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病床ひっ迫時における高齢者施設での施設内感染発生時の留意点等について
事務連絡
病床ひっ迫時における高齢者施設での施設内感染発生時の留意点等について
事務連絡
病床ひっ迫時における高齢者施設での施設内感染発生時の留意点等について (事務連絡)
発出日:令和3年1月14日
更新日:令和3年1月14日
更新日:令和3年1月14日
事 務 連 絡
令和3年1月14日
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各
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都道府県
保健所設置市
特別区
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衛生主管部(局) 御中
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各
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都道府県
指定都市
中核市
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介護保険担当主管部(局) 御中
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厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策本部
厚生労働省老健局高齢者支援課
厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課
厚生労働省老健局老人保健課
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病床ひっ迫時における高齢者施設での施設内感染発生時の留意点等について
高齢者施設における新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた取組については、「社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点について(その2)」(令和2年4月7日付厚生労働省健康局結核感染症課ほか連名事務連絡、同年10月15日付一部改正)等においてお示ししているところです。
感染拡大に伴い入院患者が増加していることも踏まえ、病床ひっ迫時の留意事項等について下記のとおり整理しましたので、適切に対応いただくとともに、管内の高齢者施設に対して周知をお願いします。
記
1.基本的な考え方
○ 高齢者施設が提供するサービスは、入所者の方々やその家族の生活を継続する上で欠かせないものであり、感染拡大防止対策を徹底した上で、必要なサービスを継続的に提供できるようにすることが重要である。
○ このため、「高齢者施設における感染拡大防止対策の再徹底について」(令和2年11月24日付厚生労働省老健局高齢者支援課ほか連名事務連絡)等に基づき、これまで示してきた平時から感染時までのケア等の具体的な留意点、自主点検実施要領、机上訓練シナリオ、感染対策のポイントをまとめた動画や手引きを活用した感染防止対策等の再徹底を行い、感染予防及び感染拡大防止に引き続き取り組むことが求められる。
○ また、介護保険サービスに従事する職員がサービスを提供する際に留意すべき感染防止策について、研修プログラム・教材を令和2年11月9日より順次公開し、「介護保険サービス従業者向けの感染対策に関する研修について(その3)」(令和2年12月14日付厚生労働省老健局高齢者支援課ほか連名事務連絡)では感染症の専門家による実地研修に係る実施要綱を示しており、高齢者施設等においては、これらの研修も活用し一層の感染症対応力の向上に努めることが求められる。
○ 高齢者については、施設に入所している者も含め感染した場合には、原則入院としているところであるが、感染が拡大し、医療への負荷が高まっている中で、病床確保や都道府県全体の入院調整に最大限努力したうえで、なお、病床がひっ迫する場合には、高齢者等のうち、医師が入院の必要がないと判断した場合は宿泊療養(適切な場合は自宅療養)としても差し支えないこととしている(「11月以降の感染状況を踏まえた病床・宿泊療養施設確保計画に基づく病床・宿泊療養施設の確保及び入院措置の対象について(要請)」(令和2年11月22日付け厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡))。
○ 施設に入所している者についても、同様の場合には、やむを得ず施設内での入所を継続する場合があるが、入院措置の運用については、高齢者施設の構造設備や人員上、適切なゾーニングが困難な場合があること等の高齢者施設の特性等を勘案した上で、都道府県等において適切に判断いただきたい。
2.都道府県等における取組
○ 病床ひっ迫時については、やむを得ず施設内での入所を継続する場合があり、その際には、都道府県等において、可能な支援や当該施設の個別の状況(構造・人員等)も考慮し、別紙の留意点を踏まえた支援体制を整えることを前提とした上で、入所継続の指示を行うこと。
○ 入所継続中は、モニタリングと医療への迅速なアクセスの確保が重要であり、入所継続の指示を行っている施設であっても、症状の悪化・急変の徴候が認められる場合には入院を行うこと。
○ また、以下のとおり積極的に行政検査を実施すること。
