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介護保険法施行規則第140条の63の6第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準について
老認発0319第2号
介護保険法施行規則第140条の63の6第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準について
老認発0319第2号
介護保険法施行規則第140条の63の6第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準について (老認発0319第2号)
発出日:令和3年3月19日
更新日:令和6年3月15日
更新日:令和6年3月15日
「介護保険法施行規則第140条の63の6第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準について」(令和6年3月15日老認発0315第4号)により廃止
老認発0319第2号
令和3年3月19日
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各都道府県介護保険主管部(局)長 殿
厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課長
( 公 印 省 略 )
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介護保険法施行規則第140条の63の6第1号に規定する厚生労働大臣が定める
基準について
介護保険法施行規則第140条の63の6第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準(令和3年厚生労働省告示第71号。以下「基準告示」という。)が3月15日に公布され、令和3年4月1日より適用されるところであるが、基準の趣旨及び内容は下記の通りであるので、御了知の上、管内の市町村、関係団体、関係機関等にその周知徹底を図るとともに、その運用に遺憾のないようにされたい。
記
第1 訪問型サービス及び通所型サービス
一 管理者及びサービス提供責任者の責務(基準告示第1条)
基準告示第1条において、サービス提供責任者は地域包括支援センター等に対して、訪問型サービスの提供に当たり把握した利用者の服薬状況や口腔機能等の利用者の心身の状態及び生活の状況に係る必要な情報の提供を行うこととされているが、情報の提供は、サービス担当者会議等を通じて行うことも差し支えない。必要な情報の内容については、
例えば、
・薬が大量に余っている又は複数回分の薬を一度に服用している
・薬の服用を拒絶している
・使いきらないうちに新たに薬が処方されている
・口臭や口腔内出血がある
・体重の増減が推測される見た目の変化がある
・食事量や食事回数に変化がある
・下痢や便秘が続いている
・皮膚が乾燥していたり湿疹等がある
・リハビリテーションの提供が必要と思われる状態にあるにも関わらず提供されていない
等の利用者の心身又は生活状況に係る情報が考えられるが、地域包括支援センター等に対して情報提供する内容は、サービス提供責任者が適切に判断することとする。なお、必要な情報の提供については、あらかじめ、サービス担当者会議等で地域包括支援センター等と調整しておくことが望ましい。
なお、サービス提供責任者は、利用者に対して適切な訪問型サービスを提供するために重要な役割を果たすことに鑑み、その業務を画一的に捉えるのではなく、訪問型サービス事業所の状況や実施体制に応じて適切かつ柔軟に業務を実施するよう留意するとともに、常に必要な知識の修得及び能力の向上に努めなければならない。
二 不当な働きかけの禁止(基準告示第2条)
基準告示第2条は、地域包括支援センター等に対する利益供与に当たらない場合であっても、訪問型サービス事業者が、ケアプラン等の作成又は変更に関し、地域包括支援センター等の保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員等又は被保険者に対して、利用者に必要のないサービスを位置付けるよう求めることなどの不当な働きかけを行ってはならないこととしたものである。具体的には、例えば、訪問型サービス事業者と地域包括支援センターが同一法人等である場合や同一の建物等に所在する場合において、当該利用者の状況を勘案することなく、自らが提供する訪問型サービスをケアプラン等に位置付けるよう働きかけるような場合が該当する。
三 介護保険等関連情報の活用とPDCAサイクルの推進について(基準告示第3条)
基準告示第3条は、訪問型サービス及び通所型サービス(以下「訪問型サービス等」という。)の提供に当たっては、介護保険法(平成9年法律第123号)第118条の2第1項に規定する介護保険等関連情報等を活用し、事業所単位でPDCAサイクルを構築・推進することにより、提供するサービスの質の向上に努めなければならないこととしたものである。
この場合において、「科学的介護情報システム(LIFE:Long-term care Information system For Evidence)」に情報を提出し、当該情報及びフィードバック情報を活用することが望ましい。
四 勤務体制の確保等(ハラスメントの防止)(基準告示第4条)
