する。
なお、本事業項目では、情報共有の方法やツール等を検討する際の会議、情報共有ツールの使用方法等の説明会の開催、情報共有の使用状況の把握と改善の検討に係る費用を想定しており、情報共有のためのPCやモバイル機器等の購入費用、システム使用料や保守点検料等のいわゆるランニングコストについては対象にならない。
(4)職員の交代時期を考慮し、例えば、定期的に医療機関等や介護事業所で実際に従事する職員に対して手引きを周知するように配慮する。
(5)情報共有ツールに記載された利用者の個人情報の取扱いには、十分な注意が必要である旨を周知する。また、職場外での業務に係る個人情報の持ち出し等についても十分な注意が必要である。
(参考)表3 医療・介護関係者間で共有すべき情報の例
○主治医や担当の介護支援専門員に関する情報(氏名・連絡先)
○患者・利用者とその家族の今後の療養についての希望
○介護提供時等に得られた患者・利用者の状況や体調の変化、服薬状況
○患者・利用者の食事摂取状況、排泄状況等のADL
○患者・利用者の家屋の状況
○家族による介護の対応可能性
○患者・利用者の疾病、使用薬剤等に関する情報
○患者・利用者とその家族への病状の説明内容と受け止め方
○予測される体調の変化及び対応方法、急変時に対応する医療機関(医療機関が決まっている場合)、急変時の医療処置等に関する希望(希望が明確になっている場合)
○在宅療養における注意点
○在宅生活支援や介護の際の留意点
○入院前の在宅医療の状況 等
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(オ)在宅医療・介護連携に関する相談支援
地域の在宅医療・介護連携を支援する相談窓口の設置、運営を行い、地域の医療・介護関係者、地域包括支援センター等からの、在宅医療・介護連携に関する事項の相談の受付を行う。また、必要に応じて、退院の際の地域の医療関係者と介護関係者の連携の調整や、患者・利用者又は家族の要望を踏まえた、地域の医療機関等・介護事業者相互の紹介を行う。さらに、相談対応の窓口やその役割が関係者等に明確に理解されるよう、「在宅医療・介護連携支援センター」等の名称を設定し、関係者等に周知する。
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▼ 本事業項目の概要
1.在宅医療・介護連携を支援する相談窓口の設置、運営
2.医療・介護関係者からの在宅医療・介護連携に関する相談への対応等
3.地域包括支援センターとの連携
【目的】
在宅医療・介護連携を支援する相談窓口を設置することにより、地域の医療・介護関係者や地域包括支援センターから、在宅医療・介護連携に関する相談等を受け付け、連携調整、情報提供等により、その対応を支援すること。
【ポイント】
(1)在宅医療・介護連携を支援する相談窓口の設置、運営に当たっては、郡市区医師会等との連携体制を確保するとともに、地域の在宅医療・介護連携を支援する人材を配置し、地域の医療・介護関係者、地域包括支援センター等からの在宅医療・介護連携に関する相談の受付、連携調整、情報提供等の機能を確保し、在宅医療・介護連携の取組を支援する。
(2)特に、介護関係者からの相談については、既存の地域包括支援センターの役割を前提として、当該地域包括支援センターとの連携により対応することが望ましい。
また、地域住民からの相談等は、原則として、引き続き地域包括支援センターが受け付けることとするが、実情に応じて、直接、地域住民に対応することも差し支えない。
(3)既に在宅医療・介護連携を支援する機能が設けられている場合には、既存の組織等を活用して差し支えない。また、必ずしも、新たな建物の設置を求めるものではなく、相談窓口の事務所は、既存の会議室や事務室等の空きスペース等を活用することで差し支えない。ただし、相談対応の窓口やその役割が関係者等に明確に理解されるよう、「在宅医療・介護連携支援センター」等の名称を設定し、関係者等に周知する。
(4)在宅医療・介護連携を支援する相談窓口は、受け付けた相談内容や地域の在宅医療・介護連携に関する現状についての情報共有等、市区町村及び地域包括支援センターと緊密な連携を図る。なお、相談窓口が対応する区域に所在する、全ての地域包括支援センターと連携を図ることが重要である。
【実施内容・実施方法】
(1)配置する人材は、看護師、医療ソーシャルワーカーなど医療に関する知識を有し、かつ、介護支援専門員資格を持つ者など介護に関する知識も有し、実務経験がある者が望ましい。このような人材を配置することが難しい場合等においては、相談の対応について郡市区医師会等と連携しながら対応する体制が必要である。
