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民法の一部を改正する法律等の施行について
老介発0508第1号 老老発0508第1号

民法の一部を改正する法律等の施行について (老介発0508第1号 老老発0508第1号)

発出日:令和2年5月8日
更新日:令和2年5月8日
老介発0508第1号
老老発0508第1号
令和2年5月8日
 
都道府県知事 殿
 
厚生労働省老健局介護保険計画課長
( 公 印 省 略 )
厚生労働省老健局老人保健課長
( 公 印 省 略 )
 
 
民法の一部を改正する法律等の施行について
 
 
民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)により、民法(明治29年法律第89号)について、消滅時効の期間の統一化等の時効に関する規定の整備等が行われ、令和2年4月1日から施行されたところである。
また、民法における時効規定の整備に伴い、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律第45号)により、介護保険法(平成9年法律第123号。以下「介護保険法」という。)について、消滅時効の起算点を明確化する等の所要の改正が行われ、同じく令和2年4月1日から施行された。
民法の一部を改正する法律による改正後の民法(以下「改正民法」という。)及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正後の介護保険法(以下「改正介護保険法」という。)の主な内容及び留意点については下記のとおりであるので、十分御了知の上、管内市町村(特別区を含む。)を始め、関係者、関係団体等に対しその周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。
なお、この通知は、民法を所管する法務省と協議のうえ作成し、発出するものである。
 
 
 
 
第1 民法の一部改正について
1 消滅時効期間の見直し(改正民法第166条関係)
職業別の短期消滅時効が廃止され、債権一般について、権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年間、権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年間の消滅時効期間が整理され、いずれか早い方の経過によって時効が完成することとされた。
 
2 時効の中断・停止の概念の整理(改正民法第147条から第161条関係)
改正前の民法においては、時効の中断事由(請求、差押え、仮押え及び仮処分並びに承認)の効果には「時効の完成の猶予」と「新たな時効の進行(時効期間のリセット)」の2種類があり、それぞれ効果の内容も発生時期も異なり、複雑で分かりにくいことから、改正民法においては、「時効の完成の猶予」の効果を有する完成猶予事由と、「新たな時効の進行(時効期間のリセット)」の効果を有する更新事由に明確に整理された。
また、時効の中断事由とは別に定められていた時効の停止事由(婚姻の解消、天災等)についても、時効の中断の見直しと併せて整理されており、時効の停止事由は完成猶予事由とされた。
 
3 人の生命・身体の侵害又は人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権の取扱い(改正民法第167条及び第724条の2関係)
人の生命・身体の侵害又は人の生命・身体を害する不法行為による損害賠償請求権の時効期間について特則が設けられ、①権利を行使することができることを知った時又は損害及び加害者を知った時(主観的起算点)から5年間、②権利を行使することができる時(客観的起算点)から20年間とされた。
なお、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は、改正法附則第35条第2項により、施行日の時点で時効が完成していない場合には、改正民法第724条の2の規定に基づき、知った時から5年間又は権利を行使できる時から20年間となる一方で、施行日の時点で時効が完成している場合には、なお従前の例による(知った時から3年で消滅時効が完成する)ものとされた。
 
4 消滅時効期間の見直しに関する経過措置
改正法附則第10条第4項により、施行日前に債権が生じた場合(施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む。)におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例によることとされた。
 
第2 介護保険法の一部改正について
1 消滅時効の起算点の明確化
第1の1の改正に併せて、介護保険法第200条第1項において、保険料等徴収権、保険料等還付請求権及び保険給付を受ける権利の消滅時効期間が、権利を行使することができる時から進行することが明記された。なお、消滅時効の起算点について、従前の取扱いから変更を生じるものではない。
 
2 時効の中断・停止の整理
第1の2の改正に伴い、介護保険法第183条第2項及び第200条第2項において、審査請求は時効の「完成猶予及び更新」と、保険料等の督促は時効の「更新」と整理された。
 
