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要介護認定における「認定調査票記入の手引き」、「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について
老老発0816第1号

要介護認定における「認定調査票記入の手引き」、「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について (老老発0816第1号)

発出日:令和3年8月16日
更新日:令和3年8月16日
老老発0816第1号
令和3年8月16日
 
各 
 
都道府県
指定都市
 
 介護保険主管部(局)長 殿
 
 
厚生労働省老健局老人保健課長
( 公 印 省 略 )
 
 
 
要介護認定における「認定調査票記入の手引き」、「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について
 
 
要介護認定等に係る申請等については、
・「要介護認定等の実施について」(平成21年3月31日老発第0331第5号厚生労働省老健局長通知。最終改正令和3年4月1日。)により、認定調査票(概況調査)及び主治医意見書の様式の見直しについてお示しし、
・ 介護保険法施行令等の一部を改正する政令等の施行に当たって、「介護保険法施行令等の一部を改正する政令等の公布について(通知)」(令和3年4月1日老発0401第5号厚生労働省老健局長通知)により、その趣旨及び内容をお示ししたところである。
今般、見直し後の認定調査票(概況調査)及び主治医意見書の様式の記入方法等及び介護保険法施行令等の一部改正を踏まえた特定疾病に係る診断基準について明確化するため、別添の通り見直しを行うこととしたので通知する。
当該内容について御了知の上、貴管内市区町村にその周知徹底を図られたい。
 
 
 

 
 別添 
 
「要介護認定における「認定調査票記入の手引き」、「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について」の一部改正についての新旧対照表
(傍線部分は改正部分)
 
改 正 前
改 正 後
(別添1)認定調査票記入の手引き
Ⅰ、Ⅱ(略)
Ⅲ 1 1)~4)(1)(略)
(2)施設利用の場合
(別添1)認定調査票記入の手引き
Ⅰ、Ⅱ(略)
Ⅲ 1 1)~4)(1)(略)
(2)施設利用の場合
施設・病院に入所(院)している場合は、該当する施設等の□欄に∨印をつけ、施設(病院)名、住所及び電話番号を記入する。
施設・病院に入所(院)している場合は、該当する施設の□欄に∨印をつけ、施設等名、住所及び電話番号を記入する。
なお、医療機関における病床の種別(精神病床等)や障害福祉サービス(グループホーム等)等、調査対象者の状況について、介護の必要性を判断する際に参考となる事項についても記入する。
5)置かれている環境等(Ⅳ)
調査対象者の家族状況、調査対象者の居住環境、日常的に使用する機器・器械の有無等について特記すべき事項を記入する。置かれている状況等は、介護認定審査会資料にて情報提供されることがある。
ただし、置かれている環境等を根拠に二次判定での変更を行うことは認められておらず、あくまで参考の情報として扱う。
5)置かれている環境等(Ⅳ)
調査対象者の家族状況、調査対象者の居住環境、日常的に使用する機器・器械の有無等について特記すべき事項を記入する。なお、家族状況のチェック欄の選択にあたっては、在宅の場合に家族と同居することとなるか否かの観点で選択する。そのため、施設入所者であっても、配偶者不在等により、在宅において家族と同居することが想定されない場合は「独居」を選択する。置かれている状況等は、介護認定審査会資料にて情報提供されることがある。
ただし、置かれている環境等を根拠に二次判定での変更を行うことは認められておらず、あくまで参考の情報として扱う。
 
Ⅲ 2(略)
 
(別添2)主治医意見書記入の手引き
1(略)
介護認定審査会では、医療関係者以外の委員もその内容を理解した上で審査判定を行うことになりますので、なるべく難解な専門用語を用いることは避け、平易にわかりやすく記入してください。
 
Ⅲ 2(略)
 
(別添2)主治医意見書記入の手引き
1(略)
介護認定審査会では、医療関係者以外の委員もその内容を理解した上で審査判定を行うことになりますので、なるべく難解な専門用語を用いることは避け、楷書で平易にわかりやすく記入してください。
 
2(略)
 
Ⅲ 記入マニュアル
0.基本情報
「申請者の氏名」等
(略)
・認知症日常生活自立度を基準とした加算における日常生活自度の決定
 
2(略)
 
Ⅲ 記入マニュアル
0.基本情報
「申請者の氏名」等
(略)
・認知症日常生活自立度を基準とした加算における日常生活自度の決定
(新設)
・レセプト情報等との連結解析や国保データベース(KDB)システムでの利活用による保険者の支援
(略)
 
「医師氏名」等
主治医意見書を記入する主治医の所属する医療機関の所在地及び名称、電話番号、主治医の氏名を記入してください。
(略)
 
「医師氏名」等
主治医意見書を記入する主治医の所属する医療機関の所在地及び名称、電話番号、FAX、主治医の氏名を記入してください。
なお、医師氏名の欄には、押印の必要はありません。また、医療機関の所在地及び名称等は、ゴム印等を用いても構いません。
ただし、医師本人の記入であることを確認する必要があることから、医師氏名のみは医師本人による自署をお願いします。氏名にもゴム印等を用いる場合は、押印してください。
なお、医師氏名の欄には、押印の必要はありません。また、医療機関の所在地及び名称等は、ゴム印等を用いても構いません。
ただし、医師本人の記入であることを確認する必要があることから、医師氏名のみは医師本人による自署をお願いします。
 
1.傷病に関する意見
(1)(略)
(2)症状としての安定性
上記(1)で記入した「生活機能低下の直接の原因となっている傷病による症状」の安定性について、該当する□にレ印をつけてください。
脳卒中や心疾患、外傷等の急性期や慢性疾患の急性増悪期等で、積極的な医学的管理を必要とすることが予想される場合は「不安定」を選択し、具体的な内容を自由記載欄に記載してください。記載欄が不足する場合は「(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容」に記載してください。
現在の全身状態から急激な変化が見込まれない場合は「安定」を選択してください。不明の場合は「不明」を選択してください。
なお、症状には日内変動や日差変動があるため、介護者からの情報にも留意してください。
 
1.傷病に関する意見
(1)(略)
(2)症状としての安定性
上記(1)で記入した「生活機能低下の直接の原因となっている傷病による症状」の安定性について、該当する□にレ印をつけてください。
脳卒中や心疾患、外傷等の急性期や慢性疾患の急性増悪期等で、積極的な医学的管理を必要とすることが予想される場合は「不安定」を選択し、具体的な内容を自由記載欄に記載してください。例えば、進行性のがんで、急激な悪化が見込まれる場合については「5.特記すべき事項」ではなく、本項に記載することが望まれます。記載欄が不足する場合は「(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容」に記載してください。
現在の全身状態から急激な変化が見込まれない場合は「安定」を選択してください。不明の場合は「不明」を選択してください。
なお、症状には日内変動や日差変動があるため、介護者からの情報にも留意してください。特に精神疾患患者にあっては、可能な限り日頃の状況を把握している者に立会を求め、症状の変動についての情報にも留意する。
(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容
上記「(1)1.診断名」に記入した生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容については、生活機能低下と関連が深い事項について要点を簡潔に記入してください。
(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容
上記「(1)1.診断名」に記入した生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容については、生活機能低下と関連が深い事項について要点を簡潔に記入してください。
また、「2.」「3.」の診断名についても、生活機能低下の原因となっている傷病について記入してください。
 
2(略)
3.心身の状態に関する意見
(1)略
(2)認知症の中核症状
 
2(略)
3.心身の状態に関する意見
(1)略
(2)認知症の中核症状(認知症以外の疾患で同様の症状を認める場合を含む)
(3)~(5)(略)
4.生活機能とサービスに関する意見
(1)~(4)(略)
(5)医学的管理の必要性
医学的観点から、申請者が利用する必要があると考えられる医療系サービスについて、以下の各サービスの内容を参考に、該当するサービスの□にレ印をつけてください。各サービスについては、予防給付で提供されるサービスも含みます。
(3)~(5)略
4.生活機能とサービスに関する意見
(1)~(4)略
(5)医学的管理の必要性
医学的観点から、申請者が利用する必要があると考えられる医療系サービスについて、以下の各サービスの内容を参考に、該当するサービスの□にレ印をつけてください。各サービスについては、予防給付で提供されるサービスも含みます。特 記すべき項目がない場合は、「特記すべき項目なし」の□にレ印をつけてください。
通所リハビリテーション
(略)
(新設)
(新設)
(新設)
(新設)
短期入所療養介護
(略)
通所リハビリテーション
(略)
老人保健施設
施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするとともに、その者の居宅における生活への復帰を目指すものをいう。
介護医療院
要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行う。
短期入所療養介護
(略)
(6)サービス提供時における医学的観点からの留意事項
申請者がサービスを利用するにあたって、医学的観点から、特に留意する点があれば、「□あり」にレ印をつけ、サービスを提供する上で不安感を助長させないよう、(   )内に具体的な留意事項を記載してください。(略)
(6)サービス提供時における医学的観点からの留意事項
申請者がサービスを利用するにあたって、医学的観点から、特に留意する点があれば、該当するものの□にレ印をつけ、サービスを提供する上で不安感を助長させないよう、(   )内に具体的な留意事項を記載してください。特記すべき留意事項がない場合は、「特記すべき項目なし」の□にレ印をつけてください。(略)
(7)(略)
 
5.特記すべき事項
(略)
また、専門医に意見を求めた場合にはその結果、内容を簡潔に記入してください。情報提供書や身体障害者申請診断書等の写しを添付していただいても構いません。なお、その場合は情報提供者の了解をとるようにしてください。
(7)(略)
 
5.特記すべき事項
(略)
また、専門医に意見を求めた場合にはその結果、内容を簡潔に記入してください。情報提供書や障害者手帳の申請に用いる診断書等の写しを添付していただいても構いません。なお、その場合は情報提供者の了解をとるようにしてください。
(略)
 
(別添3-1)(略)
 
(別添3-2)
1~5(略)
 
(略)
 
(別添3-1)(略)
 
(別添3-2)
1~5(略)
 
6.初老期における認知症
「アメリカ合衆国精神医学会作成 精神疾患の分類と診断の手引き第4版(DSM-Ⅳ-TR)」による基本的な診断基準を満たすものであって、以下の疾病によるものを除く。
6.初老期における認知症
「精神疾患の分類と診断の手引き 第版(DSM--TR)」(アメリカ合衆国精神医学会作成)といった医学の専門家等において広くコンセンサスの得られた診断基準を用いて医師が診断するものであって、以下のような加齢によって生ずる心身の変化に起因しない疾病によるものを除く。
1.外傷性疾患
頭部外傷、硬膜下血腫など
2.中毒性疾患
有機溶剤、金属、アルコールなど
3.内分泌疾患
甲状腺機能低下症、Cushing病、Addison病など
4.栄養障害
ビタミンB12欠乏症、ペラグラ脳症など
1.外傷性疾患
頭部外傷、硬膜下血腫など
2.中毒性疾患
有機溶剤、金属、アルコールなど
3.内分泌疾患
甲状腺機能低下症、Cushing病、Addison病など
4.栄養障害
ビタミンB12欠乏症、ペラグラ脳症など
 
診断基準
(1)以下のa.及びb.の両者による多彩な認知欠損の発現が認められること。
a.記憶障害(新しい情報を学習したり、以前に学習した情報を想起する能力の障害)
b.以下の認知障害の一つ(又はそれ以上)
ア.失語(言語の障害)
イ.失行(運動機能が損なわれていないにもかかわらず動作を遂行する能力の障害)
ウ.失認(感覚機能が損なわれていないにもかかわらず、対象を認識又は同定できないこと)
エ.実行機能(すなわち、計画を立てる、組織化する、順序立てる、抽象化する)の障害
(2)(1)のa.及びb.の認知欠損は、その各々が、社会的又は職業的機能の著しい障害を引き起こし、病前の機能水準からの著しい低下を示すこと。
(3)その欠損はせん妄の経過中にのみ現れるものではないこと。
 
(削除)
 
参考にした診断基準:
精神疾患の分類と診断の手引き 第4版(DSM-Ⅳ-TR)(アメリカ合衆国精神医学会作成)
 
(削除)
 
7~16(略)
 
7~16(略)
 
 

 
 
 
(別添1)
 
 
 
認定調査票記入の手引き
 
 
 
Ⅰ 認定調査票の概要
1 認定調査票の構成
2 認定調査票(概況調査)の構成
3 認定調査票(基本調査)の構成
4 認定調査票(特記事項)の構成
 
Ⅱ 調査方法全般についての留意点
1 調査員による認定調査について
 
Ⅲ 認定調査票の記入方法
1 認定調査票(概況調査)の記入要綱
2 認定調査票(基本調査及び特記事項)の記入要綱
 
 
 

 
Ⅰ 認定調査票の概要
 
1 認定調査票の構成
認定調査票は、以下の三点から構成されている。
・認定調査票(概況調査)
・認定調査票(基本調査)
・認定調査票(特記事項)
 
2 認定調査票(概況調査)の構成
認定調査票(概況調査)は、以下の項目から構成されている。
Ⅰ 調査実施者(記入者)
Ⅱ 調査対象者
Ⅲ 現在受けているサービスの状況(在宅利用・施設利用)
Ⅳ 置かれている環境等(調査対象者の家族状況、住宅環境等)
 
3 認定調査票(基本調査)の構成
認定調査票(基本調査)は、以下の7群から構成されている。
1) 身体機能・起居動作に関連する項目
「1-1麻痺等の有無」,「1-2拘縮の有無」,「1-3寝返り」,「1-4起き上がり」,「1-5座位保持」,「1-6両足での立位」,「1-7歩行」,「1-8立ち上がり」,「1-9片足での立位」,「1-10洗身」,「1-11つめ切り」,「1-12視力」,「1-13聴力」
2) 生活機能に関連する項目
「2-1移乗」,「2-2移動」,「2-3えん下」,「2-4食事摂取」,「2-5排尿」,「2-6排便」,「2-7口腔清潔」,「2-8洗顔」,「2-9整髪」,「2-10上衣の着脱」,「2-11ズボン等の着脱」,「2-12外出頻度」
3) 認知機能に関連する項目
「3-1意思の伝達」,「3-2毎日の日課を理解」,「3-3生年月日を言う」,「3-4短期記憶」,「3-5自分の名前を言う」,「3-6今の季節を理解」,「3-7場所の理解」,「3-8徘徊」,「3-9外出して戻れない」
4) 精神・行動障害に関連する項目
「4-1被害的」,「4-2作話」,「4-3感情が不安定」,「4-4昼夜逆転」,「4-5同じ話をする」,「4-6大声を出す」,「4-7介護に抵抗」,「4-8落ち着きなし」,「4-9一人で出たがる」,「4-10収集癖」,「4-11物や衣類を壊す」,「4-12ひどい物忘れ」,「4-13独り言・独り笑い」,「4-14自分勝手に行動する」,「4-15話がまとまらない」
5) 社会生活への適応に関連する項目
「5-1薬の内服」,「5-2金銭の管理」,「5-3日常の意思決定」,「5-4集団への不適応」,「5-5買い物」,「5-6簡単な調理」
6) 特別な医療に関連する項目
7) 日常生活自立度に関連する項目
 
4 認定調査票(特記事項)の構成
各々の項目についての特記事項は、上記の分類により1~7の各記載欄に記載する。この際、基本調査番号をあわせて( )内に記載する。
 
Ⅱ 調査方法全般についての留意点
 
1 認定調査員による認定調査について
 
1) 調査実施全般
原則として、一名の調査対象者につき、一名の認定調査員が一回で認定調査を終了することとしているが、一回目の認定調査の際に、調査対象者が急病等によってその状況が一時的に変化している場合等で、適切な認定調査が行えないと判断した時には、その場では認定調査は行わず、状況が安定した後に再度調査日を設定し認定調査を行う。
また、入院後間もない等、調査対象者の心身の状態が安定するまでに相当期間を要すると思われ、介護保険によるサービスの利用を見込めない場合は、必要に応じ、申請者に対して、一旦申請を取り下げ、状態が安定してから再度申請を行うよう説明する。
一回目の認定調査の際に、異なる認定調査員による再調査が不可欠と判断した時に限り、二回目の認定調査を行う。なお、認定調査を二回行った場合でも認定調査票は一式のみとし、主に調査を行った者を筆頭として調査実施者欄に記載する。
 
2) 調査日時の調整
認定調査員は、あらかじめ調査対象者や家族等、実際の介護者と調査実施日時を調整した上で認定調査を実施する。認定調査の依頼があった場合には出来るだけ早い時期に調査を行い、調査終了後は速やかに所定の書類を作成する。
要介護認定は申請から30日以内に行われる必要があり、認定調査の遅れにより、審査判定に支障が生じることがないように努める。
家族等の介護者がいる在宅の調査対象者については、介護者が不在の日は避けるようにする。(やむを得ず介護者不在で調査を行った場合は、特記事項に記載する。)
 
3) 調査場所の調整
認定調査員は、事前に調査対象者や介護者と調査実施場所を調整した上で認定調査を実施する。認定調査の実施場所については、原則として日頃の状況を把握できる場所とする。
申請書に記載された住所が、必ずしも本人の生活の場とは限らず、記載された住所に居住していない場合等があるため、事前の確認が必要となる。病院や施設等で認定調査を実施する場合は、調査対象者の病室や居室等、通常過ごしている場所を確認し、病院や施設等と調整した上でプライバシーに配慮して実施する。
 
4) 調査時の携行物品
認定調査員は、調査対象者を訪問する際には、介護支援専門員証等、調査員である身分を証する物を携行し、訪問時に提示する。また、調査項目の「1-12 視力」確認するための視力確認表を持参する。
 
5) 調査実施上の留意点
認定調査の実施にあたり、調査目的の説明を必ず行う。
基本的には、「目に見える」、「確認し得る」という事実によって、調査を行うことを原則とする。
できるだけ、調査対象者本人、介護者双方から聞き取りを行うように努める。必要に応じて、調査対象者、介護者双方から聞き取りを行うよう努める。必要に応じて、調査対象者、介護者から個別に聞き取る時間を設けるように工夫する。
独居者や施設入所者等についても、可能な限り家族や施設職員等、調査対象者の日頃の状況を把握している者に立ち会いを求め、できるだけ正確な調査を行うよう努める。
調査対象者の心身の状況については、個別性があることから、例えば、視力障害、聴覚障害等や疾病の特性(スモンなど)等に配慮しつつ、選択基準に基づき調査を行う。
 
6) 質問方法や順番等
声の聞こえやすさなどに配慮して、調査場所を工夫する。
調査対象者がリラックスして回答できるよう十分時間をかける。
優しく問いかけるなど、相手に緊張感を与えないよう留意する。
丁寧な言葉遣いや、聞き取りやすいように明瞭な発音に心がけ、専門用語や略語を使用しない。
調査項目の順番にこだわらず、調査対象者が答えやすい質問の導入や方法を工夫する。
会話だけでなく、手話や筆談、直接触れる等の方法も必要に応じて用いる。しかし、この際に調査対象者や介護者に不愉快な思いを抱かせないように留意する。
調査対象者や介護者が適切な回答ができるように、調査項目の内容をわかりやすく具体的に質問の仕方を工夫する。
調査対象者の状況を実際に確認できるよう面接方法を工夫するなどしても、認定調査に応じない場合は、市町村の担当者に相談をする。
調査対象者が正当な理由なしに、認定調査に応じない場合は、申請が却下となることがある。
 
7) 調査項目の確認方法
危険がないと考えられれば、調査対象者本人に実際に行為を行ってもらう等、調査者が調査時に確認を行う。対象者のそばに位置し、安全に実施してもらえるよう配慮する。危険が伴うと考えられる場合は、決して無理に試みない。
実際に行為を行ってもらえなかった場合や、日常の状況と異なると考えられる場合については、選択をした根拠と、より頻回に見られる状況や日頃の状況について、具体的な内容を「特記事項」に必ず記載する。調査項目に該当する介助についての状況が特記事項に記されていない場合には、再調査を依頼する場合があることに留意する。
 
8) 調査結果の確認
認定調査員は調査対象者や介護者に、認定調査の結果で不明な点や選択に迷う点があれば再度確認する。それにより、調査内容の信頼性を確保するとともに、意思疎通がうまくいかなかったための誤りを修正することができる。
認定調査員は「特記事項」を記入するときは、基本調査と特記事項の記載内容に矛盾がないか確認し、審査判定に必要な情報を簡潔明瞭に記載するよう留意する。
 
9) 主治医意見書との関係
認定調査の調査項目と主治医意見書の記載内容とでは選択基準が異なるものもあるため、類似の設問であっても、両者の結果が一致しないこともありえる。したがって、両者の単純な差異のみを理由に介護認定審査会で一次判定の修正が行われることはない。
認定調査の調査項目の選択は、あくまで、後述の「Ⅲ 認定調査票の記入方法」の「2 認定調査票(基本調査及び特記事項)の記入要綱」の各調査項目の定義等に基づいた選択を行うことが必要となる。
また、主治医意見書と認定調査の選択根拠が異なることにより、申請者の状況を多角的に見ることが可能になるという利点がある。
 
 

 
 
 
 
 
 
Ⅲ 認定調査票の記入方法
1 認定調査票(概況調査)の記入要綱
 
 
 
 
 
 

 
1) 記入方法
 
(1) 記入者
調査票右上部の保険者番号、被保険者番号については介護認定審査会事務局があらかじめ記入し、その他の内容は当該調査対象者に認定調査を行う認定調査員が記入する。
 
(2) 記入方法
認定調査票(概況調査)への記入は、原則としてインク又はボールペンを使用する。パーソナルコンピュータ、ゴム印等を使用することは差し支えない。
文字の修正、削除等の際には、修正液等を使用せず、必要な部分に線を引き、修正又は削除を行う。
 
2) 事務局による事前の記入事項
 
(1) 保険者番号
当該市町村の保険者番号を記入する。
 
(2) 被保険者番号
当該申請者の被保険者番号を記入する。
 
3) 認定調査員による記入事項
 
(1) 認定調査員(記入者)(Ⅰ)
実施日時、認定調査員氏名、所属機関等を記入する。認定調査の実施場所については、自宅内又は自宅外に○印をつけ、自宅外に○印をつけた場合は、場所名を記入する。
 
(2) 調査対象者(Ⅱ)
・過去の認定
該当するものに○印をつけ、二回目以降の認定申請である場合には、前回認定年月日を記入する。
・前回認定結果
二回目以降の認定申請である場合に、前回認定結果について該当するものに○印をつけ、要介護(支援)の場合には要介護(支援)状態区分についてあてはまる数字を( )内に記入する。
・調査対象者氏名
調査対象者の氏名を記入し、ふりがなをふる。
・性別
該当するものに○印をつける。
・生年月日
該当する元号に○印をつけ、生年月日及び年齢を記入する。
・現住所
居住地(自宅)の住所を記入する。なお、病院・施設等の入院・入所者は、病院・施設等の住所と電話番号を記入する。
・家族等連絡先
連絡先には、緊急時の連絡先となる家族等の氏名、調査対象者との関係、住所及び電話番号を記入する。
 
4) 現在受けているサービスの状況について(Ⅲ)
 
(1) 在宅利用の場合
在宅サービスを利用している場合は、該当する事項の□欄に∨印をつけ、サービス利用状況を記入する。「市町村特別給付」又は「介護保険給付以外の在宅サービス」を利用している場合についてはその名称を[   ]内に記入する。
サービス利用状況は、「住宅改修」については過去の実施の有無、「(介護予防)福祉用具貸与」については調査日時点における利用品目数を、「特定(介護予防)福祉用具販売」については過去六ヶ月に購入した品目数を、それ以外のサービスについては、当該月のサービス利用の回数を記入する。
なお、当該月の利用状況が通常の状況と異なる場合は、認定調査を行った日の直近の月のサービス利用状況を記入する。
 
(2) 施設等利用の場合
施設・病院等に入所(院)している場合は、該当する施設等の□欄に∨印をつけ、施設等名、住所及び電話番号を記入する。
なお、医療機関における病床の種別(精神病床等)や障害福祉サービス(グループホーム等)等、調査対象者の状況について、介護の必要性を判断する際に参考となる事項についても記入する。
 
5) 置かれている環境等(Ⅳ)
調査対象者の家族状況、調査対象者の居住環境、日常的に使用する機器・器械の有無等について特記すべき事項を記入する。なお、家族状況のチェック欄の選択にあたっては、在宅の場合に家族と同居することとなるか否かの観点で選択する。そのため、施設入所者であっても、配偶者不在等により、在宅において家族と同居することが想定されない場合は「独居」を選択する。置かれている状況等は、介護認定審査会資料にて情報提供されることがある。
ただし、置かれている環境等を根拠に二次判定での変更を行うことは認められておらず、あくまで参考の情報として扱う。
 
 

 
 
 
 
 
 
Ⅲ 認定調査票の記入方法
2 認定調査票(基本調査及び特記事項)の記入要綱
 
 
 
 
 
 

 
認定調査票記入方法
 
1) 基本調査の記入方法
調査項目には、①能力を確認して判定する(以下「能力」という)、②生活を営む上で他者からどのような介助が提供されているか(介助の方法)(以下「介助の方法」という)、あるいは、③障害や現象(行動)の有無(以下「有無」という)を確認して判定するというように、判定の基準が3軸ある。調査項目のうち、「寝返り」、「起き上がり」、「座位保持」、「両足での立位」、「歩行」、「立ち上がり」、「片足での立位」、「視力」、「聴力」、「えん下」、「意思の伝達」、「毎日の日課を理解」、「生年月日をいう」、「短期記憶」、「自分の名前をいう」、「今の季節を理解」、「場所の理解」、「日常の意思決定」の項目を「能力」に関する項目に、「洗身」、「つめ切り」、「移乗」、「移動」、「食事摂取」、「排尿」、「排便」、「口腔清潔」、「洗顔」、「整髪」、「上衣の着脱」、「ズボン等の着脱」、「薬の内服」、「金銭の管理」、「買い物」、「簡単な調理」の項目を「介助の方法」に関する項目に、それ以外の項目を「障害や現象(行動)の有無」の項目に分類した。このうち、「有無」の項目には「麻痺等・拘縮」を評価する項目と「BPSD関連」などを評価する項目がある。第4群の「精神・行動障害」のすべての項目及び、第3群の「3-8徘徊」「3-9外出すると戻れない」、第5群の「5-4集団への不適応」を総称して「BPSD関連」として整理する。BPSDとは、Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略で、認知症に伴う行動・心理状態を意味する。
調査項目は、第4群のように、行動の有無という単一の判定の軸で評価できる群がある一方、「能力」、「介助の方法」、「有無」という3軸のすべての評価基準が混在している群もある。認定調査員には、調査項目によって異なる選択基準で混乱せずに選択する能力が求められている。
更に、これらの調査項目が高齢者の生活に、どのような影響を与えているかを体系的に理解できるように、①ADL(生活機能)・起居動作、②認知機能、③行動、④社会生活、⑤医療という分類を行い、この調査項目が何を意味しているかを把握することを容易にした。
認定調査票の「基本調査」の選択肢の選択について、「能力」に関する項目や「有無(麻痺等・拘縮)」は、危険がないと考えられれば調査対象者本人に実際に行為を行ってもらう等、認定調査員が調査時に確認を行うことを原則とする。しかし、体調不良等、何らかの理由により実際に行為を行ってもらえなかった場合や、調査時の環境が日頃の環境と異なったり、調査対象者の緊張等により日頃の状況と異なっていると考えられる場合、時間や状況によって、できたり、できなかったりする場合は、より頻回に見られる状況や日頃の状況について聞き取りを行い、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づいて選択する。また選択をした根拠について具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「介助の方法」の項目については、原則として実際に介助が行われているかどうかで選択するが、「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
「能力」や「介助の方法」については、日常的に自助具、補装具等の器具・器械を使用している場合で、使用していることにより機能が補完されていれば、その状態が本来の身体状況であると考え、その使用している状況において選択する。
「有無(BPSD関連)」の項目は、一定期間(調査日より概ね過去1か月間)の状況において、それらの行動がどの程度発生しているのかについて、頻度に基づき選択する。また、基本調査項目の中には該当する項目が存在しないものの、類似の行動またはその他の精神・行動障害などにより具体的な「介護の手間」が生じていることが聞き取りにより確認された場合は、類似または関連する項目の特記事項に、具体的な介護の手間の内容と頻度を記載し、介護認定審査会の二次判定(介護の手間にかかる審査判定)の判断を仰ぐことができる。
 