(2)地域の医療・介護関係者等に対して、窓口の連絡先、対応可能な時間帯等を周知する。なお、医療関係者への周知には郡市区医師会等、介護関係者への周知には地域包括支援センター等の協力を得ることが望ましい。
(3)運営については、(イ)の会議の活用等により運営方針を策定し、それに基づき相談を受け付ける。
【留意事項】
(1)在宅医療・介護連携を支援する相談窓口の設置、運営は、市区町村や地域包括支援センターが実施する以外に、医療に関する専門的知識と地域の在宅医療関係者との関係を有する郡市区医師会等に委託することが考えられる。なお、地域の実情に応じて、地域の医療機関等や医療関連団体に委託することでも差し支えないが、運営の公平性に留意する。
(2)在宅医療・介護連携に関する相談を受け付け、支援する人材は、市区町村等が実施する地域の課題を扱う会議等地域包括ケアに関連する会議に出席し、在宅医療・介護連携の観点から助言や情報提供を行うなど、地域の様々な在宅医療・介護連携を推進する取組に積極的に関与し、地域の医療・介護関係者との緊密な関係の構築に取り組むことが重要である。
(3)相談対応で情報提供する可能性のある医療機関等や介護サービス事業所等の情報は(ア)の結果等を参考にする。なお、医療機関等の情報提供についての可否は、事前に確認しておくことが必要である。
(4)在宅医療・介護連携の取組を支援する人材については、都道府県が地域医療介護総合確保基金等を活用して、その育成に取り組んでいる場合があるので留意すること。
(カ)医療・介護関係者の研修
地域の医療・介護関係者の連携を実現するために、多職種でのグループワーク等の研修を行う。また、必要に応じて、地域の医療関係者に介護に関する研修会の開催、介護関係者に医療に関する研修会の開催等の研修を行う。
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▼ 本事業項目の概要
1.市区町村や医療・介護関係団体が既存で実施している研修の整理
2.研修の実施
①多職種が連携するためのグループワーク等を活用した研修
②医療・介護関係者に対する研修
③地域の医療・介護関係者による同行訪問研修
④多職種連携が必要な事例検討による研修
1.市区町村や医療・介護関係団体が既存で実施している研修の整理
新規で在宅医療・介護連携に関する研修を企画する前に、地域で行われている既存の研修についての情報を収集し、活用していくことを検討することも重要である。
研修の開催については、医療・介護関係者へヒアリング等を実施しニーズを把握して企画する、関係団体が実施する研修について他の関係団体への周知に協力する等、適宜、方法を検討する。
なお、市区町村や医療・介護関係団体が既存で実施している研修の整理は研修実施までの過程であることから、整理だけでは(カ)の事業項目を実施しているとはみなされない。
2.研修の実施
①多職種連携についてのグループワーク
【目的】
医療と介護は、それぞれを支える保険制度が異なることなどにより、多職種間の相互の理解や、情報共有が十分にできていないなどの課題がある。このため、多職種が連携するためのグループワーク等を活用した研修を通じて、地域の医療・介護関係者が、お互いの業務の現状、専門性や役割等を知り、忌憚のない意見が交換できる関係を構築するなど、現場レベルでの在宅医療と介護の連携が促進されるような研修を提供する。
【ポイント】
(1)地域の医療・介護関係者が多職種でグループワーク等を活用した研修を行う主旨は、専門性等の異なる多職種が共通の課題や困難な状況を理解し、かつ解決のプロセスを共有しながら同じ方向に向かっていく手法を体得することにある。この意味で、それぞれが抱える現状の課題を単に共有するための情報交換会とは異なるものである。
(2)地域の医療・介護関係者による情報交換の場が既に設けられている場合には、それらを活用して、更に多職種でのグループワーク等を活用した研修に発展させる。
(3)地域の医療・介護関係者による情報交換等が実施されておらず、直ちに研修を開催することが困難な場合は、多職種研修に発展させることを目標に、研修計画等を設定した上で情報交換の場を設けることから始めてもよい。
【実施内容・実施方法】
(1)研修の目標、内容等を含む実施計画案を作成し、医療・介護関係者の理解と協力を得る。