基準告示第4条は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)第11条第1項及び労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)第30条の2第1項の規定に基づき、事業主には、職場におけるセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント(以下「職場におけるハラスメント」という。)の防止のための雇用管理上の措置を講じることが義務づけられていることを踏まえ、規定したものである。事業主が講ずべき措置の具体的内容及び事業主が講じることが望ましい取組については、次のとおりとする。なお、セクシュアルハラスメントについては、上司や同僚に限らず、利用者やその家族等から受けるものも含まれることに留意すること。
⑴ 事業主が講ずべき措置の具体的内容
事業主が講ずべき措置の具体的な内容は、事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)及び事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号。以下「パワーハラスメント指針」という。))において規定されているとおりであるが、特に留意されたい内容は以下のとおりである。
イ 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
職場におけるハラスメントの内容及び職場におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業者に周知・啓発すること。
ロ 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
相談に対応する担当者をあらかじめ定めること等により、相談への対応のための窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
なお、パワーハラスメント防止のための事業主の方針の明確化等の措置義務については、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第24号)附則第3条の規定により読み替えられた労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第30条の2第1項の規定により、中小企業(医療・介護を含むサービス業を主たる事業とする事業主については資本金が5000万円以下又は常時使用する従業員の数が100人以下の企業)は、令和4年4月1日から義務化となり、それまでの間は努力義務とされているが、適切な勤務体制の確保等の観点から、必要な措置を講じるよう努められたい。
⑵ 事業主が講じることが望ましい取組について
パワーハラスメント指針においては、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)の防止のために、事業主が雇用管理上の配慮として行うことが望ましい取組の例として、①相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、②被害者への配慮のための取組(メンタルヘルス不調への相談対応、行為者に対して1人で対応させない等)及び③被害防止のための取組(マニュアル作成や研修の実施等、業種・業態等の状況に応じた取組)が規定されている。介護現場では特に、利用者又はその家族等からのカスタマーハラスメントの防止が求められていることから、⑴(事業主が講ずべき措置の具体的内容)の必要な措置を講じるにあたっては、「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」、「(管理職・職員向け)研修のための手引き」等を参考にした取組を行うことが望ましい。この際、上記マニュアルや手引きについては、以下の厚生労働省ホームページに掲載しているので参考にされたい。
加えて、都道府県において、地域医療介護総合確保基金を活用した介護職員に対する悩み相談窓口設置事業や介護事業所におけるハラスメント対策推進事業を実施している場合、事業主が行う各種研修の費用等について助成等を行っていることから、事業主はこれらの活用も含め、介護事業所におけるハラスメント対策を推進することが望ましい。
五 業務継続計画の策定等(基準告示第5条)
⑴ 基準告示第5条は、訪問型サービス事業者等は、感染症や災害が発生した場合にあっても、利用者が継続して訪問型サービス等の提供を受けられるよう、訪問型サービス等の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という。)を策定するとともに、当該業務継続計画に従い、従業者(訪問型サービスにあっては、登録訪問介護員等も含む)に対して、必要な研修及び訓練(シミュレーション)を実施しなければならないこととしたものである。なお、業務継続計画の策定、研修及び訓練の実施については、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない。また、感染症や災害が発生した場合には、従業者が連携し取り組むことが求められることから、研修及び訓練の実施にあたっては、全ての従業者が参加できるようにすることが望ましい。
なお、業務継続計画の策定等に係る義務づけの適応に当たっては、3年間の経過措置を設けており、令和6年3月31日までの間は、努力義務とされている。
⑵ 業務継続計画には、以下の項目等を記載すること。なお、各項目の記載内容については、「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」及び「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」を参照されたい。また、想定される災害等は地域によって異なるものであることから、項目については実態に応じて設定すること。なお、感染症及び災害の業務継続計画を一体的に策定することを妨げるものではない。