2) 特記事項の記入方法
「特記事項」は、基本調査項目(群)の分類に基づき構成されており、その基本調査項目(群)の分類ごとに基本調査項目番号を括弧に記載した上で、具体的な内容を記入する。
「特記事項」を記入する場合は、基本調査と特記事項の記載内容に矛盾がないか確認し、審査判定に必要な情報が提供できるよう、簡潔明瞭に記載するよう留意する。
介護認定審査会において、特記事項は、「基本調査(選択根拠)の確認」と介護の手間という二つの視点から活用されるが、それぞれの目的を果たすため、「選択根拠」、「手間」、「頻度」の三点に留意しつつ、特記事項を記載する。
また、記載する内容が選択肢の選択基準に含まれていないことであっても、介護の手間に関係する内容であれば、特記事項に記載することができる。その内容が介護認定審査会における二次判定(介護の手間にかかる審査判定)で評価されることになる。
 
(1) 基本調査の確認(一次判定の修正)
基本調査の選択においては、認定調査員が、誤って選択している場合や、より頻回な状況を選択する場合、特殊な状況などで複数通りの解釈があてはまる場合も例外的に存在する。「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって明らかに「不適切」であったとされる場合の選択においても、介護認定審査会において慎重な判断が必要となる。
一次判定の修正・確定において、特に、こうした場合を介護認定審査会が判断するうえで、申請者の状況を示す特記事項は、重要な役割を果たす。たとえば「見守り」と「一部介助」で迷った場合は、特記事項の内容から介護認定審査会が基本調査での選択の妥当性について検討する場合などが想定される。申請者の実態と、基本調査の定義に多少でも乖離がある場合は、具体的な状況と認定調査員の選択根拠を明示する。
 
(2) 介護の手間の判断
介護認定審査会では、介護において特別な手間が発生しているかどうかを議論する場合、例えば、「ひどい物忘れによって、認知症のさまざまな周辺症状がある」という行動があるという情報だけでは行わない。こういう情報に加えて、「認知症によって、排泄行為を適切に理解することができないため、家族が常に、排泄時に付き添い、あらゆる介助を行わなければならない」といった具体的な対応としての「手間」の記述があり、その多少が示されてはじめて、特別な手間かどうかを判断する根拠が与えられるということが理解される必要がある。
適正な審査判定には、介護の手間の増加や減少の根拠となる特記事項や主治医意見書の記述が介護認定審査会資料として記載され、残されていることが必要であり、また介護認定審査会委員は、二次判定に際して、介護の手間が根拠となったことを明示することが必須となる。
介護の手間の判断は、単に「一部介助」であるか、「全介助」であるかといった択一的な選択だけで行われるものではない。「一部介助」「全介助」といった内容は、一般的に一次判定ですでに加味されているものであることから、二次判定の介護の手間の多少に関する議論では、一次判定では加味されていない具体的な介護の手間が重視される。また、介護の手間は「量」として検討されるため、実際に行われている介助や対応などの介護の手間がどの程度発生しているのかという「頻度」に関する情報は、介護の手間と併せて参照することで、介護の全体量を理解することが可能となることから、介護認定審査会にとって重要な情報となる。「ときどき」「頻繁に」のように、人によって捉える量が一定でない言葉を用いることは、平準化の観点からは望ましくない。平均的な手間の出現頻度について週に2、3回というように数量を用いて具体的な頻度を記載する。
 
3) 能力で評価する調査項目
 
(1) 能力で評価する調査項目の選択基準
能力で評価する調査項目は、大きく分けて身体機能の能力を把握する調査項目(第1群に多く見られる)と認知能力を把握する調査項目(第3群)に分類される。
能力で評価する項目は、当該の行動等について「できる」か「できない」かを、各項目が指定する確認動作を可能な限り実際に試行して評価する項目である。ただし、実際に試行した結果と日頃の状況が異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択する。
なお、認定調査員が依頼しなくても、調査対象者が確認動作と同様の行為や回答を行っていることが調査実施中に確認できれば、必ずしも実際に行ってもらう必要はない(訪問時の玄関までの出迎えによって歩行動作が確認できた場合など)。
その行為ができないことによって介助が発生しているかどうか、あるいは日常生活上の支障があるかないかは選択基準に含まれない。
 
18項目 能力で評価する調査項目
(1) 能力で評価する調査項目(18項目)
「1-3 寝返り」
「1-4 起き上がり」
「1-5 座位保持」
「1-6 両足での立位保持」
「1-7 歩行」
「1-8 立ち上がり」
「1-9 片足での立位」
「1-12 視力」
「1-13 聴力」
「2-3 えん下」
「3-1 意思の伝達」
「3-2 毎日の日課を理解」
「3-3 生年月日や年齢を言う」
「3-4 短期記憶」
「3-5 自分の名前を言う」
「3-6 今の季節を理解する」
「3-7 場所の理解」
「5-3 日常の意思決定」
 
調査項目の選択肢の選択及び「特記事項」記載の流れ
 
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況との違いなど、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
(2) 特記事項の記載において特に留意すべき点
能力で評価する調査項目は、項目それ自体が直接に調査対象者の介護の手間を表すものではないが、実際の「介助の方法」(次の項目で解説)を理解するうえで有用である。
ただし、心身の機能の低下と、介護の量は必ずしも比例関係にあるわけではなく、心身の機能が低下するほど介護量が増大するとは限らない。完全な寝たきりの状態は、残存機能がある場合よりも介護量が減少することがあるのは一例である(このような場合に主観的な判断に依らず適切な介護の手間の総量の推計のために一次判定ソフトが導入されている)。介護認定審査会資料を読む介護認定審査会の委員にとっては、能力で評価する調査項目の状況と、介助の項目の状態の整合性が取れているかどうかは検討する際の着眼点となることから、能力と介助の方法の項目との関係が不自然に感じられるような特殊な事例については、両者の関係性を丁寧に特記事項にて記録する。
また、認定調査員が調査項目の選択において「どちらの選択も妥当」と感じた場合など、判断に迷った場合は、具体的な状況と認定調査員の判断根拠を特記事項に記載し、介護認定審査会の一次判定修正・確定の手順において判断を仰ぐこともできる。
なお、何らかの能力の低下によって、実際に介護の手間をもたらしているものの、「介助の方法」の項目に適切な項目が設定されていないために、具体的な介護の手間を記載することができない場合は、能力の項目の中でもっとも類似または関連する調査項目の特記事項に、具体的な介護の手間とその頻度を記載し、介護認定審査会おける二次判定(介護の手間にかかる審査判定)の判断を仰ぐこともできる。
 
4) 介助の方法で評価する調査項目
 
(1) 介助の方法で評価する調査項目の選択基準
介助の方法で評価する項目の多くは、生活機能に関する第2群と、社会生活の適応に関する第5群にみられる。これらの項目は、具体的に介助が「行われている-行われてない」の軸で選択を行うことを原則とするが、「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって不適切であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な介助の方法を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
不適切な状況にあると判断された場合は、単に「できる-できない」といった個々の行為の能力のみで評価せず、生活環境や本人の置かれている状態なども含めて、総合的に判断する。
特記事項の記載にあたっては、介護認定審査会が、「介護の手間」を評価できるよう、実際に行われている介助で選択した場合は、具体的な「介護の手間」と「頻度」を、特記事項に記載する。認定調査員が適切と考える介助の方法を選択した場合は、実際に行われている介助の方法と認定調査員の選択結果が異なった理由やその実態について、介護認定審査会の委員が理解できるよう、特記事項に記載しなければならない。
また、記載する内容が選択肢の選択基準に含まれていないことであっても、介護の手間に関係する内容であれば、特記事項に記載することができる。その内容が介護認定審査会における二次判定(介護の手間にかかる審査判定)で評価されることになる。
なお、「介助」の項目における「見守り等」や「一部介助」「全介助」といった選択肢は、介助の量を意味するものではなく、「介助の方法」を示すものであることから、「一部介助ほどは手間がかかってないから見守り等を選択する」といった考え方は誤りである。具体的な介助の量の多寡について特に記載すべき事項がある場合は特記事項に記載することにより、介護認定審査会の二次判定で介護の手間として判断される。
 
16項目
介助の方法で評価する調査項目
(2) 介助の方法で評価する調査項目(16項目)
「1-10 洗身」
「1-11 つめ切り」
「2-1 移乗」
「2-2 移動」
「2-4 食事摂取」
「2-5 排尿」
「2-6 排便」
「2-7 口腔清潔」
「2-8 洗顔」
「2-9 整髪」
「2-10 上衣の着脱」
「2-11 ズボン等の着脱」
「5-1 薬の内服」
「5-2 金銭の管理」
「5-5 買い物」
「5-6 簡単な調理」
 
調査項目の選択肢の選択及び「特記事項」記載の流れ
 
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合の選択基準」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
実際の聞き取りにおいては、該当する行為(例えば排尿、洗顔など)が一定期間(調査日より概ね過去1週間)にどの程度行われているのかを把握した上で、そのうち介助が行われている(または介助が行われていない)頻度がもっとも多いもので選択を行うことを原則とする。
例えば、普段は食事摂取が「1.介助されていない」であっても、週に1、2回「4.全介助」となる場合は、「2.見守り」、「3.一部介助」といった両方の中間の選択をすることは誤りとなる。また、最も重い状態で選択し「4.全介助」とすることも誤りとなる。この場合は、最も頻度の多い「1.介助されていない」を選択し、「4.全介助」となる場合の具体的な内容や頻度は特記事項に記載する。
また、発生頻度の少ない行為においては、週のうちの介助のある日数で評価するのではなく、発生している行為量に対して、どれだけ頻回に介助が行われているかを評価する。たとえば、洗身において、すべて介助されているが、週3回しか入浴機会がなく、7日のうち3日ということで、4日は入浴機会がない、すなわち「1.介助されていない」が頻回な状況であると考えるのは誤りである。この場合、週3回の行為の機会において、3回とも全介助であれば、「4.全介助」を選択する。
排尿のように、行為そのものの発生頻度が多いものは、週の中で介助の状況が大幅に異なることがないのであれば、通常の1日の介助における昼夜の違いなどを聞き取り、頻度で評価してもかまわない。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合の選択基準」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
例えば、歩行ができない場合でも車椅子を自操している場合は、移動に関しては「1.介助されていない」と選択し、車椅子を使用している状況を特記事項に記載する。
 
「「実際の介助の方法」が適切な場合」
実際の介助の状況を聞き取った上で、その介助の方法が、当該対象者にとって適切であると認定調査員が考えた場合は、実際の介助の方法に基づき選択を行い、実際の「介護の手間」の具体的な内容と、「頻度」を特記事項に記載し、介護認定審査会の判断を仰ぐ。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
(2) 特記事項の記載において特に留意すべき点
介護認定審査会では、具体的な介護の手間の多少を特記事項から評価することとなっているため、介助の方法で評価する調査項目の特記事項の記載内容は、評価上の重要なポイントとなる。介護認定審査会が適切に介助量を判断できるよう、具体的な介護の手間とその頻度を記載する。これらの特記事項の情報は、介護認定審査会の介護の手間にかかる審査判定において、通常の介助よりも手間が大きいか小さいかを判断する際に活用される。
また、「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、そのように判断する具体的な理由や事実を特記事項に記載した上で、適切な介助の方法を選択する。これらの特記事項の情報は、介護認定審査会の一次判定修正・確定の審査判定において、基本調査の選択の妥当性を審査する際に活用される。なお、適切な介助の方法を選択した場合であっても、事実や根拠が明示されていない場合は、介護認定審査会においては評価されない。
 
5) 有無で評価する調査項目
 
(1) 有無で評価する調査項目の選択基準
「有無」の項目には第1群の「麻痺等・拘縮」を評価する項目と、「BPSD関連」を評価する項目がある。第4群の「精神・行動障害」のすべての項目及び、第3群の「3-8徘徊」「3-9外出すると戻れない」、第5群の「5-4集団への不適応」を総称して「BPSD関連」として整理する。BPSDとは、Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略で、認知症に伴う行動・心理状態を意味する。
なお、「2-12 外出頻度」については、「有無」の項目に該当するが、「麻痺等・拘縮」にも「BPSD関連」にも該当しないが、「有無」の項目であり、「2-12 外出頻度」で定める選択基準に基づいて選択を行う。
 
21項目 有無で評価する調査項目
(3) 有無で評価する調査項目(21項目)
「1-1 麻痺等の有無(左上肢、右上肢、左下肢、右下肢、その他(四肢の欠損))」
「1-2 拘縮の有無(肩関節、股関節、膝関節、その他(四肢の欠損))」
「2-12 外出頻度」
「3-8 徘徊」
「3-9 外出すると戻れない」
「4-1 物を盗られたなどと被害的になる」
「4-2 作話」
「4-3 泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる」
「4-4 昼夜の逆転がある」
「4-5 しつこく同じ話をする」
「4-6 大声をだす」
「4-7 介護に抵抗する」
「4-8 「家に帰る」等と言い落ち着きがない」
「4-9 一人で外に出たがり目が離せない」
「4-10 いろいろなものを集めたり、無断でもってくる」
「4-11 物を壊したり、衣類を破いたりする」
「4-12 ひどい物忘れ」
「4-13 意味もなく独り言や独り笑いをする」
「4-14 自分勝手に行動する」
「4-15 話がまとまらず、会話にならない」
「5-4 集団への不適応」
 
(2) 麻痺等の有無・拘縮の有無
「調査対象者に対し確認動作で確認した場合」
調査対象者に対し、実際に確認動作で確認した状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に確認動作で確認した状況と、日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「調査対象者に対し確認動作による確認ができなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「特記事項の記載において特に留意すべき点」
認定調査員が調査項目の選択において「どちらの選択も妥当」と感じた場合など、判断に迷った場合は、具体的な状況と認定調査員の判断根拠を特記事項に記載し、介護認定審査会の一次判定 修正・確定の手順において判断を仰ぐこともできる。
また、麻痺等・拘縮によって、実際に介護の手間をもたらしているものの、「介助の方法」の項目に適切な項目が設定されていないために、具体的な介護の手間を記載することができない場合は、能力の項目に具体的な介護の手間とその頻度を記載し、介護認定審査会おける二次判定(介護の手間にかかる審査判定)の判断を仰ぐこともできる。
 
調査項目の選択肢の選択及び「特記事項」記載の流れ
 
 
(3) BPSD関連の有無
「行動が発生している場合」
調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況で選択する。調査時に実際に行動が見られた場合は、その状況について特記事項に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1か月間)の状況において、それらの行動がどの程度発生しているのかについて、頻度に基づき選択する。
 
「行動が発生していない場合」
一定期間(調査日より概ね過去1か月間)の状況において、行動が発生していない場合は「ない」を選択する。
また、基本調査項目の中には該当する項目が存在しないものの類似の行動またはその他の精神・行動障害などにより具体的な「介護の手間」が生じていることが聞き取りにより確認された場合は、類似または関連する項目の特記事項に、具体的な介護の手間の内容と頻度を記載し、介護認定審査会の二次判定の判断を仰ぐことができる。
 
「特記事項の記載において特に留意すべき点」
有無の項目(BPSD関連)は、その有無だけで介護の手間が発生しているかどうかは必ずしも判断できないため、二次判定で介護の手間を適切に評価するためには、特記事項に、それらの有無によって発生している介護の手間を、頻度もあわせて記載する必要がある。また介護者が特に対応をとっていない場合などについても特記事項に記載する。
 
調査項目の選択肢の選択及び「特記事項」記載の流れ
 
※「4-12ひどい物忘れ」については、何らかの行動が発生していない場合でも「周囲の者が何らかの行動をとらなければならないような状況(火の不始末など)」が発生している場合は、「行動が発生している」として評価する。
※「2-12外出頻度」については、「麻痺等・拘縮」にも「BPSD関連」にも該当しないが、「有無」の項目であり、「2-12外出頻度」で定める選択基準に基づいて選択を行う。
 
1-1 麻痺等の有無
1.ない 2.左上肢 3.右上肢 4.左下肢 5.右下肢 6.その他(四肢の欠損)
 
調査項目の定義
「麻痺等の有無」を評価する項目である。
ここでいう「麻痺等」とは、神経又は筋肉組織の損傷、疾病等により、筋肉の随意的な運動機能が低下又は消失した状況をいう。
脳梗塞後遺症等による四肢の動かしにくさ(筋力の低下や麻痺等の有無)を確認する項目である。
 
選択肢の選択基準
「1.ない」
・麻痺等がない場合は、「1.ない」とする。
「2.左上肢」、「3.右上肢」、「4.左下肢」、「5.右下肢」
・麻痺等や筋力低下がある場合は、「2.左上肢」「3.右上肢」「4.左上肢」「5.右下肢」の中で該当する部位を選択する。
・複数の部位に麻痺等がある場合(片麻痺、対麻痺、三肢麻痺、四肢麻痺等)は「2.左上肢」「3.右上肢」「4.左下肢」「5.右下肢」のうち、複数を選択する。
・各確認動作で、努力して動かそうとしても動かない、あるいは目的とする確認動作が行えない場合に該当する項目を選択する。
「6.その他(四肢の欠損)」
・いずれかの四肢の一部(手指・足趾を含む)に欠損がある場合は「6.その他」を選択する。
・上肢・下肢以外に麻痺等がある場合は、「6.その他」を選択する。
・「6.その他」を選択した場合は、必ず部位や状況等について具体的に「特記事項」に記載する。
 
調査上の留意点
 
冷感等の感覚障害は含まない。
えん下障害は、「2-3 えん下」において評価する。
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
麻痺等には、加齢による筋力の低下、その他の様々な原因による筋肉の随意的な運動機能の低下によって目的とする確認動作が行えない場合が含まれる。
意識障害等で、自分の意思で四肢を十分に動かせないために目的とする確認動作が行えない場合も含む。
パーキンソン病等による筋肉の不随意な動きによって随意的な運動機能が低下し、目的とする確認動作が行えない場合も含まれる。
関節に著しい可動域制限があり、関節の運動ができないために目的とする確認動作が行えない場合も含む。なお、軽度の可動域制限の場合は、関節の動く範囲で行う。
「主治医意見書」の麻痺に関する同様の項目とは、選択の基準が異なることに留意すること。
項目の定義する範囲以外で日常生活上での支障がある場合は、特記事項に記載する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
なお、実際に確認する場合は、「図1-1」から「図1-5」の「上肢の麻痺等の有無の確認方法」及び「下肢の麻痺等の有無の確認方法」に示す動作が行えるかどうかで選択する。
深部感覚の障害等により運動にぎこちなさがある場合であっても、確認動作が行えるかどうかで選択する(傷病名、疾病の程度は問わない)。
確認動作は、通常対象部位の関節を伸ばした状態で選択するが、拘縮で肘が曲がっている場合、可能な限り肘関節を伸ばした状態で行い、評価をし、状況については特記事項に記入する。また、強直(曲げることも伸ばすこともできない状態)の場合は、その状態で行い、状況については特記事項に記入する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「上肢の麻痺等の有無の確認方法」
 
【注意点】
確認時には、本人または家族の同意の上で、ゆっくり動かしてもらって確認を行う。調査対象者が痛みを訴える場合は、動作の確認を中止し、そこまでの状況で選択を行う。危険と判断される場合は、確認は行わない。
 
■ 測定(検査)肢位: 図1-1、1-2に示す座位または図1-3に示す仰臥位(仰向け)で行う
■ 測定(検査)内容: 座位の場合は、肘関節を伸ばしたままで腕を前方及び横に、自分で持ち上げ、静止した状態で保持できるかどうかを確認する(肘関節伸展位で肩関節の屈曲及び外転)。どちらかができなければ「あり」とする。仰臥位の場合は、腕を持ち上げられるかで確認する。
肩の高さくらいにまで腕を上げることができるかどうかで選択を行う。円背の場合には、あごの高さくらいまで腕(上肢)を上げることができなければ「あり」とする。
 
① 前方に腕(上肢)を肩の高さまで自分で挙上し、静止した状態で保持できるか確認する。
(図1-1-1)
図1-1-1
② 横に腕(上肢)を肩の高さまで自分で挙上し静止した状態で保持できるか確認する。
(図1-2)
図1-2
① 前方に腕(上肢)を肩の高さまで自分で挙上し、静止した状態で保持できるか確認する。(円背の場合)
(図1-1-2)
図1-1-2
 
認定調査員は対象者の前方に位置し、認定調査員の手を触れるように指示する。
認定調査員は相対して座り、動きを行って見せ、対象者に行ってもらう。
 
①´ (仰臥位(仰向け)で行う場合)前方頭上に腕を挙上する(図1-3)
 
図1-3
上肢を体側に添っておき、その位置から肘関節を伸ばしたまま腕を自分で挙上し、静止した状態で保持できるか確認する。(肘関節伸展位での前方挙上)
 
「下肢の麻痺等の有無の確認方法」
 
【注意点】
確認時には、本人または家族の同意の上で、ゆっくり動かしてもらって確認を行う。調査対象者が痛みを訴える場合は、動作の確認を中止し、そこまでの状況で選択を行う。危険と判断される場合は、確認は行わない。
 
■ 測定肢位: 図1-4に示す座位または図1-5に示す仰臥位(仰向け)で行う。
■ 測定内容: 膝を伸ばす動作により下肢を水平位置まで挙上し、静止した状態で保持できるかを確認する(股・膝関節屈曲位での膝関節の伸展)。床に対して、水平に足を挙上できるかどうかについて確認する。具体的には、踵と膝関節(の屈側)を結ぶ線が床と並行になる高さまで挙上し静止した状態で保持できることを確認する。
また、椅子で試行する場合は、大腿部が椅子から離れないことを条件とする。仰向けで試行する場合は、枕等から大腿部が離れないことを条件とする。
なお、膝関節に拘縮があるといった理由や下肢や膝関節等の生理学的な理由等で膝関節の完全な伸展そのものが困難であることによって水平に足を挙上できない(仰向けの場合には、足を完全に伸ばせない)場合には、他動的に最大限動かせる高さ(可動域制限のない範囲内)まで、挙上することができ、静止した状態で保持できれば「なし」とし、できなければ「あり」とする。
 
股関節および膝関節屈曲位から膝関節の伸展(下腿を挙上する)
① 座位で膝を床に対して、自分で水平に伸ばしたまま静止した状態で保持できるか確認する。(股関節屈曲位からの膝関節の伸展)(図1-4)
図1-4
② 仰向けで膝の下に枕等を入れて自分で膝から下(下腿)を持ち上げ、伸ばしたまま静止した状態で保持できるか確認する。
(仰臥位での股・膝関節屈曲位からの膝関節の伸展)(図1-5)
図1-5
 
1-2 拘縮の有無
1.ない 2.肩関節 3.股関節 4.膝関節 5.その他(四肢の欠損)
 
調査項目の定義
 
「拘縮の有無」を評価する項目である。
ここでいう「拘縮」とは、対象者が可能な限り力を抜いた状態で他動的に四肢の関節を動かした時に、関節の動く範囲が著しく狭くなっている状況をいう。
 
選択肢の選択基準
 
「1.ない」
・四肢の関節の動く範囲の制限がない場合は、「1.ない」とする。
「2.肩関節」、「3.股関節」、「4.膝関節」
複数の部位に関節の動く範囲の制限がある場合は「2.肩関節」「3.股関節」「4.膝関節」のうち、複数を選択する。他動的に動かしてみて制限がある場合が該当し、自力では動かせないという状態だけでは該当しない。
左右のいずれかに制限があれば「制限あり」とする。
「5.その他(四肢の欠損)」
・いずれかの四肢の一部(手指・足趾を含む)に欠損がある場合は「5.その他」を選択する。
・肩関節、股関節、膝関節以外について、他動的に動かした際に拘縮や可動域の制限がある場合は、「5.その他」を選択する。
 
・「5.その他」を選択した場合は、必ず部位や状況等について具体的に「特記事項」に記載する。
 
調査上の留意点
 
疼痛のために関節の動く範囲に制限がある場合も含まれる。
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
筋力低下については、「1-1 麻痺等の有無」において評価する。
あくまでも、他動運動により目的とする確認動作ができるか否かにより選択するものであり、「主治医意見書」の同様の項目とは、選択基準が異なることもある。
 
項目の定義する範囲以外で日常生活上での支障がある場合は、特記事項に記載する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「拘縮の有無」については、傷病名、疾病の程度、関節の左右や関節の動く範囲の制限の程度、調査対象者の意欲等にかかわらず、他動運動により目的とする確認動作(図2-1から図2-8)ができるか否かにより確認する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「関節の動く範囲の制限の有無の確認方法」
 
【注意点】
確認時には、本人または家族の同意の上で、対象部位を軽く持ち、動作の開始から終了までの間に4~5秒程度の時間をかけてゆっくり動かして確認を行う。調査対象者が痛みを訴える場合は、それ以上は動かさず、そこまでの状況で選択を行う。
90度程度曲がれば「制限なし」となるため、調査対象者の状態に十分注意し、必要以上に動かさないようにしなくてはならない。
動かすことが危険と判断される場合は、確認は行わない。
 