(2)医療・介護関係者を対象にグループワーク等を活用した多職種研修を開催する。なお、研修の具体的な内容には、例えば自己紹介やそれぞれが勤務している医療機関等・介護サービス事業所等の地域における役割・特徴等を共有するとともに、(イ)で抽出した地域課題の優先度を踏まえたテーマや事例等に対し、グループで意見交換等を行うなど、参加者が取り組みやすい内容や構成となるように配慮する。
【留意事項】
(1)グループワーク等のメンバー構成の検討においては、医療系職種と介護系職種の配分に留意する。
(2)グループワークでは、必要に応じて、司会進行とは別に意見交換を円滑に進めるための調整役を配置することやグループワークを事務局で試行した上で実施することを検討する。また、ディスカッションに慣れるまでは、調整者が議論の状況を見守り、円滑な意見交換になるよう支援することが重要である。
(3)研修参加者の選定については、医療・介護の資源の充足状況等を鑑み、連携が必要と考えられる職種の参加を求めたり、医療・介護の関係団体を通じて募集し、新規参加者が定期的に参加できる機会を設けるなど、適宜工夫することも重要である。
(4)在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 研修運営ガイド((平成25年12月 国立長寿医療研究センター・東京大学高齢社会総合研究機構・日本医師会・厚生労働省)の活用を検討することも有効である。
②地域の医療・介護関係者に対する研修
【目的】
医療・介護関係者間での連携を円滑にするため、それぞれの職種が、お互いの分野についての知識等を身につける。
【ポイント】
研修の実施計画の策定の際には、職能団体、事業所団体、都道府県等による医療・介護の関係職種を対象とした既存の研修を活用し、必要に応じて、既存の研修では達成できない事項を中心に新たな研修を企画する。市区町村以外の関係団体・関係機関等による研修が既に実施されている場合は、可能な限りそれらを活用するとともに、本手引きの「三 在宅医療・介護連携推進事業の実施に当たっての留意事項」に従い、市区町村による新たな取組の必要性について判断すること。
【実施内容・実施方法】
(1)既存の研修の内容・回数等を確認し、新たな研修の必要性について検討・整理した上で、研修内容、目標等を含む実施計画を作成する。なお、研修の実施計画については、(イ)の会議や、関係団会等において説明することにより、研修の周知や講師の確保等について協力を得る。
(2)新たな研修が必要である場合は、既存の研修との位置づけを整理する。なお、具体的な研修の内容としては以下のような事項が考えられる。
<医療関係者に対する研修の例>
・介護保険で提供されるサービスの種類と内容、介護支援専門員の業務、地域包括ケアシステム構築を推進するための取組(地域ケア会議等)等に関する研修
<介護関係者に対する研修の例>
・医療機関の現状等、予防医学や栄養管理の考え方、在宅医療を受ける患者・利用者に必要な医療処置や療養上の注意点等に関する研修
(3)研修会の開催に際しては、参加者に対するアンケートやヒアリング等を実施し、研修の評価・改善につなげる。
【留意事項】
(1)研修の実施計画については、関係団会等に説明し、研修の周知や講師の確保等について理解と協力を得る。
(2)講師については、医師・看護師等の医療系資格に加え、介護支援専門員の資格を有するなど、研修内容に応じて、適切な知識を有する人材を考慮する。
(3)多職種でグループワーク等を活用した研修を行うことを基本とし、必要に応じて、医療関係者に介護等に関する研修会、介護関係者に医療等に関する研修会を行う。ただし、多職種でのグループワーク等を活用した研修の開催が困難な場合は、まず、医療・介護関係者に対する研修を行うことから始めても差し支えない。
③地域の医療・介護関係者による同行訪問研修
【目的】
医療・介護関係者間での連携を円滑にするため、訪問診療や訪問指導に多職種が同行し、実際の訪問現場の見学や意見交換を行い、多職種間の連携や在宅療養への理解を促進する。
【実施内容・実施方法】
(1)医療介護関係団体等へのヒアリング等を通じて把握された多職種連携に関する課題を検討した上で、医師―歯科医師、医師―薬剤師、看護師―介護支援専門員、介護支援専門員―リハ職等の同行訪問研修の実施計画を作成する。
(2)同行訪問研修は、少人数の見学者を募集して実施する方法や互いの訪問診療等の日程を調整して実施する方法等、研修に協力する専門職と協議の上、地域の実情に応じた方法で行う。
【留意事項】
(1)研修の実施計画については、関係団体等に説明し、同行訪問研修に協力する専門職の確保等について理解と協力を得る。
