公益社団法人 全国老人保健施設協会 法令・Q&A検索システム  全老健介護保険制度情報サービス

[表示中の法令・QA等]
「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年3月)」の送付について
事務連絡

「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年3月)」の送付について (事務連絡)

発出日:平成31年4月15日
更新日:平成31年4月15日
事  務  連  絡
平成31年4月15日
 
 
都道府県
指定都市
中 核 市
 
介護保険担当課(室)御中
 
 
厚生労働省老健局高齢者支援課
 
 
「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年3月)」の送付について
 
日頃より、介護保険行政の推進にご尽力いただきまして厚く御礼申し上げます。
介護保険施設等における感染症、食中毒の予防やまん延の防止及び発生時の対応については、平成25年3月にとりまとめた「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」を参考に取り組んでいただいているところです。
今般、感染症に関する新しい知見や制度改正等を踏まえ、平成30年度老人保健健康増進等事業「高齢者施設等における感染症対策に関する調査研究事業」(実施主体:株式会社三菱総合研究所)において内容の見直しを行い、「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年3月)」(別添1)を作成しました。
また、高齢者介護施設における感染対策についてご理解いただくための啓発ツールとして、パンフレット(別添2)を作成しましたので併せて送付いたします。
つきましては、管内市町村及び介護保険施設等に対して本マニュアル等を周知徹底していただくとともに、今後は本マニュアル等に従って、感染症、食中毒の予防やまん延の防止に努めていただきますようお願いします。
 
【高齢者介護施設における感染対策マニュアル掲載場所】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index_00003.html
 
【問い合わせ先】
 厚生労働省老健局高齢者支援課 藤原
 電話:03-5253-1111(内線3972)
 メール:fujiwara-satomi@mhlw.go.jp
 
 

 
平成30年度厚生労働省
老人保健事業推進費等補助金
(老人保健健康増進等事業分)
 
別添1





 
高齢者介護施設における
感染対策マニュアル
改訂版








 
2019年3月


 
 
 
目次
 
1.はじめに…………………………………………………………………………1
2.高齢者介護施設と感染対策……………………………………………………2
1)注意すべき主な感染症………………………………………………………2
2)感染対策の基礎知識…………………………………………………………3
(1) 感染成立の3要因………………………………………………………3
(3) 感染経路別予防策………………………………………………………8
3.高齢者介護施設における感染管理体制………………………………………10
1)感染対策委員会の設置………………………………………………………10
(1) 目的と役割………………………………………………………………10
(2) 委員会の構成……………………………………………………………11
(3) 開催頻度…………………………………………………………………12
(4) 活動内容…………………………………………………………………12
(5) 決定事項等の周知………………………………………………………13
(1) 指針・マニュアルを作成する目的……………………………………14
(2) マニュアルの内容………………………………………………………14
(3) マニュアルの実践と遵守………………………………………………16
(4) マニュアルの見直しの必要性…………………………………………16
3)関連情報の共有と活用………………………………………………………18
4)職員研修の実施………………………………………………………………19
(1) 研修の目的と意義………………………………………………………19
(2) 研修を行う時期…………………………………………………………19
(3) 研修のカリキュラム……………………………………………………20
5)施設内の衛生管理……………………………………………………………22
(1) 環境の整備………………………………………………………………22
(2) 施設内の清掃……………………………………………………………23
(3) 嘔吐物、排泄物の処理…………………………………………………27
(4) 血液、体液の処理………………………………………………………29
6)職員の健康管理………………………………………………………………30
(1) 入職時の確認……………………………………………………………30
(2) 日常の健康管理…………………………………………………………30
(3) 定期的な健康診断………………………………………………………30
(4) ワクチンによる予防……………………………………………………31
(5) 職業感染対策……………………………………………………………31
7)高齢者の健康管理……………………………………………………………32
(1) 日常の健康状態の観察と対応…………………………………………32
(2) 健康状態の記録…………………………………………………………33
8)介護・看護ケアと感染対策…………………………………………………37
(1) 職員の手洗い……………………………………………………………37
(2) 入所者の手指の清潔……………………………………………………40
(3) 介護・看護ケアにおける標準予防策…………………………………40
(4) 手袋の着用と交換………………………………………………………41
(5) 食事介助…………………………………………………………………42
(6) 排泄介助(おむつ交換を含む)………………………………………42
(7) 医療処置…………………………………………………………………43
4.感染症発生時の対応……………………………………………………………44
(1) 介護職員等の対応………………………………………………………45
(2) 施設長の対応……………………………………………………………45
(3) 医師の対応………………………………………………………………45
2) 感染拡大の防止 ……………………………………………………………46
(1) 介護職員の対応…………………………………………………………46
(2) 医師および看護職員の対応……………………………………………46
(3) 施設長の対応……………………………………………………………47
3) 行政への報告 ………………………………………………………………48
(1) 施設長の対応……………………………………………………………48
(2) 医師の対応………………………………………………………………48
4) 関係機関との連携等 ………………………………………………………49
5.個別の感染対策…………………………………………………………………50
(3) 疥癬(疥癬虫)…………………………………………………………57
(5) 結核(結核菌)…………………………………………………………60
(6) レジオネラ症(レジオネラ属菌)……………………………………62
(7) 肺炎(肺炎球菌等)……………………………………………………64
(8) 誤嚥性肺炎(口腔内細菌等)…………………………………………65
(9) 薬剤耐性菌感染症(薬剤耐性菌)……………………………………66
付録1:関連する法令・通知………………………………………………………69
付録2:感染症法について…………………………………………………………78
付録3:加湿器の取り扱いについて………………………………………………82
付録4:入所者の健康状態の記録…………………………………………………83
付録5:消毒法について……………………………………………………………86
付録6:感染性廃棄物の処理について……………………………………………91
 
このマニュアルは、「高齢者介護施設における感染対策マニュアル(平成25年3月)を見直し、近年の施設における感染症の動向や新たな知見を踏まえて、平成31(2019)年3月に改訂したものです。
 
 
1.はじめに
 
高齢者介護施設1は、感染症に対する抵抗力が弱い高齢者等が、集団で生活する場です。このため、高齢者介護施設は感染が広がりやすい状況にあることを認識しなければなりません。感染自体を完全になくすことはできないものの、集団生活における感染の被害を最小限にすることが求められます。
このような前提に立って、高齢者介護施設では、感染症を予防する体制を整備し、平常時から対策を実施するとともに、感染症発生時には感染の拡大防止のため、迅速に適切な対応を図ることが必要となります。
 
本マニュアルでは、上記のような特徴を持った高齢者介護施設における「感染対策の基本知識」「感染管理体制の在り方」および「感染症発生時の対応」についてとりまとめました。
本マニュアルは、高齢者介護施設における感染のリスクとその対策に関する基本的な知識や、押さえるべきポイントを示したものです。
 
感染対策を効果的に実施するためには、職員一人一人が自ら考え実践することが重要となります。各施設での実情を踏まえ、独自の指針やマニュアル等を作成する際に参考としてください。
 
【感染対策のために必要なこと】
【施設長(管理者)】
● 高齢者の特性、高齢者介護施設の特性、施設における感染症の特徴の理解
● 感染対策に対する正しい知識(予防、発生時の対応)の習得
● 施設内活動の着実な実施(感染対策委員会の設置、指針とマニュアルの策定、職員等を対象とした研修の実施、設備整備等)
● 関係機関との連携の推進(情報収集、発生時の行政への届出等)
● 職員の労務管理(職員の健康管理、職員が罹患したときに療養に専念できる人的環境の整備等)
 
【施設の職員】
● 高齢者の特性、高齢者介護施設の特性、施設における感染症の特徴の理解
● 感染症に対する基本的な知識(予防、発生時の対応、高齢者が罹患しやすい代表的な感染症についての正しい知識)の習得と日常業務における感染対策の実践
● 自身の健康管理(感染源・媒介者にならないこと等)
 

1 本マニュアルは、主として、介護老人福祉施設、介護老人保健施設での活用を想定して作成していますが、その他の高齢者に関わる社会福祉施設や居住系サービス事業所、通所サービス事業所等においてもご活用いただけます。
 
 
2.高齢者介護施設と感染対策
 
高齢者介護施設は、加齢に伴い感染に対する抵抗力が低下している入所者や、認知機能が低下していることにより感染対策への協力が難しい入所者等が生活しています。
高齢者介護施設は「生活の場」でもあるという点で、問題となる感染症や感染対策のあり方は、急性期医療を担う病院とは異なります。
しかし、感染対策に関する基本事項は同じです。
 
 
1)注意すべき主な感染症
 
高齢者介護施設において、予め対応策を検討しておくべき主な感染症として、以下のものが挙げられます。
 
① 入所者および職員にも感染が起こり、媒介者となりうる感染症
集団感染を起こす可能性がある感染症で、インフルエンザ、感染性胃腸炎(ノロウイルス感染症、腸管出血性大腸菌感染症等)、疥癬、結核等があります。
 
② 健康な人に感染を起こすことは少ないが、感染抵抗性の低下した人に発生する感染症
高齢者介護施設では集団感染の可能性がある感染症で、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)、緑膿菌感染症等の薬剤耐性菌による感染症があります。
 
③ 血液、体液を介して感染する感染症
基本的には、集団感染に発展する可能性が少ない感染症で、肝炎(B型肝炎、C型肝炎)等があります。
 
感染症法については付録2で説明していますので、適宜参照してください。☞ 78ページ
 
 
2)感染対策の基礎知識
 
(1)感染成立の3要因
 
感染は、病原体(感染源)、感染経路および宿主の3つの要因があって成立します。そのため、感染対策の柱として、以下の3つがあげられます。
 
Ⅰ 病原体(感染源)の排除
Ⅱ 感染経路の遮断
Ⅲ 宿主抵抗力の向上
 
具体的には、病原微生物の感染源確認の有無にかかわらず、血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、傷のある皮膚、そして粘膜が感染する危険性があるという考えに基づき、「標準予防策(スタンダード・プリコーション)」や「感染経路別予防策」と呼ばれる基本的な措置を徹底することが重要となります。
 
I. 病原体(感染源)の排除
 
感染症の原因となる微生物(細菌、ウイルス等)を含んでいるものを病原体(感染源)といい、次のものは病原体(感染源)となる可能性があります。
 
① 嘔吐物、排泄物(便・尿等)、創傷皮膚、粘膜等
② 血液、体液、分泌物(喀痰・膿等)
③ 使用した器具・器材(注射針・ガーゼ等)
④ 上記に触れた手指
 
①、②、③は、素手で触らず、必ず手袋を着用して取り扱います。
また、手袋を脱いだ後は、手指消毒が必要です。
 
 
II.感染経路の遮断
 
感染経路には、接触感染、飛沫感染、空気感染、および血液媒介感染等があります。
 
表1 主な感染経路と原因微生物
感染経路
特徴
主な原因微生物
接触感染
(経口感染含む)
●手指・食品・器具を介して伝播する頻度の高い伝播経路である。
ノロウイルス※
腸管出血性大腸菌
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) 等
飛沫感染
●咳、くしゃみ、会話等で、飛沫粒子(5μm以上)により伝播する。
●1m以内に床に落下し、空中を浮遊し続けることはない。
インフルエンザウイルス※
ムンプスウイルス
風しんウイルス 等
空気感染
●咳、くしゃみ等で飛沫核(5μm未満)として伝播し、空中に浮遊し、空気の流れにより飛散する。
結核菌
麻しんウイルス
水痘ウイルス 等
血液媒介感染
●病原体に汚染された血液や体液、分泌物が、針刺し等により体内に入ることにより感染する。
B型肝炎ウイルス
C型肝炎ウイルス 等
※インフルエンザウイルスは、接触感染により感染する場合がある
※ノロウイルス、インフルエンザウイルスは、空気感染の可能性が報告されている
 
高齢者介護施設において感染経路を遮断するためには、
 
病原体を持ち込まないこと
病原体を持ち出さないこと
病原体を拡げないこと    への配慮が必要です。
 
その基本となるのは、標準予防策(スタンダード・プリコーション)と感染経路別予防策です。
職員は、入所者と日常的に長時間接するため、特に注意が必要です。標準予防策(スタンダード・プリコーション)として、手洗いのほか、血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物等を扱うときは、手袋を着用するとともに、これらが飛び散る可能性のある場合に備えて、マスクやエプロン・ガウンの着用についても検討し実践することが必要です。
さらに、日常から健康管理を心がけるとともに、感染症に罹患した場合には休むことができる職場環境づくりも必要です。
 
高齢者介護施設において流行を起こしやすい感染症は、施設内から新規に発生することは非常にまれであり、主に施設外で感染して施設内に持ち込まれています。
職員だけでなく、新規入所者等(高齢者介護施設に併設の短期入所サービス、通所サービス利用者も含む)、面会者、ボランティア、実習生等も、感染症の病原体を施設の外部から持ち込まないように留意することが重要です。
ただし、入所予定者に対して、結核の既往や薬剤耐性菌の保菌等を理由に入所を断ってはいけません。
 
図1 高齢者介護施設における感染対策
図1 高齢者介護施設における感染対策
 
 
III.宿主抵抗力の向上
 
高齢者は免疫が低下している場合があります。宿主の抵抗力を向上させるには、日ごろから十分な栄養と睡眠をとるとともに、ワクチン接種によりあらかじめ免疫を得ることも重要です。
予防接種法においては、高齢者のインフルエンザおよび肺炎球菌感染症が予防接種を受ける必要性の高い疾病として定められています。本人や家族にワクチンの意義や有効性、副反応等も説明のうえ、同意を得た上で、積極的に予防接種の機会を提供します。
特に、インフルエンザについては毎年接種状況を確認し、早めに接種するよう促します。
入所者だけでなく、職員も入職時に予防接種歴や罹患歴を確認し、必要なワクチンは接種しておくようにします。
 
(2)標準予防策(スタンダード・プリコーション)
 
感染対策の基本は、①感染させないこと、②感染しても発症させないこと、すなわち、感染制御であり、適切な予防と治療を行うことが必要です。その基本となるのは、標準予防策(スタンダード・プリコーション)と感染経路別予防策です。
 
スタンダード・プリコーション
(standardprecautions、標準予防策)とは
1985年に米国CDC(国立疾病予防センター)が病院感染対策のガイドラインとして、ユニバーサル・プリコーション(Universalprecautions、一般予防策)を提唱しました。これは、患者の血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜血液は感染する危険性があるため、その接触をコントロールすることを目的としたものでした。その後、1996年に、これを拡大し整理した予防策が、スタンダード・プリコーション(標準予防策)です。「すべての患者の血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜等は、感染する危険性があるものとして取り扱わなければならない」という考え方を基本としています。
 
標準予防策(スタンダード・プリコーション)は、病院の患者だけを対象としたものではなく、感染予防一般に適用すべき方策であり、高齢者介護施設においても取り入れる必要があります。上記のように「血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜等」の取り扱いを対象としたものですが、高齢者介護施設では、特に嘔吐物、排泄物の処理の際に注意が必要になります。
 
標準予防策(スタンダード・プリコーション)の具体的な内容としては、手洗い、手袋の着用をはじめとして、マスク・ゴーグルの使用、エプロン・ガウンの着用と取り扱いや、ケアに使用した器具の洗浄・消毒、環境対策、リネンの消毒等があります。
 
(3)感染経路別予防策
 
感染経路には、①接触感染、②飛沫感染、③空気感染、④血液媒介感染等があります。それぞれに対する予防策を、標準予防策(スタンダード・プリコーション)に追加して行います。
疑われる症状がある場合には、診断される前であっても、すみやかに予防措置をとることが必要です。
 
①接触感染予防策
● 職員は手洗いを励行します。
● ケア時は、手袋を着用します。同じ人のケアでも、便や創部排膿に触れる場合は手袋を交換します。
● 汚染物との接触が予想されるときは、ガウンを着用します。ガウンを脱いだあとは、衣服が環境表面や物品に触れないように注意します。
● 周囲に感染を広げてしまう可能性が高い場合は、原則として個室管理ですが、同病者の集団隔離とする場合もあります。
● 居室には特殊な空調を設置する必要はありません。
 
②飛沫感染予防策
● ケア時に職員はマスクを着用します。
● 疑われる症状のある入所者には、呼吸状態により着用が難しい場合を除き、原則としてマスク着用をしてもらいます。
● 原則として個室管理ですが、同病者の集団隔離とする場合もあります。
● 隔離管理ができないときは、ベッドの間隔を2m以上あける、あるいは、ベッド間をカーテンで仕切る等します。
● 居室に特殊な空調は必要なく、ドアは開けたままでもかまいません。
 
③空気感染予防策
● 入院による治療が必要です。
● 病院に移送するまでの間は、原則として個室管理とします。
● 結核で排菌している患者と接触する際は、職員は高性能マスク(N952等)を着用します。
 
④血液媒介感染予防策
● 入所者が出血、吐血した場合や、褥瘡ケアなど血液に触れるリスクのある処置の場合には、血液が触れないよう手袋やガウンを着用します。
 
 

2 N95マスク:正式名称は、N95微粒子マスク。米国NIOSH(国立労働安全衛生研究所)が定めた規格を満たし、認可された微粒子用のマスク。
 
 
3.高齢者介護施設における感染管理体制(基準省令第27条3
 
1)感染対策委員会の設置
施設内の感染症(食中毒を含む)の発生や発生時の感染拡大を防止するために、感染対策委員会を設置する必要があります。感染対策委員会は、運営委員会等の施設内の他の委員会と独立して設置・運営することが必要です。
ただし、事故防止検討員会は、関係職種や取り扱い事項が類似しているため、感染対策委員会と一体的に設置・運営することは差し支えありません。
 
感染対策は、入所者の安全管理の視点からきわめて重要であり、入所者の安全確保は施設の責務といえます。
 
(1)目的と役割
 
施設における感染管理活動の基本となる組織として、以下のような役割を担っています。
● 施設の課題を集約し、感染対策の方針・計画を定め実践を推進する。
● 決定事項や具体的対策を施設全体に周知するための窓口となる。
● 施設における問題を把握し、問題意識を共有・解決する場となる。
● 感染症が発生した場合、指揮の役割を担う。
 