■ 測定(検査)内容: 「2.肩関節」は、前方あるいは横のいずれかに可動域制限がある場合を「制限あり」とする。
(図2-1)
(図2-1-1)
肩の高さくらいまで腕(上肢)を上げることができれば「制限なし」とする。
円背の場合には、あごの高さくらいまで腕(上肢)を上げることができれば「制限なし」とする。
 
(図2-2)
 
肩の高さくらいまで腕(上肢)を上げることができれば「制限なし」とする。
<仰臥位の場合>
仰向けで寝たまま(仰臥位)の場合、左右の肩を結んだ高さまで腕(上肢)を動かすことができない、もしくは、前方に腕を挙上することができなければ「制限あり」とする。
「3.股関節」は、屈曲または外転のどちらかに可動域制限がある場合を制限ありとする。
図2-3(屈曲)または図2-4もしくは図2-5(外転)のいずれかができなければ「制限あり」とする。
 
(図2-3)
仰向けに寝た姿勢(仰臥位)で膝を曲げたままで、股関節が直角(90度)程度曲がれば「制限なし」とする。
 
 
仰向けに寝た姿勢(仰臥位)あるいは座位で、膝が閉じた状態から見て、膝の内側を25cm程度開く(はなす)ことができれば「制限なし」とする。O脚等の膝が閉じない場合であっても、最終的に開いた距離が25cm程度あるかどうかで選択を行う。本確認動作は、膝を外側に開くことができるかを確認するためのものであり、内側への運動に関しては問わない。
また、片足のみの外転によって25cmが確保された場合も「制限なし」とするが、もう一方の足の外転に制限がある場合、その旨を特記事項に記載する。
 
※なお、25㎝程度とは拳2個分あるいはA4ファイルの短い方の長さ
 
 
(図2-4)
(図2-5)
 
 
「4.膝関節」は、伸展もしくは屈曲方向のどちらかに可動域に制限がある場合を制限ありとする。
 
(図2-6)
膝関節をほぼ真っ直ぐ伸ばした状態から90°程度他動的に曲げることができない場合に「制限あり」とする。座位、うつ伏せで寝た姿勢(腹臥位)、仰向けに寝た姿勢(仰臥位)、のうち、調査対象者に最も負担をかけないいずれか一つの方法で確認できればよい。
 
(図2-7)
 
 
 
(図2-8)
 
 
1-3 寝返り
1.つかまらないでできる 2.何かにつかまればできる 3.できない
 
調査項目の定義
「寝返り」の能力を評価する項目である。
ここでいう「寝返り」とは、きちんと横向きにならなくても、横たわったまま左右のどちらかに身体の向きを変え、そのまま安定した状態になることが自分でできるかどうか、あるいはベッド柵、サイドレールなど何かにつかまればできるかどうかの能力である。
調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択する。
身体の上にふとん等をかけない時の状況で選択する。
 
選択肢の選択基準
「1.つかまらないでできる」
・何にもつかまらないで、寝返り(片側だけでもよい)が自力でできる場合をいう。
・仰向けに寝ることが不可能な場合に、横向きに寝た状態(側臥位)から、うつ伏せ(腹臥位)に向きを変えることができれば、「1.つかまらないでできる」を選択する。
・認知症等で声かけをしない限りずっと同じ姿勢をとり寝返りをしないが、声をかければゆっくりでも寝返りを自力でする場合、声かけのみでできれば「1.つかまらないでできる」を選択する。
「2.何かにつかまればできる」
・ベッド柵、ひも、バー、サイドレール等、何かにつかまれば自力で寝返りができる場合をいう。
「3.できない」
・介助なしでは、自力で寝返りができない等、寝返りに介助が必要な場合をいう。
 
調査上の留意点
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
側臥位から腹臥位や、きちんと横向きにならなくても横たわったまま左右どちらか(片方だけでよい)に向きを変えられる場合は、「1.つかまらないでできる」を選択する。
一度起き上がってから体の方向を変える行為は、寝返りとは考えない。
自分の体の一部(膝の裏や寝巻きなど)を掴んで寝返りを行う場合(掴まないとできない場合)は「2.何かにつかまればできる」を選択する。
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
 
1-4 起き上がり
1.つかまらないでできる 2.何かにつかまればできる 3.できない
 
調査項目の定義
「起き上がり」の能力を評価する項目である。
ここでいう「起き上がり」とは、身体の上にふとんをかけないで寝た状態から上半身を起こすことができるかどうかの能力である。
身体の上にふとん等をかけない時の状況で選択する。
調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容から、選択する。
 
選択肢の選択基準
「1.つかまらないでできる」
・何にもつかまらないで自力で起き上がることができる場合をいう。習慣的に、体を支える目的ではなく、ベッド上に手や肘をつきながら起き上がる場合も含まれる。
「2.何かにつかまればできる」
・ベッド柵、ひも、バー、サイドレール等、何かにつかまれば自力で起き上がりができる場合をいう。
「3.できない」
・介助なしでは自力で起き上がることができない等、起き上がりに介助が必要な場合をいう。途中まで自分でできても最後の部分で介助が必要である場合も含まれる。
 
調査上の留意点
寝た状態から上半身を起こす行為を評価する項目であり、うつ伏せになってから起き上がる場合等、起き上がりの経路については限定しない。
自分の膝の裏をつかんで、反動を付けて起き上がれる場合等、自分の体の一部を支えにしてできる場合(支えにしないと起き上がれない場合)は、「2.何かにつかまればできる」を選択する。
体を支える目的で手や肘でふとんにしっかりと加重して起き上がる場合(加重しないと起き上がれない場合)は「2.何かにつかまればできる」を選択する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
常時、ギャッチアップの状態にある場合は、その状態から評価し、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
補装具を使用している場合は、使用している状況で選択する。ギャッチアップ機能がついている電動ベッド等の場合はこれらの機能を使わない状態で評価する。
 
1-5 座位保持
1.できる 2.自分の手で支えればできる 3.支えてもらえればできる 4.できない
 
調査項目の定義
「座位保持」の能力を評価する項目である。
ここでいう「座位保持」とは、背もたれがない状態での座位の状態を10分間程度保持できるかどうかの能力である。
調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択する。
 
選択肢の選択基準
「1.できる」
・背もたれや介護者の手による支えがなくても、座位の保持が自力でできる場合をいう。
・下肢の欠損等により床に足をつけることが不可能な場合であっても座位保持ができる場合には、「1.できる」を選択する。
・下肢が欠損しているが日頃から補装具を装着しており、できる場合は「1.できる」を選択する。
「2.自分の手で支えればできる」
・背もたれは必要ないが、手すり、柵、坐面、壁を自分の手で支える必要がある場合をいう。
「3.支えてもらえればできる」
・背もたれがないと座位が保持できない、あるいは、介護者の手で支えていないと座位が保持できない場合をいう。
「4.できない」
・背もたれを用いても座位が保持できない場合をいう。具体的には、以下の状態とする。
・長期間(おおむね1ヶ月)にわたり水平な体位しかとったことがない場合。
・医学的理由(低血圧等)により座位保持が認められていない場合。
・背骨や股関節の状態により体幹の屈曲ができない場合。
 
調査上の留意点
寝た状態から座位に至るまでの行為は含まない。
畳上の生活で、いすに座る機会がない場合は、畳上の座位や、洋式トイレ、ポータブルトイレ使用時の座位の状態で選択する。
長座位、端座位など、座り方は問わない。
大腿部(膝の上)に手で支えてしっかりと加重して座位保持をしている場合等、自分の体の一部を支えにしてできる場合(加重しないと座位保持できない場合)は「2.自分の手で支えればできる」を選択する。
大腿部の裏側に手を差し入れて太ももを掴むようにする等、上体が後傾しないように座位を保持している場合(手を差し入れるなどしないと座位保持できない場合)は、「3.支えてもらえればできる」を選択する。
ビーズクッション等で支えていないと座位が保持できない場合は、「3.支えてもらえればできる」を選択する。
電動ベッドや車いす等の背もたれを支えとして座位保持ができている場合は、「3.支えてもらえればできる」を選択する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
 
1-6 両足での立位保持
1.支えなしでできる 2.何か支えがあればできる 3.できない
 
調査項目の定義
「両足での立位保持」の能力を評価する項目である。
ここでいう「両足での立位保持」とは、立ち上がった後に、平らな床の上で立位を10秒間程度保持できるかどうかの能力である。
調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択する。
 
選択肢の選択基準
「1.支えなしでできる」
・何にもつかまらないで立っていることができる場合をいう。
「2.何か支えがあればできる」
・壁、手すり、いすの背、杖等、何かにつかまると立位保持が可能な場合をいう。
「3.できない」
・自分ではものにつかまっても立位を保持できないが、介護者の手で常に身体を支えれば立位保持できる、あるいは、どのような状況であってもまったく立位保持ができない場合をいう。
・寝たきりで明らかに立位をとれない場合も含まれる。
 
調査上の留意点
立ち上がるまでの行為は含まない。
片足が欠損しており、義足を使用していない人や拘縮で床に片足がつかない場合は、片足での立位保持の状況で選択する。
 
自分の体の一部を支えにして立位保持する場合や、体を支える目的でテーブルや椅子の肘掛等にしっかりと加重して立位保持する場合(加重しないと立位保持できない場合)は「2.何か支えがあればできる」を選択する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
 
1-7 歩行
1.つかまらないでできる 2.何かにつかまればできる 3.できない
 
調査項目の定義
「歩行」の能力を評価する項目である。
ここでいう「歩行」とは、立った状態から継続して歩くことができるかどうかの能力である。
立った状態から継続して(立ち止まらず、座り込まずに)5m程度歩ける能力があるかどうかで選択する。調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択する。
 
選択肢の選択基準
「1.つかまらないでできる」
・支えや日常的に使用する器具・器械なしに自分で歩ける場合をいう。
・視力障害者のつたい歩きも含まれる。
・視力障害があり、身体を支える目的ではなく方向を確認する目的で杖を用いている場合は、「1.つかまらないでできる」を選択する。
「2.何かにつかまればできる」
・杖や歩行器等を使用すれば歩ける、壁に手をかけながら歩ける場合等をいう。
・片方の腕を杖で、片方の腕を介護者が支えれば歩行できる場合は、「2.何かにつかまればできる」を選択する。
「3.できない」
・何かにつかまったり、支えられても歩行が不可能であるため、車いすを使用しなければならない、どのような状況であっても歩行ができない場合をいう。寝たきり等で歩行することがない場合、あるいは、歩行可能であるが医療上の必要により歩行制限が行われている場合も含まれる。
・「歩行」については、5m程度歩けるかどうかについて評価する項目であり、「2mから3m」しか歩けない場合は「歩行」とはとらえないため、「3.できない」を選択する。
 
調査上の留意点
歩幅や速度、方向感覚や目的等は問わない。
リハビリの歩行訓練時には、平行棒の間を5m程度歩行できていてもリハビリの訓練中は一般的には日頃の状況ではないと考える。
心肺機能の低下等のため、主治医より軽い労作も禁じられている等で、5m程度の歩行を試行することができない場合には、「3.できない」を選択する。
両足切断のため、屋内の移動は両手で行うことができても、立位をとることができない場合は、歩行は「できない」を選択する。
膝につかまるなど、自分の体につかまり歩行する場合(つかまらないと歩行できない場合)は、「2.何かにつかまればできる」を選択する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「補装具を使用している場合」
補装具を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
「福祉用具を使用している場合」
杖や歩行器等を使用する場合は、「2.何かにつかまればできる」を選択する。
 
 
1-8 立ち上がり
1.つかまらないでできる 2.何かにつかまればできる 3.できない
 
調査項目の定義
「立ち上がり」の能力を評価する項目である。
ここでいう「立ち上がり」とは、いすやベッド、車いす等に座っている状態から立ち上がる行為を行う際に(床からの立ち上がりは含まない)、ベッド柵や手すり、壁等につかまらないで立ち上がることができるかどうかの能力である。
膝がほぼ直角に屈曲している状態からの立ち上がりができるかどうかで選択する。
調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択する。
 
選択肢の選択基準
「1.つかまらないでできる」
・いす、ベッド、車いす等に座っている状態から立ち上がる際に、ベッド柵、手すり、壁等何にもつかまらないで、立ち上がる行為ができる場合をいう。
「2.何かにつかまればできる」
・ベッド柵、手すり、壁等、何かにつかまれば立ち上がる行為ができる場合をいう。介護者の手で引き上げられる状況ではなく、支えがあれば基本的に自分で立ち上がることができる場合も含まれる。
「3.できない」
・自分ではまったく立ち上がることができない場合をいう。体の一部を介護者が支える、介護者の手で引き上げるなど、介助がないとできない場合も含まれる。
 
調査上の留意点
寝た状態から座位に至るまでの行為は含まない。
畳上の生活で、いすに座る機会がない場合は、洋式トイレ、ポータブルトイレ使用時や、受診時の待合室での状況等の状態で選択する。
自分の体の一部を支えにして立ち上がる場合や、習慣的ではなく体を支える目的でテーブルや椅子の肘掛等にしっかりと加重して立ち上がる場合(加重しないと立ち上がれない場合)は「2.何かにつかまればできる」を選択する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
 
1-9 片足での立位
1.支えなしでできる 2.何か支えがあればできる 3.できない
 
調査項目の定義
「片足での立位」の能力を評価する項目である。
ここでいう「片足での立位」とは、立ち上がるまでに介助が必要か否かにかかわりなく、平らな床の上で、自分で左右いずれかの片足を上げた状態のまま立位を保持する(平衡を保てる)ことができるかどうかの能力である。
平らな床の上で、自分で左右いずれかの片足を上げた状態のまま1秒間程度、立位を保持できるかどうかで選択する。
調査対象者に実際に行ってもらう、あるいは調査対象者や介護者からの日頃の状況に関する聞き取り内容で選択する。
 
選択肢の選択基準
「1.支えなしでできる」
・何もつかまらないで、いずれか一側の足で立っていることができる場合をいう。
「2.何か支えがあればできる」
・壁や手すり、いすの背など、何かにつかまるといずれか一側の足で立っていることができる場合をいう。
「3.できない」
・自分では片足が上げられない、自分の手で支えるのではなく、介護者によって支えられた状態でなければ片足を上げられない、あるいは、どのような状況であってもまったく片足で立っていることができない場合をいう。
 
調査上の留意点
立ち上がるまでの能力については含まない。
 
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
 
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
 
1-10 洗身
1.介助されていない 2.一部介助 3.全介助 4.行っていない
 
調査項目の定義
「洗身」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「洗身」とは、浴室内(洗い場や浴槽内)で、スポンジや手拭い等に石鹸やボディシャンプー等を付けて全身を洗うことをいう。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・一連の「洗身」(浴室内で、スポンジや手拭い等に石鹸やボディシャンプー等を付けて全身を洗うこと)の介助が行われていない場合をいう。
「2.一部介助」
・介護者が石鹸等を付けて、体の一部を洗う等の場合をいう。
・見守り等が行われている場合も含まれる。
「3.全介助」
・一連の「洗身」(浴室内で、スポンジや手拭い等に石鹸やボディシャンプー等を付けて全身を洗うこと)の全ての介助が行われている場合をいう。
・本人に手の届くところを「洗身」してもらった後、本人が「洗身」した箇所も含めて、介護者が全てを「洗身」し直している場合は、「3.全介助」を選択する。
「4.行っていない」
・日常的に「洗身」を行っていない場合をいう。
 
調査上の留意点
入浴環境は問わない。
洗髪行為は含まない。
入浴行為は、この項目には含まない。
石鹸やボディシャンプーがついていなくても、あくまで体を洗う行為そのものについて介助が行われているかどうかで選択を行う。石鹸等を付ける行為そのものに介助があるかどうかではなく、身体の各所を洗う行為について評価を行う。
清拭のみが行われている場合は、本人が行っているか介護者が行っているかに関わらず、「4.行っていない」を選択する。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
日によって入浴の方法・形態が異なる場合も含めて、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
「調査対象の行為自体が発生しない場合」
日常的に、洗身を行っていない場合は、「4.行っていない」を選択し、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
1-11 つめ切り
1.介助されていない 2.一部介助 3.全介助
 
調査項目の定義
「つめ切り」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「つめ切り」とは、「つめ切り」の一連の行為のことで、「つめ切りを準備する」「切ったつめを捨てる」等を含む。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「つめ切り」の介助が行われていない場合をいう。
「2.一部介助」
・一連の行為に部分的に介助が行われている場合をいう。
・つめ切りに見守りや確認が行われている場合を含む。
・左右どちらか片方の手のつめのみ切れる、手のつめはできるが足のつめはできない等で一部介助が発生している場合も含む。
「3.全介助」
・一連の行為すべてに介助が行われている場合をいう。
・介護者が、本人が行った箇所を含めてすべてやり直す場合も含む
 
調査上の留意点
切ったつめを捨てる以外の、つめを切った場所の掃除等は含まない。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1か月)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
「調査対象の行為自体が発生しない場合」
四肢の全指を切断している等、つめがない場合は、四肢の清拭等の状況で代替して評価する。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
1-12 視力
1.普通(日常生活に支障がない) 2.約1m離れた視力確認表の図が見える 3.目の前に置いた視力確認表の図が見える 4.ほとんど見えない 5.見えているのか判断不能
 
調査項目の定義
「視力」(能力)を評価する項目である。
ここでいう「視力」とは、見えるかどうかの能力である。
認定調査員が実際に視力確認表の図を調査対象者に見せて、視力を評価する。
 
選択肢の選択基準
「1.普通(日常生活に支障がない)」
・新聞、雑誌などの字が見え、日常生活に支障がない程度の視力を有している場合をいう。
「2.約1m離れた視力確認表の図が見える」
・新聞、雑誌などの字は見えないが、約1m離れた視力確認表の図が見える場合をいう。
「3.目の前に置いた視力確認表の図が見える」
・約1m離れた視力確認表の図は見えないが、目の前に置けば見える場合をいう。
「4.ほとんど見えない」
・目の前に置いた視力確認表の図が見えない場合をいう。
「5.見えているのか判断不能」
・認知症等で意思疎通ができず、見えているのか判断できない場合をいう。
 
調査上の留意点
見えるかどうかを選択するには、会話のみでなく、手話、筆談等や、調査対象者の身振りに基づいて視力を確認する。
見たものについての理解等の知的能力を問う項目ではない。
広い意味での視力を問う質問であり、視野狭窄・視野欠損等も含まれる。
部屋の明るさは、部屋の電気をつけた上で、利用可能であれば読書灯などの補助照明器具を使用し十分な明るさを確保する。
 
眼鏡・コンタクトレンズ等を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合」
調査対象者に実際に行ってもらえなかった場合は、その理由や状況について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
また、調査対象者や介護者からの聞き取り内容、選択した根拠等についても、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
視力確認表
 
 
 
1-13 聴力
1.普通 2.普通の声がやっと聞き取れる 3.かなり大きな声なら何とか聞き取れる 4.ほとんど聞こえない 5.聞こえているのか判断不能
 
調査項目の定義
「聴力」(能力)を評価する項目である。
ここでいう「聴力」とは、聞こえるかどうかの能力である。
認定調査員が実際に確認して評価する。
 
選択肢の選択基準
「1.普通」
・日常生活における会話において支障がなく、普通に聞き取れる場合をいう。
「2.普通の声がやっと聞き取れる」
・普通の声で話すと聞き取りにくく、聞き間違えたりする場合をいう。
「3.かなり大きな声なら何とか聞き取れる」
・耳元で大きな声で話したり、耳元で大きな物音を立てると何とか聞こえる、あるいは、かなり大きな声や音でないと聞こえない場合をいう。
「4.ほとんど聞こえない」
・ほとんど聞こえないことが確認できる場合をいう。
「5.聞こえているのか判断不能」
・認知症等で意思疎通ができず、聞こえているのか判断できない場合をいう。
 
調査上の留意点
聞こえるかどうかは、会話のみでなく、調査対象者の身振り等も含めて評価する。
普通に話しかけても聞こえない調査対象者に対しては、耳元で大きな声で話す、音を出して反応を確かめる等の方法に基づいて聴力を評価する。
耳で聞いた内容を理解しているかどうか等の知的能力を問うものではない。
日常的に補聴器等を使用している場合は、使用している状況で評価する。
失語症や構音障害があっても、声や音が聞こえているかどうかで評価する。
調査の妨げとなるような大きな雑音がある場所での調査は避ける。
 
「調査対象者に実際に行ってもらった場合」
調査対象者に実際に行ってもらった状況と、調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。
その場合、調査対象者に実際に行ってもらった状況と、日頃の状況の違い、選択した根拠等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で評価する。
 
 
2-1 移乗
1.介助されていない 2.見守り等 3.一部介助 4.全介助
 
調査項目の定義
「移乗」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「移乗」とは、「ベッドから車いす(いす)へ」「車いすからいすへ」「ベッドからポータブルトイレへ」「車いす(いす)からポータブルトイレへ」「畳からいすへ」「畳からポータブルトイレへ」「ベッドからストレッチャーへ」等、でん部を移動させ、いす等へ乗り移ることである。
清拭・じょくそう予防等を目的とした体位交換、シーツ交換の際に、でん部を動かす行為も移乗に含まれる。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「移乗」の介助が行われていない場合をいう。
「2.見守り等」
・「移乗」の介助は行われていないが、「見守り等」が行われている場合をいう。
・ここでいう「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、認知症高齢者等の場合に必要な行為の「確認」「指示」「声かけ」等のことである。
・また、ベッドから車いすに移乗する際、介護者が本人の身体に直接触れず、安全に乗り移れるよう、動作に併せて車いすをお尻の下にさしいれている場合は、「2.見守り等」を選択する。
「3.一部介助」
・自力では移乗ができないために、介護者が手を添える、体を支えるなどの「移乗」の行為の一部に介助が行われている場合をいう。
「4.全介助」
・自分では移乗ができないために、介護者が抱える、運ぶ等の「移乗」の介助の全てが行われている場合をいう。
 
調査上の留意点
義足や装具、歩行器等の準備は介助の内容には含まない。
在宅で畳中心の生活であり、いすを使用していない場合で、両手をついて腰を浮かせる行為自体だけでは該当しない。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
「調査対象の行為自体が発生しない場合」
清拭・じょくそう予防等を目的とした体位交換を含む移乗の機会がないことは、実際には考えにくいが、寝たきり状態などで、「移乗」の機会が全くない場合は、「調査項目の定義」で規定されるような行為が生じた場合を想定し適切な介助の方法を選択し、そのように判断できる具体的な事実を特記事項に記載する。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
2-2 移動
1.介助されていない 2.見守り等 3.一部介助 4.全介助
 
調査項目の定義
「移動」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「移動」とは、「日常生活」において、食事や排泄、入浴等で、必要な場所への移動にあたって、見守りや介助が行われているかどうかで選択する。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「移動」の介助が行われていない場合をいう。
「2.見守り等」
・「移動」の介助は行われていないが、「見守り等」が行われている場合をいう。
・ここでいう「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、認知症高齢者等の場合に必要な行為の「確認」「指示」「声かけ」等のことである。
「3.一部介助」
・自力では、必要な場所への「移動」ができないために、介護者が手を添える、体幹を支える、段差で車いすを押す等の「移動」の行為の一部に介助が行われている場合をいう。
「4.全介助」
・自力では、必要な場所への「移動」ができないために、「移動」の行為の全てに介助が行われている場合をいう。
 
調査上の留意点
移動の手段は問わない。
義足や装具等を装着している場合や、車いす・歩行器などを使用している場合は、その状況に基づいて評価する。
車いす等を使用している場合は、車いす等に移乗したあとの移動について選択する。
外出行為に関しては、含まない。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
義足や装具等を装着している場合や、車いす・歩行器などを使用している場合は、その状況に基づいて選択する。
車いす等を使用している場合は、車いす等に移乗したあとの移動について選択する。
 
「調査対象の行為自体が発生しない場合」
浴場への移動など移動の機会がない場合は、多くはないと考えられるが、寝たきり状態などで、「移動」の機会が全くない場合は、「調査項目の定義」で規定されるような行為の生じた場合を想定して適切な介助の方法を選択し、そのように判断できる具体的な事実を特記事項に記載する。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
2-3 えん下
1.できる 2.見守り等 3.できない
 
調査項目の定義
「えん下」の能力を評価する項目である。
ここでいう「えん下」とは、食物を経口より摂取する際の「えん下」(飲み込むこと)の能力である。
能力の項目であるが、必ずしも試行する必要はない。頻回に見られる状況や日頃の状況について、調査対象者や介護者からの聞き取りで選択してもよい。
 
選択肢の選択基準
「1.できる」
・えん下することに問題がなく、自然に飲み込める場合をいう。
「2.見守り等」
・「できる」「できない」のいずれにも含まれない場合をいう。必ずしも見守りが行われている必要はない。
「3.できない」
・えん下ができない場合、または誤えん(飲み込みが上手にできず肺などに食物等が落ち込む状態)の恐れがあるため経管栄養(胃ろうを含む)や中心静脈栄養(IVH)等が行われている場合をいう。
 
調査上の留意点
咀しゃく(噛むこと)や口腔内の状況を評価するものではない。
食物を口に運ぶ行為については、「2-4 食事摂取」で評価する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
また、固形物か、液体かどうか等、食物の形状(普通食、きざみ食、ミキサー食、流動食等)によって異なる場合も、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
入院・入所後は、トロミ食のみを摂取しているため、居宅での生活時とは異なり、飲み込みに支障がなくなった場合は、現在の入院・入所後の状況で選択する。
 
 
2-4 食事摂取
1.介助されていない 2.見守り等 3.一部介助 4.全介助
 
調査項目の定義
「食事摂取」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「食事摂取」とは、食物を摂取する一連の行為のことである。
通常の経口摂取の場合は、配膳後の食器から口に入れるまでの行為のことである。また、食事摂取の介助には、経管栄養の際の注入行為や中心静脈栄養も含まれる。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「食事摂取」の介助が行われていない場合をいう。
「2.見守り等」
・「食事摂取」の介助は行われていないが、「見守り等」が行われている場合をいう。
・ここでいう「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、行為の「確認」「指示」「声かけ」「皿の置き換え」等のことである。
「3.一部介助」
・「食事摂取」の行為の一部のみに介助が行われている場合をいう。食卓で小さく切る、ほぐす、皮をむく、魚の骨をとる等、食べやすくするための介助や、スプーン等に食べ物を乗せる介助が行われている場合も含む。
・ただし、この「一部」については、時間の長短は問わない。
・また、1回ごとの食事における一連の行為中の「一部」のことであり、朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合は、後述の「(3)調査上の留意点」にしたがって選択する。
「4.全介助」
・「食事摂取」の介助の全てが行われている場合をいう。
 