① 感染症に係る業務継続計画
イ 平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)
ロ 初動対応
ハ 感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)
② 災害に係る業務継続計画
イ 平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)
ロ 緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)
ハ 他施設及び地域との連携
⑶ 研修の内容は、感染症及び災害に係る業務継続計画の具体的内容を職員間に共有するとともに、平常時の対応の必要性や、緊急時の対応にかかる理解の励行を行うものとする。
職員教育を組織的に浸透させていくために、定期的(年1回以上)な教育を実施するとともに、新規採用時には別に研修を実施することが望ましい。また、研修の実施内容についても記録すること。なお、感染症の業務継続計画に係る研修については、感染症の予防及びまん延の防止のための研修と一体的に実施することも差し支えない。
⑷ 訓練(シミュレーション)においては、感染症や災害が発生した場合において迅速に行動できるよう、業務継続計画に基づき、事業所内の役割分担の確認、感染症や災害が発生した場合に実践するケアの演習等を定期的(年1回以上)に実施するものとする。なお、感染症の業務継続計画に係る訓練については、感染症の予防及びまん延の防止のための訓練と一体的に実施することも差し支えない。
訓練の実施は、机上を含めその実施手法は問わないものの、机上及び実地で実施するものを適切に組み合わせながら実施することが適切である。
六 感染症対策(基準告示第6条)
基準告示第6条に規定する感染症が発生し、又はまん延しないように講ずるべき措置については、具体的には次の⑴から⑶までの取扱いとすること。各事項について、同条に基づき事業所に実施が求められるものであるが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない。
なお、感染症の予防及びまん延の防止のための措置に係る義務付けの適用に当たっては、3年間の経過措置を設けており、令和6年3月31日までの間は、努力義務とされている。
⑴ 感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会
当該事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会(以下「感染対策委員会」という。)であり、感染対策の知識を有する者を含む、幅広い職種により構成することが望ましく、特に、感染症対策の知識を有する者については外部の者も含め積極的に参画を得ることが望ましい。構成メンバーの責任及び役割分担を明確にするとともに、専任の感染対策を担当する者(以下「感染対策担当者」という。)を決めておくことが必要である。感染対策委員会は、利用者の状況など事業所の状況に応じ、おおむね6月に1回以上、定期的に開催するとともに、感染症が流行する時期等を勘案して必要に応じ随時開催する必要がある。
感染対策委員会は、テレビ電話装置等(リアルタイムでの画像を介したコミュニケーションが可能な機器をいう)を活用して行うことができるものとする。この際、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。
なお、感染対策委員会は、他の会議体を設置している場合、これと一体的に設置・運営することとして差し支えない。また、事業所に実施が求められるものであるが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない。
⑵ 感染症の予防及びまん延の防止のための指針
当該事業所における「感染症の予防及びまん延の防止のための指針」には、平常時の対策及び発生時の対応を規定する。
平常時の対策としては、事業所内の衛生管理(環境の整備等)、ケアにかかる感染対策(手洗い、標準的な予防策)等、発生時の対応としては、発生状況の把握、感染拡大の防止、医療機関や保健所、市町村における事業所関係課等の関係機関との連携、行政等への報告等が想定される。また、発生時における事業所内の連絡体制や上記の関係機関への連絡体制を整備し、明記しておくことも必要である。
なお、それぞれの項目の記載内容の例については、「介護現場における感染対策の手引き」を参照されたい。
⑶ 感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練
従業者に対する「感染症の予防及びまん延の防止のための研修」の内容は、感染対策の基礎的内容等の適切な知識を普及・啓発するとともに、当該事業所における指針に基づいた衛生管理の徹底や衛生的なケアの励行を行うものとする。
職員教育を組織的に浸透させていくためには、当該事業所が定期的な教育(年1回以上)を実施するとともに、新規採用時には感染対策研修を実施することが望ましい。また、研修の実施内容についても記録することが必要である。
なお、研修の実施は、厚生労働省「介護施設・事業所の職員向け感染症対策力向上のための研修教材」等を活用するなど、事業所内で行うものでも差し支えなく、当該事業所の実態に応じ行うこと。また、平時から、実際に感染症が発生した場合を想定し、発生時の対応について、訓練(シミュレーション)を定期的(年1回以上)に行うことが必要である。訓練においては、感染症発生時において迅速に行動できるよう、発生時の対応を定めた指針及び研修内容に基づき、事業所内の役割分担の確認や、感染対策をした上でのケアの演習などを実施するものとする。