(2)地域の実情に応じて、在宅医療の経験がない医師等を対象に、訪問診療や在宅介護の現場を見学できる同行訪問研修など、在宅療養の理解の促進を目的とした同行訪問研修についても実施して差し支えない。
④多職種連携が必要な事例検討による研修
【目的】
医療・介護関係者間での連携を円滑にするため、多職種連携が必要な事例検討会を開催し、具体的な事例に則した各専門職の役割分担の検討を行うなど実践的な研修を行う。
【実施内容・実施方法】
(1)事例検討会に用いる事例については、地域の課題に応じて、特に多職種の円滑な連携を図る必要がある事例を選定する。事例検討会の参加者や事例の選定に際しては、現場の問題点等を把握している医療介護関係団体と協議しながら実施することが望ましい。
(2)事例検討については、実際の多職種チームを構成すると考えられる参加者を対象に実施する方法や比較的規模の大きい多職種研修によるグループワーク等の際に実施する方法がある。
【留意事項】
(1)事例検討において、架空事例ではなく実際の利用者の事例を研修に用いる場合は、個人情報の保護に厳重な注意を払うこと。
(2)地域ケア会議については、議題、出席者の職種、回数等が当該事業の主旨を満たすものであれば、活用を検討していただき差し支えない。ただし、その場合であっても、医療・介護関係者が参画する会議を開催する前に、市区町村が課題の整理や対応策について検討することが必要である。
(キ)地域住民への普及啓発
在宅医療や介護に関する講演会の開催、パンフレットの作成・配布等により、地域住民の在宅医療・介護連携の理解を促進する。
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▼ 本事業項目の概要
在宅医療や介護に関する講演会やパンフレット等の作成・配布等地域住民に届く媒体や手法を選択し、普及啓発を行う。
【目的】
地域の在宅医療・介護連携を推進するには、医療・介護関係職種の連携だけでなく、地域住民が在宅医療や介護について理解し、在宅での療養が必要になったときに必要なサービスを適切に選択できるようにすることも重要である。また、地域住民が終末期ケアの在り方や在宅での看取りについて理解することも、適切な在宅療養を継続するために重要であるため、これらの理解を促進する。
【ポイント】
普及啓発に当たっては、市区町村以外の関係団体・関係機関等による既存の講演会等を把握した上で、可能な限りこれらの取組を活用する等、本事業の新たな実施について、本手引きの「三 在宅医療・介護連携推進事業の実施に当たっての留意事項」を参考に、市区町村による新たな取組の必要性について判断すること。
【実施内容・実施方法】
(1)普及啓発に係る既存の講演会等の内容・頻度等を確認し、新たな普及啓発の必要性について検討した上で、地域住民向けの普及啓発の内容、目標等を含む実施計画案を作成する。
(2)在宅医療や介護で受けられるサービス内容や利用方法等について、計画に基づき講演会等を開催する。また、在宅医療、介護で受けられるサービス内容や、利用方法等について地域住民向けのパンフレット、リーフレット等を作成し、配布するとともに、市区町村等のホームページ等で公表する。
(3)作成したパンフレット、リーフレット等は医療機関等にも配布する。なお、必要に応じて、医療機関等での講演を行うことも考慮する。
【留意事項】
(1)地域住民向けの講演会は、例えば、在宅医療や介護で受けられるサービス内容や利用方法等について分かりやすく解説するなどの内容を工夫する。
(2)高齢者虐待の未然防止や早期発見の観点から、高齢者虐待に対する地域住民の理解を深めるような内容について検討することも考えられる。
(3)地域特有の情報発信ツールを活用するなど、地域の実情に応じた方法で理解を促進することが望ましい。
(4)老人クラブ、町内会等の会合へ出向いての小規模な講演会や地域包括支援センター単位での講座等も効果的である。
(5)地域包括支援センター、社会福祉協議会や市区町村の生涯学習担当等が実施している講演会等、既に行われている場合、連携して企画・運営、実施することも考えられる。
(6)講演会等の実施の際は、地域住民からの質疑等に柔軟に対応できるよう、可能であれば、行政関係者だけでなく医療・介護関係者も一緒に実施することが効果的である。
(ク)在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携
複数の関係市区町村が連携して、広域連携が必要な事項について協議する。
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▼ 本事項項目の要点