第3 改正民法及び改正介護保険法の施行に伴う留意点について
第三者の行為によって給付事由が発生した場合の損害賠償請求権について、給付事由が第三者の行為によって生じた場合において、保険者が保険給付を行ったときは、その給付の価額の限度において、被保険者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を当該保険者が代位取得するが、この損害賠償請求権は人の生命・身体の侵害又は人の生命・身体を害する不法行為に係るものであるため、当該請求権の消滅時効については、第1の3の改正により、被保険者が権利を行使することができることを知った時又は損害及び加害者を知った時から5年間、権利を行使することができる時から20年間のいずれか早い方の経過によって完成することとなる。
 
 

 
(参考)
 
○ 民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)による改正後の民法(明治29年法律第89号) 抄
(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。
 
(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)
第百四十八条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 強制執行
二 担保権の実行
三 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
四 民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続
2 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。
 
(仮差押え等による時効の完成猶予)
第百四十九条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
一 仮差押え
二 仮処分
 
(催告による時効の完成猶予)
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
 
(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第百五十一条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
5 前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。
 
(承認による時効の更新)
第百五十二条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
 
(時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ者の範囲)
第百五十三条 第百四十七条又は第百四十八条の規定による時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
2 第百四十九条から第百五十一条までの規定による時効の完成猶予は、完成猶予の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
3 前条の規定による時効の更新は、更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
 
第百五十四条 第百四十八条第一項各号又は第百四十九条各号に掲げる事由に係る手続は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、第百四十八条又は第百四十九条の規定による時効の完成猶予又は更新の効力を生じない。
 
(未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予)
第百五十八条 時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
2 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。
 
(夫婦間の権利の時効の完成猶予)
第百五十九条 夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
 
(相続財産に関する時効の完成猶予)
第百六十条 相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
 
(天災等による時効の完成猶予)
第百六十一条 時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第百四十七条第一項各号又は第百四十八条第一項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
 
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
 
(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
第百六十七条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。
 
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
 
(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条の二 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
 
 
○ 民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号) 抄
附 則
(時効に関する経過措置)
第十条 施行日前に債権が生じた場合(施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む。以下同じ。)におけるその債権の消滅時効の援用については、新法第百四十五条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
2 施行日前に旧法第百四十七条に規定する時効の中断の事由又は旧法第百五十八条から第百六十一条までに規定する時効の停止の事由が生じた場合におけるこれらの事由の効力については、なお従前の例による。
3 新法第百五十一条の規定は、施行日前に権利についての協議を行う旨の合意が書面でされた場合(その合意の内容を記録した電磁的記録(新法第百五十一条第四項に規定する電磁的記録をいう。附則第三十三条第二項において同じ。)によってされた場合を含む。)におけるその合意については、適用しない。
4 施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による。
 
(不法行為等に関する経過措置)
第三十五条 旧法第七百二十四条後段(旧法第九百三十四条第三項(旧法第九百三十六条第三項、第九百四十七条第三項、第九百五十条第二項及び第九百五十七条第二項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)に規定する期間がこの法律の施行の際既に経過していた場合におけるその期間の制限については、なお従前の例による。
2 新法第七百二十四条の二の規定は、不法行為による損害賠償請求権の旧法第七百二十四条前段に規定する時効がこの法律の施行の際既に完成していた場合については、適用しない。
 
 
○ 民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律45号)による改正後の介護保険法(平成9年法律第123号) 抄
(審査請求)
第百八十三条 保険給付に関する処分(被保険者証の交付の請求に関する処分及び要介護認定又は要支援認定に関する処分を含む。)又は保険料その他この法律の規定による徴収金(財政安定化基金拠出金、納付金及び第百五十七条第一項に規定する延滞金を除く。)に関する処分に不服がある者は、介護保険審査会に審査請求をすることができる。
2 前項の審査請求は、時効の完成猶予及び更新に関しては、裁判上の請求とみなす。
 
(時効)
第二百条 保険料、納付金その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によって消滅する。
2 保険料その他この法律の規定による徴収金の督促は、時効の更新の効力を生ずる。
 
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