なお、訓練の実施は、机上を含めてその実施手法は問わないものの、机上及び実地で実施するものを適切に組み合わせながら実施することが適切である。
七 掲示(基準告示第7条)
① 基準告示第7条第1項は、訪問型サービス事業者等は、運営規程の概要、従業者の勤務の体制、事故発生時の対応、苦情処理の体制、提供するサービスの第三者評価の実施状況(実施の有無、実施した直近の年月日、実施した評価機関の名称、評価結果の開示状況)等の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を事業所の見やすい場所に掲示することを規定したものであるが、次に掲げる点に留意する必要がある。
イ 事業所の見やすい場所とは、重要事項を伝えるべき介護サービスの利用申込者、利用者又はその家族に対して見やすい場所のことであること。
ロ 従業者の勤務の体制については、職種ごと、常勤・非常勤ごと等の人数を掲示する趣旨であり、従業者の氏名まで掲示することを求めるものではないこと。
② 同条第2項は、重要事項を記載したファイル等を介護サービスの利用申込者、利用者又はその家族等が自由に閲覧可能な形で当該事業所内に備え付けることで同条第1項の掲示に代えることができることを規定したものである。
八 高齢者向け集合住宅等における適正なサービス提供(基準告示第8条)
基準告示第8条は、高齢者向け集合住宅等と同一の建物に所在する訪問型サービス事業所等が当該高齢者向け集合住宅等に居住する要支援者等にサービスを提供する場合、当該高齢者向け集合住宅等に居住する要支援者等のみを対象としたサービス提供が行われないよう、介護保険法施行規則等の一部を改正する省令(平成27年厚生労働省令第4号)による改定前の「指定介護予防サービス等の事業の人員、設備及び運営並びに指定介護予防サービス等に係る介護予防の効果的な支援の方法に関する基準」(平成18年厚生労働省令第35号。以下「旧基準省令」という。)第9条の正当な理由に相当する理由がある場合を除き、地域包括ケア推進の観点から地域の要支援者等にもサービス提供を行うよう努めなければならないことを定めたものである。なお、こうした趣旨を踏まえ、地域の実情に応じて、市町村が指定の基準等を定める場合において、例えば、当該事業所の利用者のうち、一定割合以上を当該集合住宅以外の利用者とするよう努める、あるいはしなければならない等の規定を設けることは差し支えないものである。この際、自立支援や重 度化防止等につながるようなサービス提供がなされているか等、サービスの質が担保されているかが重要であることに留意すること。
九 虐待の防止(基準告示第9条)
⑴ 基準告示第9条に規定する「運営規定」については、⑵に記載された虐待の防止に係る、組織内の体制(責任者の選定、従業者への研修方法や研修計画等)や虐待又は虐待が疑われる事案(以下「虐待等」という。)が発生した場合の対応方法等を指す内容であること。
⑵ 基準告示第9条第1号から第4号に定める措置は、虐待の防止に関して規定したものである。虐待は、介護保険法の目的の一つである高齢者の尊厳の保持や、高齢者の人格の尊重に深刻な影響を及ぼす可能性が極めて高く、訪問型サービス事業者等は虐待の防止のために必要な措置を講じなければならない。虐待を未然に防止するための対策及び発生した場合の対応等については、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(平成17年法律第124号。以下「高齢者虐待防止法」という。)に規定されているところであり、その実効性を高め、利用者の尊厳の保持・人格の尊重が達成されるよう、次に掲げる観点から事業所における虐待の防止に関する措置を講じるものとする。
・虐待の未然防止
訪問型サービス事業者等は高齢者の尊厳保持・人格尊重に対する配慮を常に心がけながらサービス提供にあたる必要があり、研修等を通じて、従業者にそれらに関する理解を促す必要がある。同様に、従業者が高齢者虐待防止法等に規定する養介護事業の従業者としての責務・適切な対応等を正しく理解していることも重要である。
・虐待等の早期発見
訪問型サービス事業所等の従業者は、虐待等又はセルフ・ネグレクト等の虐待に準ずる事案を発見しやすい立場にあることから、虐待等を早期に発見できるよう、必要な措置(虐待等に対する相談体制、市町村の通報窓口の周知等)が取られていることが望ましい。また、利用者及びその家族からの虐待等に係る相談、利用者から市町村への虐待の届出について、適切な対応をすること。
・虐待等への迅速かつ適切な対応
虐待が発生した場合には、速やかに市町村の窓口に通報される必要があり、訪問型サービス事業者等は当該通報の手続が迅速かつ適切に行われ、市町村等が行う虐待等に対する調査等に協力するよう努めることとする。
以上の観点を踏まえ、虐待等の防止・早期発見に加え、虐待等が発生した場合はその再発を確実に防止するために次に掲げる事項を実施するものとする。
なお、当該義務付けの適用に当たっては、3年間の経過措置を設けており、令和6年3月31日までの間は、努力義務とされている。
① 虐待の防止のための対策を検討する委員会(第1号)
「虐待の防止のための対策を検討する委員会」(以下「虐待防止検討委員会」という。)は、虐待等の発生の防止・早期発見に加え、虐待等が発生した場合はその再発を確実に防止するための対策を検討する委員会であり、管理者を含む幅広い職種で構成する。構成メンバーの責務及び役割分担を明確にするとともに、定期的に開催することが必要である。また、虐待防止の専門家を委員として積極的に活用することが望ましい。