1.市区町村や郡市区医師会等関係団体等から出されている広域的な取組を要する課題について整理する。
2.課題を踏まえて、市区町村・都道府県や郡市区医師会等関係団体と連携しつつ、複数の関係市区町村を参集し、広域的な連携が必要な事項について協議する。
【目的】
複数の関係市区町村が協力して、共通の情報共有の方法等、広域連携が必要な事項について地域の実情に応じて検討する。
【ポイント】
市区町村が、当該市区町村の境界を越えて取組を実施するためには、都道府県、都道府県医師会等との協力が不可欠である。特に、医療機関の協力が必要となる検討事項である場合、都道府県医師会や郡市区医師会、当該医療機関への協力依頼等は、都道府県が支援することが望ましい。また、医療との接点が特に多い保健所の協力を得ることも考慮する。
【実施内容・実施方法】
(1)(ア)や(イ)の事業項目を活用し、市区町村における弱みや地域の関係団体等から出されている広域的な取組を要する課題についてまとめる。
(2)隣接する市区町村の関係部局、郡市区医師会等の医療関係団体及び介護の関係団体、医療・介護関係者、都道府県関係部局等が参画する会議を開催し、広域連携が必要となる事項について検討する。
会議は、本事業の取組が進んでいる市区町村や地域の中核的な市区町村が周辺市区町村を参集する、都道府県と市区町村が連携し会議を開催する、郡市区医師会等関係団体と市区町村が連携し地域の関係者を参集する等地域の実情に合った方法で開催する必要がある。
(3)検討事項に応じて、当該検討事項に係る関係者の参画する会議の開催を検討する。
(4)例えば、情報共有の方法について検討する場合は、都道府県の担当者等の支援の下、各市区町村の担当者や、医療・介護関係者が集まり、情報共有に関する具体的な方法や様式の統一等について検討する。
(5)統一された情報共有の方法や様式等を、連携する市区町村の地域の医療・介護関係者に周知する。
【留意事項】
(1)連携市区町村を検討する際には、まず、同じ二次医療圏内の市区町村による連携を考慮することが望ましい。
(2)二次医療圏が一つの市で構成されている場合等は、(イ)の取組をもって(ク)に取り組んでいるとみなし、必ずしも(ク)を実施しなくても差し支えない。ただし、その場合でも、隣接する市区町村との在宅医療・介護連携の状況についても把握し、連携の方法について更に検討することが望ましい。また、隣接する市区町村が連携の必要性があると判断している場合においても協力することが望ましい。
(3)複数の市区町村における、入退院時の医療機関と介護支援専門員との情報共有の方法について、厚生労働省補助事業の都道府県医療介護連携実証事業を実施している場合は、その成果を活用して検討することが望ましい。実施していない場合も、他の都道府県による当該事業の成果を活用して情報共有の方法を検討することも考えられる。
(4)在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携は、例えば、取組の一つとして、表4のような都道府県と市区町村が連携して実施する取組が考えられるため参考にされたい。ただし、必要な取組は、地域の医療・介護の資源状況等によって異なることから、表4の取組に限らず、地域の実情に応じて実施することが重要である。
(参考)表4 在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携に向けた取組例
例1)広域的な入退院時の医療介護連携を推進するための取組
病床の整備は、二次医療圏を単位として行われており、入退院時には市区町村を越えた患者の移動が見込まれることから、入退院時の入院医療機関と居宅介護支援事業所等との医療介護連携は、市区町村にまたがる連携については、複数市区町村による広域的な対応が必要となる場合がある。
入退院時の医療介護連携に課題がある等の地域の実情によっては、都道府県、市区町村、医療に精通した都道府県医師会等と密接に連携した上で、保健所等を活用しつつ、入退院時の医療機関と居宅介護支援事業所間の共通様式や簡単なルールを作成・運用することにより、介護支援専門員からの入院時情報提供率の向上、退院時の医療機関から介護支援専門員への退院調整の連絡率の向上を目的とした取組が考えられる。
例2)広域的な在宅医療及び在宅医療・介護連携に関する協議の取組
医療・介護資源が十分ではない市区町村においては、当該市区町村が単独で在宅医療・介護の連携の取組を進めることは困難な場合があることから、周辺市区町村や、都道府県、特に医療部局の協力を得ながら、当該市区町村で実現可能な在宅医療・介護の提供体制や、実現に向けた医療・介護サービスの整備目標等について十分に検討し、関係者間で考え方を共有した上で、それを踏まえた在宅医療・介護連携の取組を進めていくことが考えられる。