 
 
※インフルエンザについては、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に基づいて作成された「インフルエンザに関する特定感染症予防指針」に基づき、「施設内感染対策委員会」等を設置し、各施設の特性を踏まえた施設内感染対策の指針を事前に策定しておくことが求められます。各施設で指針を作成する際は、国が策定した「インフルエンザ施設内感染予防の手引き」4を参考にしてください。
 
 
 

3 本マニュアルにおいて、「基準省令」とは「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第39号)のことを指しています。なお、「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」(平成11年厚生省令第40号)にも同じ内容の規定があります。
4 「インフルエンザ施設内感染予防の手引き(平成25年11月改訂)」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/tebiki25.pdf
 
 
(2)委員会の構成
 
委員会は、組織の全体をカバーできるよう、以下のような幅広い職種により構成します。施設の実態に合わせて、メンバーの構成を検討します。
 
表2 委員会のメンバー構成の例
施設長
施設全体の管理責任者
事務長
事務関連、会計関連を担当
医師
医療面・治療面、専門的知識の提供を担当
看護職員
医療面・看護面、専門的知識の提供と同時に生活場面への展開を担当
可能であれば複数名で構成
介護職員
介護場面における専門的知識の提供を担当
各フロアやユニットから1名、デイサービス等の各併設サービスの代表者1名ずつ等
栄養士
栄養管理、抵抗力や基礎体力維持・向上
生活相談員
入所者からの相談対応、入所者への援助
入所者の生活支援全般にわたる専門的知識の提供を担当
 
委員会では、構成メンバーの役割分担を明確にするとともに、専任の感染対策を担当する者(感染対策担当者)を決めておくことが必要です。
感染対策担当者は看護師であることが望ましいです。また、施設外の感染管理等の専門家も委員として積極的に活用することが望ましいです。
 
構成メンバーは、各部門のリーダーである必要はありません。ただし、感染管理の取り組みを現場に共有し、推進する役割を担うことから、各部門の代表者が参加することが望ましいと考えられます。
 
医療面では、医師の参加が望ましいです。また、協力病院や保健所と連携をとって助言を得たり、インフェクションコントロールドクター(ICD5)や感染管理認定看護師(ICN6)等、感染対策に詳しい人材に協力を求めることも重要です。
 
 
 

5 ICD:医師または感染症関連分野のPhDの学位を有する者でICD制度協議会が認定
6 ICN:感染管理認定看護師で日本看護協会が認定
 
 
(3)開催頻度
 
基本的には定期的な開催に加えて、感染症が発生しやすい時期や感染症の疑いのある場合は、必要に応じて随時開催することが必要です。
構成メンバーの負担を考慮して、他の委員会と続けて実施する等、時間をとりやすくなるように工夫します。
 
(4)活動内容
 
感染対策委員会の主な役割としては、「感染症の予防」と「感染症発生時の対応」があります。
 
● 施設内の具体的な感染対策の計画を立てます。
● 施設の指針・マニュアル等を作成・手直しをします。
● 感染対策に関する職員等への研修を企画、実施します。
● 新規入所者の感染症の既往等を把握します。適切なケアプランを検討するとともに、必要な配慮事項(むやみに隔離するのではなく、何が危険かを理解して対応することが重要)等があれば現場関係者等に周知します。
● 入所者・職員等の健康状態の把握に努め、状態に応じた対応・行動等を事前に明確にしておきます。
● 感染症の発生時には、予め作成したルールや職場で定めた連絡系統図に沿って、適切な対応を行うとともに、必要な部署や行政等と情報共有をします。施設内での感染症の終息の判断を行います。
● 各部署での感染対策の実施状況を把握して評価し、改善すべき点等を検討します。
 
【感染対策委員会の活動例】 

感染対策を職員に浸透させるため、委員会のメンバーを2~3名ずつの班に分け、次のように担当テーマを決めて活動している施設もあります。
● 教育・啓発(研修の計画・運営、感染に関する職員の意識調査等)
● マニュアルの見直し(現在の手順書の問題点の検討と見直し)
● 食事に関する衛生管理(厨房、食堂、食事介助における衛生管理)
● 排泄介助の検討(感染管理の観点から望ましい排泄介助手順の検討等)
 
(5)決定事項等の周知
 
委員会での議論の結果や決定事項等は、確実に関係者に周知徹底を図る必要があります。各部門の代表である委員会構成メンバーにより、職制を通じて伝達するほか、緊急性がある場合には、直ちに全職員に伝える必要も発生します。そのため、緊急度や目的に合わせて複数の周知方法を作成しておくことが望ましいです。
 
また、掲示物等は、目立つところ、全員が必ず見るところに貼る等の工夫をします。また、注意を促すだけでなく、具体的な行動を明記すると実際に行動しやすくなります。
 
【決定事項の周知における工夫例】 

感染対策委員会での決定事項を職員全体に周知するために、掲示等は以下のような工夫例があります。
● 入浴に関する留意事項について浴室に掲示をする
● 「排泄介助後は、必ず手洗い」のように具体的な行動を明記する
● 家族や面会者が見えるよう玄関に掲示する
 
2)感染対策のための指針・マニュアルの整備
 
 
(1)指針・マニュアルを作成する目的
 
指針において高齢者介護施設としての理念、考え方や方針を明確に示すとともに、マニュアルによって日常のケア場面での具体的な実施手順を示します。
理念や考え方を示したものを「指針」「ガイドライン」といいます。指針、ガイドラインには次のような役割があります。
● 施設全体の考え方の共通化
 
● 実際の場面での判断や行動に役立つ情報源
 
 
具体的な手順や手引き書は、「マニュアル」「手順書」と呼ばれています。マニュアル、手順書には次のような役割があります。
● 基本的な考え方に基づき、実際の場面で適切に判断・実行するための具体的な方法、手順を明確に示し、共有する
 
各施設において作成する感染対策のためのマニュアルは、科学的根拠に基づいて作成する必要があります。ただし、現場で役に立ち、十分に活用されるマニュアルを作成するためには、医療現場のマニュアルや参考文献等をそのまま持ち込むのではなく、「生活の場」として自施設の実態に合わせた内容とすることが重要です。
入所者や家族は、感染症についての専門的知識を有していない場合が多く、かつ、多様な生活スタイルを有していることを念頭に置いて、個々の人格と尊厳を重視したマニュアルとします。
 
(2)マニュアルの内容
 
施設において、感染対策のためのマニュアルを作成する際には、本書を参考に「基本的な考え方」を示した上で、「感染管理体制」、「平常時の対策」および「感染発生時の対応」等の体制や手順を規定します。
 
<マニュアルに記載される内容の例>
感染管理体制
● 施設の感染管理に対する基本理念
● 感染対策委員会の設置
● 感染対策のための指針・マニュアルの整備
● 職員研修の実施
● 職員の健康管理等
平常時の対策
● 施設内の衛生管理
・環境の整備
・施設内の清掃
・嘔吐物、排泄物の処理
・血液、体液の処理
● 入所者の健康管理
・健康状態の観察と対応
・健康状態の記録
● 看護・介護ケアと感染対策
・手洗い
・ケアにおける標準予防策
・食事介助
・排泄介助(おむつ交換等)
・医療措置
・異常の早期発見のための日常観察項目
感染症発生時の対応
● 感染症の発生状況の把握
● 感染拡大の防止
● 行政への報告
● 関係機関との連携等
 
【マニュアル作成における工夫例】 

読みやすく、わかりやすく、使いやすいマニュアルとするためには、以下のような工夫例があります。
● いざというときにどこを見ればよいか一目でわかるように、どこに何が書いてあるか、カテゴリ別にインデックスタブを貼付しています。
● 全体の大きな流れを把握できる「全体フロー」と、個別場面での細な「対応手順」等、階層的に作成するとわかりやすくなります。
● 一般論、抽象論ではなく、「いつ・どんな場合に」「誰が」「何を」「どうするか」等を明記すると、具体的に「動ける」ようになります。
 
 
(3)マニュアルの実践と遵守
 
作成したマニュアルは、日常の業務の中で、遵守、徹底されなければ意味がありません。そのためには、次の点に配慮します。
 
● 職員全員がマニュアルの内容を確実に理解すること。業務を委託している場合は、委託先の従業員にも内容を周知すること。
 
● そのためには、職員(委託先の従業員も含む)を対象とした定期的講習会や研修を開催すること等により、周知徹底すること。
 
● 関係各所の職員全員に提示されていること。
 
● 日常業務の際、必要な時に参照できるように、いつも手に取りやすい場所に置くこと。
 
● 記載内容は、読みやすく、わかりやすく工夫し、現場で使いやすくすること。
 
● 実践をイメージした訓練の実施や会議等を通して、記載内容が現実に実践できることであるかを確認する。
 
● 遵守状況を定期的に確認(自己確認、相互確認)すること。
 
平常時から、感染症発生時の関係者の連絡網を整備するとともに、関係者が参加して発生を想定した訓練を行い、一連の手順を確認しておきます。
例えば、介護職員による異常の発見から看護職員、医師への報告、施設長への報告、さらに施設長から行政への報告、保健所への連絡等の「報告・連絡系統」を確認するとともに、施設長や医師、保健所等の指示に基づく現場での対応方法についても、現場で訓練を行いながら確認することも必要です。
 
 
(4)マニュアルの見直しの必要性
 
マニュアルに記載された内容が「絵に描いた餅」にならないようにするためには施設や入所者の実態に合っているか内容を確認し、確実に実践されることが重要です。
 
● 遵守されにくい箇所については、施設や入所者の実態にあっているか、実行可能な内容となっているか等を確認する。
 
● 実施状況に照らし合わせて、実態にあわないところは改定する。
 
● いつでも、誰でも内容の見直しを提案できる仕組みをつくる。
 
【マニュアルの見直しにおける工夫例】 

● 常に具体的な見直しが行えるよう、例えば、マニュアルのページの中に気づいたことを記入できる欄を設けておき、定期的に回収して感染対策委員会で検討する、といった工夫例があります。
 
 
3)関連情報の共有と活用
 
感染対策において、感染症の発生に備えて、地域の感染症発生動向を把握することも重要です。施設長をはじめ、職員や特に感染対策担当者等も日頃から関連情報を定期的に収集し、リスクを予測しておきます。
 
【感染症の発生に関する情報の収集】
 
感染対策においては、国や自治体等が公表する感染症発生動向等の情報も参考になります。
 
● 感染症全般
・厚生労働省(感染症情報):
 
・国立感染症研究所:
 
● 感染症発生動向
 
・厚生労働省「感染症発生動向調査について」 :
 
・国立感染症研究所「感染症発生動向調査週報(IDWR)」:
 
● 感染症に関するQ&A
 
・インフルエンザウイルス
 
・ノロウイルス感染症(ノロウイルス)
 
・腸管出血性大腸菌感染症
 
・レジオネラ症
 
都道府県等の地域における流行状況は、都道府県等のホームページや衛生担当部局、保健所等で確認します。また、地域の医療機関と連携し、個別の医療機関内での感染症の発生状況を把握することも重要です。
 
 
 
4)職員研修の実施
 
(1)研修の目的と意義
 
感染症の予防や感染拡大を防止するとともに、感染症罹患者に対する差別や偏見を防止する観点から、職員に対して十分な教育・研修を行うことが必要です。職員が、感染症についての正しい知識・予防策を習得する機会がなく、感染のリスクを自覚せずに不適切な行為によって感染を拡げてしまうことは、感染管理上大きな問題となります。すべての職員に感染症予防と代表的な感染症についての正しい知識を普及・啓発するとともに、衛生管理の徹底と衛生的な行動の励行を推進します。
 
また、結核の既往や薬剤耐性菌の保菌等を理由としてサービス提供を拒否することはできません。感染症の既往等がある人が入所する場合には、ケアを提供する職員に対して、一般的な感染症予防に関する知識に加え、該当する感染症についての正しい知識や対応方法を周知することが必要です。
 
委託先の従業員も含め、施設内で勤務するすべての職員が、施設で策定した指針やマニュアルに記載された感染対策の知識を共有することにより、施設が一体となって感染症予防の対策をとることが大切です。
 
 
(2)研修を行う時期
 
職員研修を組織的に浸透させていくためには、指針に基づいた研修プログラムを作成し、年2回以上の定期的な研修を実施します。また、新規採用者に対しては、採用後のできるだけ早い時期に、感染対策の研修を必ず実施します。
定期的な研修に加え、感染症が流行する時期や感染対策委員会の開催時期等を勘案して、必要に応じて随時開催することも望まれます。
 
これらの研修は、一度受講すればよいというものではありません。また、各職員も、これらの研修を一度だけでなく繰り返し受講し、常に最新の知識を習得するとともに、知識の定着を図ります。
 
 
(3)研修のカリキュラム
 
研修のカリキュラムは、施設で策定した感染対策のための指針やマニュアルに基づき、感染対策委員会が検討し、年度の初めに研修計画を立てます。研修の種類には、例えば次のようなものがあります。それぞれの研修の目的や位置づけを明確にし、施設の状況に即した効果的な研修を計画し、実施します。
 
感染管理に関する研修の種類と内容の例
 
対象者
実施時期
内容
形式
講師
新人研修
新規採用者
入職前後
感染症および感染対策の基礎知識
座学形式
実習(手洗い等)
感染管理責任者等
定期研修
全職員
5~6月
食中毒の予防と対策
座学
グループワーク
外部講師を招いてもよい
秋季
インフルエンザの予防と対策
外部研修
希望者
適任者
随時
国や自治体、学会・協会等が主催し、対象職種に求められる最新の知識を伝達等
(いろいろな形式がある)
外部専門家
勉強会
希望者
随時
テーマを設定し、担当者による発表等
事例検討
グループワーク等
感染管理責任者等
OJT*
全職員
通年
日常の業務の中で、具体的なノウハウやスキルを習得
実務
看護職員、リーダーが随時指導
* OJT:OntheJobTraining(具体的な業務を通じて、業務に必要な知識・技術等を計画的・継続的に指導し、修得させる訓練手法)
 
【効果的な研修のための工夫例】 

● 新規採用者の入職が決定した時点で、感染管理に関する研修を実施して基礎知識を習得させるとともに、感染管理の重要性を意識づけています。
● テーマに応じて、適切な外部講師(インフェクションコントロールドクター(ICD)や感染管理認定看護師(ICN)等)を招いて研修を実施しています。
● 勉強会という形で、その時期に問題となっていることや対策について施設独自のテーマを設定し、みんなで議論する場を設けています。実践的な対策を導くことができるほか、意識の向上にもつながります。
● 外部研修に参加したら、その内容を施設に持ち帰って伝達します。単に、受講報告書を書くだけではなく、他の職員に自分なりの視点で、施設にとって重要な部分を中心にわかりやすく発表・伝達する場を設定しています。
● 施設内研修を実施したら、受講者に対するアンケートをしたり、日常のケア場面での実践状況を確認したりすることにより、研修の成果を把握し、次の研修計画に役立てています。
● 感染症の流行時期には、実際の発症を想定したシミュレーションを行い、研修内容の定着をはかります。
 
 
5)施設内の衛生管理
 
(1)環境の整備
 
施設内の環境の清潔を保つことが重要です。整理整頓を心がけ、清掃を行います。日常的には、見た目に清潔な状態を保てるように清掃を行います。消毒薬による消毒よりも目に見える埃や汚れを除去し、居心地の良い、住みやすい環境づくりを優先します。
 
施設内の衛生管理の基本として、手洗い場やうがい場、汚物処理室といった感染対策に必要な施設や設備を入所者や職員が利用しやすい形態で整備することが大切です。
手洗い場では、水道カランの汚染による感染を防ぐため、以下のことが望まれます。
 
● 自動水栓、肘押し式、センサー式、または足踏み式蛇口の設置
● ペーパータオルの設置
→ペーパータオルを清潔(水滴等により汚染しないよう)に取り扱うために壁に取り付ける、等の工夫も重要です。
● ゴミ箱は足踏み式の開閉口にします。
● 手洗い後にドアに触れることを避けるためにも、トイレの出入口はドアのない形態にする等の工夫をします。
 
 
(2)施設内の清掃
 
a.日常的な清掃
各所、原則1日1回以上の湿式清掃し、換気(空気の入れ換え)を行い乾燥させます。必要に応じ床の消毒を行います。使用した雑巾やモップは、こまめに洗浄し、乾燥させます。
汚染がひどい場合や新たな汚染が発生しやすい場合には、清掃回数を増やし、汚染が放置されたままにならないようにします。
清掃の基本はふき取りによる埃の除去です。水で湿らせたモップや布による拭き掃除を行い、その後は乾拭きをして乾燥させます。
 
b.特に丁寧に清掃を行う必要のある場所の清掃
 
共用部分の床やトイレ、浴室等は特に丁寧に清掃を行います。
 
【床】
● 通常時の清掃は湿式清掃を基本とします。消毒薬による清掃は必要ありません。使用したモップ等は、家庭用洗剤で十分に洗浄し、十分な流水で濯いだ後、乾燥させます。
● 床に血液、分泌物、嘔吐物、排泄物等が付着した場合は、手袋を着用し、次亜塩素酸ナトリウム液等7で清拭後、湿式清掃し、乾燥させます。消毒液の用途別の濃度および作り方は、付録5を参照してください。 ☞ 86ページ
 
【トイレ】
● トイレのドアノブ、取手等は、消毒用エタノールで清拭し、消毒を行います。
 
 