調査上の留意点
食事の量、適切さを評価する項目ではなく、「食事摂取」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
調理(厨房・台所でのきざみ食、ミキサー食の準備等)、配膳、後片づけ、食べこぼしの掃除等は含まない。
エプロンをかける、いすに座らせる等は含まない。
経管栄養、中心静脈栄養のための介助が行われている場合は、「4.全介助」を選択する(特別な医療の要件にも該当する場合は、両方に選択を行う。)
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
2-5 排尿
1.介助されていない 2.見守り等 3.一部介助 4.全介助
 
調査項目の定義
「排尿」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「排尿」とは、「排尿動作(ズボン・パンツの上げ下げ、トイレ、尿器への排尿)」「陰部の清拭」「トイレの水洗」「トイレやポータブルトイレ、尿器等の排尿後の掃除」「オムツ、リハビリパンツ、尿とりパッドの交換」「抜去したカテーテルの後始末」の一連の行為のことである。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「排尿」の介助が行われていない場合をいう。
「2.見守り等」
・「排尿」の介助は行われていないが、「見守り等」が行われている場合をいう。
・ここでいう「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」「確認」「指示」「声かけ」や、認知症高齢者等をトイレ等へ誘導するために必要な「確認」「指示」「声かけ」等のことである。
「3.一部介助」
・「排尿」の一連の行為に部分的に介助が行われている場合をいう。
「4.全介助」
・調査対象者の「排尿」の介助の全てが行われている場合をいう。
 
調査上の留意点
尿意の有無は問わない。
トイレやポータブルトイレ、尿器等の排尿後の掃除は含まれるが、トイレの日常的な掃除は含まない。また使用したポータブルトイレの後始末を一括して行う場合は、排尿の直後であるかどうかや、その回数に関わらず「排尿後の後始末」として評価する。
トイレまでの移動に関する介助は、他の移動行為とともに「2-2移動」で評価するが、トイレ等に誘導するための「確認」「指示」「声かけ」は、「2.見守り等」として評価する。トイレやポータブルトイレへの移乗に関する介助は、他の移乗行為とともに「2-1移乗」で評価する。
失禁した場合の衣服の更衣に関する介助は、他の着脱行為ともに「2-10上衣の着脱」「2-11ズボン等の着脱」で評価する。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
おむつや尿カテーテル等を使用していても、自分で準備から後始末まで行っている場合は、「1.介助されていない」を選択する。
 
「調査対象の行為自体が発生しない場合」
人工透析を行っている等で、排尿が全くない場合は、介助自体が発生していないため、「1.介助されていない」を選択する。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
2-6 排便
1.介助されていない 2.見守り等 3.一部介助 4.全介助
 
調査項目の定義
「排便」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「排便」とは、「排便動作(ズボン・パンツの上げ下げ、トイレ、排便器への排便)」「肛門の清拭」「トイレの水洗」「トイレやポータブルトイレ、排便器等の排便後の掃除」「オムツ、リハビリパンツの交換」「ストーマ(人工肛門)袋の準備、交換、後始末」の一連の行為のことである。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「排便」の介助が行われていない場合をいう。
「2.見守り等」
・「排便」の介助は行われていないが、「見守り等」が行われている場合をいう。
・ここでいう「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」「確認」「指示」「声かけ」や、認知症高齢者等をトイレ等へ誘導するために必要な「確認」「指示」「声かけ」等のことである。
「3.一部介助」
・「排便」一連の行為に部分的な介助が行われている場合をいう。
「4.全介助」
・調査対象者の「排便」の介助の全てが行われている場合をいう。
 
調査上の留意点
トイレやポータブルトイレ、排便器等の排便後の掃除は含まれるが、トイレの日常的な掃除は含まない。また使用したポータブルトイレの後始末を一括して行う場合は、排便の直後であるかどうかや、その回数に関わらず「排便後の後始末」として評価する。
トイレまでの移動に関する介助は、他の移動行為とともに「2-2移動」で評価するが、トイレ等に誘導するための「確認」「指示」「声かけ」は、「2.見守り等」として評価する。トイレやポータブルトイレへの移乗に関する介助は、他の移乗行為とともに「2-1移乗」で評価する。
失禁した場合の衣服の更衣に関する介助は、他の着脱行為ともに「2-10上衣の着脱」「2-11ズボン等の着脱」で評価する。
浣腸や摘便等の行為そのものは含まれないが、これらの行為に付随する排便の一連の行為は含む。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
2-7 口腔清潔
1.介助されていない 2.一部介助 3.全介助
 
調査項目の定義
「口腔清潔」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「口腔清潔」とは、歯磨き等の一連の行為のことで、「歯ブラシやうがい用の水を用意する」「歯磨き粉を歯ブラシにつける等の準備」「義歯をはずす」「うがいをする」等のことである。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「口腔清潔」の介助が行われていない場合をいう。
「2.一部介助」
・一連の行為に部分的に介助が行われている場合をいう。
・見守り等(確認、指示、声かけ)が行われている場合も含まれる。
・歯磨き中の指示や見守り、磨き残しの確認が行われている場合を含む。
・義歯の出し入れはできるが、義歯を磨く動作は介護者が行っている場合も含む。
「3.全介助」
・「口腔清潔」の全ての介助が行われている場合をいう。
・本人が行った箇所を含めて、介護者がすべてやり直す場合も含む。
・介護者が歯を磨いてあげ、口元までコップを運び、本人は口をすすいで吐き出す行為だけができる場合は、「3.全介助」を選択する。
 
調査上の留意点
洗面所への誘導、移動は含まない。
洗面所周辺の掃除等は含まない。
義歯の場合は、義歯の清潔保持に係る行為で選択する。
歯磨き粉を歯ブラシにつけない、口腔清浄剤を使用している等の場合も、「口腔清潔」に含む。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
2-8 洗顔
1.介助されていない 2.一部介助 3.全介助
 
調査項目の定義
「洗顔」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「洗顔」とは、洗顔の一連の行為のことで、一連の行為とは、「タオルの準備」「蛇口をひねる」「顔を洗う」「タオルで拭く」「衣服の濡れの確認」等の行為をいう。また、「蒸しタオルで顔を拭く」ことも含む。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「洗顔」の介助が行われていない場合をいう。
「2.一部介助」
・一連の行為に部分的に介助が行われている場合をいう。
・見守り等(確認、指示、声かけ)が行われている場合も含まれる。
・洗顔中の見守り等、衣服が濡れていないかの確認等が行われている場合を含む。
・蒸しタオルで顔を拭くことはできるが、蒸しタオルを準備してもらうなどの介助が発生している場合を含む。
「3.全介助」
・「洗顔」の全ての介助が行われている場合をいう。
・介護者が本人の行った箇所を含めてすべてやり直す場合も含む。
 
調査上の留意点
洗面所への誘導、移動は含まない。
洗面所周辺の掃除等は含まない。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
「調査対象の行為自体が発生しない場合」
「洗顔」を行う習慣がない等の場合は、入浴後に顔をタオル等で拭く介助や、ベッド上で顔を拭く行為などの類似行為で代替して評価する。通常の洗顔行為がある場合は、これらの行為を評価対象には含まない。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
2-9 整髪
1.介助されていない 2.一部介助 3.全介助
 
調査項目の定義
「整髪」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「整髪」とは、「ブラシの準備」「整髪料の準備」「髪をとかす」「ブラッシングする」等の「整髪」の一連の行為のことである。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「整髪」の介助が行われていない場合をいう。
「2.一部介助」
・一連の行為に部分的に介助が行われている場合をいう。
・見守り等(確認、指示、声かけ)が行われている場合も含まれる。
「3.全介助」
・「整髪」の全ての介助が行われている場合をいう。
・本人が行った箇所を含めて介護者がすべてやり直す場合も含む。
 
調査上の留意点
洗面所等鏡がある場所への誘導、移動は含まない。
洗面所周辺の掃除等は含まない。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
「調査対象の行為自体が発生しない場合」
頭髪がない場合、または、短髪で整髪の必要がない場合は、入浴後に頭部をタオル等で拭く介助や、ベッド上で、頭を拭く行為などで代替して評価する。通常の整髪行為がある場合は、これらの行為を評価対象には含まない。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
2-10 上衣の着脱
1.介助されていない 2.見守り等 3.一部介助 4.全介助
 
調査項目の定義
「上衣の着脱」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「上衣の着脱」とは、普段使用している上衣等の着脱のことである。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「上衣の着脱」の介助が行われていない場合をいう。
「2.見守り等」
・「上衣の着脱」の介助は行われていないが、「見守り等」が行われている場合をいう。
・ここでいう「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、認知症高齢者等の場合に必要な行為の「確認」「指示」「声かけ」等のことである。
「3.一部介助」
・「上衣の着脱」の際に介助が行われている場合であって、「見守り等」、「全介助」のいずれにも含まれない場合をいう。
「4.全介助」
・「上衣の着脱」の一連の行為すべてに介助が行われている場合をいう。
 
調査上の留意点
時候にあった衣服の選択、衣服の準備、手渡し等、着脱までの行為は含まない。
服を体にあてがう行為や袖通しなど一連の行為すべてが介護者によって行われていれば、首や体幹を揺り動かすなどの行為は、介護者の介助の方法や負担に大きな影響を与えていないことから、選択肢の選択には影響を及ぼさないと判断し、一連の行為全体に対してすべて介助されていると考え、「4.全介助」を選択する。
一方、介護者が構えている服に「自ら袖に腕を通す」場合は、服を構える介助は行われているものの、袖通しは自ら行っていることから、一連の行為の一部に介助があると判断し、「3.一部介助」を選択する。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
2-11 ズボン等の着脱
1.介助されていない 2.見守り等 3.一部介助 4.全介助
 
調査項目の定義
「ズボン等の着脱」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「ズボン等の着脱」とは、普段使用しているズボン、パンツ等の着脱のことである。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「ズボン等の着脱」の介助が行われていない場合をいう。
「2.見守り等」
・「ズボン等の着脱」の介助は行われていないが、「見守り等」が行われている場合をいう。
・ここでいう「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、認知症高齢者等の場合に必要な行為の「確認」「指示」「声かけ」等のことである。
「3.一部介助」
・「ズボン等の着脱」の際に介助が行われている場合であって、「見守り等」、「全介助」のいずれにも含まれない場合をいう。
「4.全介助」
・「ズボン等の着脱」の一連の行為すべてに介助が行われている場合をいう。
 
調査上の留意点
時候にあった衣服の選択、衣服の準備、手渡し等、着脱までの行為は含まない。
服を体にあてがう行為やズボンに足を通すなど一連の行為すべてが介護者によって行われていれば、足や腰、体幹を揺り動かすなどの行為は、介護者の介助の方法や負担に大きな影響を与えていないことから、選択肢の選択には影響を及ぼさないと判断し、一連の行為全体に対してすべて介助されていると考え、「4.全介助」を選択する。
一方、介護者が構えているズボンに「自ら足を通す」場合は、服を構える介助は行われているものの、ズボンに足を通す行為は自ら行っていることから、一連の行為の一部に介助があると判断し、「3.一部介助」を選択する。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合」
福祉用具(補装具や介護用品等)や器具類を使用している場合は、使用している状況で選択する。
 
「調査対象の行為自体が発生しない場合」
日頃、ズボンをはかない場合(浴衣形式の寝巻きなど)は、パンツやオムツの着脱の行為で代替して評価する。通常のズボンの着脱行為がある場合は、これらの行為を評価対象には含まない。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
2-12 外出頻度
1.週1回以上 2.月1回以上 3.月1回未満
 
調査項目の定義
「外出頻度」を評価する項目である。
ここでいう「外出頻度」とは、1回概ね30分以上、居住地の敷地外へ出る頻度を評価する。
一定期間(調査日より概ね過去1か月)の状況において、外出の頻度で選択する。
 
選択肢の選択基準
「1.週1回以上」
・週1回以上、外出している場合をいう。
「2.月1回以上」
・月1回から3回、外出している場合をいう。
「3.月1回未満」
・月1回未満の頻度で外出している場合をいう。
 
調査上の留意点
外出の目的や、同行者の有無、目的地等は問わない。
徘徊や救急搬送は外出とは考えない。
同一施設・敷地内のデイサービス、診療所等へ移動することも外出とは考えない。
過去1か月の間に状態が大きく変化した場合は、変化した後の状況で選択を行うものとする。
 
 
3-1 意思の伝達
1.調査対象者が意思を他者に伝達できる 2.ときどき伝達できる 3.ほとんど伝達できない
4.できない
 
調査項目の定義
「意思の伝達」の能力を評価する項目である。
ここでいう「意思の伝達」とは、調査対象者が意思を伝達できるかどうかの能力である。
 
選択肢の選択基準
「1.調査対象者が意思を他者に伝達できる」
・手段を問わず、常時、誰にでも「意思の伝達」ができる状況をいう。
「2.ときどき伝達できる」
・通常は、調査対象者が家族等の介護者に対して「意思の伝達」ができるが、その内容や状況等によってはできる時と、できない時がある場合をいう。
「3.ほとんど伝達できない」
・通常は、調査対象者が家族等の介護者に対しても「意思の伝達」ができないが、ある事柄や特定の人に対してであれば、まれに「意思の伝達」ができる場合をいう。
・認知症等があり、「痛い」「腹が減った」「何か食べたい」等、限定された内容のみ「意思の伝達」ができる場合は、「3.ほとんど伝達できない」を選択する。
「4.できない」
・重度の認知症や意識障害等によって、「意思の伝達」が全くできない、あるいは、「意思の伝達」ができるかどうか判断できない場合をいう。
 
調査上の留意点
「意思の伝達」については、その手段を問わず、調査対象者が意思を伝達できるかどうかを評価する。
失語症が原因で会話が成立しなくとも、本人の意思が伝達できる場合は、それが会話によるものか、身振り等によるものかは問わない。伝達する意思の内容の合理性は問わない。
伝達手段について特記することがある場合は、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
本人が自発的に伝達しなくても、問いかけに対して意思を伝えることができる場合は、その状況を評価する。
なお、「意思の伝達」は能力を問う項目であるが、申請者の日常的な状態を頻度の観点から把握する項目であることから、他の能力を問う項目とは異なり、調査日の状況に加え、調査対象者及び介護者等から聞き取りした日頃の状況から選択を行い、調査日の状況と日頃の状況の両者を特記事項に記載する。
 
 
3-2 毎日の日課を理解
1.できる 2.できない
 
調査項目の定義
「毎日の日課を理解する」能力を評価する項目である。
ここでいう「毎日の日課を理解」とは、起床、就寝、食事等のおおまかな内容について、理解していることである。厳密な時間、曜日ごとのスケジュール等の複雑な内容まで理解している必要はない。
 
選択肢の選択基準
「1.できる」
・質問されたことについて、ほぼ正確な回答ができる場合をいう。
「2.できない」
・質問されたことについて正しく回答できない、あるいは、まったく回答できない場合をいう。回答の正誤が確認できない場合も含まれる。
 
調査上の留意点
起床や就寝、食事の時間等を質問して選択してもよい。
なお、調査当日の状況と調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。その場合、調査当日の状況と日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を特記事項に記載する。
 
 
3-3 生年月日や年齢を言う
1.できる 2.できない
 
調査項目の定義
「生年月日や年齢を言う」能力を評価する項目である。
ここでいう「生年月日や年齢を言う」とは、生年月日か年齢かのいずれか一方を答えることができることである。
 
選択肢の選択基準
「1.できる」
・質問されたことについて、ほぼ正確な回答ができる場合をいう。
「2.できない」
・質問されたことについて正しく回答できない、あるいは、まったく回答できない場合をいう。回答の正誤が確認できない場合も含まれる。
 
調査上の留意点
実際の生年月日と数日間のずれであれば、「1.できる」を選択する。
また、年齢は、2歳までの誤差で答えることができれば、「1.できる」を選択する。
なお、調査当日の状況と調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。その場合、調査当日の状況と日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を特記事項に記載する。
 
 
3-4 短期記憶(面接調査の直前に何をしていたか思い出す)
1.できる 2.できない
 
調査項目の定義
「短期記憶」(面接調査の直前に何をしていたか思い出す)能力を評価する項目である。
ここでいう「短期記憶」とは、面接調査日の調査直前にしていたことについて、把握しているかどうかのことである。
 
選択肢の選択基準
「1.できる」
・質問されたことについて、ほぼ正確な回答ができる場合をいう。
「2.できない」
・質問されたことについて正しく回答できない、あるいは、まったく回答できない場合をいう。回答の正誤が確認できない場合も含まれる。
 
調査上の留意点
ここでいう「面接調査の直前に何をしていたか思い出す」こととは、「短期記憶」であり、面接調査直前または当日行ったことについて具体的に答えることができれば、「1.できる」を選択する。
上記の質問で確認が難しい場合は、「ペン」、「時計」、「視力確認表(調査対象者に対しては、紙または、手の絵などの平易な言い方をする)」を見せて、何があるか復唱をさせ、これから3つの物を見えないところにしまい、何がなくなったかを問うので覚えて置くように指示する。5分以上してからこれらの物のうち2つを提示し、提示されていないものについて答えられたかで選択する。
視覚的に把握できない場合は、3つの物を口頭で説明する等、調査対象者に質問の内容が伝わるように工夫する。
なお、調査当日の状況と調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。その場合、調査当日の状況と日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を特記事項に記載する。
 
 
3-5 自分の名前を言う
1.できる 2.できない
 
調査項目の定義
「自分の名前をいう」能力を評価する項目である。
ここでいう「自分の名前をいう」とは、自分の姓もしくは名前のどちらかを答えることである。
 
選択肢の選択基準
「1.できる」
・質問されたことについて、ほぼ正確な回答ができる場合をいう。
「2.できない」
・質問されたことについて正しく回答できない、あるいは、まったく回答できない場合をいう。回答の正誤が確認できない場合も含まれる。
 
調査上の留意点
なお、調査当日の状況と調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。その場合、調査当日の状況と日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を特記事項に記載する。
旧姓でも、「自分の名前をいう」ことができれば、「1.できる」を選択する。
 
 
3-6 今の季節を理解する
1.できる 2.できない
 
調査項目の定義
「今の季節を理解する」能力を評価する項目である。
ここでいう「今の季節を理解」とは、面接調査日の季節を答えることである。
 
選択肢の選択基準
「1.できる」
・質問されたことについて、ほぼ正確な回答ができる場合をいう。
「2.できない」
・質問されたことについて正しく回答できない、あるいは、まったく回答できない場合をいう。回答の正誤が確認できない場合も含まれる。
 
調査上の留意点
旧暦での季節でも、「今の季節を理解する」ことができれば、「1.できる」を選択する。季節に多少のずれがあってもよい(例えば、1月であれば「冬」あるいは「春の初め」と回答するなど)
なお、調査当日の状況と調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。その場合、調査当日の状況と日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を特記事項に記載する。
 
3-7 場所の理解(自分がいる場所を答える)
1.できる 2.できない
 
調査項目の定義
「場所の理解」(自分がいる場所を答える)に関する能力を評価する項目である。
ここでいう「場所の理解」とは、「ここはどこですか」という質問に答えることである。
 
選択肢の選択基準
「1.できる」
・質問されたことについて、適切に回答ができる場合をいう。
「2.できない」
・質問されたことについて適切に回答できない、あるいは、まったく回答できない場合をいう。
 
調査上の留意点
所在地や施設名をたずねる質問ではない。質問に対して「施設」「自宅」などの区別がつけば「1.できる」を選択する。
なお、調査当日の状況と調査対象者や介護者から聞き取りした日頃の状況とが異なる場合は、一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回な状況に基づき選択を行う。その場合、調査当日の状況と日頃の状況との違い、選択した根拠等について、具体的な内容を特記事項に記載する。
 
 
3-8 徘徊
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「徘徊」の頻度を評価する項目である。
ここでいう「徘徊」とは、歩き回る、車いすで動き回る、床やベッドの上で這い回る等、目的もなく動き回る行動のことである。
 
選択肢の選択基準
「1.ない」
・徘徊が、過去1か月間に1度も現れたことがない場合やほとんど月1回以上の頻度では現れない場合をいう。
・意識障害、寝たきり等の理由により、徘徊が起こりえない場合も含まれる。
「2.ときどきある」
・少なくとも1か月間に1回以上、1週間に1回未満の頻度で現れる場合をいう。
・定義に示した行動のいずれか、1つでもある場合も含まれる。
「3.ある」
・少なくとも1週間に1回以上の頻度で現れる場合をいう。
・定義に示した行動のいずれか、1つでもある場合も含まれる。
 
調査上の留意点
重度の寝たきり状態であっても、ベッドの上で這い回るなど、目的もなく動き回る行動も含む。
 
 
3-9 外出すると戻れない
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「外出すると戻れない」行動の頻度を評価する項目である。
 
選択肢の選択基準
「1.ない」
・外出して一人で戻れないことが、過去1か月間に1度も現れたことがない場合やほとんど月1回以上の頻度では現れない場合をいう。
・意識障害、寝たきり等の理由により、外出が起こりえない場合も含まれる。
「2.ときどきある」
・少なくとも1か月間に1回以上、1週間に1回未満の頻度で現れる場合をいう。
「3.ある」
・少なくとも1週間に1回以上の頻度で現れる場合をいう。
 
調査上の留意点
「外出すると戻れない」行動とは、外出だけでなく、居室や居住棟から出て自室や自宅に戻れなくなる行動も含む。
 
 
第4群 精神・行動障害
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
選択肢の選択基準
「1.ない」
・その問題となる行動が、過去1か月間に1度も現れたことがない場合やほとんど月1回以上の頻度では現れない場合をいう。
・意識障害、寝たきり等の理由により、その問題となる行動が現れる可能性がほとんどない場合も含まれる。
「2.ときどきある」
・少なくとも1か月間に1回以上、1週間に1回未満の頻度で現れる場合をいう。
「3.ある」
・少なくとも1週間に1回以上の頻度で現れる場合をいう。
 
調査上の留意点
「精神・行動障害」とは、社会生活上、場面や目的からみて不適当な行動状況の頻度を評価する項目である。
ここでは行動が、過去1か月間(この間に環境が大きく変化した場合は、その変化後から調査日まで)の状況から、現在の環境でその行動が現れたかどうかに基づいて選択する。これらの行動に対して、特に周囲が対応をとっていない場合や介護の手間が発生していなくても、各項目に規定されている行動が現れている場合は、頻度に基づき選択する。
本項目は、実際の対応や介護の手間とは関係なく選択されるため、対象者への対応や介護の手間の状況については、特記事項に頻度とともに記載し、介護認定審査会の二次判定(介護の手間にかかる審査判定)の判断を仰ぐことが重要である。
また、基本調査項目の中には該当する項目が存在しないものの類似の行動またはその他の精神・行動障害などにより具体的な「介護の手間」が生じていることが聞き取りにより確認された場合は、類似または関連する項目の特記事項に、具体的な介護の手間の内容と頻度を記載し、介護認定審査会の二次判定の判断を仰ぐことができる。
調査にあたっては、調査対象者や家族に不愉快な思いを抱かせないように質問に留意する必要がある。認定調査員が調査時に質問を工夫し、あるいは、「日頃の行動や介護上でなにか困ったことや問題がありますか」といった質問を糸口に、調査対象者の現在の感情の起伏、問題となる行動を具体的に聞き取り、該当する項目を選択してもよい。
一定期間の観察が必要であり一度で選択できない、又は、選択するために異なる職種の認定調査員による再度の調査が必要な場合等、やむを得ない事情がある時のみ2回目の調査を実施する。その場合については、「特記事項」に具体的な状況を記入する。
調査対象者の状況(意識障害・性格等)、施設等による予防的な対策(昼夜逆転に対応するための睡眠薬の内服等)、治療の効果も含めて、選択肢に示された状況の有無で選択する。
 
 
4-1 物を盗られたなどと被害的になる
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「物を盗られたなどと被害的になる」行動の頻度を評価する項目である。
ここでいう「物を盗られたなどと被害的になる」行動とは、実際は盗られていないものを盗られたという等、被害的な行動のことである。
 
調査上の留意点
「物を盗られた」ということだけでなく、「食べ物に毒が入っている」「自分の食事だけがない」等の被害的な行動も含む。
 
 
4-2 作話
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「作話」行動の頻度を評価する項目である。
ここでいう「作話」行動とは、事実とは異なる話をすることである。
 
調査上の留意点
自分に都合のいいように事実と異なる話をすることも含む。
起こしてしまった失敗を取りつくろうためのありもしない話をすることも含む。
 
 
4-3 泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる」行動の頻度を評価する項目である。
ここでいう「泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる」行動とは、悲しみや不安などにより涙ぐむ、感情的にうめくなどの状況が不自然なほど持続したり、あるいはそぐわない場面や状況で突然笑い出す、怒り出す等、場面や目的からみて不適当な行動のことである。
 
調査上の留意点
元々感情の起伏が大きい等ではなく、場面や目的からみて不適当な行動があるかどうかで選択する。
 
 
4-4 昼夜の逆転がある
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「昼夜の逆転がある」行動の頻度を評価する項目である。
ここでいう「昼夜の逆転がある」行動とは、夜間に何度も目覚めることがあり、そのために疲労や眠気があり日中に活動できない、もしくは昼と夜の生活が逆転し、通常、日中行われる行為を夜間行っているなどの状況をいう。
 
調査上の留意点
夜更かし(遅寝遅起き)など単なる生活習慣として、あるいは、蒸し暑くて寝苦しい、周囲の騒音で眠られない等の生活環境のために眠られない場合は該当しない。
夜間眠れない状態やトイレに行くための起床は含まない。
 
 
4-5 しつこく同じ話をする
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「しつこく同じ話をする」行動の頻度を評価する項目である。
 
調査上の留意点
もともと、性格や生活習慣から、単に同じ話をすることではなく、場面や目的からみて不適当な行動があるかどうかで選択する。
 
 
4-6 大声をだす
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「大声をだす」行動の頻度を評価する項目である。
ここでいう「大声をだす」行動とは、周囲に迷惑となるような大声をだす行動のことである。
 
調査上の留意点
もともと、性格的や生活習慣から日常会話で声が大きい場合等ではなく、場面や目的からみて不適当な行動があるかどうかで選択する。
 
 
4-7 介護に抵抗する
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「介護に抵抗する」行動の頻度を評価する項目である。
 