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三 在宅医療・介護連携推進事業の実施に当たっての留意事項
○ 市区町村は、在宅医療・介護連携推進事業の各取組である(ア)から(ク)までの全ての事業項目を実施すること。
○ ただし、市区町村において、既に在宅医療・介護連携推進事業の(ア)から(ク)のそれぞれについて、同様の取組が実施されている場合は、以下のような場合等に限り、市区町村がその取組を実施していると考えて差し支えない。
<市区町村が在宅医療・介護連携推進事業の取組を実施していると考えられる場合>
(1)市区町村以外の関係団体・関係機関等が、在宅医療・介護連携推進事業と同様の取組を実施している場合
① 当該取組の成果が、特定の関係団体・関係機関等の利益だけでなく、当該市区町村における在宅医療・介護連携の推進に寄与すること。
② 在宅医療・介護連携推進事業と同様の取組を実施する関係団体・関係機関等が、当該取組の目的・内容・方法等について定めた実施要綱の提出、及び定期的な実施状況の報告等を、市区町村に対して行うこと。
(2)市区町村が委託を受けて実施している場合
① 委託を受けて実施している取組が、在宅医療・介護連携推進事業の趣旨に合致していること。
② 市区町村自らが在宅医療・介護連携についての課題と対応を検討するとともに、在宅医療・介護連携推進事業の各取組に係る目的・内容・方法等について定めた実施要綱を明確にすること。
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○ なお、当該取組の継続が困難になった場合は、それに替えて、市区町村が速やかに在宅医療・介護連携推進事業の取組を開始すること。
(在宅医療・介護連携推進事業の実施に係る都道府県との関係について)
○ 都道府県等が、医療介護総合確保基金等を活用して、在宅医療と介護連携に関する取組を実施している場合には、在宅医療・介護連携推進事業の取組を開始する前に、当該都道府県等との役割分担を整理しておくことが必要である。
○ その上で、在宅医療・介護連携推進事業の実施に関して、当該市区町村単独で実施可能なことと、当該市区町村単独では十分な実施が困難なことを明確にし、後者に関しては、都道府県と情報共有しつつ、実施に向けた必要な支援について、都道府県の協力を得ることが重要である。
○ また、在宅医療・介護連携推進事業の実施に当たっては、郡市区医師会等の医療に係る専門的な知識を有する団体のみならず、都道府県、保健所、医療機関、介護事業所等と協力体制を構築しておくことが望ましい。
四 都道府県の役割について
○ 地域における在宅医療と介護の連携を推進するためには、市区町村の積極的な取組が不可欠であるが、これまで医療提供体制の確保等に係る施策は、保健所の参画等も含め、都道府県が中心となって二次医療圏や三次医療圏を対象として対応してきたため、政令指定都市等の大都市を除き、一般的に市区町村には医療施策に係る取組の実績が少なく、在宅医療と介護の連携に係る取組についてのノウハウの蓄積は、市区町村の実情により様々である。
○ このようなことから、都道府県は、市区町村が本事業に対して積極的に取り組むことができるよう、各市区町村の取組について、事前の準備状況も含めて進捗状況等を把握し、その状況を共有するとともに、各市区町村の実情に応じて、以下に例示する市町村支援を積極的に検討することが重要である。
○ また、本事業の(ア)から(ク)のそれぞれと同様の取組が、都道府県事業として既に実施されている場合は、既存の取組と市区町村が本事業として新たに取り組む内容とを整理するとともに、双方の取組の調整を行うことにより、市区町村が、本事業を効果的・効率的に実施できるよう支援することが重要である。
○ なお、都道府県は各市区町村の取組を支援するとともに、進捗状況を併せて把握し、必要に応じて支援内容を見直すことも重要である。
〈在宅医療・介護連携推進事業に関する都道府県の市区町村に対する支援〉
○ 市区町村に対する支援について、①「各事業項目に関する市区町村支援の取組例」、②「広域的に実施する市区町村支援の取組例」として具体的な取組を例示する。
①「各事業項目に関する市区町村支援の取組例」
(1)在宅医療・介護連携に係るデータの提供及び分析に対する市区町村支援
((ア)・(イ)の事業項目に対する支援)