・濃厚接触者と有症状者には全例検査を行う。
・無症状かつ濃厚接触に当たらない場合でも、可能な限り広範囲に検査を行う。
・特に集団感染が疑われる場合には、同一棟または同一施設の入所者及び職員の原則全員に対して、検査を実施することを積極的に検討する。
○ 支援体制整備や検査の実施にあたっては、衛生部局が中心となりつつ、施設の特性・構造等に係る情報収集、介護職員の応援、物資の供給等については福祉部局等も協働し、組織的な対応を行うこと。
○ 感染管理専門家の派遣、人員確保等に活用できる支援策について4にまとめており、積極的に活用すること。
3.高齢者施設における取組
○ 施設内で入所継続を行う場合には、感染の拡大を防止するため、保健所や派遣された感染管理専門家の指示に従って対応することとし、「社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点(その2)(一部改正)」における、別紙「社会福祉施設等(入所施設・居住系サービス)における感染防止に向けた対応について」の2.(5)②を参考にしつつ、特に、以下のような点について留意すること。
(1)生活空間等の区分け(いわゆるゾーニング)等
保健所や派遣された感染管理専門家と相談し、施設の構造、入所者の特性を考慮した上で、以下の点に留意して対応すること。
・ 感染している入所者、濃厚接触者及びその他の入所者の食事場所や生活空間、トイレ等を分けること。
・ 感染している入所者及び濃厚接触者やその居室が判別できるように工夫すること。
・ 居室からの出入りの際に、感染している入所者と、感染していない入所者(濃厚接触者及びその他の入所者)が接することがないようにすること。
・ 職員が滞在する場所と感染している入所者の滞在する場所が分かれるようにするとともに、入口などの動線も分かれるようにすること。
・ 感染している入所者に直接接触する場合または患者の排出物を処理する場合等は、サージカルマスク、眼の防護具、長袖ガウン、手袋を着用すること。
・ 感染している入所者、濃厚接触者及びその他の入所者の介護等に当たっては、可能な限り担当職員を分けて対応を行う。夜勤時等、分けることが困難な場合は、防護具の着用等、特段の注意を払うこと。
・ 個人防護具の効率的な利用等については、「サージカルマスク、長袖ガウン、ゴーグル及びフェイスシールドの例外的取扱いについて」(令和2年4月14日付け厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡)を、生活空間等区分けの考え方、個人防護具の着脱方法については、宿泊療養施設における非医療従事者向け感染対策の動画も参照すること。
(参考:「介護現場における感染対策の手引き 第1版」より(一部改変))
●ゾーニング*(区域をわける)
*清潔と不潔のエリアを明確にして区切ることで、不潔な区域から病原体を持ち出さないようすること。人や物の出入りを制限し、誰がみても「エリアが分かれている」ことがわかるようにすることが重要。
<介護職員の対応>
・感染症にかかった利用者がいるエリアと、そうでないエリアに分けて、感染が拡大しないようにします
・その際、各エリアを職員が行き来するのではなく、各エリアの受け持ちを決めます・感染症にかかった利用者が入るエリアの中でも、動線が交差しないように人の動きに注意します
・感染症にかかった利用者が使用した物品等は、そのエリア内で廃棄や消毒ができるようにします
・可能であれば、職員更衣室での接触を避けるため、各エリアに更衣室を設定することが推奨されます
・エリアを越えた利用者の移動は行わないようにします
<利用者の対応>
・感染症にかかった利用者がエリアの外にでないようにします
・専用のトイレを設け、利用者の使用後には消毒を行います
・原則、家族等の面会も断ります
●コホーティング*(隔離)
*コホーティングとは、感染患者をグループとしてまとめ、同じスタッフがケアにあたることで、施設内で周囲から区別・隔離すること。
<介護職員の対応>
・感染症にかかった利用者を個室管理にします。また、1か所の部屋に集めるなど、他の利用者へ感染が拡大しないようにします
・感染症にかかった利用者の部屋には、手袋やエプロンなど、標準予防策(スタンダード・プリコーション)が速やかに行えるように設置します
・入退室時には、手袋の着用の有無にかかわらず、手指衛生を行います
・退室する前に、手袋やエプロンを外し、感染性廃棄物に廃棄します
<利用者の対応>
・部屋の外に出ないようにします
・原則、家族等の面会も断ります
(2)入所者の健康管理等について
・ 健康管理の方法や、症状に変化があった場合等の相談先を含めた連絡・報告フロー等の対応方針を都道府県等に予め相談・確認し、同方針に従って対応すること。
・ 感染している入所者については、特に健康の状態や変化の有無等に留意が必要であり、保健所等の指示に従い、例えば、適時の検温、呼吸状態及び症状の変化の確認、パルスオキシメーター等も使用した状態の確認、状況に応じた必要な検査の実施等を行い、入所者から聞き取った内容とともにケア記録に記載すること。また、症状や状態に変化があった場合には、事前確認した方針に従い、速やかに医師、保健所等に相談すること。新型コロナウイルス感染症の患者は、状態が急変する可能性もあることに留意が必要であること。
・ 他の入所者についても、検温や状態の変化の確認を行うほか、咳や呼吸が苦しくなるなどの症状が出た場合には、速やかに医師、保健所等と相談すること。
(3)濃厚接触者となった職員の就業制限
○ 施設内感染等により濃厚接触者となった職員の就業制限は次のように推奨され、特に、入所継続時においては、過大に就業制限をかけて、施設機能を低減しないように配慮する。