調査上の留意点
単に、助言しても従わない場合(言っても従わない場合)は含まない。
 
 
4-8 「家に帰る」等と言い落ち着きがない
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「『家に帰る』等と言い落ち着きがない」行動の頻度を評価する項目である。
ここでいう「『家に帰る』等と言い落ち着きがない」行動とは、施設等で「家に帰る」と言ったり、自宅にいても自分の家であることがわからず「家に帰る」等と言って落ち着きがなくなる行動のことである。
「家に帰りたい」という意思表示と落ち着きのない状態の両方がある場合のみ該当する。
 
調査上の留意点
単に「家に帰りたい」と言うだけで、状態が落ち着いている場合は含まない。
 
 
4-9 一人で外に出たがり目が離せない
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「一人で外に出たがり目が離せない」行動の頻度を評価する項目である。
 
調査上の留意点
環境上の工夫等で外に出ることがなかったり、または、歩けない場合等は含まない。
 
 
4-10 いろいろなものを集めたり、無断でもってくる
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「いろいろなものを集めたり、無断でもってくる」行動の頻度を評価する項目である。
ここでいう「いろいろなものを集めたり、無断でもってくる」行動とは、いわゆる収集癖の行動のことである。
 
調査上の留意点
昔からの性格や生活習慣等で、箱や包装紙等を集めたり等ではなく、明らかに周囲の状況に合致しない行動のことである。
 
 
4-11 物を壊したり、衣類を破いたりする
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「物を壊したり、衣類を破いたりする」行動の頻度を評価する項目である。
 
調査上の留意点
実際に物が壊れなくても、破壊しようとする行動がみられる場合は評価する。
壊れるものを周囲に置かないようにする、破れないようにする等の工夫により、「物を壊したり、衣類を破いたりする」行動がみられない場合は、「1.ない」を選択する。この場合予防的手段が講じられていない場合の状況、発生する介護の手間、頻度について特記事項に記載する。
明らかに周囲の状況に合致しない、物を捨てる行為も含む。
 
4-12 ひどい物忘れ
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「ひどい物忘れ」行動の頻度を評価する項目である。
ここでいう「ひどい物忘れ」行動とは、認知症の有無や知的レベルは問わない。
この物忘れによって、何らかの行動が起こっているか、周囲の者が何らかの対応をとらなければならないような状況(火の不始末など)をいう。
 
調査上の留意点
電話の伝言をし忘れるといったような、単なる物忘れは含まない。
周囲の者が何らかの対応をとらなければならないような状況については、実際に対応がとられているかどうかは選択基準に含まれないが、具体的な対応の状況について特記事項に記載する。
ひどい物忘れがあっても、それに起因する行動が起きていない場合や、周囲の者が何らかの対応をとる必要がない場合は、「1.ない」を選択する。
 
 
4-13 意味もなく独り言や独り笑いをする
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「意味もなく独り言や独り笑いをする」行動の頻度を評価する項目である。
ここでいう「意味もなく独り言や独り笑いをする」行動とは、場面や状況とは無関係に(明らかに周囲の状況に合致しないにも関わらず)、独り言を言う、独り笑いをする等の行動が持続したり、あるいは突然にそれらの行動が現れたりすることである。
 
調査上の留意点
性格的な理由等で、独り言が多い等ではなく場面や目的からみて不適当な行動があるかどうかで選択する。
 
 
4-14 自分勝手に行動する
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「自分勝手に行動する」頻度を評価する項目である。
ここでいう「自分勝手に行動する」とは、明らかに周囲の状況に合致しない自分勝手な行動をすることである。
 
調査上の留意点
いわゆる、性格的に「身勝手」「自己中心的」等のことではなく、場面や目的からみて不適当な行動があるかどうかで選択する。
 
 
4-15 話がまとまらず、会話にならない
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「話がまとまらず、会話にならない」行動の頻度を評価する項目である。
ここでいう「話がまとまらず、会話にならない」行動とは、話の内容に一貫性がない、話題を次々と変える、質問に対して全く無関係な話が続く等、会話が成立しない行動のことである。
 
調査上の留意点
いわゆる、もともとの性格や生活習慣等の理由から、会話が得意ではない(話下手)等のことではなく、明らかに周囲の状況に合致しない行動のことである。
 
 
5-1 薬の内服
1.介助されていない 2.一部介助 3.全介助
 
調査項目の定義
「薬の内服」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「薬の内服」とは、薬や水を手元に用意する、薬を口に入れる、飲み込む(水を飲む)という一連の行為のことである。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「薬の内服」の介助が行われていない場合をいう。
・視覚障害等があり、薬局が内服の時間・量を点字でわかるようにしており、内服は自分でできている場合は、「1.介助されていない」を選択する。
「2.一部介助」
・薬を飲む際の見守り、飲む量の指示等が行われている、あるいは、飲む薬や水を手元に用意する、オブラートに包む、介護者が分包する等、何らかの介助が行われている場合をいう。
・予め薬局で分包されている場合は含まない。
「3.全介助」
・薬や水を手元に用意する、薬を口に入れるという一連の行為に介助が行われている場合をいう。
 
調査上の留意点
薬の内服が適切でないなどのために飲む量の指示等の介助が行われている場合は「2.一部介助」を選択する。
 
インスリン注射、塗り薬の塗布等、内服以外のものは含まない。
経管栄養(胃ろうを含む)などのチューブから内服薬を注入する場合も含む。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「薬があらかじめ分包されている場合」
薬があらかじめ薬局で分包されている場合は含まない。家族が行う場合は、介助の方法で選択する。
 
「調査対象の行為自体が発生しない場合」
薬の内服がない(処方されていない)場合は、薬剤が処方された場合を想定し、適切な介助の方法を選択した上で、そのように判断できる具体的な事実を特記事項に記載する。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
5-2 金銭の管理
1.介助されていない 2.一部介助 3.全介助
 
調査項目の定義
「金銭の管理」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「金銭の管理」とは、自分の所持金の支出入の把握、管理、出し入れする金額の計算等の一連の行為である。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「金銭の管理」の介助が行われていない場合をいう。
・自分の所持金(預金通帳等)の支出入の把握や管理を自分で行っている、出し入れする金額の計算を介助なしに自分で行っている場合をいう。
「2.一部介助」
・金銭の管理に何らかの介助が行われている、あるいは、小遣い銭として少額のみ自己管理している場合をいう。
・介護者が確認する場合も含まれる。
「3.全介助」
・「金銭の管理」の全てに介助が行われている場合をいう。
・認知症等のため金銭の計算ができず、支払いが発生した際に、介護者が財布にあらかじめ準備しておいたお金の出し入れのみ行う場合には、「3.全介助」を選択する。
 
調査上の留意点
銀行に行き出入金を行う等、金銭の出し入れは含まない。
手元に現金等を所持していない場合でも、年金、預貯金、各種給付(老齢福祉年金・生活保護)等の管理の状況で選択する。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
5-3 日常の意思決定
1.できる(特別な場合でもできる) 2.特別な場合を除いてできる 3.日常的に困難
4.できない
 
調査項目の定義
「日常の意思決定」の能力を評価する項目である。
ここでいう「日常の意思決定」とは、毎日の暮らしにおける活動に関して意思決定できる能力をいう。
 
選択肢の選択基準
「1.できる(特別な場合でもできる)」
・常時、あらゆる場面で意思決定ができる。
「2.特別な場合を除いてできる」
・慣れ親しんだ日常生活状況のもとでは、見たいテレビ番組やその日の献立、着る服の選択等に関する意思決定はできるが、ケアプランの作成への参加、ケアの方法・治療方針への合意等には、指示や支援を必要とする。
「3.日常的に困難」
・慣れ親しんだ日常生活状況のもとでも、意思決定がほとんどできないが、見たいテレビ番組やその日の献立、着る服の選択等に関する意思決定をすることがある。
「4.できない」
・意思決定が全くできない、あるいは、意思決定ができるかどうかわからない場合等をいう。
 
調査上の留意点
特別な場合の意思決定においては、冠婚葬祭式事、町内会行事等への参加を本人自身が検討しているかについてたずねてもよい。
「日常の意思決定」は能力を問う項目であるが、申請者の日常的な状態を頻度の観点から把握する項目であることから、他の能力を問う項目とは異なり、調査日の状況に加え、調査対象者及び介護者等から聞き取りした日頃の状況から選択を行い、調査日の状況と日頃の状況の両者を特記事項に記載する。
 
 
5-4 集団への不適応
1.ない 2.ときどきある 3.ある
 
調査項目の定義
「集団への不適応」の行動の頻度を評価する項目である。
ここでいう「集団への不適応」の行動とは、家族以外の他者の集まりに参加することを強く拒否したり、適応できない等、明らかに周囲の状況に合致しない行動のことである。
 
選択肢の選択基準
「1.ない」
・集団への不適応が、(過去に1回以上あったとしても)過去1か月間に1度も現れたことがない場合や月1回以上の頻度では現れない場合をいう。
・意識障害、寝たきり等の理由により集団活動に参加する可能性がほとんどない場合も含まれる。
「2.ときどきある」
・少なくとも1か月間に1回以上、1週間に1回未満の頻度で現れる場合をいう。
「3.ある」
・少なくとも1週間に1回以上の頻度で現れる場合をいう。
 
調査上の留意点
いわゆる、性格や生活習慣等の理由から、家族以外の他者の集まりに入ることが好きではない、得意ではない等のことではなく、明らかに周囲の状況に合致しない行動のことである。
 
 
5-5 買い物
1.介助されていない 2.見守り等 3.一部介助 4.全介助
 
調査項目の定義
「買い物」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「買い物」とは、食材、消耗品等の日用品を選び(必要な場合は陳列棚から商品を取り)、代金を支払うことである。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「買い物」の介助が行われていない場合をいう。
・食材等の日用品を選び、代金を支払うことを介助なしで行っている場合をいう。
・店舗等に自分で電話をして注文をして、自宅へ届けてもらう場合も含む。
「2.見守り等」
・買い物に必要な行為への「確認」「指示」「声かけ」のことである。
「3.一部介助」
・陳列棚から取る、代金を支払う等、「買い物」の行為の一部に介助が行われている場合をいう。
「4.全介助」
・「買い物」の全てに介助が行われている場合をいう。
 
調査上の留意点
店舗等までの移動、及び店舗内での移動については含まない。
店舗等に自分でインターネットや電話をして注文をして、自宅へ届けてもらうことは「買い物」をしていることに含む。
家族やヘルパー等に買い物を依頼する場合は、「買い物の依頼」、「買い物を頼んだ人への支払い」も含めた一連の行為に対して介助が行われているかどうかで選択する。
本人が自分で購入したものを、介護者が精算、返品等の介助を行っている場合は「3.一部介助」を選択する。
施設入所者や在宅で寝たきり等の方の買い物については、施設や家族が代行して買い物を行っている場合は、介助されていると考える。この場合、当該買い物そのものが過去概ね1週間以内に行われている必要はない。
ベッド上から買ってきてほしいものを指示し、物品の手配のみを施設職員が行っている場合は、「3.一部介助」を選択する。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
5-6 簡単な調理
1.介助されていない 2.見守り等 3.一部介助 4.全介助
 
調査項目の定義
「簡単な調理」の介助が行われているかどうかを評価する項目である。
ここでいう「簡単な調理」とは、「炊飯」、「弁当、惣菜、レトルト食品、冷凍食品の加熱」、「即席めんの調理」をいう。
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
 
選択肢の選択基準
「1.介助されていない」
・「簡単な調理」の介助が行われていない場合をいう。
「2.見守り等」
・「確認」「指示」「声かけ」等が行われていることをいう。
「3.一部介助」
・「簡単な調理」の行為の一部に介助が行われている場合をいう。
「4.全介助」
・「簡単な調理」の全てに介助が行われている場合をいう。
 
調査上の留意点
配下膳、後片付けは含まない。
食材の買い物については含まない。
お茶、コーヒー等の準備は含まない。
施設等でこれらの行為がすべて施設職員によって代行されている場合は、施設職員による対応の状況について選択する。また、家族の食事と一緒に調理が行われている場合も、家族の調理の状況に基づき選択する。
 
「調査対象の行為自体が発生しない場合」
経管栄養で調理の必要のない流動食のみを投与されている場合は、「簡単な調理」に対する介助は行われていないため、「1.介助されていない」を選択する。ただし、流動食のあたためなどを行っている場合は、「レトルト食品の加熱」に該当するとして、介助の方法を評価する。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって介助の方法が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
「「実際の介助の方法」が不適切な場合」
「介助されていない」状態や「実際に行われている介助」が、対象者にとって「不適切」であると認定調査員が判断する場合は、その理由を特記事項に記載した上で、適切な「介助の方法」を選択し、介護認定審査会の判断を仰ぐことができる。
なお、認定調査員が、「実際に行われている介助が不適切」と考える場合には、
・独居や日中独居等による介護者不在のために適切な介助が提供されていない場合
・介護放棄、介護抵抗のために適切な介助が提供されていない場合
・介護者の心身の状態から介助が提供できない場合
・介護者による介助が、むしろ本人の自立を阻害しているような場合
など、対象者が不適切な状況に置かれていると認定調査員が判断する様々な状況が想定される。
 
 
過去14日間にうけた特別な医療について
【処置内容】
1. 点滴の管理
2. 中心静脈栄養
3. 透析
4. ストーマ(人工肛門)の処置
5. 酸素療法
6. レスピレーター(人工呼吸器)
7. 気管切開の処置
8. 疼痛の看護
9. 経管栄養
 
【特別な対応】
10. モニター測定(血圧、心拍、酸素飽和度等)
11. じょくそうの処置
12. カテーテル(コンドームカテーテル、留置カテーテル、ウロストーマ等)
 
調査項目の定義と選択肢の選択基準等
「過去14日間にうけた特別な医療の有無」を評価する項目である。
ここでいう「特別な医療」とは、医師、または、医師の指示に基づき看護師等によって実施される医療行為に限定される。サービスを提供する機関の種類は問わず、医師の指示が過去14日以内に行われているかどうかも問わない。
家族、介護職種の行う類似の行為は含まない
継続して実施されているもののみを対象とし、急性疾患への対応で一時的に実施される医療行為は含まない。
したがって、調査の時点で、医師の診断により処置が終了、完治している場合は、過去14日間に処置をしていても、継続して行われていないため該当しない。
これらの行為は意思疎通がとれない在宅の調査対象者の場合は、聞き取りのできる家族等の介護者に同席してもらうことが望ましい。
調査対象者、家族、又は介護者から情報を得ることとし、医療機関に記載内容を確認することは守秘義務の問題及び治療上の必要から治療内容について告知を行っていない場合があるため適切ではない。
なお「特別な医療」が定義に即して実施されていることを介護認定審査会委員が検討できるようにするため「実施頻度/継続性」、「実施者」、「当該医療行為を必要とする理由」について特記事項に記載すること。
 
「1.点滴の管理」
調査項目の定義
「過去14日間にうけた特別な医療」の中の「点滴の管理の有無」を評価する項目である。
ここでいう「点滴の管理」とは、医師の指示に基づき、過去14日以内に看護師等によって実施された行為のみとする。急性期の治療を目的とした点滴は含まない。
 
調査上の留意点
点滴の針が留置されているが、現在点滴は行われていない場合であっても、必要に応じて点滴が開始できる体制にあれば該当する。
「8.疼痛の看護」で点滴が用いられ、本項目の定義に従って管理がなされている場合は、両方とも該当する。
 
「2.中心静脈栄養」
調査項目の定義
「過去14日間にうけた特別な医療」の中の「中心静脈栄養の有無」を評価する項目である。
ここでいう「中心静脈栄養」とは、医師の指示に基づき、過去14日以内に看護師等によって実施された行為のみとする。
 
調査上の留意点
現在、栄養分が供給されていなくても、必要に応じて中心静脈栄養が供給できる体制にある場合も含む。
経口摂取が一部可能である者であっても、中心静脈栄養が行われている場合も含む。
 
「3.透析」
調査項目の定義
「過去14日間にうけた特別な医療」の中の「透析の有無」を評価する項目である。
ここでいう「透析」とは、医師の指示に基づき、過去14日以内に看護師等によって実施された行為のみとする。
 
調査上の留意点
透析の方法や種類を問わない。
 
「4.ストーマ(人工肛門)の処置」
調査項目の定義
「過去14日間にうけた特別な医療」の中の「ストーマ(人工肛門)の処置の有無」を評価する項目である。
ここでいう「ストーマ(人工肛門)の処置」とは、医師の指示に基づき、過去14日以内に看護師等によって実施された行為のみとする。
 
調査上の留意点
「ストーマ(人工肛門)の処置」については、人工肛門が造設されている者に対して消毒、バッグの取り替え等の処置が行われているかどうかを評価する。
 
「5.酸素療法」
調査項目の定義
「過去14日間にうけた特別な医療」の中の「酸素療法の有無」を評価する項目である。ここでいう「酸素療法」とは、医師の指示に基づき、過去14日以内に看護師等によって実施された行為のみとする。
 
調査上の留意点
呼吸器、循環器疾患等により酸素療法が行われているかを評価する項目である。
実施場所は問わない。
 
「6.レスピレーター(人工呼吸器)」
調査項目の定義
「過去14日間にうけた特別な医療」の中の「レスピレーター(人工呼吸器)の有無」を評価する項目である。
ここでいう「レスピレーター(人工呼吸器)」とは、医師の指示に基づき、過去14日以内に看護師等によって実施された行為のみとする。
 
調査上の留意点
経口・経鼻・気管切開の有無や、機種は問わない。
 
「7.気管切開の処置」
調査項目の定義
「過去14日間にうけた特別な医療」の中の「気管切開の処置の有無」を評価する項目である。
ここでいう「気管切開の処置」とは、医師の指示に基づき、過去14日以内に看護師等によって実施された行為のみとする。
 
調査上の留意点
気管切開が行われている者に対して、カニューレの交換、開口部の消毒、ガーゼ交換、開口部からの喀痰吸引などの処置が行われているかどうかを評価する。
 
「8.疼痛の看護」
調査項目の定義
「過去14日間にうけた特別な医療」の中の「疼痛の看護の有無」を評価する項目である。
ここでいう「疼痛の看護」とは、医師の指示に基づき、過去14日以内に看護師等によって実施された行為のみとする。
 
調査上の留意点
疼痛の看護において想定される疼痛の範囲は、がん末期のペインコントロールに相当するひどい痛みであり、これらの病態に対し鎮痛薬の点滴、硬膜外持続注入、座薬、貼付型経皮吸収剤、注射が行われている場合とする。
整形外科医の指示で、理学療法士の行う痛みのための電気治療については該当しない。
一般的な腰痛、関節痛などの痛み止めの注射や湿布等も該当しない。
さする、マッサージする、声かけを行う等の行為も該当しない。
痛み止めの内服治療は該当しない。
 
「9.経管栄養」
調査項目の定義
「過去14日間にうけた特別な医療」の中の「経管栄養の有無」を評価する項目である。
ここでいう「経管栄養」とは、医師の指示に基づき、過去14日以内に看護師等によって実施された行為のみとする。
 
調査上の留意点
経口、経鼻、胃ろうであるかは問わない。
また、管が留置されている必要はなく、一部経口摂取が可能である場合であっても、経管栄養が行われている場合も含む。
「経管栄養」については、栄養の摂取方法として、経管栄養が行われているかどうかを評価する項目のため、栄養は中心静脈栄養で摂取し、投薬目的で胃管が留置されている場合は該当しない。
 
「10.モニター測定(血圧、心拍、酸素飽和度等)」
調査項目の定義
「過去14日間にうけた特別な医療」の中の「モニター測定(血圧、心拍、酸素飽和度等)の有無」を評価する項目である。
ここでいう「モニター測定(血圧、心拍、酸素飽和度等)」とは、医師の指示に基づき、過去14日以内に看護師等によって実施された行為のみとする。
 
調査上の留意点
血圧、心拍、心電図、呼吸数、酸素飽和度のいずれか一項目以上について、24時間にわたってモニターを体につけた状態で継続的に測定されているかどうかを評価する。
ただし、血圧測定の頻度は1時間に1回以上のものに限る。
 
「11.じょくそうの処置」
調査項目の定義
「過去14日間にうけた特別な医療」の中の「じょくそうの処置の有無」を評価する項目である。
ここでいう「じょくそうの処置」とは、医師の指示に基づき、過去14日以内に看護師等によって実施された行為のみとする。
 
調査上の留意点
じょくそうの大きさや程度は問わない。
 
「12.カテーテル(コンドームカテーテル、留置カテーテル、ウロストーマ等)」
調査項目の定義
「過去14日間にうけた特別な医療」の中の「カテーテル(コンドームカテーテル、留置カテーテル、ウロストーマ等)の有無」を評価する項目である。
ここでいう「カテーテル(コンドームカテーテル、留置カテーテル、ウロストーマ等)」とは、医師の指示に基づき、過去14日以内に看護師等によって実施された行為のみとする。
 
調査上の留意点
コンドームカテーテル、留置カテーテルの使用、もしくは間欠導尿等、尿の排泄のためのカテーテルが使用されており、その管理が看護師等によって行われているかどうかで選択する。
腎ろうについては、その管理を看護師等が行っている場合に該当する。
 
 
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)
 
判定の基準
調査対象者について、調査時の様子から下記の判定基準を参考に該当するものに○印をつけること。
なお、全く障害等を有しない者については、自立に○をつけること。
 
生活自立
ランクJ
何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する
1. 交通機関等を利用して外出する
2. 隣近所へなら外出する
準寝たきり
ランクA
屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない
1. 介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する
2. 外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている
寝たきり
ランクB
屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ
1. 車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う
2. 介助により車いすに移乗する
ランクC
1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する
1. 自力で寝返りをうつ
2. 自力では寝返りもうてない
※判定に当たっては、補装具や自助具等の器具を使用した状態であっても差し支えない。
 
 
判定にあたっての留意事項
この判定基準は、地域や施設等の現場において、保健師等が何らかの障害を有する高齢者の日常生活自立度を客観的かつ短時間に判定することを目的として作成したものである。
判定に際しては「~をすることができる」といった「能力」の評価ではなく「状態」、特に『移動』に関わる状態像に着目して、日常生活の自立の程度を4段階にランク分けすることで評価するものとする。なお、本基準においては何ら障害を持たない、いわゆる健常高齢者は対象としていない。
4段階の各ランクに関する留意点は以下のとおりである。
 
「朝昼夜等の時間帯や体調等によって能力の程度が異なる場合」
一定期間(調査日より概ね過去1週間)の状況において、より頻回に見られる状況や日頃の状況で選択する。
その場合、その日頃の状況等について、具体的な内容を「特記事項」に記載する。
 
【ランクJ】
何らかの身体的障害等を有するが、日常生活はほぼ自立し、一人で外出する者が該当する。なお”障害等”とは、疾病や傷害及びそれらの後遺症あるいは老衰により生じた身体機能の低下をいう。
J-1はバス、電車等の公共交通機関を利用して積極的にまた、かなり遠くまで外出する場合が該当する。
J-2は隣近所への買い物や老人会等への参加等、町内の距離程度の範囲までなら外出する場合が該当する。
 
【ランクA】
「準寝たきり」に分類され、「寝たきり予備軍」ともいうべきグループであり、いわゆるhouse-boundに相当する。屋内での日常生活活動のうち食事、排泄、着替に関しては概ね自分で行い、留守番等をするが、近所に外出するときは介護者の援助を必要とする場合が該当する。
なお”ベッドから離れている”とは”離床”のことであり、ふとん使用の場合も含まれるが、ベッドの使用は本人にとっても介護者にとっても有用であり普及が図られているところでもあるので、奨励的意味からベッドという表現を使用した。
A-1は寝たり起きたりはしているものの食事、排泄、着替時はもとより、その他の日中時間帯もベッドから離れている時間が長く、介護者がいればその介助のもと、比較的多く外出する場合が該当する。
A-2は日中時間帯、寝たり起きたりの状態にはあるもののベッドから離れている時間の方が長いが、介護者がいてもまれにしか外出しない場合が該当する。
 
【ランクB】
「寝たきり」に分類されるグループであり、いわゆるchair-boundに相当する。B-1とB-2とは座位を保つことを自力で行うか介助を必要とするかどうかで区分する。日常生活活動のうち、食事、排泄、着替のいずれかにおいては、部分的に介護者の援助を必要とし、1日の大半をベッドの上で過ごす場合が該当する。排泄に関しては、夜間のみ”おむつ”をつける場合には、介助を要するものとはみなさない。なお、”車いす”は一般のいすや、ポータブルトイレ等で読み替えても差し支えない。
B-1は介助なしに車いすに移乗し食事も排泄もベッドから離れて行う場合が該当する。
B-2は介助のもと、車いすに移乗し、食事または排泄に関しても、介護者の援助を必要とする。
 
【ランクC】
ランクBと同様、「寝たきり」に分類されるが、ランクBより障害の程度が重い者のグループであり、いわゆるbed-boundに相当する。日常生活活動の食事、排泄、着替のいずれにおいても介護者の援助を全面的に必要とし、1日中ベッドの上で過ごす。
C-1はベッドの上で常時臥床しているが、自力で寝返りをうち体位を変える場合が該当する。
C-2は自力で寝返りをうつこともなく、ベッド上で常時臥床している場合が該当する。
 
 
認知症高齢者の日常生活自立度
 
判定の基準
調査対象者について、訪問調査時の様子から下記の判定基準を参考に該当するものに○印をつけること。
なお、まったく認知症を有しない者については、自立に○印をつけること。
 
【参考】
ランク
判 断 基 準
見られる症状・行動の例
何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。
 
日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。
 
Ⅱa
家庭外で上記Ⅱの状態がみられる。
たびたび道に迷うとか、買物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ等
Ⅱb
家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる。
服薬管理ができない、電話の応対や訪問者との対応など一人で留守番ができない等
日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。
 
Ⅲa
日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。
着替え、食事、排便、排尿が上手にできない、時間がかかる。
やたらに物を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声・奇声をあげる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等
Ⅲb
夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。
ランクⅢaに同じ
日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。
ランクⅢに同じ
著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。
せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態等
 
判定にあたっての留意事項
認定調査項目に含まれていない認知症に関連する症状のうち、「幻視・幻聴」、「暴言・暴行」、「不潔行為」、「異食行動」等については、関連する項目の特記事項に記載するか、認知症高齢者の日常生活自立度の特記事項に記載すること。また、「火の不始末」は、「4-12 ひどい物忘れ」で評価されるので適切な選択肢を選び、特記事項に具体的な状況を記載する。
 
 

 
(別添2)
 
 
 
 
 
 
主治医意見書記入の手引き
 
 
 
 
 
 