市区町村の在宅医療・介護連携における現状把握及び課題分析に対する支援として、市区町村で収集が困難な在宅医療等に関する情報の提供や分析の支援を行う。
【取組内容】
・在宅医療・介護資源や診療報酬・介護報酬のデータの提供
在宅医療・介護連携推進事業を効果的に展開するためには、地域の課題を踏まえ、課題に応じた対応策を実施することが必要であり、地域の現状把握、課題分析に際して、地域の在宅医療・介護に関するデータは極めて重要である。
しかし、市区町村においては、介護事業者等の介護に関するデータは比較的入手しやすいが、医療機関や診療報酬等の医療に関するデータについては入手が難しい。このため、都道府県においては、在宅医療を担う医療機関に関する情報や在宅医療・介護に関する診療報酬・介護報酬の算定状況、死亡者数・死亡場所等の人口動態に関する情報等、地域の在宅医療・介護に関するデータを集約し提供することが望ましい。また、可能なデータについては、市区町村別に整理し提供することが重要である。
・地域の課題分析に向けたデータの活用方法に対する指導・助言
在宅医療・介護に関するデータの提供に加えて、保健所の活用や大学等と連携しながら、提供したデータの活用及び分析方法に関する市区町村担当職員等を対象とした説明会や研修の実施、また必要に応じて個別の市区町村に対する支援等、地域の実情に応じた支援を実施することが望ましい。
(2)切れ目のない在宅医療・在宅介護の提供体制の構築推進に対する支援
((ウ)の事業項目に対する支援)
在宅医療・介護連携推進事業の(ウ)の取組である切れ目のない在宅医療・在宅介護の提供体制整備を図るため、地域の実情に応じて、都道府県が都道府県医師会と密接な連携をとった上で広域的に体制整備に取り組むなど、市区町村や郡市区医師会に対する支援を行う。
【取組内容】
・広域的な在宅医療の体制整備の取組による支援
切れ目のない在宅医療・在宅介護の提供体制整備を図るためには、地域の病院や訪問看護ステーション等の医療機関や介護事業所が連携し、休日夜間や容態急変時の対応を含めた体制整備を図ることが重要である。
地域により、かかりつけ医と在宅療養支援診療所及び在宅療養支援病院の連携体制の構築や、(ウ)の取組の事業例として示している在宅医療を担う医師によるグループ制や後方病床確保等の取組が必要と考えられるが、このような在宅医療の体制整備に対する取組については、郡市区医師会単位など広域的に実施した方が効率的な場合がある。このような地域の取組については、都道府県が都道府県医師会と密接に連携しつつ、郡市区医師会や市区町村に対する支援を行うことが重要である。
・切れ目のない在宅医療・在宅介護の提供体制整備に関する情報提供
休日夜間や容態急変時の対応を含めた多職種連携チームの構築例等、効果的な取組事例の収集及び情報提供を行う。
(3)在宅医療・介護連携に関する相談窓口に対する支援
((オ)の事業項目に対する支援)
都道府県単位で実施した方が効果的、効率的な医療介護連携の取組については、市区町村との役割分担を確認の上、都道府県が関係団体と連携しながら実施する。
【取組内容】
・広域的な相談窓口の設置等への支援
「(オ)在宅医療・介護連携に関する相談支援」において、複数市区町村が共同して郡市区医師会や医療機関に広域的な相談窓口を設置する場合、関係市区町村と郡市区医師会や医療機関との調整等、都道府県が設置に向けた支援を行うことが重要である。
また、相談窓口において、医療と介護のコーディネートを担う人材の育成については、広域で実施した方が効果的、効率的であることから、都道府県が積極的に取り組むことが望ましい。
この他、都道府県医師会や都道府県歯科医師会等に広域的な在宅医療の相談窓口として設置されている在宅医療連携室や在宅歯科医療連携室について、市区町村や介護関係者に周知を行う等連携を促進する取組も重要である。
(4)在宅医療・介護連携に関する関係市区町村連携に対する支援
((ク)の取り組みに対する支援)
市区町村をまたがる入退院時の医療機関と介護事業所との連携の充実を図るため、都道府県が都道府県医師会と密接な連携の上、保健所等を活用しつつ、入退院に関わる医療介護専門職の人材育成や地域の医療介護関係者の協議等の取組により、市区町村支援を行う。
【取組内容】
・市区町村をまたがる入退院時の連携等
地域の実情に応じて、都道府県と都道府県医師会が密接に連携し、保健所等活用しつつ、入退院に関する地域ルールの作成に全県又は複数の市区町村と共同で取り組むことにより、入退院時の医療介護連携を促進する。