7 次亜塩素酸ナトリウム液等:次亜塩素酸ナトリウム液以外にも、消毒効果が同等である次亜塩素酸塩等でも代用可能。
 
 
【浴室】
● 浴槽のお湯の交換、浴室の清掃・消毒等をこまめに行い、衛生管理を徹底します。通常時は、家庭の浴室の清掃と同様に、洗剤により浴槽や床、壁等を清掃します。
● 特に施設内での入浴におけるレジオネラ感染予防対策を講じるためにも、衛生管理を実施し安全、安心な入浴を行います。
● 以下の内容を参考に自主点検表(チェックリスト)を作成し、点検、確認します。
毎日実施する衛生管理
1.脱衣室の清掃
2.浴室内の床、浴槽、腰掛けの清掃
3.浴槽の換水(非循環型は毎日、循環型は1週間に1回以上)
4.残留塩素濃度(基準0.2~0.4㎎/L)の測定
時間を決め残留塩素測定器で測定
結果は記録し3年間保管します。
定期的に実施する衛生管理
1.循環型浴槽は、1週間に1回以上、ろ過器を逆洗し消毒します。
2.自主点検を実施します。(重要)
※業者への委託も可能です。
3.少なくとも年1回以上、浴槽水のレジオネラ属菌等の検査を行います。
4.浴槽、循環ろ過器および循環配管設備等の点検(洗浄、消毒)も1年に1回は行います。
検査結果は3年間保管します。
5.貯湯タンクの点検と洗浄も1年に1回は行います。
 
【浴槽の換水における取り組み例】 

● 循環型の浴槽において、浴槽を多人数の通所者も利用するため、週に1回の換水ではろ過機能が十分でない場合があります。ある施設では、利用状況に応じて1日1回換水する等、こまめな換水をこころがけています。
 
【加湿器】
加湿器は、加湿器内の水が汚染されている場合があり、この場合、汚染水のエアロゾル(目に見えない細かな水滴)を原因とするレジオネラ症が発生する危険性があります。レジオネラ症の予防のため、タンク内の水の継続利用は避け、こまめに水の交換・清掃および乾燥を行います。
加湿器には「気化式(ヒーターレス)」「加熱気化式(ハイブリッド式)」「蒸気式(スチーム)」「超音波式」等の種類がありますが、機器の取扱い説明書を確認のうえ、水の交換や機器・フィルタの清掃をこまめに行うようにします。加湿器の取り扱いについては、付録3を参照してください。☞ 82ページ
 
● 加湿装置の使用開始時および使用終了時には、水抜きおよび清掃を実施します。
毎日実施する衛生管理
● 家庭用加湿器のタンクの水は、毎日完全に換えるとともに、タンク内を清掃します。
定期的に実施する衛生管理
● 建物内の設備に組み込まれた加湿装置(以下、「加湿装置」という)は、使用期間中は1か月に1回以上、装置内の汚れの状況を点検し、必要に応じ清掃等を実施します。少なくとも1年に1回以上、清掃を実施します。
 
 
c.その他の注意事項
 
① 広範囲の拭き掃除へのアルコール製剤の使用や、室内環境でのアルコールや次亜塩素酸ナトリウム液等の噴霧は、職員および入所者の健康被害につながるため、行わないようにします。
② カーテンは、汚れや埃、または嘔吐物、排泄物の汚染が予測される場合は直ちに交換し、感染予防に努めます。
③ 清掃は部屋の奥から入口方向に行います。
④ 清掃ふき取りは一方向で行います。
⑤ 目に見える汚染は素早く確実にふき取ります。
⑥ 拭き掃除の際はモップや拭き布を良く絞ります。清掃後の水分の残量に注意し、場合によっては、拭き掃除後、乾燥した布で水分をふき取ります。
⑦ 清掃に使用するモップは、使用後、家庭用洗浄剤で洗い、流水下できれいに洗浄し、次の使用までに十分に乾かします。
⑧ トイレ、洗面所、汚染場所用と居室用のモップは区別して使用、保管し、汚染度の高いところを最後に清掃するようにします。
⑨ 清掃後は、よく手を洗い、衛生の保持を心がけます。
⑩ 清掃を担当しているボランティアや委託業者にも、上記のことを徹底します。
 
 
(3)嘔吐物、排泄物の処理
 
嘔吐物、排泄物は感染源となります。不適切な処理によって感染を拡大させないために、十分な配慮が必要です。
入所者の嘔吐物、排泄物を処理する際には、手袋やマスク、ビニールエプロン等を着用し、汚染場所およびその周囲を、0.5%の次亜塩素酸ナトリウム液で清拭し、消毒します。処理後は十分な液体石けんと流水による手洗いをします。
 
なお、感染性廃棄物の取り扱いについては、付録6の「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」(平成30年3月)抜粋を参照してください。☞ 91ページ
 
 
a.嘔吐物処理の仕方
 
【注意事項】
● 嘔吐物の処理を行う際は、必ず窓を開け十分な換気を行います。
● 処理を行う職員以外は立ち寄らないようにします。
● 迅速かつ正確な処理方法で対応します。
● 処理用キットを準備しておき、必要時に、迅速に処理できるよう備えます。
 
【処理の手順】
 
①手袋・マスク・使い捨てのエプロンを着用します。
 
②嘔吐物をぬらしたペーパータオルや使い捨ての布で覆います。
 
③使用する消毒液(0.5%)次亜塩素酸ナトリウムを作ります。
消毒液の作り方は、付録5を参照してください。☞ 86ページ
 
④ペーパータオルを外側からおさえて、嘔吐物を中央に集めるようにしてビニール袋に入れます。さらにもう一度、ぬれたペーパータオルで拭きます。
 
※ペーパータオルで覆った後、次亜塩素酸ナトリウム液(0.5%)を上からかけて、嘔吐物を周囲から集めてふき取る方法もあります。
 
⑤消毒液でゆるく絞った使い捨ての布で床を広めに拭きます。これを2回行います。拭いた布はビニール袋に入れます。
 
⑥最後に次亜塩素酸ナトリウム液(0.1~0.5%)で確実にふき取ります。使用したペーパータオルや布はビニール袋に入れます。
 
※処理用キットをいつでも使えるように用意しておく等の対応も望まれます。
 
⑦床を拭き終わったら手袋を新しいものに変えます。その時、使用していた側が内側になるようにはずし、服や身体に触れないように注意しながら、すばやくビニール袋にいれます。
 
※清拭処理後はしばらく窓を開け十分な換気をおこないます。
 
⑧入所者の服に嘔吐物がかかっている場合、服を脱がせ、別のビニール袋に入れて汚物処理室へ運びます。
 
⑨①~⑦の嘔吐物を処理したペーパーや使い捨ての布等は、ビニール袋に入れ密封し汚物処理室へ運び、感染性廃棄物として処理します。
 
⑩⑧の嘔吐物が付着した衣類等は汚物処理室で 熱水消毒(85℃以上の熱湯に10分間つけ込む)を行い、その後は通常の方法で洗濯します。
 
※または、次のような洗濯方法でもかまいません。
・通常の洗濯で塩素系消毒剤を使う
・85℃以上の熱水洗濯
・熱乾燥(スチームアイロン・布団乾燥機の利用等もあります)
 
⑪処理後は十分な液体石けんと流水による手洗いをします。
 
b.処理用キットの用意
いざというときにすぐに使えるよう、各フロアや居室に、必要なものを入れた専用の蓋付き容器を用意しておくと、迅速な対応ができます。
 
【処理用キットの用意等の例】 

● ある施設では、嘔吐物、排泄物を速やかに処理できるよう、以下のような必要物品をひとまとめにしています。
・使い捨て手袋
・次亜塩素酸ナトリウム
・ビニールエプロン  
・ペーパータオル
・マスク
・使い捨て布
・ビニール袋
・その他必要な物品(新聞紙等)
● また、職員一人が処理を行い、別の職員が入所者の対応をする等、役割分担を決めている施設もあります。
 
 
(4)血液、体液の処理
 
職員への感染を防ぐため、入所者の血液等の体液の取り扱いには十分注意します。
 
血液等の汚染物が付着しているところは、手袋を着用し、消毒薬を用いて清拭消毒します。
 
化膿した患部に使ったガーゼ等は、他のごみと別のビニール袋に密封して、直接触れることのないように扱い、感染性廃棄物として分別処理することが必要です。
 
手袋や帽子、ガウン、覆布(ドレープ)等は、可能なかぎり使い捨て製品を使用することが望ましいといえます。使用後は、汚物処理室で専用のビニール袋や感染性廃棄物用容器に密閉し、専用の業者に処理を依頼します。
 
(参考:感染症法に基づく消毒・滅菌の手引きについて【厚生労働省通知(健感発第0130001号) 平成16年1月30日】)
 
 
6)職員の健康管理
 
高齢者介護施設の職員は、施設の外部との接触の機会が多いことから、施設に病原体を持ち込む可能性が高いことを認識する必要があります。
特に、介護職員や看護職員等は、日々の業務において、入所者と密接に接触する機会が多く、入所者間の病原体の媒介者となるおそれが高いことから、健康管理が重要となります。
 
(1)入職時の確認
 
職員の入職時に、感染症(水痘、麻しん、風しん、流行性耳下腺炎、およびB型肝炎)の既往や予防接種の状況、抗体価の状況を確認しておきます。外国人職員については、国によってワクチン定期接種の制度や接種状況が異なることに留意します。予防可能な疾患のワクチンについては接種を勧奨します。
 
(2)日常の健康管理
 
施設の職員が感染症の症状を呈した場合には、施設の実情を踏まえた上で、症状が改善するまで就業停止の検討をする必要があります。感染した状態での就業は、病原体を施設内に持ち込むリスクが極めて高いため、完治するまで休業させることは感染源対策や感染経路の遮断に有効な方法といえます。なお、就業の停止は就業規則との整合をはかるよう留意する必要があります。
 
また、職員の家族が感染症に感染している場合は、職員自身も自己の健康に気を配り、早めに施設長や感染対策担当者等に相談するようにします。
 
(3)定期的な健康診断
 
事業者は、職員に対し、定期の健康診断を行う義務があります(労働安全衛生法第66条第1項)。
すべての職員に、定期的な健康診断を受診するよう強く勧奨します。また、職員は、健康診断を受ける義務があります(労働安全衛生法第66条第5項)。
健康診断を受けない場合、職員は事業者から処分される場合もあります。
健康診断を受診することは、職員自身の健康管理の面だけではなく、入所者の安全面からも必要なことです。
研修等を通して、職員自身が日頃から自分の健康管理に注意を払うよう、啓発をする必要があります(労働安全衛生法第4条)。
 
(4)ワクチンによる予防
 
ワクチンで予防可能な疾患については、職員は可能な限り予防接種を受け、感染症への罹患を予防し、施設内での感染症の媒介者にならないようにすることが重要です。予防接種を受けることができない者には、一般的な健康管理を強化することが求められます。
 
インフルエンザワクチン
毎年、必ず接種します。
B型肝炎ワクチン
採用時に接種します。
麻しんワクチン
風しんワクチン
水痘ワクチン
流行性耳下腺炎ワクチン
これまで罹患したことがなく、予防接種も受けていない場合は、採用時に接種します。
また、感染歴やワクチン接種歴が明確でない場合は、抗体検査を行って免疫の有無を確認しておくことが望まれます。
 
予防接種の実施に当たっては、職員に対して、予防接種の意義、有効性、副反応の可能性等を十分に説明して同意を得た上で、積極的に予防接種の機会を提供します。また、接種を希望する職員に、円滑に接種がなされるように配慮します。
なお、委託職員であっても入所者と接する機会が多い場合は、ワクチンを接種することが望まれます。
 
 
(5)職業感染対策
 
職業感染対策の基本は、標準予防策(スタンダード・プリコーション)の徹底やワクチンの接種ですが、ワクチンのない疾患やワクチンがあっても接種することができない場合もあることから、職員が入所者の血液や体液等に直接触れる事例が発生した場合に備えた職業感染対策も必要です。
 
施設長は、感染症発生時の緊急報告の体制や医師による適切な処置(感染リスクの評価、曝露部位の洗浄、予防薬の投与の必要性の判断、予防薬の投与、経過観察、治療等)を仰ぐ体制を整備しておくことが重要です。
なお、業務で入所者の血液や体液等に触れたことにより、HBV、HCV、HIV等に感染した場合、医学上必要な治療や検査、予防薬等の投与については、労災保険の給付対象となる場合があります。
 
 
7)高齢者の健康管理
 
(1)日常の健康状態の観察と対応
 
高齢者介護施設では、感染そのものをなくすことは大変困難です。そのため、感染症が発生した場合においては、拡大を防止することが重要になります。感染の拡大を防止するためには、早期発見(感染した人の異常に少しでも早く気づくこと)や早期対応(適切かつ迅速な対応)をすることが何よりも大切です。
 
a.入所時の健康状態の把握
入所時点での健康状態を確認することが必要です。入所時の健康状態を把握する場合には、入所時の健康診断を行うほか、サービス担当者会議における情報の共有や入所前の主治医(かかりつけ医)から診断書等を提出してもらう等の方法もあります。また、感染症に関する既往歴や現在の治療内容(経過観察中のものも含む)等についても確認します。
 
注意が必要な疾患としては、疥癬、結核等があります。疥癬の感染が認められる場合には、原則として、入所前に治療を済ませてもらうようにします。結核の場合は、排菌が認められず、適切な治療が継続できる状態になるまで、医療機関で治療をする必要があります。
 
結核の既往や薬剤耐性菌の保菌等を理由に、サービス提供を拒否することはできません。(入院加療が必要であると医師が判断する病状の場合を除きます。)(基準省令第4条の2
また、医学的な理由によりサービス提供を拒否する場合は、適切な病院を紹介する等の適切な措置を速やかに講ずることが求められます。(基準省令第4条の3
なお、入所時の健康状態の把握においては、入所者の基本的人権を尊重して実施することが重要です。
 
b.入所後の健康管理
衛生管理の徹底に加え、日常から入所者の抵抗力を高め、感染予防を進める視点が重要です。尿道カテーテル等のチューブをはずす、おむつをはずす等、入所者の健康状態の維持・向上に寄与する取り組みを行うことが必要です。また、入所者や家族に感染対策への理解を促すことも重要です。
 
健康状態を把握するためには、栄養状態の把握や食事摂取状況、定期的な体重測定、バイタルサイン(体温、脈拍、血圧等)測定等が有効です。高齢者の場合、痰の排出(喀出)能力も低下していることもあります。ほかにも、意識レベルの低下や頻脈(または徐脈)、呼吸数の上昇等で感染症の兆候が見られることもあります。ただし、発熱や炎症反応等も弱く、見た目には軽症にみえても重篤な病態に進行していることもあり、「普段の反応と違う」、「今日は笑顔がみられない」等の日常の違いをいかに早期に把握するかが大切です。
 
感染症の発生の状況を定期的に分析することにより、新たな感染症の発生を発見しやすくなります。「日常的な発生状況」を把握し、「現時点での発生状況」との比較を行いましょう。
 
高齢者は感染に対する抵抗力が弱いことから、早期発見と早期対応が重要です。特に、施設外で感染症等が流行している時期には、症状の兆候が見られた場合、早期に医師の診察を行うことが重要となります。また、インフルエンザのように流行時期が予測可能な感染症については、余裕をもって事前に予防接種を実施することも対策の一つです。
 
さらに、類似施設で発生した過去の事例を分析しておくことも、感染症発生時の対応のために重要です。
 
(2)健康状態の記録
 
異常の兆候をできるだけ早く発見するために、入所者の健康状態を、常に注意深く観察することが必要です。日常的なトイレ誘導やおむつ交換、入浴介助等のケアの際に、身体の様子等から判断できる場合もあります。
 
入所者の健康状態を観察・把握し、以下のような症状が認められた場合は、直ちに看護職員か医師に報告し、症状等を記録します。
 
●意識レベルの低下
●頻脈(または徐脈)  
●呼吸数の上昇
●発熱(体温)
●嘔吐(吐き気)
●下痢
●腹痛
●咳、喀痰の増加
●咽頭痛・鼻水
●皮膚の発疹、発赤、腫脹、熱感
●摂食不良
●頭痛
●顔色、唇の色が悪い
 
記録は、一人ひとりの入所者について作成します。付録4の書式例①を参考にしてください。☞ 83ページ
さらに、施設全体での状況や傾向を把握するためには、書式例②のようなシートを活用するとよいです。定期的に開催される感染対策委員会等で状況把握を行い、日常的に発生しうる割合を超えて、上記のような症状が発生した場合には、集団感染の疑いも考慮に入れ、速やかに対応します。
 
a.感染症を疑うべき症状
 
特に、次のような症状がある場合には、感染症の可能性も考慮に入れて対応する必要があります。これらの症状を把握した介護職員等は、ただちに、看護職員または医師に症状を報告します。
 
① 発熱
① 発熱
●体温については個人差がありますが、おおむね38℃以上の発熱もしくは平熱より1℃以上の体温上昇を発熱ととらえます(普段、体温が低めの人ではこの限りではありません)。
●発熱以外にぐったりしている、意識がはっきりしない、呼吸がおかしいなど全身状態が悪いときや、嘔吐や下痢等の症状が激しいときは特に注意が必要です。
●インフルエンザでは急な高熱が特徴的とされていますが、高齢者においては発熱が顕著でない場合もあります。発熱以外に呼吸器、消化器等の症状がないか確認する必要があります。
●急な発熱は感染症に伴って起こることが多いですが、悪性腫瘍など他の疾患の時にも起こることがあります。
 
② 嘔吐・下痢等の消化器症状
② 嘔吐・下痢等の消化器症状
●1ヶ月以内に抗菌薬の使用歴がある入所者に下痢や腹痛等の症状がみられた場合には、クロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシルによる腸炎も考慮する必要があります。
●冬季に嘔吐や下痢が認められる場合には、ノロウイルス感染症も疑われます。
●嘔吐・下痢以外に発熱、発疹や意識がはっきりしない等の症状がみられるときには特に注意が必要です。
●腹痛を伴い、血液が混じった水様便が繰り返しみられる場合等には腸管出血性大腸菌等の感染症の可能性があり、直ちに病原体の検査が必要です。
●夏場は細菌性の食中毒の多い時期であり、チューブ類や経管栄養剤の管理には特に注意が必要です。
 
③ 咳・喀痰・咽頭痛等の呼吸器症状
③ 咳・喀痰・咽頭痛等の呼吸器症状
●高齢者に多い呼吸器疾患には、医療・介護関連肺炎(NHCAP8)があり、誤嚥性肺炎等を含みます。誤嚥性肺炎の予防には口腔ケア等が有効です。
●高齢者に多い感染性肺炎である肺炎球菌性肺炎の予防には、肺炎球菌ワクチンの定期接種が重要です。ただし、すべての肺炎を防ぐものではありません。
●発熱を伴う上気道炎症状としては、インフルエンザウイルス、RSウイルス9等のウイルスによるものもあります。
●咳は他人への感染源となります。咳等の症状のある人はマスクを着用します。長引く咳の場合には結核等の感染症も忘れてはいけません。
 