 
Ⅰ 介護保険制度における主治医意見書について
 
1 主治医意見書の位置付け
 
介護保険の被保険者が保険によるサービスを利用するためには、介護の必要性の有無やその程度等についての認定(要介護認定)を保険者である市町村から受ける必要があります。
この要介護認定は、市町村職員等による調査によって得られた情報及び主治医の意見に基づき、市町村等に置かれる保健・医療・福祉の学識経験者から構成される介護認定審査会において、全国一律の基準に基づき公平・公正に行われます。
介護保険法では、被保険者から要介護認定の申請を受けた市町村は、当該被保険者の「身体上又は精神上の障害(生活機能低下)の原因である疾病又は負傷の状況等」について、申請者に主治医がいる場合には、主治医から意見を求めることとされています。主治医意見書は、この規定に基づき、申請者に主治医がいる場合には、主治医がその意見を記入するものであり、その様式等については全国で一律のものを使用することとします。
要介護認定の結果如何によって、申請を行った高齢者は介護保険によるサービスを利用できるかどうかが、また利用できる場合には在宅サービスの上限や施設に支払われる報酬が決定されることとなるものですから、審査判定に用いられる資料である主治医意見書の役割は極めて大きいものです。
介護認定審査会では、医療関係者以外の委員もその内容を理解した上で審査判定を行うことになりますので、なるべく難解な専門用語を用いることは避け、楷書で平易にわかりやすく記入してください。
 
 
2 主治医意見書の具体的な利用方法
 
主治医意見書は、介護認定審査会において、主として以下のように用いられます。
 
(1)第2号被保険者の場合、生活機能低下の直接の原因となっている疾病が特定疾病に該当するかどうかの確認
 
申請者が40歳以上65歳未満の場合は、要介護状態の原因である身体上又は精神上の生活機能低下が政令で定められた16疾病(特定疾病)によることが認定の要件となっています。介護認定審査会は、主治医意見書に記入された診断名やその診断の根拠として記入されている内容に基づき、申請者の生活機能低下の原因となっている疾病がこの特定疾病に該当していることを確認します。その上で、介護の必要度等について、65歳以上の方と同様に審査及び判定を行います。
従って、特定疾病に該当している場合の診断根拠については、本主治医意見書内に記入してください。
 
(2)介護の手間がどの程度になるのかの確認(介護の手間に係る審査判定)
介護認定審査会ではまず心身の状況に関する74項目の調査項目と主治医意見書に基づく一次判定結果を原案として介護の手間に係る審査判定を行います。審査判定にあたっては、認定調査票の特記事項や主治医意見書に記入された医学的観点からの意見等を加味して、介護の手間の程度や状況等を総合的に勘案することとなりますので、必要に応じて一次判定結果は変更されます。
従って、介護の手間の程度や状況等について具体的な状況を挙げて記入してください。
 
(3)状態の維持・改善可能性の評価(状態の維持・改善に係る審査判定)
 
介護認定審査会における介護の手間に係る審査判定において「要支援2」「要介護1」「要介護認定等基準時間が32分以上50分未満である状態(当該状態に相当すると認められないものを除く。)又はこれに相当すると認められる状態」と判定された者に対しては、続いて状態の維持・改善可能性に係る審査判定を行い、「要支援2」「要介護1」のいずれの要介護状態等区分に該当するか、判定を行います。審査判定にあたっては、認定調査項目や、特記事項、主治医意見書に記入された医学的観点からの意見等を加味して、心身の状態が安定していない者や認知症等により予防給付等の利用に係る適切な理解が困難な者を除いた者を「要支援2」と判定することとなります。
 
(4)認定調査による調査結果の確認・修正
認定調査員による認定調査は、通常は1回の審査に対して1回行うこととされており、また、認定調査員の専門分野も医療分野に限らず様々です。従って、申請者に対して長期間にわたり医学的管理を行っている主治医の意見の方が、より申請者の状況について正確に把握していることが明らかな場合には、介護認定審査会は認定調査員の調査結果を修正し、改めて一次判定からやり直すこととなります。
 
(5)介護サービス計画作成時の利用
介護サービス計画の作成に際し、介護サービスを提供するにあたっての医学的観点からの意見や留意点等についての情報を、申請者等の同意を得てサービス提供者に提供することになります。
サービス提供時の医学的観点からの留意点や禁忌等は主治医意見書の記載内容のみから判断されるものではありませんが、介護サービス計画作成等に有用となる留意点をお分かりになる範囲で具体的に記入してください。
 
 
Ⅱ 記入に際しての留意事項
 
1 記入者
 
主治医意見書の記入は、申請者の主治医が行ってください。
 
2.記入方法
 
主治医意見書への記入は、インク、またはボールペンを使用してください。なお、パーソナルコンピュータ等を使用することはさしつかえありませんが、その場合には感熱紙等長期間の保存に適さないものは用いないでください。記入欄に必要な文字または数値を記入し、また□にレ印をつけてください。
 
 
Ⅲ 記入マニュアル
 
0.基本情報
 
「申請者の氏名」等
申請者の氏名を記入し、ふりがなを併記してください。
性別については、該当する□にレ印をつけてください。
生年月日及び年齢(満年齢)については、該当するものに○印をつけ、必要事項を記入してください。
住所及び連絡先については、居住地(自宅)の住所及び電話番号も記入してください。施設に入院・入所している場合は、当該施設の施設名、住所及び電話番号を記入してください。
主治医として主治医意見書が介護サービス計画作成の際に利用されることについて同意する場合は「□同意する」に、同意しない場合には「□同意しない」にレ印をつけてください。
主治医意見書における「介護サービス計画作成等」の想定する範囲は、介護保険事業の適切な運営のために必要な範囲であって、介護サービス計画作成に加えて、例えば、
・総合事業における介護予防ケアマネジメントのケアプラン作成
・地域ケア会議における個別事例の検討
・指定介護老人福祉施設及び指定地域密着型介護老人福祉施設における入所に関する検討のための委員会での特例入所対象者の判定及び施設への優先入所対象者の判定
・認知症日常生活自立度を基準とした加算における日常生活自立度の決定
・レセプト情報等との連結解析や国保データベース(KDB)システムでの利活用による保険者の支援
に関する利用を考えており、その範囲内において取り扱っていただきますようお願いします。
同意する場合には、介護サービス計画の内容についての検討を行うサービス担当者会議に本主治医意見書が提示されます。
なお、申請者本人の同意を得た上で主治医意見書をサービス担当者会議の参加者に示すことについては、主治医に「守秘義務」に関する問題が生じることはないことを申し添えます。
 
「医師氏名」等
主治医意見書を記入する主治医の所属する医療機関の所在地及び名称、電話番号、FAX、主治医の氏名を記入してください。
なお、医師氏名の欄には、押印の必要はありません。また、医療機関の所在地及び名称等は、ゴム印等を用いても構いません。
ただし、医師本人の記入であることを確認する必要があることから、医師氏名のみは医師本人による自署をお願いします。
 
(1)最終診察日
申請者を最後に診察した日を記入してください。
 
(2)主治医意見書作成回数
申請者について主治医意見書を初めて作成する場合は「□初回」に、2回目以降の場合は「□2回目以上」にレ印をつけてください。
 
(3)他科受診の有無
申請者が他科を受診しているかどうかについて、お分かりになる範囲で該当する□にレ印をつけてください。有の場合は、該当する診療科名の□にレ印をつけてください。主治医意見書中に該当する診療科名がない場合には、その他の(  )内に診療科名を記入してください。
 
1.傷病に関する意見
 
(1)診断名
現在、罹患している傷病の診断名と、その発症年月日を記入してください。
発症年月日がはっきりわからない場合は、おおよその発症年月を記入してください。例えば、脳血管障害の再発や併発の場合には、直近の発作(発症)が起きた年月日を記入してください。
「1.」の傷病名には、65歳以上の第1号被保険者については、生活機能(※)低下の直接の原因となっている傷病名を、40歳以上65歳未満の第2号被保険者については、介護を必要とさせている生活機能低下等の直接の原因となっている特定疾病名を記入してください。
生活機能低下を引き起こしている傷病が複数ある場合もまれではありませんが、より主体であると考えられる傷病を優先して記入してください。
なお、4種類以上の傷病に罹患している場合については、主な傷病名の記入にとどめ、必要であれば、「5.特記すべき事項」の欄に記入してください。
特定疾病の診断については、以下に示す「特定疾病の症候・所見のポイント」を参考としつつ、別添3の「特定疾病にかかる診断基準」に従って記入するとともに、診断上の主な所見については「(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容」に記入してください。
 
 
※: 生活機能とは、①体・精神の働き、体の部分である「心身機能」、②ADL(日常生活行為)・外出・家事・職業に関する生活行為全般である「活動」、③家庭や社会での役割を果たすことである「参加」、のすべてを含む包括概念。
生活機能には健康状態(病気・怪我・ストレスなど)、環境因子(物的環境・人的環境・制度的環境)、個人因子(年齢・性別など)などが様々に影響する。
 
 
特定疾病の症候・所見のポイント
 
疾病名
症候・所見
がん
(がん末期)
以下のいずれかの方法により悪性新生物であると診断され、かつ、治癒を目的とした治療に反応せず、進行性かつ治癒困難な状態(注)にあるもの。
①組織診断又は細胞診により悪性新生物であることが証明されているもの
②組織診断又は細胞診により悪性新生物であることが証明されていない場合は、臨床的に腫瘍性病変があり、かつ、一定の時間的間隔を置いた同一の検査(画像診査など)等で進行性の性質を示すもの。
注)ここでいう治癒困難な状態とは、概ね6月間程度で死が訪れると判断される場合を指す。なお、現に抗がん剤等による治療が行われている場合であっても、症状緩和等、直接治癒を目的としていない治療の場合は治癒困難な状態にあるものとする。
関節リウマチ
指の小関節から股・膝のような大関節まであらゆる関節に炎症が起こり、疼痛・機能障害が出現する。とくに未明から早朝に痛みとこわばりが強い。筋、腱にも影響し筋力低下や動作緩慢が顕著になる。
筋萎縮性側索硬化症
筋萎縮・筋力低下、球麻痺、筋肉の線維束性収縮、錐体路症状を認める。それに反して感覚障害、眼球運動障害、膀胱直腸障害、褥瘡は原則として末期まで認めない。
後縦靭帯骨化症
靭帯の骨化は頚椎に最も多く、頚髄の圧迫では手足のしびれ感、運動障害、腱反射亢進、病的反射出現等の痙性四肢麻痺となる。胸髄圧迫では上肢は異常なく、下肢の痙性対麻痺となる。
骨折を伴う骨粗鬆症
脊椎圧迫骨折…腰背部痛を伴う脊柱の変形が特徴的である。軽微な外傷後もしくは誘因なく急性の腰痛を生じ寝たきりになることが多い。
大腿骨頚部骨折・転子部骨折…転倒等の後に、大転子部の痛みを訴え起立不能となる。膝の痛みを訴える場合もある。転位の少ない頚部骨折の場合、歩行可能な場合もある。
初老期における認知症(アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体病等)
アルツハイマー病…初期の主症状は、記憶障害である。また、意欲の低下、物事の整理整頓が困難となり、時間に関する見当識障害がみられる。中期には、記憶の保持が短くなり、薬を飲んだことを忘れたり、同じ物を何回も買ってくるようになる。後期には、自分の名前を忘れたり、トイレがわからなくなったり、部屋に放尿するようになる。また失禁状態に陥る。薬物治療で進行の遅延効果が得られる場合がある。
血管性認知症…初発症状として物忘れで始まることが多い。深部腱反射の亢進、足底反射、仮性球麻痺、歩行異常等の局所神経徴候を伴いやすい。一般に、記憶障害はかなりあっても、判断力は保持されており、人格の崩壊は認められない。
レビー小体病…進行性の認知症。リアルな幻視体験が特徴。パーキンソン症状が先行する事もあり、薬物治療で効果が得られる場合がある。
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)
臨床的に、これら三疾患にはパーキンソン症状が共通に認められる。すなわち、筋肉のこわばり(筋固縮)、ふるえ(振戦)、動作緩慢(無動)、突進現象(姿勢反射障害)などのうちのいくつかを認めるものである。
①パーキンソン病は、パーキンソン症状を中心とし、薬剤などの治療効果が高いものが多い
②進行性核上性麻痺は、異常な姿勢(頚部を後屈させ、顎が上がる)や、垂直方向の眼球運動障害(下方を見にくい)といった多彩な症状を示す
③大脳皮質基底核変性症は、パーキンソン症状と大脳皮質症状(手が思うように使えないなど)が同時にみられる
など、症状や病状の進行に差が見られる。①振戦②筋強剛(固縮)③動作緩慢④姿勢反射
障害⑤その他の症状(自律神経障害、突進現象、歩行障害、精神症状等)
脊髄小脳変性症
初発症状は歩行のふらつき(歩行失調)が多い。非常にゆっくりと進行。病型により筋萎縮や不随意運動、自律神経症状等で始まる。最終的には能動的座位が不可能となり、寝たきり状態となる。
脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症…腰痛、下肢痛、間欠性跛行を主訴とする。
頚部脊柱管狭窄症…両側の手足のしびれで発症するものが多い。手足のしびれ感、腱反射亢進、病的反射出現等の痙性四肢麻痺を呈する。
10
早老症(ウェルナー症候群等)
若年者で老人性顔貌、白髪、毛髪の脱落とともに肥満の割に四肢が細い。若年性白内障、皮膚の萎縮と角化、足部皮膚潰瘍、四肢の筋肉・脂肪組織・骨の萎縮、血管・軟部組織の石炭化、性腺機能低下症、糖尿病、髄膜腫等を認める。
11
多系統萎縮症
多系統萎縮症(MSA)は臨床的に、①起立性低血圧、排尿障害、発汗低下など自律神経症状、②筋肉のこわばり、ふるえ、動作緩慢、小刻み歩行などパーキンソン症状、③立位や歩行時のふらつき、呂律が回らない、字がうまく書けないなどの小脳症状、を様々な程度に組み合わせて呈する疾患である。
自律神経症状が強いものを「シャイ・ドレーガー症候群」、パーキンソン症状が強いものーを「線条体黒質変性症」、小脳症状が強いものを「オリーブ橋小脳萎縮症」とする。MRIなど画像検査が診断に有効である。パーキンソン病や小脳萎縮症に比して、やや進行が早い傾向がある。
12
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
糖尿病性腎症…糖尿病の罹病期間が長い。糖尿病に伴う蛋白尿を呈する。また、高血圧と浮腫を伴う腎機能障害を認める。
糖尿病性網膜症…主な症候は視力低下。末期まで視力が保たれることもあり、自覚症によると手遅れになりやすい。
糖尿病性神経障害…下肢のしびれ、痛み等を認める。
13
脳血管疾患(脳出血、脳梗塞等)
脳出血…発症状況と経過は一般に頭痛、悪心、嘔吐をもって始まり、しだいに意識障害が進み、昏睡状態になる。半身の片麻痺を起こすことが多く、感覚障害、失語症、失認、失行、視野障害等が見られる。
脳梗塞…発症状況と経過は、アテローム血栓症脳梗塞やラクナ梗塞では、夜間安静時に発症し起床時に気が付かれ、症状が徐々に完成することが多く、心原性脳塞栓症では、日中活動時に突発的に発症して症状が完成することが多い。
注)高次脳機能障害については、言語・思考・記憶・行為・学習・注意障害等が生じ、社会生活をさまたげることが多いが、外見からは分かりにくく、注意が必要である。
14
閉塞性動脈硬化症
問診で閉塞病変に由来する症状-下肢冷感、しびれ感、安静時痛、壊死等があるかどうか聞く。視診により下肢の皮膚色調、潰瘍、壊死の有無をチェックする。触診ですべての下肢動脈の拍動の有無を調べる。
15
慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎)
肺気腫…ほとんどが喫煙者で、男性に多い。体動時呼吸困難が特徴的であるが、出現するのはある程度病変が進行してからである。咳、痰を訴えることもある。
慢性気管支炎…喫煙者に多く、慢性の咳、痰を認める。体動時呼吸困難は、感染による急性増悪時には認めるが、通常は軽度である。身体所見では、やや肥満傾向を示す人が多いといわれる。
気管支喘息…発作性の呼吸困難、喘鳴、咳(特に夜間・早朝)が、症状がない時期をはさんで反復する。気道閉塞が自然に、または治療により改善し、気流制限は可逆的である。その他、気道過敏症を示す。
びまん性汎細気管支炎…呼吸細気管支領域にびまん性炎症により、強い呼吸障害をきたす。初期には肺炎球菌、インフルエンザ桿菌等が感染菌となりやすく、痰、咳、喘鳴を呈し、長引くと菌交代現象を起こし、緑膿菌感染になり重症化しやすい。
16
両側の膝関節または股関節の著しい変形を伴う変形性関節症
初期の場合は、歩行し始めの痛みのみであるが、次第に、荷重時痛が増え、関節可動域制限が出現してくる。
(東京都医師会:介護保険における特定疾病診断の手引き.東京都医師会雑誌,51(9):1763-1821,1999を一部改変)
 
 
(2)症状としての安定性
上記(1)で記入した「生活機能低下の直接の原因となっている傷病による症状」の安定性について、該当する□にレ印をつけてください。
脳卒中や心疾患、外傷等の急性期や慢性疾患の急性増悪期等で、積極的な医学的管理を必要とすることが予想される場合は「不安定」を選択し、具体的な内容を自由記載欄に記載してください。例えば、進行性のがんで、急激な悪化が見込まれる場合については「5.特記すべき事項」ではなく、本項に記載することが望まれます。記載欄が不足する場合は「(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容」に記載してください。
現在の全身状態から急激な変化が見込まれない場合は「安定」を選択してください。不明の場合は「不明」を選択してください。
なお、症状には日内変動や日差変動があるため、介護者からの情報にも留意してください。特に精神疾患患者にあっては、可能な限り日頃の状況を把握している者に立会を求め、症状の変動についての情報にも留意する。
 
(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容
上記「(1)1.診断名」に記入した生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容については、生活機能低下と関連が深い事項について要点を簡潔に記入してください
また、「2.」「3.」の診断名についても、生活機能低下の原因となっている傷病について記入してください。
高齢者においては、傷病による生活機能低下に、転倒、入院等を契機として日中の生活が不活発になったこと、外出の機会の減少、配偶者との死別や転居などを契機とする社会参加の機会の減少、家庭内での役割の喪失等の様々な要因が加わることにより、さらに生活機能が低下することが考えられます。これら更なる生活機能低下を引き起こしている要因があれば、具体的に記載してください。
投薬内容については、生活機能低下の直接の原因となっている傷病以外についても、介護上特に留意すべき薬剤や相互作用の可能性がある薬剤の投薬治療を受けている場合は、この欄に記入してください。(ただ単に投薬内容を羅列するのではなく、必ず服用しなければならない薬剤、頓服の必要な薬剤等を整理して記入するようにしてください。)
また、意識障害がある場合には、その状況についても具体的に記載してください。
 
2.特別な医療
 
申請者が過去14日間に受けた12項目の医療のうち、看護職員等が行った診療補助行為(医師が同様の行為を診療行為として行った場合を含む)について該当する□にレ印をつけてください。
「医師でなければ行えない行為」、「家族/本人が行える類似の行為」は含まれないので注意して下さい。
なお、この項目は、訪問調査においても、調査員によるチェックの対象となっていますが、訪問調査員は必ずしも医療の専門家ではないことから、主治医意見書においても記入をお願いするものです。
なお、12項目以外の医師が行った治療行為は含まれない点に留意してください。
 
3.心身の状態に関する意見
 
(1)日常生活の自立度について
現状から考えられる障害高齢者の日常生活自立度及び認知症高齢者の日常生活自立度について、以下の判定基準を参考にして、該当する□にレ印をつけてください。
遷延性の意識障害等で、認知症高齢者の日常生活自立度が判断不能である場合は、□Mにレ印をつけ、「1.(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容」の欄に具体的な内容を記入して下さい。
 
 
障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準
生活自立
ランクJ
何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する
1.交通機関等を利用して外出する
2.隣近所へなら外出する
準寝たきり
ランクA
屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない
1.介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する
2.外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている
寝たきり
ランクB
屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ
1.車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う
2.介助により車いすに移乗する
ランクC
1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替において介助を要する
1.自力で寝返りをうつ
2.自力では寝返りもうたない
 
 
 
認知症高齢者の日常生活自立度判定基準
ランク
判断基準
見られる症状・行動の例
判断にあたっての留意事項及び
提供されるサービスの例
何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。
 
在宅生活が基本であり、一人暮らしも可能である。相談、指導等を実施することにより、症状の改善や進行の阻止を図る。
日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。
 
在宅生活が基本であるが、一人暮らしは困難な場合もあるので、日中の居宅サービスを利用することにより、在宅生活の支援と症状の改善及び進行の阻止を図る。
Ⅱa
家庭外で上記Ⅱの状態がみられる。
たびたび道に迷うとか、買物や事務、金銭管理等それまでできたことにミスが目立つ等
 
Ⅱb
家庭内でも上記Ⅱの状態がみられる。
服薬管理ができない、電話の応対や訪問者との対応等一人で留守番ができない等
日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。
 
日常生活に支障を来たすような行動や意思疎通の困難さがランクⅡより重度となり、介護が必要となる状態である。「ときどき」とはどのくらいの頻度を指すかについては、症状・行動の種類等により異なるので一概には決められないが、一時も目を離せない状態ではない。
在宅生活が基本であるが、一人暮らしは困難であるので、夜間の利用も含めた居宅サービスを利用しこれらのサービスを組み合わせることによる在宅での対応を図る。
Ⅲa
日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。
着替え、食事、排便、排尿が上手にできない、時間がかかる。
やたらに物を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声、奇声をあげる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等
Ⅲb
夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。
ランクⅢaに同じ
日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。
ランクⅢに同じ
常に目を離すことができない状態である。症状・行動はランクⅢと同じであるが、頻度の違いにより区分される。
家族の介護力等の在宅基盤の強弱により居宅サービスを利用しながら在宅生活を続けるか、または特別養護老人ホーム・老人保健施設等の施設サービスを利用するかを選択する。施設サービスを選択する場合には、施設の特徴を踏まえた選択を行う。
著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。
せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する周辺症状が継続する状態等
ランクⅠ~Ⅳと判定されていた高齢者が、精神病院や認知症専門棟を有する老人保健施設等での治療が必要となったり、重篤な身体疾患が見られ老人病院等での治療が必要となった状態である。専門医療機関を受診するよう勧める必要がある。
 
 
(2)認知症の中核症状(認知症以外の疾患で同様の症状を認める場合を含む)
申請者に認められる認知症の中核症状の有無について、以下に記載されている判定基準に基づき、該当する□にレ印をつけてください。なお、認知症の中核症状として列挙していますが、その他の疾患で同様の状態が認められる場合も、該当する□にレ印をつけてください。
 
短期記憶
例えば、身近にある3つのものを見せて、一旦それをしまい、5分後に聞いてみる等の方法を用いて、申請者及び医師がともに一時的には記憶に残るような直前のことについて覚えているか否かを評価します。
記憶に問題がない場合には「□問題なし」に、覚えていないような場合には「□問題あり」にレ印をつけてください。
 
日常の意思決定を行うための認知能力
申請者の毎日の日課における判断能力を評価します。以下の各選択項目の状態例にあてはめ、該当する□にレ印をつけてください。
 
自立
日常生活において首尾一貫した判断ができる。毎日するべきことに対して予定を立てたり、状況を判断できる。
いくらか困難
日々繰り返される日課については判断できるが、新しい課題や状況に直面した時にのみ判断に多少の困難がある。
見守りが必要
判断力が低下し、毎日の日課をこなすためにも合図や見守りが必要になる。
判断できない
ほとんどまたは全く判断しないか、判断する能力が著しく低い。
 
自分の意思の伝達能力
本人が要求や意思、緊急の問題等を表現したり伝えたりする能力を評価します。以下の各選択項目の状態例にあてはめ、該当する□にレ印をつけてください。会話に限らず、筆談・手話あるいはその組み合わせで表現される内容で評価しても差し支えありません。
 
伝えられる
自分の考えを容易に表現し、相手に理解させることができる。
いくらか困難
適当な言葉を選んだり、考えをまとめるのに多少の困難があるため、応対に時間がかかる。自分の意思を理解させるのに、多少、相手の促しを要することもある。
具体的要求に限られる
時々は自分の意思を伝えることができるが、基本的な要求(飲食、睡眠、トイレ等)に限られる。
伝えられない
ほとんど伝えられない、または、限られた者にのみ理解できるサイン(本人固有の音声あるいはジェスチャー)でしか自分の要求を伝えることができない。
 
(3)認知症の行動・心理症状(BPSD)
申請者に認められる認知症の行動・心理症状の有無について、該当する□にレ印をつけてください。有の場合は、以下の定義を参考にして、該当する□にレ印をつけてください。複数の状態が認められる場合は、該当する□のすべてにレ印をつけてください。その他に該当する場合には、認められる具体的な状態について(  )内に記入してください。
なお、認知症の行動・心理症状として列挙していますが、その他の疾患で同様の状態が認められる場合も、該当する□にレ印をつけてください
 
幻視・幻聴
幻視とは、視覚に関する幻覚。外界に実在しないのに、物体、動物、人の顔や姿等が見えること。
幻聴とは、聴覚領域の幻覚の一種。実際には何も聞こえないのに、音や声が聞こえると感じるもの。
妄想
病的状態から生じた判断の誤りで、実際にはあり得ない不合理な内容を、正常を超えた訂正不能な主観的確信をもって信じていること。これに対し、訂正可能である場合は錯覚という。
昼夜逆転
夜間不眠の状態が何日間か続いたり、明らかに昼夜が逆転し、日常生活に支障が生じている状態。
暴言
発語的暴力をいう。
暴行
物理的暴力をいう。
介護への抵抗
介護者の助言や介護に抵抗し、介護に支障がある状態。単に助言に従わない場合は含まない。
徘徊
客観的には、目的も当てもなく歩き回る状態。認知症だけでなく心因性の葛藤からの逃避的行為やその他急性精神病等でもみられる。
火の不始末
たばこの火、ガスコンロ等あらゆる火の始末や火元の管理ができない状態。
不潔行為
排泄物を弄んだり撒き散らす場合等をいう。体が清潔でないことは含まれない。
異食行動
食欲異常の一種。正常では忌避するような物体、味に対して特に異常な食欲や嗜好を示すこと。
性的問題行動
周囲が迷惑している行為と判断される性的な問題行動。
 
(4)その他の精神・神経症状
認知症以外の精神・神経症状があれば、「□有」にレ印をつけ、その症状名を記入してください。有の場合、専門医を受診している場合は「□有」にレ印をつけ、(  )内に受診の科名を記入してください。
また、申請者の状態から判断して、以下に挙げる定義の中からあてはまるものがあれば、症状名に記入してください。
 