地域の郡市区医師会、入院医療機関、居宅介護支援事業所、市区町村等による協議を通じて、地域の入退院連携に必要な共通様式やルールを作成・運用することにより、介護支援専門員からの入院時情報提供率の向上、退院時の医療機関から介護支援専門員への退院調整の連絡率の向上を図る。
・入退院に関わる医療介護専門職の人材育成等
入退院において連携を担う看護師、MSW 等の医療専門職及び在宅介護のサービス調整を担う介護支援専門員を対象に、医療専門職に対しては退院支援や介護との連携に関する研修、介護支援専門員に対しては在宅医療に関する基本的な知識や医療との連携に関する研修を全県又は二次医療圏等を単位として実施する。
その他、地域の実情に応じて、入退院連携のための専門職向けのマニュアル作成や通所リハなど介護事業所との連携を含めた連携パスの普及等の取組による支援も考えられる。
②「広域的に実施する市区町村支援の取組例」
(1)在宅医療・介護連携推進事業の導入及び充実に向けた支援
【取組内容】
・在宅医療・介護連携推進事業に関する技術的支援
在宅医療・介護連携推進事業の効果的な展開について、都道府県内外における先行事例や好事例について整理し、市区町村や委託事業者の事業担当職員を対象とした研修や情報交換の機会を設ける等の支援を行う。
また、必要に応じて、個別の市区町村を対象に事業のノウハウや課題分析について技術的な助言を行う等の市区町村支援を行う。
・複数市区町村との共同実施に向けた関係市区町村や郡市区医師会等との調整
郡市区医師会の管轄地域に比較的小規模な市区町村が多く市区町村単独での実施が困難な事業項目については、必要に応じて、都道府県が保健所等を活用して、共同実施に向けた関係者の調整の支援を行う。
・小規模市区町村における「(カ)医療・介護関係者の研修」や「(キ)地域住民への普及啓発」の共同実施
小規模市区町村等に対する支援として、保健所等を活用しつつ、事業のノウハウの提供や課題分析等について個別に支援を実施する他、単独で実施することが難しい事業項目については、複数市区町村との共同実施に向けた関係市区町村、郡市区医師会、医療機関等との調整を行う。
複数市区町村による共同実施が望ましいが、それも困難な場合については、都道府県と複数市区町村との共同実施による事業展開の検討も必要である。具体的には、「(カ)医療・介護関係者の研修」や「(キ)地域住民への普及啓発」について保健所等を活用しつつ、都道府県と市区町村との役割分担を協議の上、市区町村と共同で広域的に実施する等の支援などが考えられる。
(例えば、テーマの選定は共同で実施、会場の確保や講師の手配等は都道府県が担い、市区町村内の関係者への周知等は市区町村が担うなど)
(2)広域的に実施する医療介護連携の環境整備
都道府県単位で実施した方が効果的、効率的な医療介護連携の取組(人材育成、個別テーマに関する医療介護連携、普及啓発等)については、市区町村との役割分担を確認の上、都道府県が関係団体と連携しながら実施する。
【取組内容】
・個別の医療介護専門職に対する人材育成等
都道府県においては、医療介護連携を担う医療、介護の各専門職の人材育成に取り組むことが重要である。
具体的には、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士・栄養士、歯科衛生士等の医療職、介護支援専門員、介護福祉士、社会福祉士、介護保険施設職員等の介護職ついて、それぞれの職種毎に医療介護連携に必要な詳細かつ個別専門性の高い研修を実施することが望ましい。
また、個別の疾患等に関する医療介護連携の人材育成については、個別テーマに関して専門的な知識や経験等を有する有識者の確保や個別テーマと関わりの深い地域の医師会、歯科医師会等の関係団体の関与が必要となる場合があるため、都道府県が広域的に取り組むことが必要となる場合がある。
例えば、誤嚥性肺炎の発症リスクが高い摂食嚥下障害を有する要介護高齢者に対して、摂食嚥下障害に関わる医師、歯科医師、看護師、管理栄養士、言語聴覚士、歯科衛生士、介護支援専門員等の多職種連携を推進するための人材育成を含めた様々な取組を実施している事例がある。
このような個別の疾患等に特化した専門職に対する研修や連携ツールの作成等の医療介護連携の取組を都道府県が医師会、歯科医師会等の関係団体と連携しながら、保健所等を活用して広域的に実施することが考えられる。
・全県的な普及啓発
地域住民への普及啓発については、例えば、在宅療養や在宅での看取りについての普及啓発に係るパンフレット等を都道府県が統一して作成し、各市区町村がそれを活用して普及啓発するなどの役割を分担することも一つの方法である。