 

8 NHCAP:nursingandhealthcareassociatedpneumonia
9 RSウイルス:一般的な風邪の原因となるウイルス。特に冬季にかけて流行する。小児の感染が多いが、高齢者等免疫力が弱くなっている人も罹患する。
 
 
④ 発疹等の皮膚症状
④ 発疹等の皮膚症状
●高齢者における発疹等の皮膚症状には加齢に伴う皮脂欠乏によるものや、アレルギー性のもの等もあり、必ずしも感染症によるものとは限りません。ただし、疥癬が疑われる場合には速やかに皮膚科専門医と連絡を取り合い対応する必要があります。
●肋骨の下側など神経に沿って痛みを伴う発疹がある場合には、帯状疱疹の場合もあります。これは水痘・帯状疱疹ウイルスの過去の感染によるものです。
●難治性の褥瘡や創傷等では、医師との連携が欠かせません。
●皮膚が腫れて赤くなり、熱を持った痛みが生じたり、全身が発熱したりする場合には、蜂窩織炎が疑われます。
 
⑤ その他
上記の症状以外にも、尿路感染症(尿の臭いや混濁等に注意)等についても注意を払います。何かおかしいなと感じたら、躊躇せずに早めに感染症に詳しい看護職員または医師に相談します。
 
b.感染症の疑いと対応の判断
介護職員が入所者の健康状態の異常を発見したら、すぐに看護職員または医師に報告します。
 
看護職員は、施設全体の状況を正確に把握して施設長に報告します。
付録4の書式例のようなシートを利用して、施設全体の感染症の発症状況や経過を管理するとよいです。☞ 83ページ
 
施設長は、「4.感染症発生時の対応」に示した考え方にしたがって、外部への連絡・報告と施設内での対応について適切に判断します。
 
 
8)介護・看護ケアと感染対策
 
(1)職員の手洗い
 
手洗いは感染対策の基本です。正しい方法を身に付け、きちんと手洗いします。
手洗いは「1ケア1手洗い」、「ケア前後の手洗い」が基本です。
手洗いには、「消毒薬による手指消毒」と「液体石けんと流水による手洗い」があります。消毒についての詳細は、付録5を参照してください。
 
通常はエタノール含有消毒薬液による手指消毒(以下、「手指消毒」とします)を行います。これは標準予防策の一環として行います。
目に見える汚れが付いている場合には、液体石けんと流水による手洗いを行います。
介護職員の手指を介した感染は、感染経路として最も気を付けるべき点です。手指が汚染された場合は、これらの手指消毒や液体石けんによる流水手洗いを適切に実施することにより、感染を防止することができます。
 
なお、液体石けんと流水による手洗いの際には、次の点に注意します。
 
● 手を洗うときは、時計や指輪をはずす。
● 爪は短く切っておく。
● まず手を流水で軽く洗う。
● 液体石けんを使用して洗う※。
● 手洗いが雑になりやすい部位は、注意して洗う。
● 石けん成分をよく洗い流す
● 使い捨てのペーパータオルを使用する(共有の布タオルは使用しない)。
● 水道栓は、自動水栓か手首、肘等で簡単に操作できるものが望ましい。
● やむを得ず、水道栓を手で操作する場合は、水道栓は洗った手で止めるのではなく、手を拭いたペーパータオルを用いて止める。
● 手を完全に乾燥させる。
● 日頃からの手のスキンケアを行う(個人のハンドクリームを使用)。
● 手荒れがひどい場合は、皮膚科医等の専門家に相談する。
※液体石けんの継ぎ足し使用はやめます。液体石けんの容器を再利用する場合は、残りの石けん液を廃棄し、容器をブラッシング、流水洗浄し、乾燥させてから新しい石けん液を詰め替えます。
 
正しい手洗いの方法(スクラブ法)を図2に示します。図3に示した手洗いミスが起こりやすい箇所については、特に気をつけます。
 
図2 手洗いの順序
図2 手洗いの順序
(出典:2001辻 明良:病院感染防止マニュアル日本環境感染学会監修)
 
 
図3 手洗いにおける洗い残しの発生しやすい箇所
図3 手洗いにおける洗い残しの発生しやすい箇所
(出典:2001辻 明良:病院感染防止マニュアル日本環境感染学会監修)
 
 
(2)入所者の手指の清潔
 
入所者の間で感染が広がることを防ぐため、食事の前後、排泄行為の後を中心に、できるかぎり日常的な手洗い習慣が継続できるよう支援します。
認知症等により、清潔観念の不足や清潔行為の実施が難しい場合は、下記の例を参考に柔軟に対応します。
 
a.手洗いの介助
入所者の手洗いは、液体石けんと流水による手洗いを行うよう促します。手洗い場まで移動可能な入所者は、できるだけ職員の介助により手洗いを行います。
液体石けんと流水による手洗いができない場合には、ウエットティッシュ(消毒効果のあるもの)等で目に見える汚れをふき取ります。
 
b.共用タオル・おしぼり等の使用について
共用タオルの使用は絶対に避けます。手洗い場の各所にペーパータオルを備え付けます。
高齢者介護施設では、職員や入所者がおしぼりを準備することがありますが、タオルやおしぼりを保温器に入れておくと、細菌が増殖・拡大するおそれがあります。おしぼりを使用する場合は、使い捨てのおしぼり(ウエットティッシュ)を使用することが望ましいです。
 
 
(3)介護・看護ケアにおける標準予防策
 
感染を予防するためには、「1ケア1手洗い」の徹底が必要です。
エタノール含有消毒薬による手指消毒や液体石けんと流水による手洗い(以下、「衛生学的手洗い」とします)を適切に実施することにより、感染を防止することができます。
また、日常のケアにおいて血液、体液、嘔吐物、排泄物等を扱うときは、手袋やマスクの着用が必要になります。また、必要に応じてゴーグル、エプロン、ガウン等を着用します。
このほか、ケアに使用した器具の取り扱いや環境対策、リネンの取り扱い、針刺し防止等について、次のような標準予防策が示されています。
 
● 血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物(便)等に触れるとき
● 傷や創傷皮膚に触れるとき
⇒ 手袋を着用します。
手袋を外したときには手指消毒(または、目に見える汚れが付いている場合は、液体石けんと流水による手洗い)を行います。
 
● 血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物(便)等に触れてしまったとき
⇒ 嘔吐物、排泄物等による汚染が考えられる場合には、液体石けんと流水による手洗いを行います。触れた場所の皮膚に損傷がある場合は、流水で十分に洗い流したうえで、直ちに医師に相談します。
 
● 血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物(便)等が飛び散り、目、鼻、口を汚染するおそれのあるとき
⇒ マスク、必要に応じてゴーグルやフェイスマスクを着用します。
 
● 血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物(便)等で衣服が汚れ、他の入所者に感染させるおそれがあるとき
⇒ 使い捨てエプロン・ガウンを着用します。可能な限り使い捨てのエプロン・ガウンが好ましいです。使用したエプロン・ガウンは、別の入所者のケアをする時に使用してはいけません。
 
● 針刺し防止のために
⇒ 注射針のリキャップはやめ、感染性廃棄物専用容器へ廃棄します。万が一針刺しが起きてしまった場合は、流水で十分に洗い流したうえで、直ちに医師に相談します。
 
(4)手袋の着用と交換
 
血液等の体液や嘔吐物、排泄物等に触れる可能性がある場合に、手袋を着用してケアを行うことは、入所者や職員の安全を守るために必要不可欠なことです。
 
a.基本的な考え方
手袋は、標準予防策(スタンダード・プリコーション)や接触感染予防策を行う上で、最も一般的で効果的な防護用具です。入所者や職員の感染リスクを減少させるために、すべての人の血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物等に触れるときには必ず手袋を着用します。また、触れる可能性がある場合にも、確実に着用します。
 
b.してはいけないこと
次のようなことは、絶対にやめます。
●汚染した手袋を着用したままで他のケアを続けることや別の入所者へケアをすること
●ケアの際に着用した手袋をすぐにはずさずに、施設内のいろいろな場所に触ったり、次のケアを行うときに使用した手袋を再利用すること
●手袋を着用したからという理由で、衛生学的手洗いを省略したり簡略にすませたりすること
 
c.注意事項
●手袋を外したときは、手指消毒(または、目に見える汚れが付いている場合は、液体石けんと流水による手洗い)を行います。
●手袋の素材によっては、手荒れを悪化させたり、アレルギーを起こしたりする場合もあるので、選ぶときには手袋の材質やパウダーの有無等の確認が必要です。
 
(5)食事介助
 
食事介助の前は、介護職員等は必ず衛生学的手洗いを行い、清潔な器具・清潔な食器で提供することが大切です。特に、介護職員が入所者の排泄介助後に食事介助を行う場合は、液体石けんと流水による手洗いの徹底が必要です。介護職員等が食中毒病原体の媒介者とならないよう、十分に注意を払います。
入所者が水分補給の際に使用するコップや吸い飲み(らくのみ)は、飲み終わったら洗剤で洗浄し、清潔にしておきます。
 
(6)排泄介助(おむつ交換を含む)
 
便には病原性のある細菌が混入している可能性を考慮し、介護職員や看護職員等が病原体の媒介者とならないよう、特に、注意が必要です。
 
おむつ交換は、排泄物に直接触れなくても必ず使い捨て手袋とエプロン(またはガウン)を着用して行うことが基本です。また、手袋やエプロンは1ケアごとに取り替えるとともに、手袋を外した際には手指消毒(または、目に見える汚れが付いている場合等は、液体石けんと流水による手洗い)を実施します。
 
おむつ交換車の使用は、感染拡大の危険性が高くなります。個々の入所者の排泄パターンに対応した個別ケアを行うように心がけます。
 
(7)医療処置
 
医療処置は、介護職員や看護職員が日常的に行うケアの中でも、特に感染に気をつけなければならない行為です。医療処置を行う場合は、原則として使い捨て手袋を使用して実施するとともに、ケアを終えるごとに手袋を交換します。
 
チューブ類は、感染のリスクが高いことに留意します。
喀痰吸引の際には、喀痰等の飛沫や接触による感染に注意します。
経管栄養の挿入や、胃ろうからの注入の際には、チューブからの感染に注意します。胃ろうから栄養剤を投与したあとは、チューブ内に栄養剤が残存しないよう十分に洗浄してください。また、チューブを再利用する場合は、洗剤等により洗浄し、完全に乾燥させます。経管栄養剤の管理においては、栄養剤の残りを長時間放置しないよう留意します。
 
膀胱留置カテーテルを使用している場合、尿を廃棄するときには使い捨て手袋を使用してカテーテルや尿パックを取り扱います。また、尿パックの高さに留意し、適切な位置にクリッピングをする等、逆流させないようにすることも必要です。
 
点滴や採血の際には、素手での実施は避け、使い捨て手袋を着用して実施します。また採血後は、注射針のリキャップはせず、そのまま針捨てボックスに入れます。そのため、点滴等の実施前に、針捨てボックスあるいは注射器捨てボックスを準備します。
 
 
4.感染症発生時の対応
 
発生時の対応として、次のことを行います。
 
①「発生状況の把握」
②「感染拡大の防止」
③「医療処置」
④「行政への報告」
⑤「関係機関との連携」
 
発生時の対応については、付録1①の「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」を参照してください。☞ 69ページ
 
図4 感染症発生時の対応フロー
 
図4 感染症発生時の対応フロー
 
 
1) 施設における感染症の発生状況の把握と対応
感染症または食中毒が発生した場合や、それが疑われる状況が生じた場合には、有症者の状況やそれぞれに講じた措置等を記録しておきます。
 
●入所者と職員の健康状態(症状の有無)を、発生した日時や階(あるいはユニット)および居室ごとにまとめます。
●受診状況と診断名、検査、治療の内容を記録しておきます。
 
 
(1)介護職員等の対応
 
職員が入所者の健康管理上、感染症や食中毒を疑ったときは、介護職員等は、看護職員と連携して施設で策定した感染対策マニュアルに従い、速やかに感染対策担当者に状況を共有するとともに、感染対策担当者は施設長に情報共有します。このような事態が発生した場合に、速やかに情報共有できるよう、事前に体制を整えておくとともに、日頃から訓練をしておく必要があります。
 
(2)施設長の対応
 
施設長は、医師に対して診断に必要な検査や治療等を実施するよう依頼するとともに、医師や感染対策担当者から受けた報告を総合的に判断し、感染拡大の防止に必要な対策や必要な情報の報告等、職員に必要な指示を行います。感染症や食中毒の発生状況が一定の条件を満たした場合は、施設長は行政に報告するとともに(→「4.3)行政への報告」)、関係機関と連携をとります(→「4.4)関係機関との連携」)。医師への報告用紙書式については、付録4③の書式の例も参考にしてください。☞ 85ページ
 
(3)医師の対応
 
医師は、感染拡大の防止のための指示や施設長への状況報告と同時に、感染者の重篤化を防ぐために必要な医療処置を行います。施設内での対応が困難な場合は、協力病院をはじめとする地域の医療機関等へ感染者を移送します。
 
 
2) 感染拡大の防止
 
(1)介護職員の対応
 
感染症もしくは食中毒が発生したとき、または発生が疑われる状況が生じたときは、感染拡大を防止するため速やかに対応します。
 
● 発生時は、衛生学的手洗いや嘔吐物、排泄物等の適切な処理を徹底します。職員を媒介して、感染を拡大させることのないよう、特に注意を払います。
● 入所者にも手洗いをするよう促します。
● 自分自身の健康管理を徹底します。健康状態によっては休業することも検討します。
● 医師や看護職員の指示を仰ぎ、必要に応じて施設内の消毒を行います。
● 医師等の指示により、必要に応じて、感染した入所者の隔離等を行います。
● 詳細な対策については、「5.個別の感染対策」の関連項目を参照してください。
 
(2)医師および看護職員の対応
 
感染症もしくは食中毒が発生したときや、それが疑われる状況が生じたときは、医師は、診察の結果、感染症や食中毒の特徴に応じた感染拡大防止策を看護職員等に指示します。指示を受けた看護職員は症状に応じたケアを実施するとともに、介護職員等に対し、ケアや消毒等の衛生管理について指示をします。
 
感染症の病原体で汚染された機械や器具、環境の消毒は、病原体の特徴に応じて適切かつ迅速に行い、汚染拡散を防止します。消毒薬は、対象病原体を考慮した適切な消毒薬を選択する必要があります。
医師は、感染症のまん延防止の観点から、来訪者に対して入所者との接触を制限する必要性を判断し、制限する必要があると判断した場合は、施設長に状況を報告します。
 
施設長の指示により、来訪者に対して入所者との接触を制限する場合は、看護職員等は介護職員や来訪者等に状況を説明するとともに、必要に応じて、介護職員や入所者等に対して手洗いの励行についての衛生教育を行います。
 
(3)施設長の対応
 
施設長は、医師の診断結果や看護職員・介護職員からの報告による情報等により、施設全体の感染症発生状況を把握します。協力病院や保健所に相談し、技術的な応援を頼んだり、助言をもらいます。
また、職員等に対し、自己の健康管理を徹底するよう指示するとともに、職員や来訪者等の健康状態によっては、入所者との接触を制限する等、必要な指示をします。
 
 
3) 行政への報告
 
(1)施設長の対応
 
施設長は、次のような場合、迅速に、市町村等の高齢者施設主管部局に報告します。あわせて、保健所にも報告し対応の指示を求めます。
 
(付録1「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」第4項 参照 ☞ 69ページ
 
a.報告が必要な場合
ア 同一の感染症や食中毒による、またはそれらが疑われる死亡者や重篤患者が1週間以内に2名以上発生した場合
イ 同一の感染症や食中毒の患者、またはそれらが疑われる者が10名以上又は全利用者の半数以上発生した場合
ウ 上記以外の場合であっても、通常の発生動向を上回る感染症等の発生が疑われ、特に施設長が報告を必要と認めた場合
 
b.報告する内容
●感染症又は食中毒が疑われる入所者の人数
●感染症又は食中毒が疑われる症状
●上記の入所者への対応や施設における対応状況 等
 
c.報告の書式
市町村等の高齢者施設主管部局への報告については、各市町村指定の報告書用紙書式にしたがってください。
 
 
(2)医師の対応
 
医師は、感染症法又は食品衛生法の届出基準に該当する患者又はその疑いのある者を診断した場合には、これらの法律に基づき保健所等への届出を行う必要があります。
これらの感染症を診断した場合は、市町村等の高齢者施設主管部局への報告とは別に、保健所等へ届出を行う必要があります。
(付録1「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」第9項 参照 ☞ 69ページ
 
 
4) 関係機関との連携等
 
状況に応じて、次のような関係機関に報告し、対応を相談し、指示を仰ぐ等、緊密に連携をとります。
日頃から、保健所や協力医療機関、都道府県担当局等と連携体制を構築しておくことが重要です。
 
● 医師(嘱託医)、協力医療機関の医師
● 保健所
● 地域の中核病院のインフェクションコントロールドクター(ICD)
● 感染管理認定看護師(ICN)
 
そのほか、次のような情報提供も重要です。
● 職員への周知
● 家族への情報提供
 
【関係機関との連携における工夫例】 

● 地域の医療機関に協力を依頼する際には、施設長が窓口となって行うと協力関係が築きやすい場合もあります。
● 医師との連携は、電話や対面での相談に加えて、メールで感染症の発生状況について情報共有を行うことも有用です。
 
 
5.個別の感染対策
 
この章では、高齢者介護施設において特に集団感染が発生するおそれの高い感染症について個別に対策を記載します。
 
1)個別の感染症の特徴・感染予防・発生時の対応
 
(1)インフルエンザ(インフルエンザウイルス)
 