一方、虐待等の事案については、虐待等に係る諸般の事情が、複雑かつ機微なものであることが想定されるため、その性質上、一概に従業者に共有されるべき情報であるとは限らず、個別の状況に応じて慎重に対応することが重要である。
なお、虐待防止検討委員会は、他の会議体を設置している場合、これと一体的に設置・運営することとして差し支えない。また、事業所に実施が求められるものであるが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない。
また、虐待防止検討委員会は、テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。この際、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。
虐待防止検討委員会は、具体的には、次のような事項について検討することとする。その際、そこで得た結果(事業所における虐待に対する体制、虐待等の再発防止策等)は、従業者に周知徹底を図る必要がある。
イ 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関すること
ロ 虐待の防止のための指針の整備に関すること
ハ 虐待の防止のための職員研修の内容に関すること
ニ 虐待等について、従業者が相談・報告できる体制整備に関すること
ホ 従業者が高齢者虐待を把握した場合に、市町村への通報が迅速かつ適切に行われるための方法に関すること
ヘ 虐待等が発生した場合、その発生原因等の分析から得られる再発の確実な防止策に関すること
ト 前号の再発の防止策を講じた際に、その効果についての評価に関すること
② 虐待の防止のための指針(第2号)
訪問型サービス事業者等が整備する「虐待の防止のための指針」には、次のような項目を盛り込むこととする。
イ 事業所における虐待の防止に関する基本的考え方
ロ 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項
ハ 虐待の防止のための職員研修に関する基本方針
ニ 虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針
ホ 虐待等が発生した場合の相談・報告体制に関する事項
ヘ 成年後見制度の利用支援に関する事項
ト 虐待等に係る苦情解決方法に関する事項
チ 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項
リ その他虐待の防止の推進のために必要な事項
③ 虐待の防止のための従業者に対する研修(第3号)
従業者に対する虐待の防止のための研修の内容としては、虐待等の防止に関する基礎的内容等の適切な知識を普及・啓発するものであるとともに、当該訪問型サービス事業所等における指針に基づき、虐待の防止の徹底を行うものとする。
職員教育を組織的に徹底させていくためには、当該訪問型サービス事業者等が指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な研修(年1回以上)を実施するとともに、新規採用時には必ず虐待の防止のための研修を実施することが重要である。
また、研修の実施内容についても記録することが必要である。研修の実施は、事業所内での研修で差し支えない。
④ 虐待の防止に関する措置を適切に実施するための担当者(第4号)
訪問型サービス事業所等における虐待を防止するための体制として、①から③までに掲げる措置を適切に実施するため、専任の担当者を置くことが必要である。当該担当者としては、虐待防止検討委員会の責任者と同一の従業者が務めることが望ましい。
十 認知症介護基礎研修(基準告示第10条)
基準告示第10条は、通所型サービス事業者に、介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を有さない者について、認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じることを義務づけることとしたものであり、これは、介護に関わる全ての者の認知症対応力を向上させ、認知症についての理解の下、本人主体の介護を行い、認知症の人の尊厳の保障を実現していく観点から実施するものであること。
当該義務付けの対象とならない者は、各資格のカリキュラム等において、認知症介護に関する基礎的な知識及び技術を習得している者とすることとし、具体的には、同条において規定されている看護師、准看護師、介護福祉士、介護支援専門員、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者に加え、介護職員基礎研修課程又は訪問介護員養成研修一級課程・二級課程修了者、社会福祉士、医師、歯科医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師等とする。
また、当該義務付けの適用に当たっては、3年間の経過措置を設けており、令和6年3月31日までの間は、努力義務とされている。通所型サービス事業者は、令和6年3月31日までに医療・福祉関係資格を有さない全ての従業者に対し認知症介護基礎研修を受講させるための必要な措置を講じなければならない。また、新卒採用、中途採用を問わず、事業所が新たに採用した従業者(医療・福祉関係資格を有さない者に限る。)に対する当該義務付けの適用については、採用後1年間の猶予期間を設けることとし、採用後1年を経過するまでに認知症介護基礎研修を受講させることとする(この場合についても、令和6年3月31日までは努力義務で差し支えない)。
十一 非常災害対策(基準告示第11条)