・ 濃厚接触者となった職員は、最終曝露日から14日間自宅待機とし、健康観察の結果、症状の出現がなければ就業可とする。
・ 濃厚接触者とならなかった職員に就業制限をかける必要はないが、状況を踏まえて施設で判断する。マスク着用や手指衛生等の感染対策を徹底するとともに、発熱と症状を確認しながら就業することは可能である。
(4)情報の共有
・ 管理者は、職員体制、入所継続している感染者の状況、その他の入所者の状況、物資の状況等について、1日1回以上を目安に指定権者又は許可権者に報告を行うこと。
4.補正予算等による支援策
○ 感染者が発生した施設等への支援、発生時に備えた支援として、以下の事業等が活用可能であるため、積極的に活用すること。
(1)感染者発生時の医療従事者や感染管理専門家等の派遣
・ 保健所や自治体、地域の医療機関等を通じた専門家派遣、相談・支援体制確保
・ DMAT・DPAT等医療チーム派遣事業(新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)):DMAT・DPATや医療チームを新型コロナウイルス感染症患者が増加している医療機関等へ派遣する医療機関(派遣元)に対する支援を行うもの。また、クラスター発生時に、都道府県看護協会から当該施設への感染管理認定看護師等の派遣に係る費用等を支援。【別添1】
・ 感染症対策専門家派遣等事業:日本環境感染学会への委託事業。本事業を活用するために自治体への連絡を行う。支援を受ける高齢者施設がこの枠組みを活用するためには、地方自治体を介して学会に要請することが基本である。地方自治体は、派遣の必要性を高齢者施設の要請に基づいて判断し、学会に要請を伝える。
(2)感染者発生時の応援職員派遣
・ 新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所等に対するサービス継続支援事業:感染者が発生した施設等における事業継続に必要な人員確保のために必要な経費(職業紹介料、(割増)賃金・手当等)、感染者が発生した施設等に職員を応援派遣するための諸経費(職業紹介料、(割増)賃金・手当等)等を支援。人員不足が見込まれる場合に、本事業を活用し、臨時に看護職員等を雇用することも可能である。【別添2】
・ 社会福祉施設等への応援職員派遣支援事業(災害福祉支援ネットワーク構築推進等事業の特別対策事業):職員が不足する事業所と応援派遣の協力が可能な施設間の調整費用及び応援職員を派遣する場合の旅費や宿泊費用等を支援。【別添3】
・ 各都道府県で構築している応援体制の活用
(応援体制の構築に当たっては「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(介護分)」が活用可能)【別添4】
(3)発生時に備えた対応
・ 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(介護分):感染症対策を徹底した上で、サービスを提供するために必要な外部専門家等による研修実施、感染防止のための増員のため発生する追加的人件費等を支援。【別添4】
・ 地域医療介護総合確保基金・地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金:介護施設等において、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、簡易陰圧装置・換気設備の設置に必要な費用、感染が疑われる者同士のスペースを空間的に分離するための個室化に要する改修費等について補助。【別添5、6】
(別紙)
<高齢者施設に入所継続の指示を行う際の留意点>
1 対象施設
○ 介護医療院、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、認知症グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、軽費老人ホーム、養護老人ホーム
2 施設の構造設備の考慮
○ 専門家の助言の下、当該施設の構造(フロアの構造、多床室、ユニット、個室等)や応援を含めた人員体制の確保により、適切なゾーニングが可能であること。
3 医療・ケアに係る人員体制支援
○ 施設の人員配置状況も勘案しつつ、以下の体制を確保する。
・ 医師:必要時に診療・健康相談が可能な体制(オンコールでも可)
・ 看護師:適時の健康管理、状態の変化確認が可能な体制。日中は原則1人以上常駐、夜間はオンコールでも可(医療従事者が配置されている施設はその者による対応を基本)。ただし、施設職員の協力の下、医療従事者からの適切な助言の上で健康管理ができ、即時の相談体制が確保されている場合には、施設内感染の規模や入所者の状態を十分に勘案して、オンコール体制としても差し支えない。その際にはICTの活用も検討すること。
・ 介護職員:必要に応じて応援職員派遣
○ パルスオキシメーター等健康状態を把握するための検査機器の配備や使用法に関する助言を行うこと。
4 急変時等の対応方針の確認
○ 症状や状態に変化があった場合の相談・対応方針や医療機関へ移送が必要となった場合の移送手段、受入医療機関の候補等の事前確認。
5 感染拡大防止対策に関する専門家の派遣
○ 保健所や自治体、地域の医療機関等を通じて、ゾーニング等の感染拡大防止対策に関する専門家等を派遣。
6 必要な物資の供給
○ 防護具等について、施設から依頼があった場合の速やかな物資供給。
7 検査の実施
○ 当該施設の職員及び入所者に対する原則全員への検査の徹底。