失語
正常な言語機能をいったん獲得した後、多くは大脳半球の限定された器質的病変により、言語(口頭言語と文字言語の両方)表象の理解・表出に障害をきたした状態。
構音障害
俗に“ろれつが回らない”という状態。構音器官(咽頭、軟口蓋、舌、口唇等)の麻痺による麻痺性構音障害と、筋相互の間の協調運動障害による協調運動障害性構音障害とがある。後者は運動失調によるものと、錐体外路性運動障害によるものがある。
せん妄
意識変容の一つ。軽度ないし中等度の意識混濁に妄想、錯覚、偽幻覚、幻覚、不安・恐怖、精神運動性の興奮を伴う。夜間に起こりやすい(夜間せん妄)。
傾眠傾向
意識の清明性の障害。意識混濁は軽度で、反復して強い刺激を与えればやや覚醒状態に回復するが、放置すればただちに入眠してしまうような状態。
失見当識
見当識の機能が失われた状態。多くの場合、意識障害がある際にみられる(意識障害性)ため、意識障害の有無をみる必要がある。その他、認知症等で記銘力障害のある場合(健忘性)、妄想によって周囲を正しく判断していない場合(妄想性)等にも認められる。
失認
局在性の大脳病変によって起こる後天性の知覚と認知の障害で、ある感覚を介する対象認知が障害されているが、その感覚自体の異常、また、知能低下、意識障害等に原因するとはいえず、また他の感覚を介すれば対象を正しく認知できるもの。視覚失認及び視空間失認、聴覚失認、触覚失認、身体失認等に大別される。
失行
随意的、合目的的、象徴的な熟練を要する運動行為を行うことができない状態で、麻痺、運動失調等の要素的運動障害、また失語、失認、精神症状等で説明できないもの。局在性の大脳病変で起こる後天性の行為障害。
 
(5)身体の状態
 
利き腕
利き腕について、該当する方の□にレ印をつけてください。
 
身長・体重
体重及び身長について、おおよその数値を記入してください。また、過去6ヶ月程度における体重の変化について、3%程度の増減を目途に、該当する□にレ印をつけてください。
 
麻痺・褥瘡等
麻痺・褥瘡等の状態について、該当するものがあれば□にレ印をつけてください。介護の手間や生活機能を評価する観点から部位の記載が必要なものについては具体的に記入してください。程度については、麻痺・褥瘡等の状態が介護にどの程度影響するのかという観点から、あてはまる程度の□にレ印をつけてください。なお、麻痺については、訪問調査においても、同様の項目がありますが、訪問調査員は必ずしも医療の専門家ではないことから、主治医意見書では、医学的観点からの麻痺の有無の記入をお願いするものです。
 
四肢欠損
腕、肢、指等について、欠損が生じている状態。
麻痺
主に神経系の異常によって起こった筋力低下あるいは随意運動の障害。
筋力の低下
麻痺以外の原因による随意運動に支障のある筋力の低下。
関節の拘縮
関節及び皮膚、筋肉等の関節構成体以外の軟部組織の変化によって生じる関節の可動域制限。
関節の痛み
日常生活に支障をきたす程度の関節の痛みがある状態
失調
運動の円滑な遂行には多くの筋肉の協調が必要であるが、その協調が失われた状態。個々の筋肉の力は正常でありながら運動が稚拙であることが特徴である。
不随意運動
意志や反射によらずに出現する、目的に添わない運動。多くは錐体外路系の病変によって生じる。
褥瘡
廃用症候群の代表的な症状。持続的圧迫及びずれ応力による局所の循環障害によって生じる阻血性壊死。
その他皮膚疾患
褥瘡以外で身体介助、入浴等に支障のある皮膚疾患がある状態。
 
4.生活機能とサービスに関する意見
 
(1)移動
 
屋外歩行
日常生活での屋外歩行の状態について、以下の各選択項目の状態例にあてはめ、該当する□にレ印をつけて下さい。
 
自立
自分だけで屋外を歩いている状態。歩行補助具や装具・義足を用いている場合も含みます。外出するようには促しが必要でも、屋外は一人で歩いている場合も含みます。
介護があればしている
介護者と一緒に屋外を歩いている状態。直接介助されている場合だけでなく、そばで見守っている場合も含みます。
していない
屋外歩行をしていない状態。
歩こうとすれば歩けるが実際は歩いていない場合や、訓練の時だけ屋外歩行をしている場合を含みます。また車いすで屋外を移動している場合等を含みます。
 
車いすの使用
車いす(電動車いすも含む)を用いていることがある場合に、主に誰が操作(駆動)しているかについて、以下の各選択項目の状態例にあてはめ、該当する□にレ印をつけて下さい。車椅子を常時使っている場合だけでなく、例えば外出時だけの使用や、病院や通所施設等だけで使用している場合も含みます。
 
用いていない
全く使用していない状態
主に自分で操作
車いすを用いることがあり、その場合は主に自分だけで操作(駆動)している状態。
主に室内での状態で判断し、例えば室内は自分だけでこいでいるが、屋外は後ろから押してもらっている場合なども含みます。
主に他人が操作
車いすを用いていることがあり、その場合は主に他人に操作(押してもらう等)してもらっている状態。操作時に見守りを必要とする場合を含みます。
 
 
歩行補助具・装具の使用
日常生活での室内歩行や屋外歩行で、歩行補助具(杖等)や装具を用いている状態について、以下の各選択項目の状態例にあてはめ、該当する□にレ印をつけて下さい。屋内、屋外両方で使用している場合は両方の□にレ印をつけて下さい。
どちらか一方だけの使用の場合も含みますが、義足(切断の時に用いる)の使用は含めません。
 
使用していない
日常生活では、歩行補助具も装具も全く使用していない状態。訓練歩行の時だけは使っている場合も含みます。
屋外で使用
日頃の屋外歩行の時に使用している状態。例えば遠出の時だけの使用のように、時々使用している場合も含みます。
屋内で使用
日頃の室内歩行のときに使用している状態。例えば家事の時だけの使用のように、特定の生活行為を行う時のみ使用している場合も含みます。
 
(2)栄養・食生活
 
高齢者に多くみられる栄養問題は、慢性的なエネルギ-、たんぱく質の補給不足、あるいは疾患によってエネルギ-、たんぱく質の欠乏した状態(以下「低栄養」という。)です。要介護高齢者の「低栄養」は、内臓たんぱく質及び筋たんぱく質の低下をきたし、身体機能及び生活機能の低下をはじめ、感染症、褥瘡などの誘発に関わります。そこで、要介護状態の改善及び重度化の予防の観点から、「低栄養」に関連する要因として考えられる食事行為、総合的な栄養状態を評価します。医学的観点から栄養・食生活上の留意点を認める場合には具体的な内容を記載してください。
 
食事行為
日常生活行為のうち食事について、どの程度、どのように自分で行っているかを評価します。以下の各選択項目の状態例にあてはめ、該当する□にレ印をつけてください。
 
自立ないし何とか自分で食べられる
自分一人で、ないし、見守り・励まし、身体的援助によって、自分で食べることができる。
全面介助
他の者の全面的な介助が必要である。
 
現在の栄養状態
現在の栄養状態を評価します。以下の各選択項目の状態にあてはめ、該当する□にレ印をつけてください。また、医学的観点から、改善に向けた留意点について、(  )内に記入してください。
 
良好
①過去6ヶ月程度の体重の維持(概ね3%未満)、②BMI(体重(kg)/身長(m2))18.5以上、③血清アルブミン値が明らかである場合には、3.5g/dlを上回る、の3項目全てが該当する状態。
上記指標が入手できない場合には、食事行為、食事摂取量(概ね3/4以上)、食欲、顔色や全身状態(浮腫、脱水、褥瘡などがない状態)から総合的に栄養状態が良いと判断される状態。
不良
①過去6ヶ月程度の体重の減少(概ね3%以上)、②BMI(体重(kg)/身長(m2))18.5未満、③血清アルブミン値がある場合には、3.5g/dl以下、の3項目のうち1つでも該当する状態。
上記指標が入手できない場合には、食事行為、食事摂取量(概ね3/4以下)、食欲、顔色や全身状態(浮腫、脱水、褥瘡などがある状態)から総合的に栄養が不良又は不良となる可能性が高いと判断される状態。
 
(3)現在あるかまたは今後発生の可能性の高い状態とその対処方針
日常の申請者の状態を勘案して、現在あるかまたは今後概ね6ヶ月以内に発生する可能性の高い状態があれば、該当する□にレ印をつけてください。また、具体的な状態とその際の対処方針(緊急時の対応を含む)について要点を記入してください。
 
(4)サービス利用による生活機能の維持・改善の見通し
現在の状態から、概ね3ヶ月から6ヶ月間、申請者が介護保険によるサービス(予防給付等によるサービスを含む)やその他の高齢者に対するサービスを利用した場合の、生活機能の維持・改善の見通しについて、該当する□にレ印をつけてください。
傷病の症状としての見通しではなく、生活機能の維持・改善がどの程度期待できるか、という観点であることに留意してください。
 
(5)医学的管理の必要性
医学的観点から、申請者が利用する必要があると考えられる医療系サービスについて、以下の各サービスの内容を参考に、該当するサービスの□にレ印をつけてください。各サービスについては、予防給付で提供されるサービスも含みます。特記すべき項目がない場合は、「特記すべき項目なし」の□にレ印をつけてください。
訪問歯科診療及び訪問歯科衛生指導については、口腔内の状態(例えば、歯の崩壊や喪失状態、歯の動揺や歯肉からの出血の有無、義歯の不適合等)をもとに、口腔ケアの必要性に応じて該当する□にレ印をつけてください。
また、特に必要性が高いと判断されるサービスについては、項目に下線を引いてください。
なお、本項目の記入は、ここに記入されているサービスについての指示書に代わるものではありませんのでご注意ください。
 
 
訪問診療
通院することが困難な患者に対して、医師等が計画的に訪問して行う診療や居宅療養指導等。
訪問看護
訪問看護ステーション及び医療機関からの訪問看護等、保健師、看護師等が訪問して看護を行うことをいう。
なお、保健師等が地域支援事業の訪問型介護予防として訪問して指導する行為は含まない。
訪問リハビリテーション
病院、診療所及び訪問看護ステーションの理学療法士等が訪問して行うリハビリテーションをいう。なお、理学療法士、作業療法士あるいは言語療法士等が地域支援事業の訪問型介護予防として訪問して指導する行為は含まない。
通所リハビリテーション
病院、診療所、老人保健施設が提供するリハビリテーションをいう。なお、病院、診療所(医院)の外来でリハビリテーションを診療行為として受けた場合、保健所、市町村保健センター等で地域支援事業の機能訓練等を受けた場合はこれに含めない。
老人保健施設
施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことにより、入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするとともに、その者の居宅における生活への復帰を目指すものをいう。
介護医療院
要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行う。
短期入所療養介護
病院、診療所及び介護老人保健施設に短期間入所させ、当該施設において、看護、医学的管理下における介護、機能訓練その他必要な医療及び日常生活上の世話を行うものをいう。
訪問歯科診療
居宅において療養を行っている患者であって、通院が困難なものに対して、患者の求めに応じ訪問して歯科診療を行った場合又は、当該歯科診療に基づき継続的な歯科治療が認められた患者に対してその同意を得て訪問して歯科診療を行うものをいう。
訪問歯科衛生指導
訪問歯科診療を行った歯科医師の指示に基づき、歯科衛生士、保健師、看護師等が訪問して療養上必要な指導として、患者の口腔内での清掃等に係わる指導を行うものをいう。
訪問薬剤管理指導
医師の診療に基づき計画的な医学的管理を継続して行い、かつ、薬剤師が訪問して薬学的管理指導を行うものをいう。
訪問栄養食事指導
医師の診療に基づき計画的な医学的管理を継続して行い、かつ、管理栄養士が訪問して具体的な献立等によって実技指導を行うものをいう。
その他の医療系サービス
上記以外の医学的管理をいう。地域支援事業の訪問型介護予防、機能訓練、保健所が実施する保健指導、入院等が必要とされる場合にその種類とともに記入する。
 
(6)サービス提供時における医学的観点からの留意事項
申請者がサ-ビスを利用するにあたって、医学的観点から、特に留意する点があれば、該当するものの□にレ印をつけ、サービスを提供する上で不安感を助長させないよう、(  )内に具体的な留意事項を記載してください。特記すべき留意事項がない場合は、「特記すべき項目なし」の□にレ印をつけてください。
また、血圧・嚥下等の項目以外に医学的観点からの留意事項があれば、「その他」の(  )内に具体的な留意事項を記載してください。
 
血圧
血圧管理について、サービス提供時の留意事項があれば、具体的に記載してください。また、どの程度の運動負荷なら可能なのかという点等についても記入してください。
 
嚥下
嚥下運動機能(舌によって食塊を咽頭に移動する随意運動、食塊を咽頭から食道へ送るまでの反射運動、蠕動運動により食塊を胃に輸送する食道の反射運動)の障害について、サービス提供時の留意事項があれば、具体的に記載してください。
 
摂食
摂食について、サービス提供時の留意事項があれば、具体的に記載してください。
 
移動
移動(歩行に限らず、居室とトイレの移動や、ベッドと車椅子、車椅子と便座等への移乗等も含める)について、サービス提供時の留意事項があれば、具体的に記載してください。
 
運動
運動負荷を伴うサービスの提供時の留意事項があれば、具体的に記載してください。特に運動負荷を伴うサービス提供について、医学的観点からリスクが高いと判断される場合には、その状態を具体的に記載してください。
 
その他
その他、医学的観点からの留意事項があれば、(  )内に具体的に記載してください。
 
(7)感染症の有無
サービスの提供時に、二次感染を防ぐ観点から留意すべき感染症の有無について、該当する□にレ印をつけてください。有の場合には、具体的な症病名・症状等を(  )内に記入してください。
 
5.特記すべき事項
 
申請者の主治医として、要介護認定の審査判定上及び介護保険によるサービスを受ける上で、重要と考えられる事項があれば、要点を記入してください。特に、他の項目で記入しきれなかったことや選択式では表現できないことを簡潔に記入してください。口腔内の状況から口腔清潔に関して、特に留意事項があれば、要点を記載してください。また、専門医に意見を求めた場合にはその結果、内容を簡潔に記入してください。情報提供書や障害者手帳の申請に用いる診断書等の写しを添付していただいても構いません。なお、その場合は情報提供者の了解をとるようにしてください。
なお、平成21年度の要介護認定の見直しでは、調査員ごとのバラツキを減らすとともに、介護の不足等も適切に把握できるよう、認定調査の選択肢について、調査員の方に、できるだけ見たままを選んでいただき、介護認定審査会において、認定調査票の特記事項や主治医意見書の内容から、申請者に必要な介護の手間について総合的に把握し、判定することとしました。したがって、申請者にかかる介護の手間をより正確に反映するために、主治医意見書の重要性が増しており、主治医意見書の「5.特記すべき事項」に、申請者の状態やそのケアに係る手間、頻度等の具体的内容についても記載してください。
その他、交通事故等の第三者による不法行為(以下「第三者行為」という。)による被害に係る求償事務の取組強化のため、平成28年4月1日より、第三者行為により介護保険給付を受ける場合、第1号被保険者は保険者への届出が必要となりました。
主治医意見書を端緒として保険者が被保険者に対し適切な届出を促す観点から、第1号被保険者について、負傷等の原因として第三者行為が疑われる場合は、主治医意見書の「5.特記すべき事項」に「第三者行為」といった旨の記載をお願いします。
 
 

 
(別添3)
 
 
 
 
 
 
特定疾病にかかる診断基準
 
 
 
 
 
 

 
 
特定疾病にかかる診断基準について
 
 
介護保険制度において、40歳以上65歳未満の第2号被保険者が要介護認定を受けるためには、要介護状態等の原因である身体上及び精神上の障害が、介護保険施行令(平成10年政令第412号)第2条で定める16の疾病(特定疾病)によることが要件とされているところである。
 
特定疾病に該当するか否かは、主治医意見書の記載内容に基づき、市町村等に置かれる介護認定審査会が確認を行う。
 
本診断基準は、主治医意見書の記載にあたって、当該申請者が特定疾病に該当するかどうかについての基準を示したものである。
 
ここで示した基準は、特定疾患に該当するものについては、その基準を活用することとし、その他の疾患についても学会等で作成され専門家の評価を得ているものを利用している。
 
第2号被保険者に関する意見書記載にあたっては、本診断基準を参照して主治医意見書の「1.傷病に関する意見 (1)診断名 1.」欄に、介護を要する生活機能低下等の直接の原因となっている特定疾病名、また「(3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容」に診断上の根拠となる主な所見について記入されたい。
 
なお、意見書記載にあたっては、必ずしも、新たに診察・検査等を行う必要はなく、過去の診療録等を参考に記載することで差し支えないことを申し添える。
 
 
目   次
 
1.がん【がん末期】
 
(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
 
2.関節リウマチ
 
3.筋萎縮性側索硬化症
 
4.後縦靱帯骨化症
 
5.骨折を伴う骨粗鬆症
 
6.初老期における認知症
 
7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
 
【パーキンソン病関連疾患】
 
8.脊髄小脳変性症
 
9.脊柱管狭窄症
 
10.早老症
 
11.多系統萎縮症
 
12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
 
13.脳血管疾患
 
14.閉塞性動脈硬化症
 
15.慢性閉塞性肺疾患
 
16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
 
 
 
1.がん【がん末期】(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
 
【定義】
 
以下の特徴をすべて満たす疾病である。
 
①無制限の自律的な細胞増殖が見られること(自律増殖性)
本来、生体内の細胞は、その細胞が構成する臓器の形態や機能を維持するため、生化学的、生理学的な影響を受けながら細胞分裂し、増殖するものであるが、がん細胞はそういった外界からの影響を受けず無制限かつ自律的に増殖する。
②浸潤性の増殖を認めること(浸潤性)
上記の自律的な増殖により形成される腫瘍が、原発の臓器にはじまり、やがて近隣組織にまで進展、進行する。
③転移すること(転移性)
さらに、播種性、血行性に遠隔臓器やリンパ行性にリンパ節等へ不連続に進展、進行する。
④何らかの治療を行わなければ、①から③の結果として死に至ること
(致死性)
 
 
 
【診断基準】
 
以下のいずれかの方法により悪性新生物であると診断され、かつ、治癒を目的とした治療に反応せず、進行性かつ治癒困難な状態(注)にあるもの。
 
① 組織診断又は細胞診により悪性新生物であることが証明されているもの
② 組織診断又は細胞診により悪性新生物であることが証明されていない場合は、臨床的に腫瘍性病変があり、かつ、一定の時間的間隔を置いた同一の検査(画像診査など)等で進行性の性質を示すもの。
 
注) ここでいう治癒困難な状態とは、概ね余命が6月間程度であると判断される場合を指す。なお、現に抗がん剤等による治療が行われている場合であっても、症状緩和等、直接治癒を目的としていない治療の場合は治癒困難な状態にあるものとする。
 
参考にした診断基準:
「特定疾病におけるがん末期の取扱いに係る研究班」による診断基準
 
2.関節リウマチ
 
自他覚症状5項目及び臨床検査2項目の7項目中、少なくとも4項目を満たすものをいう。
なお、自他覚症状の項目a.~d.は少なくとも6週間以上存在しなければならない。
 
(1)自他覚症状
a.朝のこわばり持続時間(少なくとも1時間以上)
b.同時に3ヶ所以上の関節腫脹あるいは関節液貯留
c.手首、中手指節間関節(MCP)、近位指節間関節(PIP)のなかで少なくとも1ヶ所以上の関節腫脹
d.同時に両側の同一部位での関節炎
e.リウマトイド皮下結節
 
(2)臨床検査
a.血清リウマトイド因子陽性
b.X線所見:手首、MCP、PIP関節に骨びらんあるいはオステオポローシス像
 
(3)鑑別診断
a.五十肩、腱・腱鞘炎
b.痛風、仮性痛風
c.全身性エリトマトーデス、強皮症などの膠原病
d.ベーチェット病、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、サルコイドーシス
e.変形性関節症
f.結核性関節炎
 
参考にした診断基準:
厚生省長期慢性疾患総合研究事業による診断基準
 
 
 
3.筋萎縮性側索硬化症
 
1) 主要項目
 
(1) 以下の①-④のすべてを満たすものを、筋萎縮性側索硬化症と診断する。
① 成人発症である。
② 経過は進行性である。
③ 神経所見・検査所見で、下記の1か2のいずれかを満たす。
身体を、a.脳神経領域、b.頸部・上肢領域、c.体幹領域(胸髄領域)、d.腰部・下肢領域の4領域に分ける(領域の分け方は、2参考事項を参照)。
下位運動ニューロン徴候は、(2)針筋電図所見(①又は②)でも代用できる。
1. 1つ以上の領域に上位運動ニューロン徴候をみとめ、かつ2つ以上の領域に下位運動ニューロン症候がある。
2. SOD1遺伝子変異など既知の家族性筋萎縮性側索硬化症に関与する遺伝子異常があり、身体の1領域以上に上位及び下位運動ニューロン徴候がある。
④ (3)鑑別診断で挙げられた疾患のいずれでもない。
 
(2) 針筋電図所見
① 進行性脱神経所見:線維性収縮電位、陽性鋭波など。
② 慢性脱神経所見:長持続時間、多相性電位、高振幅の大運動単位電位など。
 
(3) 鑑別診断
① 脳幹・脊髄疾患:腫瘍、多発性硬化症、頸椎症、後縦靭帯骨化症など。
② 末梢神経疾患:多巣性運動ニューロパチー、遺伝性ニューロパチーなど。
③ 筋疾患:筋ジストロフィー、多発筋炎など。
④ 下位運動ニューロン障害のみを示す変性疾患:脊髄性進行性筋萎縮症など。
⑤ 上位運動ニューロン障害のみを示す変性疾患:原発性側索硬化症など。
 
2) 参考事項
 
(1) SOD1遺伝子異常例以外にも遺伝性を示す例がある。
(2) 稀に初期から認知症を伴うことがある。
(3) 感覚障害、膀胱直腸障害、小脳症状を欠く。ただし一部の例でこれらが認められることがある。
(4) 下肢から発症する場合は早期から下肢の腱反射が低下、消失することがある。
(5) 身体の領域の分け方と上位・下位ニューロン徴候は以下のようである。
 
 
a.脳神経領域
b.頸部・上肢領域
c.体幹領域
(胸随領域)
d.腰部・下肢領域
上位運動ニューロン徴候
下顎反射亢進
口尖らし反射亢進
偽性球麻痺
強制泣き・笑い
上肢腱反射亢進
ホフマン反射亢進
上肢痙縮
萎縮筋の腱反射残存
腹壁皮膚反射消失
体幹部腱反射亢進
下肢腱反射亢進
下肢痙縮
バビンスキー徴候
萎縮筋の腱反射残存
下位運動ニューロン徴候
顎、顔面
舌、咽・喉頭
頸部、上肢帯、
上腕
胸腹部、背部
腰帯、大腿、
下腿、足
 
 
参考にした診断基準:
厚生労働省特定疾患調査研究班(神経変性疾患調査研究班)による診断基準
 
 
 
4.後縦靱帯骨化症
 
(1)自覚症状ならびに身体所見
a. 四肢・躯幹のしびれ、痛み、知覚障害
b. 四肢・躯幹の運動障害
c. 膀胱直腸障害
d. 脊柱の可動域制限e.四肢の腱反射亢進
f. 四肢の病的反射
 
(2)血液・生化学検査所見
一般に異常を認めない。
 
(3)画像所見
a. 単純X線
後縦靱帯骨化は側面像で椎体後縁に並行する骨化像として認められ、4型に分類される。黄色靱帯骨化は椎弓間に観察される。
b. CT
靭帯骨化の脊柱管内の拡がりや横断面での骨化の形態は、CTによりとらえられる。
c. MRI
靱帯骨化による脊髄の圧迫病態を見るには、MRIが有用である。
 
(4)診断
脊椎X線像所見に加え、1に示した自覚症状並びに身体所見が認められ、それが靱帯骨化と因果関係があるとされる場合、本症と診断する。
 
(5)鑑別診断
後縦靭帯骨化症に類似した症状又は徴候を呈するために鑑別診断上注意を要する疾患として次のものがある。強直性脊椎炎、変形性脊椎症、強直性脊椎骨増殖症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊柱奇形、脊椎・脊髄腫瘍、運動ニューロン疾患、痙性脊髄麻痺(家族性痙性対麻痺)、多発性神経炎、脊髄炎、末梢神経障害、筋疾患、脊髄小脳変性症、脳血管障害、その他。
 
 
参考にした診断基準:
厚生労働省特定疾患調査研究班(脊柱靱帯骨化症調査研究班)による診断基準
 
 
 
5.骨折を伴う骨粗鬆症
 
(1)骨粗鬆症の診断
低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患又は続発性骨粗鬆症を認めず、骨評価の結果が下記の条件を満たす場合、原発性骨粗鬆症と診断する。
 
Ⅰ.脆弱性骨折(注1)あり
 
Ⅱ.脆弱性骨折なし
 
 
骨密度値
脊椎X線像での骨粗鬆化
正常
YAMの80%以上
な し
骨量減少
YAMの70%以上80%未満
疑いあり
骨粗鬆症
YAMの70%未満
あ り
YAM:若年成人平均値(20歳~44歳)
注1 脆弱性骨折:低骨量(骨密度がYAMの80%未満、あるいは脊椎X線像で骨粗鬆化がある場合)が原因で、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折、骨折部位は脊椎、大腿骨頸部、橈骨遠位端、その他。
注2 骨密度は原則として腰椎骨密度とする。ただし、高齢者において、脊椎変形などのために腰椎骨密度の測定が適当でないと判断される場合には大腿骨頸部骨密度とする。これらの測定が困難な場合は、橈骨、第2中手骨、踵骨の骨密度を用いる。
注3 脊椎X線像での骨粗鬆症の評価は、従前の骨萎縮度判定基準を参考にして行う。
 
脊椎X線像での骨粗鬆化 従来の骨萎縮度判定基準
な し 骨萎縮なし
疑いあり 骨萎縮度Ⅰ度
あ り 骨萎縮度Ⅱ度以上
 
(2)骨折の診断
症状及びX線所見による。
 
参考にした診断基準:
日本骨代謝学会骨粗鬆症診断基準(2000年度改訂版)
 
 
 