⑴ 基準告示第11条は、通所型サービス事業者は、非常災害に際して必要な具体的計画の策定、関係機関への通報及び連携体制の整備、避難、救出訓練の実施等の対策の万全を期さなければならないこととしたものである。関係機関への通報及び連携体制の整備とは、火災等の災害時に、地域の消防機関へ速やかに通報する体制をとるよう従業員に周知徹底するとともに、日頃から消防団や地域住民との連携を図り、火災等の際に消火・避難等に協力してもらえるような体制作りを求めることとしたものである。なお「非常災害に関する具体的計画」とは、消防法施行規則第3条に規定する消防計画(これに準ずる計画を含む。)及び風水害、地震等の災害に対処するための計画をいう。この場合、消防計画の策定及びこれに基づく消防業務の実施は、消防法第8条の規定により防火管理者を置くこととされている通所型サービス事業所にあってはその者に行わせるものとする。また、防火管理者を置かなくてもよいこととされている通所型サービス事業所においても、防火管理について責任者を定め、その者に消防計画に準ずる計画の樹立等の業務を行わせるものとする。
⑵ 同条第2項は、通所型サービス事業者が前項に規定する避難、救出その他の訓練の実施に当たって、できるだけ地域住民の参加が得られるよう努めることとしたものであり、そのためには、日頃から地域住民との密接な連携体制を確保するなど、訓練の実施に協力を得られる体制づくりに努めることが必要である。訓練の実施に当たっては、消防関係者の参加を促し、具体的な指示を仰ぐなど、より実効性のあるものとすること。
十二 地域との連携(基準告示第12条)
基準告示第12条は、通所型サービスの事業が地域に開かれた事業として行われるよう、通所型サービス事業者は、地域の住民やボランティア団体等との連携及び協力を行う等の地域との交流に努めなければならないこととしたものである。
十三 電磁的記録(基準告示第13条)
⑴ 電磁的記録について
基準告示第13条第1項は、訪問型サービス事業者等及び訪問型サービス等の提供に当たる者等(以下「事業者等」という。)の書面の保存等に係る負担の軽減を図るため、事業者等は、旧基準省令及び基準告示で規定する書面(被保険者証に関するものを除く。)の作成、保存等を次に掲げる電磁的記録により行うことができることとしたものである。
① 電磁的記録による作成は、事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法または磁気ディスク等をもって調製する方法によること。
② 電磁的記録による保存は、以下のいずれかの方法によること。
イ 作成された電磁的記録を事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法
ロ 書面に記載されている事項をスキャナ等により読み取ってできた電磁的記録を事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法
③ その他、基準告示第13条第1項において電磁的記録により行うことができるとされているものは、①及び②に準じた方法によること。
④ また、電磁的記録により行う場合は、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。
⑵ 電磁的方法について
基準告示第13条第2項は、利用者及びその家族等(以下「利用者等」という。)の利便性向上並びに事業者等の業務負担軽減等の観点から、事業者等は、書面で行うことが規定されている又は想定される交付等(交付、説明、同意、承諾、締結その他これに類するものをいう。)について、事前に利用者等の承諾を得た上で、次に掲げる電磁的方法によることができることとしたものである。
① 電磁的方法による交付は、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第8条第2項から第6項までの規定に準じた方法によること。
② 電磁的方法による同意は、例えば電子メールにより利用者等が同意の意思表示をした場合等が考えられること。なお、「押印についてのQ&A(令和2年6月19日内閣府・法務省・経済産業省)」を参考にすること。
③ 電磁的方法による締結は、利用者等・事業者等の間の契約関係を明確にする観点から、書面における署名又は記名・押印に代えて、電子署名を活用することが望ましいこと。なお、「押印についてのQ&A(令和2年6月19日内閣府・法務省・経済産業省)」を参考にすること。
④ その他、基準告示第13条第2項において電磁的方法によることができるとされているものは、①から③までに準じた方法によること。ただし、基準告示又はこの通知の規定により電磁的方法の定めがあるものについては、当該定めに従うこと。
⑤ また、電磁的方法による場合は、個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス」、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。
第2 その他の事項
訪問型サービス等における①人員、②設備及び③運営に関する基準については、この通知及び平成30年度介護報酬改定による改正前の「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(平成11年9月17日老企第25号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)第4の二の1及び3に記載する事項を除き、令和3年度介護報酬改定による改正後の「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」第1の基準の性格、第2の総論及び第3に記載した訪問介護及び通所介護に係る取扱いと同様であるので、同通知第1、第2及び第3の該当部分を参照されたい。