ア.特徴
日本では主に冬季に流行します。インフルエンザは、急に38℃から40℃の高熱が出るのが特徴で、鼻汁、咽頭痛、咳等の呼吸器症状のほか、頭痛、腰痛、筋肉痛、全身倦怠感等の全身症状も強く、これらの激しい症状は5日ほど続きます。気管支炎や肺炎を併発しやすく、重症化すると心不全を起こすこともあるため、体力のない高齢者にとっては命にかかわることもあります。
感染経路は、咳・くしゃみ等による飛沫感染が主ですが、汚染した手を介して鼻粘膜への接触で感染する場合もあります。潜伏期は、1~3日(時に7日まで)、感染者が他に伝播させる時期は、発症の前日から症状が消失して2日後までとされています。
インフルエンザについては、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」に基づいて作成された「インフルエンザに関する特定感染症予防指針」において、「インフルエンザ施設内感染予防の手引き」の策定が定められており、高齢者等の入所施設におけるインフルエンザ感染防止に対する対策がまとめられています。
 
イ.平常時の対応・予防
インフルエンザウイルスは感染力が非常に強いことから、できるだけウイルスが施設内に持ち込まれないようにすることが施設内感染防止の基本とされています。施設内にインフルエンザが発生した場合には、感染の拡大を可能な限り阻止し、被害を最小限に抑えることが、施設内感染防止対策の目的となります。
このためには、まず、施設ごとに常設の感染対策委員会を設置し、施設内感染を想定した十分な検討を行い、
● 日常的に行うべき対策(予防対策)
● 実際に発生した際の対策(行動計画)
について、各々の施設入所者の特性、施設の特性に応じた対策および手引きを策定しておくことが重要です。
予防策としては、入所者と職員にワクチン接種を行うことが有効です10。入所者に対しては、インフルエンザが流行するシーズン前に、予防接種の必要性、有効性、副反応について十分説明します。同意が得られ接種を希望する入所者には、安全に接種が受けられるよう配慮します。
また、咳をしている人には、サージカルマスクをしてもらう方法が効果的です。入所者や面会者で咳をしている人にはマスクを着用してもらいます。
さらに、日頃からこまめに換気を行うことも重要です。寒冷等に配慮しながら行います。
 
インフルエンザの対策については、国や自治体の公表する情報や発生動向等の情報収集をこころがけることも重要です。
 
【インフルエンザに関する公表情報】
 
● インフルエンザ発生動向
・厚生労働省 インフルエンザに関する報道発表資料:
・国立感染症研究所ホームページ「インフルエンザ」
● インフルエンザ予防対策
・厚生労働省 季節性インフルエンザ
「平成30年度 今冬のインフルエンザ総合対策について」
「啓発ツール」
「インフルエンザQ&A」
 
 
 
 

10 65歳以上の健常の高齢者については、約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったと報告されています。(「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊)」(https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=199900458A)。このデータを考慮して、平成13年インフルエンザは、予防接種法B類疾病とされ、65歳以上の高齢者及び60~65歳で一定の基礎疾患を有する人は定期接種の対象となりました。
 
 
ウ.疑うべき症状と判断のポイント
●急な発熱(38~40℃)と全身症状(頭痛、腰痛、筋肉痛、全身倦怠感等)(ただし、高齢者では発熱が顕著でない場合があるので注意が必要です。)
●これらの症状と同時に、あるいはやや遅れて、咽頭痛、鼻汁、鼻閉、咳、痰等の気道炎症状
●腹痛、嘔吐、下痢等の消化器症状を伴う場合もあります。
 
エ.感染を疑ったら~対応の方針
施設内の感染対策委員会において策定された、行動計画(実際に発生した際の具体的な対策)に従って、対応します。
●インフルエンザを疑う症状があった場合は、早めに医師の診察を受けます。
●インフルエンザを疑う場合(および診断された場合)には、基本的には個室対応とします。
●複数の入所者にインフルエンザの疑いがあり、個室が足りない場合には、同じ症状の人を同室とします。
●インフルエンザの疑いのある入所者(および診断された入所者)にケアや処置をする場合には、職員はサージカルマスクを着用します。
●罹患した入所者が部屋を出る場合は、マスクをします。
●職員が感染した場合の休業期間を施設で決めておきます。現在、学校保健安全法(昭和33年法律第56号)では、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています。
●感染者と同室にいた入所者等インフルエンザウイルスに曝露された可能性が高い人に対して、抗インフルエンザ薬の予防内服が行われる場合があります。しかし、感染後に重症化しやすい方やアウトブレイク等の特殊な場合を除くと、実際に適応となる場合はまれであり、医師と相談して慎重に判断する必要があります。
 
 
(2)ノロウイルス感染症・感染性胃腸炎(ノロウイルス)
 
ア.特徴
ノロウイルスは、冬季の感染性胃腸炎の主要な原因となるウイルスです。感染力が強く、少量のウイルス(100個以下)でも感染し、集団感染を起こすことがあります。ノロウイルスは汚染された貝類(カキ等の二枚貝)や調理済み食品等を、生あるいは十分加熱調理しないで食べた場合に感染します(なお、ノロウイルスは調理の過程において85℃以上で1分間以上の加熱を行えば感染性はなくなるとされています。)。ただし現在では、二枚貝よりも感染者を介したヒト→ヒト感染の例が多く報告されています。
潜伏期は1~2日、主症状は、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢で、通常は1~2日続いた後、治癒します。
高齢者介護施設では、感染した入所者の便や嘔吐物に触れた手指で取り扱う食品等を介して、二次感染を起こす場合が多くなっています。特に、おむつや嘔吐物の処理には注意が必要です。また、施設内で手に触れる場所(手すり、ドアノブ、水道の蛇口、テーブル、取っ手等)は、ノロウイルスに汚染されている可能性があり、二次感染を起こすことがあります。また、接触感染のみでなく、嘔吐物の処理のときや介護中に嘔吐したとき飛沫により感染することがあります。
 
イ.平常時の対応
感染防止には、衛生学的手洗いを正しく行うことが大切です。入所者の介助後・配膳前・食事介助時には必ず衛生学的手洗いを行います。
しかし、ノロウイルスはアルコールによる消毒効果が弱いため、エタノール含有擦式消毒薬による手指消毒は有効ではありません。
従ってノロウイルス対策においては、手指消毒はすぐに液体石けんと流水による手洗いが出来ないような場合等の手洗いの補助として用いてください。
なお、食品の取り扱いにおいては、付録1②の「大量調理施設衛生管理マニュアル」(平成9年3月24日衛食第85号別添)(最終改正:平成29年6月16日付け生食発0616第1号)、「中小規模調理施設における衛生管理の徹底について」(平成9年6月30日衛食第201号厚生省生活衛生局食品保健課長通知)を参照してください。☞ 71ページ
 
ウ.疑うべき症状と判断のポイント
初期症状は嘔吐と下痢です。とくに、次のような症状があった場合には、必ず看護職員に報告します。
● 噴射するような激しい嘔吐
● 下痢のなかでも「水様便」
 
エ.感染を疑ったら~対応の方針
<入所者への対応>
● 可能な限り個室に移します。個室がない場合は同じ症状の入所者を一つの部屋へ集めます。居室隔離が難しい場合はベッド間をカーテンで仕切る等の対応を行います。
● 嘔吐症状がでたら、本人に予想される経過を説明し、食事については様子をみながら判断します。
● 下痢や嘔吐症状が続くと、脱水を起こしやすくなるため、水分補給が必要です。口からの水分の補給がとれない場合は、補液(点滴)が必要となりますので、早めに医師の診察を受けます。
● 突然嘔吐した人の近くにいた、嘔吐物に触れた可能性のある人は、潜伏期48時間を考慮して様子を見ます。
● 連続して2食以上を通常量食べることができ、食後4時間嘔吐がなければ、嘔吐症状は治まったと判断します。
● 高齢者は、嘔吐の際に嘔吐物を気道に詰まらせることがあるため、窒息しないよう気道確保を行います。また、速やかに吸引できるよう、日頃から体制を整えておきます。
 
※食事中の嘔吐により食器が嘔吐物で汚れた場合には、厨房にウイルスを持ちこまないため、蓋付き容器に次亜塩素酸ナトリウム液(0.05%~0.1%)を作り、そこに食器をいれ、次の下膳のときに食器を取り出して厨房へ下げます。
 
<高齢者介護施設の体制・連絡等>
● 感染ルートを確認します。
一緒に食事を摂取した人をよく観察します。
感染者や施設外部者との接触があったかどうかも確認します。
また、施設内で他に発症者がいないかどうかを調べます。
 
● 24時間のうちに、水様便や嘔吐症状の発症者が2人以上になった場合には以下の対応を行います。
→ 看護職員が記録するとともに、責任者に口頭で伝えます。
→ 責任者は、施設全体に緊急体制を敷きます。
→ 看護職員はその後の発症者数、症状継続者数の現況を、情報共有できる場を設けて、職員全体が経過を把握できるようにします。(下痢、嘔気等の症状のある入所者を報告する用紙を使用するとよい。)
● 面会は必要最小限にします。面会者にも情報を示し、理解を求めます。
● 責任者は、感染対策が確実に実施されているかを観察して確認します。消毒薬や嘔吐物処理等に必要な用具が足りているかの確認も必要です。
 
オ.発生時の対応
<嘔吐物、排泄物の処理>
● 嘔吐物の処理の手順を徹底します。
● マスク、使い捨てガウン、使い捨て手袋を着用します。
※ノロウイルスは飛沫感染の可能性も指摘されているので、マスクもします。
● 嘔吐があった場合には、周囲2メートルくらいは汚染していると考えて、まず濡れたペーパータオルや布等を嘔吐物にかぶせて拡散を防ぐことが重要です。
● ペーパータオルや布等で、外側から内側に向けて面を覆うように静かに拭き取ります。
● 最後に次亜塩素酸ナトリウム液(0.1~0.5%)で確実にふき取ります。使用したペーパータオルや布はビニール袋に入れます。
※嘔吐物処理用品を入れた処理用キットをいつでも使えるように用意しておきます。
● おむつははずしたら、すぐにビニール袋に入れ(2重にするとなお安全です)感染性廃棄物として処理します。
● トイレ使用の場合も換気を十分にし、便座や周囲の環境も十分に消毒します。
● 使用した洗面所等はよく洗い、消毒します。
● 処理後は手袋、エプロン、マスクをはずして液体石けんと流水で入念に手を洗います。
● 次亜塩素酸ナトリウム液を使用した後は窓をあけて、換気をします。
 
<洗濯>
● シーツ等は周囲を汚染しないように丸めてはずして、ビニール袋に入れます。
● 衣類に便や嘔吐物が付着している場合は、付着しているものを軽く洗い流します。
● 次に次亜塩素酸ナトリウム液(0.05%~0.1%)につけます(10分程度)。あるいは、85℃以上で1分間以上熱湯消毒します。
● 洗濯機で洗濯して乾燥させます。
● 布団に付着した場合の処理方法については、厚生労働省ホームページに掲載されている「ノロウイルスに関するQ&A11」のQ20を参照してください。
 
<食事>
● 入所者に対しては、水分・栄養補給を行い体力が消耗しないようにします。
● 1日を通じた水分摂取を心がけます。
 
<入浴>
● 症状が落ち着き、入浴できる状態であれば、1週間ぐらいは最後に入浴するようにします。症状がおさまってからも最大4週間程度ウイルスが便から排出されると言われています。
● 入浴後の洗い場やタオル等の洗浄に加え、しばらくは消毒も実施します。
 
カ.解除の判断
● 嘔吐・下痢・腹痛・発熱等の症状がおさまってからも最大4週間程度は排便内に多くのウイルスが見つかることがあります。
● 施設全体としては新しい患者が1週間出なければ、終息とみなしても構いません。感染対策委員会で最終的な判断をします。
● 職員の感染者は症状が消失しても、一定期間は就業制限したり、食品を扱う部署から外れたり、トイレの後の液体石けんと流水による手洗いを入念にする等の対策をします(症状消失後も便にウイルスが残っているため)。
 
 
 

11 「ノロウイルスに関するQ&A」(作成:平成16年2月4日)(最終改定:平成30年5月31日)(http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html)
 
 
(3)疥癬(疥癬虫)
 
ア.特徴
疥癬は、ダニの一種であるヒゼンダニ(Sarcoptesscabiei)が皮膚に寄生することで発生する皮膚病です。腹部、胸部、大腿内側等に紅斑、丘疹、鱗屑を生じ、激しいかゆみを伴います。直接的な接触感染の他に、衣類やリネン類等から間接的に感染する例もあります。
疥癬の病型には通常の疥癬と重症の疥癬(通称「痂皮型疥癬」)があります。痂皮型疥癬の感染力は強く、集団感染を引き起こす可能性があります。
疥癬虫は皮膚から離れると比較的短時間で死滅します。また、熱に弱く、50℃、10分間で死滅します。
 
イ.平常時の対応
疥癬の予防のためには、早期発見に努め、適切な治療を行うことが必要です。疥癬が疑われる場合は、直ちに高齢者介護施設の感染対策に知見を有する皮膚科専門医の診察を受けます。衣類やリネン類は熱水での洗濯あるいは乾燥機による乾燥を推奨します。ダニを駆除するため、布団等も定期的に日光消毒もしくは乾燥させます。介護職員の感染予防としては、衛生学的手洗いを励行することが大切です。
 
ウ.疑うべき症状と判断のポイント
疥癬は早期発見が大切です。以下のような皮膚所見を見たら、疥癬を疑います。
入所時や普段のケアのときに皮膚の観察を忘れないようにします。
● 皮膚の掻痒感があり、特に夜間にかゆみが強くなる傾向があります。皮膚を観察すると赤い乾燥した皮膚の盛り上がりがあります。時に、疥癬トンネルと呼ばれる線状の皮疹が手の平や手指間に認められます。
● 男性の場合、しばしば臀部や陰のう部に強いしこりが認められます。
● 特に、他の施設等から移ってこられる入所者の方は注意して観察します。
 
エ.感染を疑ったら~対応の方針
● 皮膚科へできるだけ早く依頼を出します(特に皮膚が角化している痂皮型疥癬の場合、ダニの数が多く感染力が強く治療が遅れると他に広がることが早いため、至急、依頼をします)。
● 素手で皮膚を触らないよう手袋を着用します。また、無防備に患者に接触しないことが重要です。
● 多くの人と接触することが多い検査(採血、X-Ray等)へ出るのは、皮膚科医の診断後にします。
● 責任者に連絡、報告します。
 
オ.発生時の対応
疥癬の場合は、施設内集団発生することがあり、接触感染予防策が必要です。早期の治療を開始するとともに、接触する職員への感染に注意します。
以下の対応を推奨します。
● 手袋、使い捨てのガウンを着用します
・ 布ガウンを使用してはいけません。
● 患者を清潔にすることが大切です
・ 寝衣は洗濯したものに着替えます。
・ 皮膚の観察と清潔につとめます。
・ 入浴ができる方は、できるだけ毎日入浴します。
・ 入浴ができない方に対しては、皮膚の観察を含めて毎日清拭をします。
● 使用したリネンはビニール袋に入れて、しっかりと口をしめて洗濯に出します。
● 疥癬虫は皮膚から離れると比較的短時間で死滅するため、通常の清掃を行ってかまいません。ただし、清掃する際も接触感染予防策を行います。
● 痂疲型疥癬の場合は、特に感染力が強いため隔離対応とします。ただし本人等への説明と同意を得て人権に配慮します。
● 接触した職員
・ 無防備で接触した職員は、当日着た衣服はすぐに洗濯をします。帰宅後、入浴・シャワーをし、下着も全て着替え、洗濯をします。
・ 前腕、腹部に兆候が現れることが多いため、接触した職員は良く観察をします。皮膚の掻痒感、皮疹がでたら、至急に皮膚科に受診をすると同時に責任者に連絡します。
 
カ.解除の判断
接触感染予防策を解除する前に、患者の全身を観察して新しい皮疹がないことを確認します。
 
 
(4)腸管出血性大腸菌感染症(腸管出血性大腸菌)
 
ア.特徴
大腸菌自体は、人間の腸内に普通に存在し、ほとんどは無害ですが、中には下痢を起こす原因となる大腸菌があります。これを病原性大腸菌といいます。このうち、特に出血を伴う腸炎等を引き起こすのが、腸管出血性大腸菌です。O157は、腸管出血性大腸菌の一種です。
腸管出血性大腸菌は、人の腸内に存在している大腸菌と性状は同じですが、ベロ毒素を産生するのが特徴です。ベロ毒素産生菌は、O157が最も多いですが、O26、O111、O121等の型もあります12
少量の菌量で感染するといわれており、平均3~5日の潜伏期で発症し、水様性便が続いたあと、激しい腹痛と血便となります。
 
イ.平常時の対応
少量の菌量で感染するため、高齢者が集団生活する場では二次感染を防ぐ必要があります。感染予防のために、
● 手洗いの励行(排便後、食事の前等)
● 消毒(ドアノブ、便座等のアルコール含浸綿による清拭)
● 食品の洗浄や十分な加熱
等、衛生的な取り扱いが大切です。
 
ウ.発生時の対応
● 激しい腹痛を伴う頻回の水様便または血便がある場合には、病原菌の検出の有無に係わらず、できるだけ早く医師の診察を受け、医師の指示に従うことが重要です。
● 食事の前や排泄後の衛生学的手洗いを徹底することが大切です。
● 腸管出血性大腸菌感染症は、3類感染症13であるため診断した医師が、診断後直ちに最寄りの保健所に届け出ることになっています。
 
 
 

12 腸管出血性大腸菌:https://www.mhlw.go.jp/www1/o-157/o157q_a/を参照。
13 3類感染症:感染症法による感染症の分類は付録2を参照。☞ 82ページ
 
 
(5)結核(結核菌)
 
ア.特徴
結核は結核菌による慢性感染症です。多くの人が感染しても発症せずに終わりますが、高齢者や免疫低下状態の人は発症しやすいと考えられています。肺が主な病巣ですが、免疫の低下した人では全身感染症となります。結核の症状は、呼吸器症状(痰と咳、時に血痰・喀血)と全身症状(発熱、寝汗、倦怠感、体重減少)がみられます。咳が2週間以上続く場合は要注意です。
高齢者では過去に感染し無症状で経過していたが免疫力の低下等のため発症したケースや一度治療を行った肺結核の再発例がみられます。高齢者では、全身の衰弱、食欲不振等の症状が主となり、咳、痰、発熱等の症状を示さない場合もあります。
 
イ.平常時の対応
入所時点で結核でないことを、医師の健康調査表等に基づき確認します。年に一度、レントゲン検査を行うなど患者の状態の変化に注意します。日頃の体調の変化に注意し、呼吸器症状や全身症状がみられる場合は結核発症の可能性も考慮し早めに医師の診察を受ける必要があります。
 
ウ.感染を疑ったら~対応の方針
● 上記のような症状がある場合には、喀痰の検査および胸部X線の検査を行い、医師の診断を待ちます。
● 検査の結果を待つ間は、看護職員・介護職員は、マスクを着用し、可能であれば検査を待つ入所者は個室を利用することが望まれます。症状のある入所者は直ちに一般入所者から隔離し、マスク(あれば外科用マスク)を着用させ、医師の指示に従うことが必要です。
● 施設内で結核患者の発生が明らかとなった場合に、保健所からの指示に従った対応をします。
● 接触者(同室者、濃厚接触者:職員、訪問者(家族等)をリストアップして、保健所の対応を待ちます。
● 排菌者は結核専門医療機関への入院、治療が原則です。発熱、咳、喀血等のある入所者は、隔離し、早期に医師の診断を受ける必要があります。
● 一方、仮に感染者であることがわかっても、患者が排菌していない場合は必ずしも隔離は必要ではありません。検査で排菌していないことが確認されたケースや専門施設での入院治療終了後に排菌していないことが確認された場合は、それぞれの患者の状況に応じて医師や保健所の指示に従った対応が求められます。
● 結核は2類感染症14で、診断した医師が、直ちに最寄りの保健所に届け出ることになっています。
 
 
 

14 2類感染症:感染症法による感染症の分類は付録2を参照。☞ 82ページ
 
 
(6)レジオネラ症(レジオネラ属菌)
 
ア.特徴
レジオネラ症は、レジオネラ属の細菌によっておこる感染症です。レジオネラは自然界の土壌に生息し、レジオネラによって汚染された空調冷却塔水等により、飛散したエアロゾル15を吸入することで感染します。その他、施設内における感染源として多いのは、循環式浴槽水、加湿器の水、給水・給湯水等です。
レジオネラによる感染症には、急激に重症となって死亡する場合もあるレジオネラ肺炎と、数日で自然治癒するポンティアック熱とがあります。
 
イ.平常時の対応・予防
レジオネラ症の感染源となる設備である、入浴設備、空気調和設備の冷却塔および給湯設備における衛生上の措置を行うことが重要となります16
 
レジオネラが増殖しないように、施設・設備の管理(点検・清掃・消毒)を徹底することが必要です。高齢者施設で利用されている循環式浴槽では、浴槽水をシャワーや打たせ湯等に使用してはいけません。毎日完全に湯を入れ換える場合は毎日清掃し、1カ月に1回以上消毒することが必要です。消毒には塩素消毒が良いです。長期間消毒されていない循環水を用いることは避けます。
 
家庭用加湿器は毎日水の交換とタンクの清掃を行います。建物内の設備に組み込まれた加湿装置は、使用期間中は1か月に1回以上装置内の汚れの状況を点検し、必要に応じ清掃等を実施します。少なくとも1年に1回以上、清掃を実施します。
加湿装置の使用開始時および使用終了時には、水抜きおよび清掃を実施します。
レジオネラ症を予防するための加湿器の管理については、付録3の「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」抜粋を参照してください。☞ 82ページ
 
 

15 エアロゾル:気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子。
16 「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(平成15年7月25日厚生労働省告示第264号)
(https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/rezionerashishin.pdf)
 
 
ウ.疑うべき症状と判断のポイント
● 高齢者が共同入浴施設等を利用した後に、肺炎の症状を呈した場合は、レジオネラ肺炎の可能性も考慮して医師にその事実を説明しておく必要があります。
● 高熱や咳・痰、呼吸困難等の症状が現れます。
 
エ.感染を疑ったら~対応の方針
● 患者が発生したときは、施設・設備の現状を保持したまま、速やかに保健所に連絡します。
● 浴槽が感染源とは限りませんが、感染源である可能性が高いので、浴槽は直ちに使用禁止とすることが必要です。
● レジオネラ症は、人から人への感染はありません。
● レジオネラ症は、4類感染症17で、診断した医師が直ちに届け出ることになっています。
 
 
 

17 4類感染症:感染症法による感染症の分類は付録2を参照。☞ 82ページ
 
 
(7)肺炎(肺炎球菌等)
 
ア.特徴
肺炎球菌は人の鼻腔や咽頭等に常在し、健康成人でも保有している人はまれではありません。肺炎を起こす病原体は、肺炎球菌の他にインフルエンザ菌、モラキセラ・カタラーリス、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌等もありますが、肺炎球菌は肺炎の主要な原因菌と言われています。
 
イ.平常時の対応・予防
肺炎球菌は飛沫感染による伝播が主ですが、本来常在している場合も多く、隔離等の対象にはなりません。
高齢者施設等では、インフルエンザや上気道感染後に、二次感染として発症する頻度が高くなっています。
 
慢性心疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病等の基礎疾患を有する入所者は、肺炎球菌感染のハイリスク群です。入所者の感染症の重度化予防としては、肺炎球菌ワクチンの接種が重要です。入所者で定期接種の対象となる方はそれを活用して接種を積極的に行います。また、対象外の入所者は13価ワクチンの接種も含めて医師と相談することが望まれます。
 
また、衛生学的手洗いを徹底することが重要です。
 
ウ.疑うべき症状と判断のポイント
● 肺炎の典型的な症状である咳、痰、悪寒、発熱(高熱)、呼吸困難、胸痛等の症状が現れます。
● 痰は鉄さび色の痰が出ることもあります。
 
エ.感染を疑ったら~対応の方針
● 基本的に標準予防策で対応します。
● ペニシリン耐性肺炎球菌感染症は、5類感染症であり、基幹定点医療機関は保健所へ月単位で届け出をすることになっています。
 
 
(8)誤嚥性肺炎(口腔内細菌等)
 
ア.特徴
誤嚥性肺炎は、誤嚥がきっかけになって主に口腔内の細菌が肺に入り込んで起こる肺炎です。高齢者の中でも脳梗塞等によって中枢神経系の麻痺を有する例では、嚥下機能が低下している場合があり、通常の食事の際にも誤嚥を起こす可能性が高くなります。さらに高齢者の場合は一般的に咳反射が低下しており、睡眠中等でも口腔内の唾液が肺に流れ込むことがあります。
またノロウイルス感染症等の際に嘔吐に伴って誤嚥を起こす場合もあり、その際は胃液に含まれた胃酸によっても肺炎が起こります。
 
イ.平常時の対応・予防
特に誤嚥を起こしやすい高齢者の場合は、普段の口腔ケアが重要です。嚥下能力が低い入所者の食事の際には十分注意する必要があります。
● 普段の状況と比べて摂食状態が低下している場合は、無理に食事をさせることのないように注意します。
● 咳や痰、発熱等の症状がある場合は、早めに医師の診察を受けます。
 
ウ.疑うべき症状と判断のポイント
● 食事の際に起こる誤嚥性肺炎は、食事中にむせたり、食後に咳が続いたりすることが多いため、そのような場合は誤嚥を起こした可能性を考慮しなければいけません。
● 食事の際に誤嚥しなくても誤嚥性肺炎は起こりうるため、むせる等の症状がなくとも否定はできません。
 
エ.感染を疑ったら~対応の方針
● 誤嚥性肺炎は他の入所者に伝播する疾患ではありませんので、飛沫感染予防策等の対応は必要ありません。
 
 
(9)薬剤耐性菌感染症(薬剤耐性菌)
 
ア.特徴
薬剤耐性菌の菌や耐性の種類は様々ですが、高齢者介護施設で特に注意が必要な菌は、主に接触感染する薬剤耐性菌です。
その主な特徴は以下のとおりです。
 
● 抗生物質(抗菌薬)が効かない。
● 環境中に存在する場合もある。
● 接触感染によって伝播し、介護者が広げる可能性もある。
● アルコール等通常用いられる消毒薬が有効である。
 
薬剤耐性菌の多くは、黄色ブドウ球菌や大腸菌など誰でも体内に持っているような菌が耐性化したものです。病原性が強くなったわけではないので、保菌しているだけでは無症状であり、健康被害もありません。
しかし、いったん薬剤耐性菌によって感染症を起こすと治療が難しくなることがあります。また、施設内でも図5のように保菌者から他の入所者に薬剤耐性菌が広がる可能性があります。そのため、高齢者介護施設でも薬剤耐性菌に対して適切な感染対策が求められています。
 
図5.薬剤耐性菌の伝播経路
図5.薬剤耐性菌の伝播経路
 
イ.平常時の対応
表3に示す薬剤耐性菌は主に分泌物や排泄物等に含まれていることが多いため、ケアを行った際には衛生学的手洗いが必要です。特におむつの交換など排泄物を扱う作業は菌を伝播するきっかけとなりやすいため、手袋やエプロン等の装着が必要です。また、使用した物品(おむつ、清拭布等)の廃棄までの処理、ケア後の衛生学的手洗い等の徹底も重要です。
 
表3 主な薬剤耐性菌の特徴と特に感染対策が必要なケア
薬剤耐性菌
菌の種類
主な菌の
存在部位
特に感染対策が
必要なケア
MRSA
黄色ブドウ球菌
鼻腔、口腔、皮膚
口腔ケア、清拭、気道吸引等
ESBL産生菌
AmpC産生菌
CRE
腸内細菌科の菌(大腸菌等)
腸管(尿路)
おむつ交換、尿廃棄(尿道カテーテル留置例)等
MDRP
緑膿菌
腸管(気道、尿路)
おむつ交換、気道吸引、尿廃棄(尿道カテーテル留置例)等
MDRA
アシネトバクター属
腸管、皮膚
おむつ交換、清拭等
VRE
腸球菌
腸管
おむつ交換
 
MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ESBL:基質特異性拡張型βラクタマーゼ
AmpC:AmpC型βラクタマーゼ、CRE:カルバペネム耐性腸内細菌科細菌
MDRP:多剤耐性緑膿菌
MDRA:多剤耐性アシネトバクター、VRE:バンコマイシン耐性腸球菌
 
薬剤耐性菌は培養検査をしなければ誰が保菌しているかはわかりませんので、基本的には誰が保菌していても広がりを防げるような対応が重要です。そのため、通常は標準予防策(スタンダード・プリコーション)の考え方に基づいた対応が求められます。
標準予防策(スタンダード・プリコーション)が徹底されていれば、通常の入所生活においては保菌者に対して制限を設けたり、特別扱いをしたりする必要はありません。通常は除菌目的での抗菌薬の投与も行うべきではありません。また、症状のない入所者について、薬剤耐性菌の保菌の有無を調べる必要もありません。むしろ保菌者に対して過剰な対応をせず、差別に繋がらないよう注意する必要があります。
 
ウ.発生時の対応
● 薬剤耐性菌の保菌者が感染症の症状を認めており、咳や痰、膿尿、褥瘡、下痢など周囲に薬剤耐性菌を広げやすい状態が発生している場合は、当該入所者に対する接触感染予防策を行います。具体的には、個室での療養、入浴順序を最後とする等、可能な範囲での実施を検討します。一方で、当該入所者の家族等の面会者に接触感染予防策の対応を求める必要はありませんが、手洗いの励行等は強化することが望ましいです。
 
● 感染者の診断や治療を適切に行うために、感染徴候が認められたら早めに医師の診察を受け、医師の指示に従うようにします。
 
エ.解除の判断
周囲に薬剤耐性菌を広げやすい状態が消失したことをもって接触感染予防策を解除し、標準予防策を実施します。また、高齢者介護施設の保菌者に対して培養検査によって菌の陰性化を確認する必要はありません。基本的には、保菌していることを前提にケアを行っていくことが妥当です。
 
 
 付 録
 
付録1:関連する法令・通知
 
「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」(抜粋)
(平成17年2月22日健発第0222002号、薬食発第0222001号、雇児発第0222001号、社援発第0222002号、老発第0222001号厚生労働省健康局長、医薬食品局長、雇用均等・児童家庭局長、社会・援護局長、老健局長連名通知)
 
1.社会福祉施設等においては、職員が利用者の健康管理上、感染症や食中毒を疑ったときは、速やかに施設長に報告する体制を整えるとともに、施設長は必要な指示を行うこと。
 
2.社会福祉施設等の医師及び看護職員は、感染症若しくは食中毒の発生又はそれが疑われる状況が生じたときは、施設内において速やかな対応を行わなければならないこと。
また、社会福祉施設等の医師、看護職員その他の職員は、有症者の状態に応じ、協力病院を始めとする地域の医療機関等との連携を図るなど適切な措置を講ずること。
 
3.社会福祉施設等においては、感染症若しくは食中毒の発生又はそれが疑われる状況が生じたときの有症者の状況やそれぞれに講じた措置等を記録すること。
 
4.社会福祉施設等の施設長は、次のア、イ又はウの場合は、市町村等の社会福祉施設等主管部局に迅速に、感染症又は食中毒が疑われる者等の人数、症状、対応状況等を報告するとともに、併せて保健所に報告し、指示を求めるなどの措置を講ずること。
ア 同一の感染症若しくは食中毒による又はそれらによると疑われる死亡者又は重篤患者が1週間内に2名以上発生した場合
イ 同一の感染症若しくは食中毒の患者又はそれらが疑われる者が10名以上又は全利用者の半数以上発生した場合
ウ ア及びイに該当しない場合であっても、通常の発生動向を上回る感染症等の発生が疑われ、特に施設長が報告を必要と認めた場合
 
5.4の報告を行った社会福祉施設等においては、その原因の究明に資するため、当該患者の診察医等と連携の上、血液、便、吐物等の検体を確保するよう努めること。
 
6.4の報告を受けた保健所においては、必要に応じて感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)第15条に基づく積極的疫学調査又は食品衛生法(昭和22年法律第233号)第58条に基づく調査若しくは感染症若しくは食中毒のまん延を防止するために必要な衛生上の指導を行うとともに、都道府県等を通じて、その結果を厚生労働省に報告すること。
 
7.4の報告を受けた市町村等の社会福祉施設等主管部局と保健所は、当該社会福祉施設等に関する情報交換を行うこと。
 
8.社会福祉施設等においては、日頃から、感染症又は食中毒の発生又はまん延を防止する観点から、職員の健康管理を徹底し、職員や来訪者の健康状態によっては利用者との接触を制限する等の措置を講ずるとともに、職員及び利用者に対して手洗いやうがいを励行するなど衛生教育の徹底を図ること。また、年1回以上、職員を対象として衛生管理に関する研修を行うこと。
 
9.なお、医師が、感染症法、結核予防法(昭和26年法律第96号)又は食品衛生法の届出基準に該当する患者又はその疑いのある者を診断した場合には、これらの法律に基づき保健所等への届出を行う必要があるので、留意すること。
 
 
 
大量調理施設衛生管理マニュアル(平成9年3月24日付け衛食第85号別添)
(最終改正:平成29年6月16日付け生食発0616第1号))(抜粋)
 
(別添)大量調理施設衛生管理マニュアル
(別添1)原材料、製品等の保存温度 (略)
 
(別添2)標準作業書
 
(手洗いマニュアル)
1.水で手をぬらし石けんをつける。
2.指、腕を洗う。特に、指の間、指先をよく洗う。(30秒程度)
3.石けんをよく洗い流す。(20秒程度)
4.使い捨てペーパータオル等でふく。(タオル等の共用はしないこと。)
5.消毒用のアルコールをかけて手指によくすりこむ。
(本文のⅡ3(1)で定める場合には、1から3までの手順を2回実施する。)
 
(器具等の洗浄・殺菌マニュアル)
1.調理機械
① 機械本体・部品を分解する。なお、分解した部品は床にじか置きしないようにする。
② 食品製造用水(40℃程度の微温水が望ましい。)で3回水洗いする。
③ スポンジタワシに中性洗剤又は弱アルカリ性洗剤をつけてよく洗浄する。
④ 食品製造用水(40℃程度の微温水が望ましい。)でよく洗剤を洗い流す。
⑤ 部品は80℃で5分間以上の加熱又はこれと同等の効果を有する方法注1で殺菌を行う。
⑥ よく乾燥させる。
⑦ 機械本体・部品を組み立てる。
⑧ 作業開始前に70%アルコール噴霧又はこれと同等の効果を有する方法で殺菌を行う。
2.調理台
① 調理台周辺の片づけを行う。
② 食品製造用水(40℃程度の微温水が望ましい。)で3回水洗いする。
③ スポンジタワシに中性洗剤又は弱アルカリ性洗剤をつけてよく洗浄する。
④ 食品製造用水(40℃程度の微温水が望ましい。)でよく洗剤を洗い流す。
⑤ よく乾燥させる。
⑥ 70%アルコール噴霧又はこれと同等の効果を有する方法注1で殺菌を行う。
⑦ 作業開始前に⑥と同様の方法で殺菌を行う。
3.まな板、包丁、へら等
① 食品製造用水(40℃程度の微温水が望ましい。)で3回水洗いする。
② スポンジタワシに中性洗剤又は弱アルカリ性洗剤をつけてよく洗浄する。
③ 食品製造用水(40℃程度の微温水が望ましい。)でよく洗剤を洗い流す。
④ 80℃で5分間以上の加熱又はこれと同等の効果を有する方法注2で殺菌を行う。
⑤ よく乾燥させる。
⑥ 清潔な保管庫にて保管する。
4.ふきん、タオル等
① 食品製造用水(40℃程度の微温水が望ましい。)で3回水洗いする。
② 中性洗剤又は弱アルカリ性洗剤をつけてよく洗浄する。
③ 食品製造用水(40℃程度の微温水が望ましい。)でよく洗剤を洗い流す。
④ 100℃で5分間以上煮沸殺菌を行う。
⑤ 清潔な場所で乾燥、保管する。
 
注1:塩素系消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸水、次亜塩素酸水等)やエタノール系消毒剤には、ノロウイルスに対する不活化効果を期待できるものがある。使用する場合、濃度・方法等、製品の指示を守って使用すること。浸漬により使用することが望ましいが、浸漬が困難な場合にあっては、不織布等に十分浸み込ませて清拭すること。
(参考文献)「平成27年度ノロウイルスの不活化条件に関する調査報告書」
注2:大型のまな板やざる等、十分な洗浄が困難な器具については、亜塩素酸水又は次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系消毒剤に浸漬するなどして消毒を行うこと。
 
(原材料等の保管管理マニュアル)
1.野菜・果物注3
① 衛生害虫、異物混入、腐敗・異臭等がないか点検する。異常品は返品又は使用禁止とする。
② 各材料ごとに、50g程度ずつ清潔な容器(ビニール袋等)に密封して入れ、-20℃以下で2週間以上保存する。(検食用)
③ 専用の清潔な容器に入れ替えるなどして、10℃前後で保存する。(冷凍野菜は-15℃以下)
④ 流水で3回以上水洗いする。
⑤ 中性洗剤で洗う。
⑥ 流水で十分すすぎ洗いする。
⑦ 必要に応じて、次亜塩素酸ナトリウム等注4で殺菌注5した後、流水で十分すすぎ洗いする。
⑧ 水切りする。
⑨ 専用のまな板、包丁でカットする。
⑩ 清潔な容器に入れる。
⑪ 清潔なシートで覆い(容器がふた付きの場合を除く)、調理まで30分以上を要する場合には、10℃以下で冷蔵保存する。
 
注3:表面の汚れが除去され、分割・細切されずに皮付きで提供されるみかん等の果物にあっては、③から⑧までを省略して差し支えない。
注4:次亜塩素酸ナトリウム溶液(200㎎/ℓで5分間又は100㎎/ℓで10分間)又はこれと同等の効果を有する亜塩素酸水(きのこ類を除く。)、亜塩素酸ナトリウム溶液(生食用野菜に限る。)、過酢酸製剤、次亜塩素酸水並びに食品添加物として使用できる有機酸溶液。これらを使用する場合、食品衛生法で規定する「食品、添加物等の規格基準」を遵守すること。
注5:高齢者、若齢者及び抵抗力の弱い者を対象とした食事を提供する施設で、加熱せずに供する場合(表皮を除去する場合を除く。)には、殺菌を行うこと。
 
2.魚介類、食肉類
① 衛生害虫、異物混入、腐敗・異臭等がないか点検する。異常品は返品又は使用禁止とする。
② 各材料ごとに、50g程度ずつ清潔な容器(ビニール袋等)に密封して入れ、-20℃以下で2週間以上保存する。(検食用)
③ 専用の清潔な容器に入れ替えるなどして、食肉類については10℃以下、魚介類については5℃以下で保存する(冷凍で保存するものは-15℃以下)。
④ 必要に応じて、次亜塩素酸ナトリウム等注6で殺菌した後、流水で十分すすぎ洗いする。
⑤ 専用のまな板、包丁でカットする。
⑥ 速やかに調理へ移行させる。
注6:次亜塩素酸ナトリウム溶液(200mg/ℓで5分間又は100mg/ℓで10分間)又はこれと同等の効果を有する亜塩素酸水、亜塩素酸ナトリウム溶液(魚介類を除く。)、過酢酸製剤(魚介類を除く。)、次亜塩素酸水、次亜臭素酸水(魚介類を除く。)並びに食品添加物として使用できる有機酸溶液。これらを使用する場合、食品衛生法で規定する「食品、添加物等の規格基準」を遵守すること。
 
(加熱調理食品の中心温度及び加熱時間の記録マニュアル)
1.揚げ物
① 油温が設定した温度以上になったことを確認する。
② 調理を開始した時間を記録する。
③ 調理の途中で適当な時間を見はからって食品の中心温度を校正された温度計で3点以上測定し、全ての点において75℃以上に達していた場合には、それぞれの中心温度を記録するとともに、その時点からさらに1分以上加熱を続ける(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85~90℃で90秒間以上)。
④ 最終的な加熱処理時間を記録する。
⑤ なお、複数回同一の作業を繰り返す場合には、油温が設定した温度以上であることを確認・記録し、①~④で設定した条件に基づき、加熱処理を行う。油温が設定した温度以上に達していない場合には、油温を上昇させるため必要な措置を講ずる。
2.焼き物及び蒸し物
① 調理を開始した時間を記録する。
② 調理の途中で適当な時間を見はからって食品の中心温度を校正された温度計で3点以上測定し、全ての点において75℃以上に達していた場合には、それぞれの中心温度を記録するとともに、その時点からさらに1分以上加熱を続ける(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85~90℃で90秒間以上)。
③ 最終的な加熱処理時間を記録する。
④ なお、複数回同一の作業を繰り返す場合には、①~③で設定した条件に基づき、加熱処理を行う。この場合、中心温度の測定は、最も熱が通りにくいと考えられる場所の一点のみでもよい。
3.煮物及び炒め物
調理の順序は食肉類の加熱を優先すること。食肉類、魚介類、野菜類の冷凍品を使用する場合には、十分解凍してから調理を行うこと。
① 調理の途中で適当な時間を見はからって、最も熱が通りにくい具材を選び、食品の中心温度を校正された温度計で3点以上(煮物の場合は1点以上)測定し、全ての点において75℃以上に達していた場合には、それぞれの中心温度を記録するとともに、その時点からさらに1分以上加熱を続ける(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85~90℃で90秒間以上)。
なお、中心温度を測定できるような具材がない場合には、調理釜の中心付近の温度を3点以上(煮物の場合は1点以上)測定する。
② 複数回同一の作業を繰り返す場合にも、同様に点検・記録を行う。
 
(別添3)調理後の食品の温度管理に係る記録の取り方について (略)
 
 
 
「中小規模調理施設における衛生管理の徹底について」(平成9年6月30日衛食第201号厚生省生活衛生局食品保健課長通知)(抜粋)
 
 
〔別添〕
児童福祉施設等における衛生管理の改善充実及び食中毒発生の予防について(平成9年6月30日 児企第16号)
(各都道府県・各指定都市・各中核市児童福祉主管部(局)長あて厚生省児童家庭局企画課長通知)
児童福祉施設等(認可外保育施設を含む。)における衛生管理については、かねてから適正な指導をお願いしているところである。
しかしながら、本年の食中毒の発生をみると、昨年と同様に腸菅出血性大腸菌(O157)による食中毒が多発しているところである。特に乳幼児は、腸菅出血性大腸菌(O157)等に感染しやすく、また、重症化しやすいことから、児童福祉施設等においては、調理従事者だけでなくすべての職員が連携を図りつつ、左記の点に留意し、感染の予防に努めることが重要である。
また、社会福祉施設における衛生管理については、平成9年3月31日社援施第65号により同一メニューを一回300食以上又は1日750食以上を提供する調理施設以外の施設においても可能な限り大量調理施設衛生管理マニュアルに基づく衛生管理に努められるよう周知したところであるが、児童福祉施設等については、感染予防の実効を期するため、大量調理施設衛生管理マニュアルを参考にするとともに、当面別添参考資料Ⅰを参照するなどにより、管下の児童福祉施設等に対し、衛生管理を徹底するよう指導されたい。
 
1. 感染症予防のためには、手洗いの励行が重要かつ有効であり、児童、職員ともに手洗いの徹底を図ること。食事の直前及び排便又は排便の世話をした直後には、石けんを使って流水で十分に手指を洗うこと。
2. 特に、下痢便の排泄後又は下痢便の排泄の世話をした後は、直ちに石けんを使って流水で十分に手指を洗った上で、消毒液で手指を消毒すること。
3. 使用するタオルは、他人と共用しないこと。なお、タオルの個人専用化が難しい場合には、使い捨てペーパータオル等の利用も有効であること。
4. 略
5. 略
 
 
 
 
(参考資料Ⅰ)
1. 調理室等の汚染防止について
大量調理施設衛生管理マニュアル(以下「マニュアル」という。)Ⅱ―3―(3)のとおり汚染作業区域(検収場、原材料の保管場、下処理場)と非汚染作業区域(さらに準清潔作業区域(調理場)と清潔作業区域(放冷・調製場、製品の保菅場)に区分される。)を明確に区分することがどうしても難しい場合には、下処理済のもの(例えば野菜に付いている土を洗い落としたもの)を購入するなどにより、食材を通して調理室内が汚染される危険性の高い作業の減少を図り、調理室等の非汚染作業区域の汚染を防止するよう工夫すること。
 
2. シンクの清潔確保について
マニュアルⅡ―3―(8)のとおりシンクを用途別に各々設けることがどうしても難しい場合には、調理工程を汚染作業(食材の検収・保管・下処理)と非汚染作業(調理・盛り付け等)とに分け、汚染作業から非汚染作業に移るときは、左記の作業手順によりシンクを洗浄消毒すること。また、加熱調理用食材の洗浄作業から非加熱調理用食材の洗浄作業へ移るときも、同様の方法でシンクを必ず洗浄消毒し、シンクを通じて食材が汚染されないように十分注意するとともに、洗浄水等がシンク以外に飛散しないように留意すること。
 
(シンクの洗浄消毒作業手順)
① 飲用適の水(40℃程度の微温水が望ましい。)で3回水洗いする。
② スポンジタワシに中性洗剤又は弱アルカリ性洗剤をつけてよく洗浄する。
③ 飲用適の水(40℃程度の微温水が望ましい。)でよく洗剤を洗い流す。
④ 水分をペーパータオル等で十分拭き取る。
⑤ 70%アルコール噴霧又はこれと同等の効果を有する方法で殺菌を行う。
 
3. 汚染作業区域と非汚染作業区域の区別等について
マニュアルⅡ―5―(1)―③④によれば調理室内において汚染作業区域と非汚染作業区域を明確に区別し、手洗い施設、履き物の消毒施設を各区域の入口手前に設けることとあるが、これがどうしても難しい場合には、調理工程の見直しを図り、汚染作業と非汚染作業を明確に区分し、食材の相互汚染を防止すること。なお、洗浄消毒作業を行う際には、洗浄水等が飛散しないように留意すること。
また、調理済食品が汚染されないように清潔作業区域を確保し、盛り付け・配膳後の食品等にハエ等が触れることのないよう十分注意すること。
 
4. 調理器具・食器等の衛生的な保管について
マニュアルⅡ―5―(1)―⑧のとおり外部から汚染されない構造の保管設備を設けることにより清潔な環境の保持及び作業の軽減が図られるところであるが、食器消毒保管庫等を直ちに設置することがどうしても難しい場合には、調理器具・食器等の消毒を行い、乾燥させた上で清潔な場所に保管すること。なお、ネズミ・ゴキブリ・ハエ等が調理器具・食器等に触れることのないよう十分注意すること。
 
5. 原材料等の保管管理の徹底について
原材料等の保管管理については、左記の原材料等の保管管理手順に沿って行い、温度の記録については、少なくとも①原材料の保管温度は適切であったか②調理が終了した食品を速やかに提供したか③調理終了後30分を超えて提供される食品の保存温度が適切であったかを実施献立表等に点検項目を設け、その適否を記録しておくこと。
(原材料等の保管管理手順)略
 
6. 加熱調理食品の加熱加工の徹底について
加熱調理食品の加熱加工については、中心部温度計を用いるなどして、中心部が75℃以上の温度で1分以上又はこれと同等以上まで加熱したかを確認し、実施献立表等に点検項目を設け、その適否を記録しておくこと。
 
(参考資料Ⅱ) 略
 
 
 
付録2:感染症法について
 
○ これまで知られていなかった感染症への対応や医学の進歩等を踏まえ、1999年4月に、それまでの伝染病予防法、性病予防法、後天性免疫不全症候群の予防に関する法律にかわり、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)が施行されました。その後、重症急性呼吸器症候群(SARS)や鳥インフルエンザ(H5N1)等の新たな感染症の発生動向等を踏まえ、2003年と2007年に改正されています。2007年の改正では結核予防法が廃止され感染症法に統合されました。感染症法では、対象とする感染症を感染力や罹患した場合の重篤性等を基づき、危険性が高い順に、1類感染症から5類感染症に分類しています。また、1類~5類感染症に分類されていない感染症や新たな感染症等のまん延に迅速に対応できるように新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症の区分が用意されています。
 
○ 感染症のまん延を防止するための措置として就業制限や入院等がありますが、感染症法では、これらの措置について、人権に配慮した手続きが規定されています。
 
○ 2007年6月、入院・検疫等の措置の対象となる感染症分類が見直され、結核が2類感染症に取りこまれ、結核予防法は廃止されました。また、検疫法の一部が改正され、コレラ及び黄熱が検疫感染症から除外されています。
○ 2008年5月、鳥インフルエンザがアジア、欧州、アフリカまで拡大し、東南アジアではトリからヒトに感染する事例が発生しました。そのため、鳥インフルエンザ(H5N1)が2類感染症に追加され、新たに「新型インフルエンザ等感染症」という類型が創設されました。
○ 2011年2月、チクングニア熱が4類感染症に、薬剤耐性アシネトバクター感染症が5類感染症に追加されました。
○ 2013年3月、重症熱性血小板減少症群が4類感染症に、4月、侵襲性インフルエンザ菌感染症。侵襲性髄膜炎菌感染症・侵襲性肺炎球菌感染症が5類感染症に追加されました。
○ 2014年9月、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症が5類感染症に追加されました。
○ 2015年1月、鳥インフルエンザ(H7N9)、中東呼吸器症候群が2類感染症に追加されました。
○ 2016年2月、ジカウイルス感染症が4類感染症に追加されました。
○ 2018年1月、百日咳(5類感染症・定点把握疾病)から5類感染症・全数把握疾病に移動されました。また、風しん(5類感染症)の届出を直ちに届出に変更されました。
 
○ 感染症の性格と対応・措置を表A1に、感染症法の対象疾患と報告の義務を表A2に示します。
 
表A1 感染症法上の類型と主な対応・措置
 
類型
定義
主な対応・措置
1類感染症
感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点からみた危険性が極めて高い感染症
・原則入院
・消毒等の対物措置
(例外的に、建物への措置、通行制限等の措置も適用対象)
2類感染症
感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点からみた危険性が高い感染症
・状況に応じて入院
・消毒等の対物措置
3類感染症
感染力、罹患した場合の重篤性等に基づく総合的な観点からみた危険性が高くないが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こし得る感染症
・特定職種への就業制限
・消毒等の対物措置
4類感染症
人から人への感染はほとんどないが、動物、飲食物等の物件を介して感染するため、動物や物件の消毒、廃棄などの措置が必要となる感染症
・動物の措置を含む消毒の対物措置
5類感染症
国が感染症発生動向調査を行い、その結果等に基づいて必要な情報を一般国民や医療関係者に提供・公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症
・感染症発生状況の収集、分析とその結果の公開、提供
新型インフルエンザ等感染症
インフルエンザのうち新たに人から人に伝染する能力をもった病原体によるもので、全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるもの、もしくは再興型インフルエンザ
・原則入院
・消毒等の対物措置
(例外的に、建物への措置、通行制限等の措置も適用対象)
指定感染症
既知の感染症で、1類~3類感染症と同等の措置を講じなければ、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれのある感染症(政令で指定、延長を含め最大2年間に限定)
・1~3類感染症に準じた入院対応や消毒等の対物措置
新感染症
人から人に伝染すると認められる疾病であって、重篤かつ国民の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがある感染症
・都道府県知事が厚生労働大臣の助言を得て個別に応急対応(緊急時は厚生労働大臣が都道府県知事に指示)
 
○ 高齢者介護施設で、しばしば集団感染や重篤化等の問題となる感染症として、腸管出血性大腸菌感染症やレジオネラ症、インフルエンザ等がありますが、腸管出血性大腸菌感染症は3類感染症に、レジオネラ症は4類感染症、インフルエンザ、ノロウイルス感染症(感染性胃腸炎)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)、薬剤耐性緑膿菌感染症等は5類感染症に指定されており、法令に基づき、それぞれの区分に応じた対応・措置が必要です。
 
 
表A2 感染症法に基づく対象疾病と届出
(2019.1施行)
種類
感染症
主な対応・措置
1類感染症
エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱,ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱
・診断後直ちに届出
(全数)
2類感染症
急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARSコロナウイルスに限る)、中東呼吸器症候群(MERSコロナウイルスに限る)、鳥インフルエンザ(H5N1)、鳥インフルエンザ(H7N9)
・診断後直ちに届出
(全数)
3類感染症
コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス
・診断後直ちに届出
(全数)
4類感染症
E型肝炎、ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎含む)、A型肝炎、エキノコックス症、黄熱、オウム病、オムスク出血熱、回帰熱、キャサヌル森林病、Q熱、狂犬病、コクシジオイデス症、サル痘、ジカウイルス感染症、重症熱性血小板減少症候群(SFTSウイルスに限る)、腎症候性出血熱、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、炭疽、チクングニア熱、つつが虫病、デング熱、東部ウマ脳炎、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1及びH7N9)を除く)、ニパウイルス感染症、日本紅斑熱、日本脳炎、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、鼻疽、ブルセラ症、ベネズエラウマ脳炎、ヘンドラウイルス感染症、発しんチフス、ボツリヌス症、マラリア、野兎病、ライム病、リッサウイルス感染症、リフトバレー熱、類鼻疽、レジオネラ症、レプトスピラ症、ロッキー山紅斑熱
・診断後直ちに届出
(全数)
5類感染症
侵襲性髄膜炎菌感染症、風しん、麻しん
・診断後直ちに届出
(全数)
アメーバ赤痢、ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症、急性弛緩性麻痺、急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く)、クリプトスポリジウム症、クロイツフェルト・ヤコブ病、劇症型溶血性レンサ球菌感染症、後天性免疫不全症候群、ジアルジア症、侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性肺炎球菌感染症、水痘(入院例に限る)、先天性風しん症候群、梅毒、播種性クリプトコックス症、破傷風、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症、百日咳、薬剤耐性アシネトバクター感染症
・7日以内に届出
(全数)
RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎※、水痘、手足口病、伝染性紅斑、突発性発疹、ヘルパンギーナ、流行性耳下腺炎
・次の月曜日
(小児科定点医療機関が届出)
※は小児科定点及び基幹定点医療機関が届出
●インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く)
・次の月曜日
(インフルエンザ定点医療機関、及び基幹定点医療機関が届出)
●急性出血性結膜炎、流行性角結膜炎
・次の月曜日
(眼科定点医療機関が届出)
●感染性胃腸炎(ロタウイルスに限る)、クラミジア肺炎(オウム病を除く)、細菌性髄膜炎(侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性髄膜炎菌感染症及び侵襲性肺炎球菌感染症を除く)、マイコプラズマ肺炎、無菌性髄膜炎
・次の月曜日
(基幹定点医療機関が届出)
●性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症
・翌月初日
(性感染症定点医療機関が届出)
●ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症
・翌月初日
(基幹定点医療機関が届出)
新型インフルエンザ等感染症
新型インフルエンザ
診断後直ちに届出
(全数)
 
厚生労働省「感染症法に基づく医師の届出のお願い」
 
 
付録3:加湿器の取り扱いについて
 
レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針
平成15年7月25日厚生労働省告示第264号(平成30年8月3日厚生労働省告示第297号により一部改正) より第五部分抜粋
第五 加湿器における衛生上の措置
一 加湿器における衛生上の措置に関する基本的考え方
加湿器を発生源とするレジオネラ症は、国内では報告例は少ないが、新生児室、高齢者施設等における感染例が報告され、海外でも同様の事例が報告されており、感染源として留意することが必要である。
加湿器の種類には、主に建築物の空気調和設備に組み込まれているもの(以下「加湿装置」という。)及び家庭等で使用される卓上用又は床置き式のもの(以下「家庭用加湿器」という。)がある。
加湿器では、タンク内等において生物膜が生成されることによって、レジオネラ属菌をはじめとする微生物が繁殖しやすくなる。そのため、加湿器のタンク内等に付着する生物膜の生成を抑制し、その除去を行うことが必要である。
 
二 構造設備上の措置
構造設備上の措置として、次に掲げる措置を講ずることが必要である。
1 加湿装置には、加湿方式に応じた水処理装置を設置し、点検及び清掃を容易に行うことができる構造とすること。
2 家庭用加湿器は、部品の分解及び清掃を容易に行うことができる構造とすること。
 
三 維持管理上の措置
維持管理上の措置として、次に掲げる措置を講ずることが必要である。
1 加湿装置に供給する水を水道法第四条に規定する水質基準に適合させるため必要な措置を講ずること。
2 加湿装置の使用開始時及び使用期間中は一か月に一回以上、加湿装置の汚れの状況を点検し、必要に応じ加湿装置の清掃等を実施するとともに、一年に一回以上、清掃を実施すること。
3 加湿装置の使用開始時及び使用終了時に、水抜き及び清掃を実施すること。
4 家庭用加湿器のタンクの水は、毎日完全に換えるとともに、タンク内を清掃すること。
 
 
付録4:入所者の健康状態の記録
 
入所者ごとの症状の記録 書式の例
 
健 康 調 査 日 報
年  月  日  
記入者:            
部屋
氏名
発熱
(体温)
嘔吐
(吐き気)
下痢・腹痛
咽頭痛
鼻水
発疹
その他
備考
(確認印)
                   
                   
                   
                   
                 
                   
                 
                   
                 
                   
                 
                 
                 
                   
                 
                 
                 
●発熱:通常37.5℃以上をいう。38℃未満の熱は微熱。日本人の腋窩温の平均値は36.89℃である。
●嘔吐・下痢・腹痛:感染性食中毒や消化管感染症で認める。
 
施設全体での傾向把握 書式の例
 
     年    月 第   週
入所者数:    人
 
症状  /   /   /   /   /   /   / 
合計(人)
新たな
発症者数
(人)
新たな
発症者数
(人)
新たな
発症者数
(人)
新たな
発症者数
(人)
新たな
発症者数
(人)
新たな
発症者数
(人)
新たな
発症者数
(人)
発熱
3
3
4
2
1
0
0
13
吐き気・嘔吐
2
0
1
1
0
0
0
4
下痢
1
2
3
4
1
1
0
12
・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
医師への報告用紙 書式の例
 
<発症者状況一覧表>
<発症者状況一覧表>
【記号の例】●:発熱 □:嘔吐 △:下痢 ◎:嘔吐・下痢
 
<新規発症者集計表>
<新規発症者集計表>
 
 
付録5:消毒法について
 
消毒とは、微生物の感染性をなくすか、微生物の数を減少させることをいいます。その方法には、熱で処理する方法(煮沸、熱水)と消毒薬による方法があります。消毒法の種類と作用時間は次のとおりです。
 
①消毒法の種類と作用時間
 
種類
消毒法
作用時間
煮沸消毒
シンメルブッシュ煮沸消毒器
100℃ 15分間
熱水消毒
ウオッシャーディスインフェクター
熱水洗濯機
食器洗浄器
80~90℃ 3~10分間
80℃ 10分間
洗浄+80℃リンス
消毒薬
洗浄法(スクラブ法)
擦式法(ラビング法)
清拭法(ワイピング法)
浸漬法(ベースン法)
30秒間
30秒間
アルコール含浸綿
30分間
 
手指の消毒には、洗浄法(スクラブ法)、擦式法(ラビング法)、清拭法(ワイピング法)等があります。それぞれの方法は次のとおりです。
 
②-1手指消毒法
 
使用
消毒法
解説
洗浄法(スクラブ法)
●手指消毒薬(含有洗浄剤)を約2-3ml手にとり、よく泡立てながら洗浄(30秒以上)する。さらに流水で洗い、ペーパータオルで拭きとる。
擦式法(ラビング法)
●手指消毒薬(含有消毒用エタノール)を約3ml手にとりよく擦り込む、(30秒以上)乾かす(液剤・ゲル剤)。
清拭法(ワイピング法)
●消毒用エタノールを含ませた布または綿で拭き取る。
×
浸漬法(ベースン法)
●ベースン内で洗う。交差感染することがあり、禁止。
(辻 明良:微生物学・感染制御学、メヂカルフレンド社、改変)
 
②-2 主な手指消毒薬
 
消毒法
消毒薬
剤型
スクラブ法
クロルヘキシジングルコン酸(4%)
液剤
 
ポビドンヨード(7.5%)
液剤
 
ラビング法
消毒用エタノール(76.9–81.4%)
液剤
ゲル剤
ベンザルコニウム塩化物(0.2%)/消毒用エタノール
液剤
ゲル剤
クロルヘキシジングルコン酸(0.2%)/消毒用エタノール
液剤
ゲル剤
クロルヘキシジングルコン酸(0.5%)/消毒用エタノール
液剤
 
クロルヘキシジングルコン酸(1.0%)/消毒用エタノール
液剤
 
ポビドンヨード(0.5%)/消毒用エタノール
液剤
 
ワイピング法
消毒用エタノール(76.9–81.4%)
液剤
ゲル剤
イソプロパノール(70%)
   
(辻明良:微生物学・感染制御学、メヂカルフレンド社、改変)
 
ラビング法は、手が汚れているときには無効であることに注意します。
手が汚れている場合には、スクラブ法を使用します。
 
③消毒薬の抗微生物スペクトル18と適用対象
 
 
抗微生物スペクトル
対象
消毒薬
細菌
結核菌
芽胞
真菌
ウイルス
手指
環境
消毒用エタノール
×
ポビドンヨード
×
×
グルコン酸クロルヘキシジン
×
×
×
塩化ベンゼトニウム
×
×
×
×
塩化ベンザルコニウム
×
×
×
塩酸アルキルジアルキルエチルグリシン
×
×
×
次亜塩素酸ナトリウム
×
グルタラール
×
×
フタラール
×
×
×
過酢酸
×
×
◎:有効(使用可) ○:効果弱い ×:無効(使用不可)
注※)ノロウイルスなどについては、あまり効果がない。
(辻 明良:感染制御のための消毒の基礎知識、ヴァンメディカル、2009)
 
 

18 抗微生物スペクトル:消毒薬の効果(影響)のある微生物の種類
 
 
④対象物による消毒方法
 
対象
消毒方法
手指
・エタノール含有消毒薬:ラビング法(30秒間の擦式)
            ワイピング法(拭き取り法)
・スクラブ剤による洗浄(消毒薬による30秒間の洗浄と流水)
嘔吐物、排泄物
・嘔吐物や排泄物や吐物で汚染された床は、手袋をして0.5%次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。
差し込み便器
(ベッドパン)
・熱水消毒器(ベッドパンウォッシャー)で処理(90℃1分間)。
・洗浄後、0.1%次亜塩素酸ナトリウムで処理(5分間)。
リネン・衣類
・熱水洗濯機(80℃10分間)で処理し、洗浄後乾燥させる。
・次亜塩素酸ナトリウム(0.05~0.1%)浸漬後、洗濯、乾燥させる。
食器
・自動食器洗浄器(80℃10分間)
・洗剤による洗浄と熱水処理で十分である。
まな板、ふきん
・洗剤で十分洗い、熱水消毒する。
・次亜塩素酸ナトリウム(0.05~0.1%)に浸漬後、洗浄する。
ドアノブ、便座
・消毒用エタノールで清拭する。
浴槽
・手袋を着用し、洗剤で洗い、温水(熱水)で流し、乾燥させる。
カーテン
・一般に感染の危険性は低い。洗濯する。
・体液等が付着したときは、次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。
 
⑤消毒液の希釈方法
 
例 6% 次亜塩素酸ナトリウムの希釈液の調整法
市販の次亜塩素酸ナトリウム製品の濃度には、10%・6%・1%等があります。
 
例1) 6%溶液を用い、0.1%濃度に調整したい場合
原液
調製濃度
得たい量
6%
 
0.1ml
1ml
10ml
100ml
 
0.1%
       
 
5.9ml
59ml
590ml
5,900ml
Total量
 
6.0ml
60ml
600ml
6,000ml
*原液6%溶液を用いて、0.1%溶液になるよう希釈するには、
6%溶液を0.1mlとり、水を5.9ml加えると、0.1%液6mlが得られる。
*原液6%溶液を用いて、0.1%溶液になるよう希釈するには、
6%溶液を10mlとり、水を590ml加えると、0.1%液600mlが得られる。
 
例2) 6%溶液を用い、0.02%濃度に調整したい場合
原液
調製濃度
得たい量
6%
 
0.02ml
2ml
20ml
 
0.02%
     
 
5.98ml
598ml
5,980ml
Total量
 
6.00ml
600ml
6,000ml
*原液6%溶液を用いて、0.02%溶液になるよう希釈するには、
6%溶液を2mlとり、水を598ml加えると、0.02%液600mlが得られる。
(辻 明良作成)
 
 
⑥市販の漂白剤を用いた時の調製法※
漂白剤として市販されている次亜塩素酸ナトリウム液の塩素濃度は約5%です(家庭用塩素系漂白剤ハイター、ブリーチ等)。濃度は必ず確認してください。
 
例)市販の漂白剤(塩素濃度約5%)の場合:
ペットボトル1杯約5ml、漂白剤のキャップ1杯約20~25ml
対 象
濃 度
希 釈 方 法
希釈倍率
○便や吐物が付着した床等
○衣類等の漬け置き
1000ppm
(0.1%)
①500mlのペットボトル1本の水に10ml
(ペットボトルのキャップ2杯)
②5Lの水に100ml
(漂白剤のキャップ5杯)
50倍
○食器等の漬け置き
○トイレの便座やドアノブ、手すり、床等
200ppm
(0.02%)
①500mlのペットボトル1本の水に2ml
(ペットボトルのキャップ半杯)
②5Lの水に20ml
(漂白剤のキャップ1杯)
250倍
希釈する際は、直接塩素剤が手に付かないよう手袋をします。
※厚生労働省「社会福祉施設、介護老人保健施設におけるノロウイルスによる感染性胃腸炎の発生・まん延防止策の一層の徹底について」より転載
 
 
手指、嘔吐物、排泄物、使用した用具・リネン、環境等、消毒する対象物の種類に応じて、もっとも適切な消毒法を選びます。また、微生物の種類によって、効果のある消毒薬が異なります。表【消毒薬の抗微生物スペクトルと適用対象】も参考にしてください。
 
 
付録6:感染性廃棄物の処理について
 
「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」
平成30年3月環境省環境再生・資源循環局より第4章部分抜粋
 
第4章 医療関係機関等の施設内における感染性廃棄物の処理
4.1 分別
感染性廃棄物は、発生時点において、他の廃棄物と分別して排出するものとする。
 
4.2 梱包
感染性廃棄物の収集運搬を行う場合は、必ず容器に収納して収集運搬することになっているため、収集運搬に先立ち、あらかじめ、次のような容器に入れて、密閉しなければならない。
(1)密閉できること。
(2)収納しやすいこと。
(3)損傷しにくいこと。
(参照)令第6条の5第1項第1号、規則第1条の11の2
4.3 施設内における移動
感染性廃棄物の施設内における移動は、感染性廃棄物が入った容器を密閉して、移動の途中で内容物が飛散・流出するおそれのないように行うものとする。
 
4.4 施設内における保管
1 感染性廃棄物が運搬されるまでの保管は極力短期間とする。
2 感染性廃棄物の保管場所は、関係者以外立ち入れないように配慮し、感染性廃棄物は他の廃棄物と区別して保管しなければならない。
3 感染性廃棄物の保管場所には、関係者の見やすい箇所に感染性廃棄物の存在を表示するとともに、取扱いの注意事項等を記載しなければならない。
(参照)法第12条の2第2項、規則第8条の13
 
4.5 表示
感染性廃棄物を収納した容器には、感染性廃棄物である旨及び取り扱う際に注意すべき事項を表示するものとする。
(参照)令第6条の5第1項第1号、規則第1条の10
非感染性廃棄物を収納した容器には、必要に応じて非感染性廃棄物であることの表示を行うことを推奨する。
 
【バイオハザードマークの解説】
1 関係者が感染性廃棄物であることを識別できるよう、容器にはマーク等を付けるものとする。マークは全国共通のものが望ましいため、右記のバイオハザードマークを推奨する。マークを付けない場合には、「感染性廃棄物」(感染性一般廃棄物又は感染性産業廃棄物のみが収納されている場合は、各々の名称)と明記すること。
2 廃棄物の取扱者に廃棄物の種類が判別できるようにするため、性状に応じてマークの色を分けることが望ましい。
(1)液状又は泥状のもの(血液等)赤色
(2)固形状のもの(血液等が付着したガーゼ等)橙色
(3)鋭利なもの(注射針等)黄色
(4)分別排出が困難なもの黄色
このような色のバイオハザードマークを用いない場合には、「液状又は泥状」、「固形状」、「鋭利なもの」のように、廃棄物の取扱者が取り扱う際に注意すべき事項を表示すること。
3 非感染性廃棄物であっても、外見上感染性廃棄物との区別がつかないこと等から、感染性廃棄物としてみなされることがある。
その場合、医療関係機関等と処理業者との間の信頼関係を構築し、医療関係機関等が責任を持って非感染性廃棄物であることを明確にするために、非感染性廃棄物(感染性廃棄物を消毒処理したものや、判断基準に基づき非感染性と判断されたもの。)の容器に非感染性廃棄物であることを明記したラベル(以下非感染性廃棄物ラベルの例「非感染性廃棄物ラベル」という。)を付けることを推奨する。非感染性廃棄物ラベルの導入により、意識して感染性、非感染性廃棄物の分別が進むことも期待される。
非感染性廃棄物ラベルの導入に当たっては、関係者間で事前に十分に調整し、導入の方法(対象とする廃棄物等)等を決めておくことが必要である。
4 非感染性廃棄物ラベルの仕様は、関係者間で合意したものを使用することが望ましく、ラベルの大きさ、文字は見やすいものとする。たとえば、特別区(東京二十三区)では、大きさは縦55mm、横70mm、字体はゴシック体のものが使われており、参考となる。
 
感染性廃棄物の表示
感染性廃棄物の表示
 
 
4.6 施設内における中間処理
感染性廃棄物は、原則として、医療関係機関等の施設内の焼却設備で焼却、溶融設備で溶融、滅菌装置で滅菌又は肝炎ウイルスに有効な薬剤又は加熱による方法で消毒(感染症法その他の法律に規定されている疾患に係る感染性廃棄物にあっては、当該法律に基づく消毒)するものとする。
(参照)特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物の処分又は再生の方法として環境大臣が定める方法(平成4年厚生省告示第194号)
 
 
このマニュアルは、
平成30年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)高齢者施設等における感染症対策に関する調査研究事業
において、下記の検討委員会により作成されたものです。
 
 
検討委員会 名 簿
(平成31年3月現在・五十音順・敬称略)
<委員長>
辻 明良 東邦大学 名誉教授
<委員>
小坂 健  東北大学大学院歯学研究科 教授
高野八百子 慶應義塾大学病院感染制御部 課長
鳥海 房枝 NPO法人メイアイヘルプユー 事務局長
橋本 政彦 特別養護老人ホームよみうりランド花ハウス 施設長
福島 智子 特別養護老人ホームもみじ苑 施設長
松本 哲哉 国際医療福祉大学医学部 主任教授
      (東京医科大学 兼任教授)
 
 
<オブザーバー>
厚生労働省 老健局 高齢者支援課
<事 務 局>
株式会社三菱総合研究所 ヘルスケア・ウェルネス事業本部
 
 
 
 
 
 
平成30年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)
高齢者施設等における感染症対策に関する調査研究事業
高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版

 
2019年3月
 
編集・印刷
 
株式会社 三菱総合研究所 ヘルスケア・ウェルネス事業本部
〒100-8141 東京都千代田区永田町2-10-3
電話 03-6858-1480 FAX 03-5157-2143

 
 

別添2 ページ1

別添2 ページ2

別添2 ページ3

別添2 ページ4

別添2 ページ5

別添2 ページ6

別添2 ページ7

別添2 ページ8

別添2 ページ9

別添2 ページ10

別添2 ページ11
 
ページトップへ