6.初老期における認知症
 
「精神疾患の分類と診断の手引き 第5版(DSM-Ⅴ-TR)」(アメリカ合衆国精神医学会作成)といった医学の専門家等において広くコンセンサスの得られた診断基準を用いて医師が診断するものであって、以下のような加齢によって生ずる心身の変化に起因しない疾病によるものを除く。
1.外傷性疾患
頭部外傷、硬膜下血腫など
2.中毒性疾患
有機溶剤、金属、アルコールなど
3.内分泌疾患
甲状腺機能低下症、Cushing病、Addison病など
4.栄養障害
ビタミンB12欠乏症、ペラグラ脳症など
 
 
 
7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
【パーキンソン病関連疾患】
 
1.進行性核上性麻痺
 
主要項目
(1)40歳以降で発症することが多く、また、緩徐進行性である。
 
(2)主要症候
① 垂直性核上性眼球運動障害(初期には垂直性眼球運動の緩徐化であるが、進行するにつれ上下方向への注視麻痺が顕著になってくる)
② 発症早期(概ね1-2年以内)から姿勢の不安定さや易転倒性(すくみ足、立直り反射障害、突進現象)が目立つ。
③ ほぼ対称性の無動あるいは筋強剛があり、四肢末梢よりも体幹部や頸部に目立つ。
 
(3)その他の症候
① 進行性の構音障害や嚥下障害
② 前頭葉性の特徴を有する進行性認知障害(思考の緩慢化、想起障害、意欲低下などを特徴とする)
 
(4)画像所見(CTあるいはMRI)
進行例では、中脳被蓋部の萎縮、脳幹部の萎縮、第三脳室の拡大を認めることが多い。
 
(5)除外項目
① L-DOPAが著効(パーキンソン病の除外)
② 初期から高度の自律神経障害の存在(多系統萎縮症の除外)
③ 顕著な多発ニューロパチー(末梢神経障害による運動障害や眼球運動障害の除外)
④ 肢節運動失行、皮質性感覚障害、他人の手徴候、神経症状の著しい左右差の存在(大脳皮質基底核変性症の除外)
⑤ 脳血管障害、脳炎、外傷など明らかな原因による疾患
 
(6)判定
次の3条件を満たすものを進行性核上性麻痺と診断する。
① (1)を満たす。
② (2)の2項目以上がある、あるいは(2)の1項目及び(3)の1項目以上がある。
③ 他の疾患を除外できる。
 
参考事項
進行性核上性麻痺は、核上性注視障害、姿勢反射障害による易転側性が目立つパーキンソニズム、及び認知症を主症状とする慢性進行性の神経変性疾患である。神経病理学的には、中脳と大脳基底核に萎縮、神経細胞脱落、神経原線維変化、グリア細胞内封入体が出現する。
初発症状はパーキンソン病に似るが、安静時振戦は稀で、歩行時の易転倒性、すくみ足、姿勢反射障害が目立つ。進行するにつれて、頸部の後屈と反り返った姿勢、垂直性核上性眼球運動障害(初期には眼球運動の随意的上下方向運動が遅くなり、ついには下方視ができなくなる)、構音障害や嚥下障害、想起障害と思考の緩慢を特徴とする認知症や注意力低下が出現する。徐々に歩行不能、立位保持不能となって、寝たきりになる。
抗パーキンソン病薬への反応は不良である。一時的に抗うつ薬やドロキシドパで症状が改善することがある。
非定型例として「純粋無動症」と呼ばれる病型があり、パーキンソン病に似て、歩行障害、すくみ足、易転倒性を特徴とするが、筋強剛や振戦を欠く。眼球運動障害も末期になるまで出現しないことが多い。
 
 
2.大脳皮質基底核変性症
 
主要項目
(1)中年期以降に発症し緩徐に進行する。
 
(2)失行あるいはその他の大脳皮質徴候
① 肢節運動失行があり、左右差が目立つ。
② 肢節運動失行が明瞭でなくても、皮質性感覚障害、把握反応、「他人の手」徴候、反射性ミオクローヌスのいずれがあり、左右差が目立つ。
③ 観念運動失行が肢節運動失行よりも顕著な場合は、左右差は目立たないことが多い。
④ その他の認知機能障害として、稀に、認知症、異常行動、注意障害、失語などが早期から目立つ例がある。
 
(3)錐体外路徴候
① パーキンソニズム(無動、筋強剛、振戦):障害は下肢よりも上肢に目立つことが多い。
② ジストニー
 
(4)その他の神経症状
① 偽性球麻痺(構音障害、嚥下障害)
② 尿失禁
 
(5)画像所見
CT、MRI、SPECTで、一側優位性の障害(大脳半球の萎縮又は血流低下)は診断において、重要な支持的所見である。しかし、両側性あるいはび漫性に異常所見が出現する例もあるので、診断上必須所見とはしない。
 
(6)除外すべき疾患
① パーキンソン病
② 進行性核上性麻痺
③ 多系統萎縮症(特に線条体黒質変性症)
④ 薬剤、脳炎、脳血管障害、外傷など
⑤ 類似症状を呈するその他の疾患
 
(7)判定
次の3条件を満たすものを皮質基底核変性症と診断する。
① (1)を満たす。
② (2)の1項目以上、及び(3)の1項目以上がある。
③ 他の疾患を除外できる。
注:なお、必須ではないが、画像所見によって他の疾患を除外し、一側性優位性の障害を確認する事が望ましい。
 
参考所見
大脳皮質基底核変性症(CBD)は、一側優位性が目立つ大脳半球萎縮及び基底核変性を生じる神経変性疾患で、特有の大脳皮質症状と運動障害を呈する。
 
(1)臨床的には、以下の所見がみられる。
① 中年期以降に発病し緩徐に進行する。
② 大脳皮質症状として、前頭・頭頂葉症状が見られる。最も頻度が高く特徴的な症状は肢節運動失行で、この他に観念運動失行、皮質性感覚障害、把握反応、他人の手徴候、反射性ミオクローヌスなどが出現する。
③ 錐体外路症状として、パーキンソニズム(無動、筋強剛、振戦)、ジストニーなどが出現する。症状は下肢よりも上肢のほうが顕著なことが多い。
④ 上記神経症状には、病初期から顕著な一側優位性がみられることが多い。
⑤ 注意障害、認知症、異常行動のような精神症状は、通常、運動症状よりも遅れて出現する。
⑥ 歩行障害、偽性球麻痺(構音障害、嚥下障害)などが早期から出現するために、進行性核上性麻痺と鑑別困難な症例がある。
 
(2)画像所見
CT、MRI、SPECTで、一側優位性の大脳半球萎縮又は血流低下を認めた場合には、重要な支持的所見である。しかし、両側性あるいはび漫性の異常を認める例もあるので、診断上必須所見とはしない。
 
(3)薬物等への反応
L-DOPAや他の抗パーキンソン病薬への反応は不良である。抗うつ薬、ドロキシドパ、経頭蓋磁気刺激などが試みられているが、効果はあっても一時的である。
 
(4)病理学的所見
前頭・頭頂葉に目立つ大脳皮質萎縮が認められ、黒質の色素は減少している。顕微鏡的には皮質、皮質下、脳幹の諸核(視床、淡蒼球、線条体、視床下核、黒質、中脳被蓋など)に神経細胞減少とグリオーシスが認められる。ピック細胞と同様の腫大した神経細胞が大脳皮質及び皮質下諸核に認められる。黒質細胞には神経原線維変化がみられる。ガリアス染色やタウ染色ではグリア細胞にも広範な変性が認められ、特にastrocytic plaqueは本症に特徴的である。
 
 
3.パーキンソン病
 
以下の4項目のすべてを満たした場合、パーキンソン病と診断する。ただし、Yahrの分類のStageは問わない。1、2、3は満たすが、薬物反応を未検討の症例は、パーキンソン病疑い症例とする。
 
(1)パーキンソニズムがある。※1
(2)脳CT又はMRIに特異的異常がない。※2
(3)パーキンソニズムを起こす薬物・毒物への曝露がない。※3
(4)抗パーキンソン病薬にてパーキンソニズムに改善がみられる。
 
※1 パーキンソニズムの定義は、次のいずれかに該当する場合とする。
(1)典型的な左右差のある安静時振戦(4~6Hz)がある。
(2)歯車様筋強直、動作緩慢、姿勢歩行障害のうち2つ以上が存在する。
 
※2 脳CT又はMRIにおける特異的異常とは、多発脳梗塞、被殻萎縮、脳幹萎縮、著明な脳室拡大、著明な大脳萎縮など他の原因によるパーキンソニズムであることを示す明らかな所見の存在をいう。
 
※3 薬物に対する反応はできるだけドパミン受容体刺激薬又はL-DOPA製剤により判定することが望ましい。
 
 
参考にした診断基準:
厚生労働省特定疾患調査研究班(神経変性疾患調査研究班)による診断基準
 
 
8.脊髄小脳変性症
 
 
【主要項目】
 
脊髄小脳変性症は、運動失調を主要症候とする原因不明の神経変性疾患の総称であり、臨床、病理あるいは遺伝子的に異なるいくつかの病型が含まれる。臨床的には以下の特徴を有する。
 
(1) 小脳性ないしは後索性の運動失調を主要症候とする。
(2) 徐々に発病し、経過は緩徐進行性である。
(3) 病型によっては遺伝性を示す。その場合、常染色体優性遺伝性であることが多いが、常染色体劣性遺伝性の場合もある。
(4) その他の症候として、錐体路徴候、錐体外路徴候、自律神経症状、末梢神経症状、高次脳機能障害などを示すものがある。
(5) 頭部のMRIやX線CTにて、小脳や脳幹の萎縮を認めることが多く、大脳基底核病変を認めることもある。
(6) 脳血管障害、炎症、腫瘍、多発性硬化症、薬物中毒、甲状腺機能低下症など二次性の運動失調症を否定できる。
 
なお、オリーブ橋小脳萎縮症については、従前の診断基準では脊髄小脳変性症の一病型として取扱うこととしていたが、特定疾患治療研究事業における傷病区分の変更等を踏まえ、多系統萎縮症の一病型として取扱うこととしたため、注意を要する。(「11.多系統萎縮症」の診断基準を参照)
 
 
 
参考にした診断基準:
厚生労働省特定疾患調査研究班(運動失調調査研究班)による診断基準
 
 
 
9.脊柱管狭窄症
 
下記の症状(神経根、脊髄及び馬尾症状)と画像所見による脊柱管狭小化を総合的に診断されたものをいう。ただし、以下の各項に該当するものに限る。
 
a.頸椎部、胸椎部又は腰椎部のうち、いずれか1以上の部において脊柱管狭小化を認めるもの。
b.脊柱管狭小化の程度は画像上(単純X線写真、断層写真、CT、MRI、ミエログラフィーなど)脊柱管狭小化を認め、脊髄、馬尾神経又は神経根を明らかに圧迫する所見のあるものとする。
c.画像上の脊柱管狭小化と症状の間に因果関係の認められるもの。
 
症状
主として四肢・躯幹の痛み、しびれ、筋力低下、運動障害、脊椎性間欠跛行を呈する。排尿・排便障害を伴うことがある。これらの症状は増悪、軽快を繰り返し、次第に悪化して歩行が困難となる。転倒などの軽微な外傷機転によって症状が急激に悪化し、重篤な脊髄麻痺をきたすことがある。
 
鑑別疾患
変形性脊椎症(神経学的症状を伴わないもの)
椎間板ヘルニア
脊椎・脊髄腫瘍
脊椎すべり症(神経学的症状を伴わないもの)
腹部大動脈瘤
閉塞性動脈硬化症
末梢神経障害
運動ニューロン疾患
脊髄小脳変性症
多発性神経炎
脳血管障害
筋疾患
後縦靭帯骨化症
 
 
参考にした診断基準:
厚生労働省特定疾患調査研究班(脊柱靱帯骨化症調査研究班)による診断基準
 
 
 
10.早老症
 
ウェルナー症候群、プロジェリア症候群、コケイン症候群に該当するものをいう。
ウェルナー症候群に関しては、以下の確実例及び疑い例に該当するものをいう。
 
確実例:(1)のすべてと(2)の2つ以上
(1)の2つと(3)
疑い例:(1)の2つと(2)の2つ以上
 
(1)主徴候:
a.早老性外貌(白髪、禿頭など)
b.白内障
c.皮膚の萎縮、硬化又は潰瘍形成
 
(2)その他の徴候と所見
a.原発性性腺機能低下
b.低身長及び低体重
c.音声の異常
d.骨の変形などの異常
e.糖同化障害
f.早期に現れる動脈硬化
g.尿中ヒアルロン酸増加
h.血族結婚
 
(3)皮膚線維芽細胞の分裂能の低下
 
参考にした診断基準:
厚生省特定疾患調査研究班(ホルモン受容機構異常調査研究班)によるウェルナー症候群の診断の手引き
 
 
 
11.多系統萎縮症
 
1.主要項目
 
(1)オリーブ橋小脳萎縮症
 
中年以降に発症し、初発・早期症状として小脳性運動失調が前景に現れる。経過とともにパーキンソニズム、自律神経症状(排尿障害や起立性低血圧など)を呈することが多い。頭部のMRIで、小脳、橋(特に底部)の萎縮を比較的早期から認める。この変化をとらえるにはT1WI矢状断が有用である。また、T2WI水平断にて、比較的早期から橋中部に十字サインが認められる。この所見では診断的意義が高い。
 
(2)線条体黒質変性症
 
中年以降に発症し、パーキンソン病様の症状で発症し、振戦よりは筋固縮、無動が目立つ。抗パーキンソン病薬に対する反応は不良であるが、数年間にわたって有効な例もある。経過と共に、自律神経症候や運動失調が加わってくる。MRIにて、橋底部、小脳の萎縮、線条体の萎縮、被殻外側のスリット状のT2高信号域などが診断の補助となる。特に被殻外側のT2高信号像の診断的意義は高い。パーキンソン病やびまん性レビー小病体との鑑別には123I-MIBG心筋シンチグラフィーが有用である。パーキンソン病やレビー小病体では、心筋への集積低下が認められるのに対して、多系統萎縮症では集積低下は認めない。
 
(3)シャイ・ドレーガー症候群
中年以降に発症し、起立性低血圧(収縮期でも20mmHgもしくは拡張期で10mmHg以上)、排尿障害(100m・以上の残尿・尿失禁)、男性での陰萎を中心とした自律神経症状が前景となる。発症後1年間にわたり上記の自律神経症状が前景であった場合に、シャイ・ドレーガー症候群ととらえる。発症後5年以上経過しても自律神経症状のみである場合は、他疾患(純粋自律神経失調症pure autonomic failure;PAF)や他の自律神経ニューロパチー(アミロイド・ポリニューロパチーや糖尿病性ニューロパチー)との鑑別が必要である。
 
2.参考事項
 
これまで、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症、シャイ・ドレーガー症候群として分類されてきた疾患については、病変分布の濃淡(オリーブ、橋、小脳、線条体、黒質、自律神経系の変性がさまざまな分布で認められる)によって臨床症状に多少の異なりがあるものの、基本的な臨床像は共通していることに加え、病理学的にも、特徴的なオリゴデンドロサイト内嗜銀性封入体が観察されることから、同一の疾患としてとらえられるようになり、これらの疾患を多系統萎縮症と総称するようになった。臨床的には、小脳性運動失調症、パーキンソニズム、自律神経症状のいずれかを初発症状として発病し、経過と共にそれ以外の症状も明らかになってくる。進行例では声門開大障害に伴う特徴的ないびきや睡眠時無呼吸が観察されることが多く、突然死を起こすことがあり注意する必要である。
 
 
参考にした診断基準:
厚生労働省特定疾患調査研究班(運動失調症調査研究班)による診断基準
 
 
 
12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
 
(1)を満たした上で、(2)~(4)の各疾病に関する状態に該当するものをいう。
 
(1)糖尿病の診断
a.空腹時血糖値≧126mg/dl、75gOGTT2時間値≧200mg/dl、随時血糖値≧200mg/dl、のいずれか(静脈血漿値)が、別の日に行った検査で2回以上確認できること。
(注1)これらの基準値を超えても、1回の検査だけの場合には糖尿病型と呼ぶ。
(注2)ストレスのない状態での高血糖の確認が必要である。1回目と2回目の検査法は同じである必要はない。1回目の判定が随時血糖値≧200mg/dlで行われた場合は、2回目は他の方法によることが望ましい。1回目の検査で空腹時血糖値が126-139mg/dlの場合には、2回目にはOGTTを行うことを推奨する。
 
b.1回だけの検査が糖尿病型を示し、かつ次のいずれかの条件がみたされること。
ア.糖尿病の典型的症状(口渇、多欲、多尿、体重減少)の存在
イ.HbA1c≧6.5%(日本糖尿病学会グリコヘモグロビン標準化委員会の標準検体による補正値)
ウ.確実な糖尿病網膜症の存在
 
c.過去において上記のa.ないしb.がみたされたことがあり、それが病歴などで確認できること。
 
(注1)以上の条件によって、糖尿病の判定が困難な場合には、患者を追跡し、時期をおいて再検査する。
(注2)糖尿病の診断に当たっては、糖尿病の有無のみならず、分類(成因、代謝異常の程度)、合併症などについても把握するように努める。
 
(2)糖尿病性神経障害
 
以下の重症度評価表において4点以上であること
 
重症度評価表
項目
スコア
自覚症状
       
1 パレステジア
なし
軽度
中等度
高度
2 しびれ感
なし
軽度
中等度
高度
3 足が冷たい、熱い
なし
軽度
中等度
高度
         
他覚所見
       
4 足の第1指の触覚低下
なし
軽度
中等度
高度
5 筋萎縮
なし
軽度
中等度
高度
6 足の第1指の振動覚低下
なし
軽度
中等度
高度
7 アキレス腱反射
正常
減弱
遅延
消失
8 起立時血圧下降(mmHg)
~10
11~20
21~34
35~
         
電気生理学的検査
       
9 F波最小潜時(m/sec)
≦27
28~30
31~33
≧34
10 F波伝導速度(m/sec)
≧56
50~55
45~49
<45
         
 
(3)糖尿病性腎症
 
糖尿病性腎症病期分類第2期(早期腎症)以上の所見が見られること。
 
糖尿病性腎症病期分類
病期
臨床的特徴
病理学的特徴
(参考所見)
尿蛋白(アルブミン)
GFR(Ccr)
第1期
(腎症前期)
正常
正常
時に高値
びまん性病変:なし~軽度
第2期
(早期腎症)
微量アルブミン尿
正常
時に高値
びまん性病変:軽度~中等度
結節性病変:ときに存在
第3期-A
(顕性腎症前期)
持続性蛋白尿
ほぼ正常
びまん性病変:中等度
結節性病変:多くは存在
第3期―B
(顕性腎症後期)
持続性蛋白尿**
低下**
びまん性病変:高度
結節性病変:多くは存在
第4期
(腎不全期)
持続性蛋白尿
著明低下(血清クレアチニン上昇)
荒廃糸球体
第5期
(透析療法期)
     
 
* 腎症早期診断に必須である微量アルブミン尿の診断基準を下記の通りとする
a.スクリーニング
来院時尿(随時尿)を用い、市販のスクリーニング用キットで測定する。
b.診断
上記スクリーニングで陽性の場合、あるいは初めから時間尿を採取し、以下の基準に従う。
夜間尿      10μg/分以上
24時間尿     15μg/分以上
昼間(安静時)尿 20μg/分以上
(注1)a.及びb.の両者とも、日差変動が大きいため、複数回の採尿を行い判定すること。
(注2)試験紙法で尿蛋白軽度陽性の場合でも、尿中アルブミン測定が望ましい。なお、微量アルブミン尿の上限は、約200μg/分とされている。
(注3)以下の場合は判定が紛らわしい場合があるので検査を避ける。
高度の希釈尿
妊娠中、生理中の女性
過激な運動後、過労、感冒など
 
c.除外診断
ア.非糖尿病性腎疾患
イ.尿路系異常と感染症
ウ.うっ血性心不全
エ.良性腎硬化症
 
** 持続性蛋白尿約1g/日以上、GFR(Ccr)約60mL/分以下を目安とする。
 
(4)糖尿病性網膜症
 
以下の分類で軽症網膜症(無症状)のものを除く
 
病型
臨床所見
非増殖網膜症
 
 
軽症網膜症(無症状)
 
壁の薄い毛細血管瘤、点状網膜出血
 
中等症網膜症(黄斑浮腫がみられる場合には症状あり)
 
壁が薄い又は厚い毛細血管瘤、網膜出血、硬性白斑、網膜浮腫、特に黄斑浮腫
 
重症網膜症(増殖前網膜症)
 
網膜出血、毛細血管瘤、軟性白斑、IRMA、数珠状静脈異常
増殖網膜症
 
 
活動性の高い網膜症(漏出性、充血、活動性、代償不全)
 
顕著な網膜所見:網膜出血、IRMA、数珠状静脈異常、軟性白斑、網膜浮腫
新生血管:裸の新生血管、小さな繊維増殖、口径拡大、乳頭近傍を含む、急速な進展
硝子体:初期には収縮なし、収縮による硝子体出血
経過:急速に進展、安定期や非漏出性へ
 
中等度の網膜症(乾性、静止性、安定性)
 
顕著でない網膜所見
新生血管:裸の新生血管、さまざまな程度の繊維増殖、しばしば長く糸状、乳頭近傍を含まない、進展や寛解は緩徐
経過:徐々に進展、安定期又は寛解期へ
燃えつきた網膜症
網膜所見:動脈狭細化・白線化・混濁、静脈白線化・不規則少数の出血、白斑、IRMA
新生血管:繊維増殖膜による被覆、消失
硝子体:完全収縮、下方に陳旧性硝子体混濁
経過:沈静化、ときに新鮮な硝子体出血
網膜機能:局在性又はびまん性の牽引性網膜剥離、後極部が非剥離0.1~0.6、重症な網膜虚血、重篤な視力障害の原因となる。
 
黄斑浮腫については、以下の基準のうち、中等症黄斑症(黄斑浮腫)、重症黄斑症(黄斑浮腫)の基準を満たすものとする。
 
重症度レベル
散瞳下眼底検査所見
黄斑症(黄斑浮腫)なし
眼底後極に網膜浮腫による肥厚、硬性白斑なし。
黄斑症(黄斑浮腫)あり
眼底後極に網膜浮腫による肥厚、硬性白斑あり。
 
黄斑症(黄斑浮腫)が存在する場合、以下のように重症度を分類することができる
重症度レベル
散瞳下眼底検査所見
軽度黄斑症(黄斑浮腫)
網膜浮腫による肥厚、硬性白斑が眼底後極にあるが、黄斑中央部より離れている。
中等度黄斑症(黄斑浮腫)
網膜浮腫による肥厚、硬性白斑が黄斑中央部に近づきつつあるが到達していない。
重度黄斑症(黄斑浮腫)
網膜浮腫による肥厚、硬性白斑が黄斑中央部に到達している。
 
参考にした診断基準:
糖尿病については、糖尿病診断基準検討委員会報告による診断基準
糖尿病性腎症については、厚生省糖尿病調査研究班による糖尿病性腎症早期診断基準及び厚生省糖尿病研究班による糖尿病性腎症病期分類
糖尿病性網膜症については、Davis分類及び糖尿病黄斑症(黄斑浮腫)国際重症度分類
糖尿病性神経障害については、厚生省糖尿病研究班による糖尿病性神経障害重症度評価表
 
 
 
13.脳血管疾患
 
明らかな血管性の器質的脳病変を有するもので、以下の分類に該当するものをいう。
 
 
1.虚血群=脳梗塞症
① アテローム血栓性脳梗塞
② ラクナ梗塞
③ 心原性脳塞栓症
④ その他の分類不能な脳梗塞(症)
 
2.出血群=頭蓋内出血
①脳出血
②くも膜下出血
③その他の頭蓋内出血
 
 
※ 明確な脳血管性と思われる発作を欠き、神経症候も認められないが、偶然CT・MRIなどで見出された脳梗塞は、無症候性脳梗塞と呼び、その他の症候を有する脳梗塞は、脳梗塞症と呼んで区別することが望ましい。
 
(診断基準)
1.虚血群=脳梗塞(症)
 
1)アテローム血栓性脳梗塞
内頸動脈、前・中・後大脳動脈、椎骨動脈や脳底動脈あるいはその皮質枝のアテローム血栓によって生じた脳梗塞。
 
(1)臨床症状
1.安静時の発症が比較的多い。
2.局所神経症候は病巣部位や閉塞血管により多彩であるが、片麻痺、四肢麻痺、半身感覚障害、同名性半盲、失語などが多い。
3.意識障害は重篤なものから、ないものまで多様。内頚動脈や脳底動脈の閉塞では高度の意識障害を呈することがある。
4.症状の進行は一般に緩徐であり段階的な進行を示すが、アテローム血栓が栓子となり脳末梢部血管に塞栓を生じる動脈原性脳塞栓症では突発発症する。
 
(2)CT・MRI所見
1.CT上、発症1~2日後に責任病巣に相当する脳主幹動脈、ないしはその皮質枝領域にX線低吸収域(LDA)が出現する。
2.MRI上、拡散強調画像では発症早期から、FLAIR・T2強調画像では発症数時間以内から、責任病巣に一致する高信号域を認める。CT・MRIともに病巣最大径が1.5cmを超えることが多い。
 
(3)その他
1.動脈硬化を伴う基礎疾患(高血圧、糖尿病、高脂血症など)の存在することが多い。
2.時に頸部に血管雑音(bruit)が聴取される。この場合は頸部超音波検査、MRA検査などを行い内頸動脈狭窄・閉塞の有無をチュックする事が望ましい。
 
2)ラクナ梗塞
脳深部の穿通枝領域に生じた直径1.5cm以下の小梗塞。
 
(1)臨床症候
2.安静時の発症が多い。
3.典型的なものは、意識障害を伴わず、片麻痺、半身感覚障害、失調性片麻痺などのみを呈する。
 
(2)CT・MRI所見
1.CT上、発症1~2日後に脳の深部(穿通枝領域)に直径1.5cm以下のX線低吸収域(CT)を認める。
2.MRI上、拡散強調画像では発症早期から、FLAIR・T2強調画像では発症4~5時間以内から責任病巣に一致する高信号域を認める。CT・MRIともに病巣最大径が1.5cmを超えない。特に脳幹部などの病巣検出や微小なラクナ梗塞の発見にはCTよりもMRI検査が望ましい。
 
(3)その他
基礎疾患に高血圧、糖尿病などを認める事が多く、また時には脳梗塞症発現以前から存在した無症候性脳梗塞を画像上に認める事がある。
 
3)心原性脳塞栓症
心房細動、心臓弁膜症、陳旧性心筋梗塞などの患者に生じた心臓内血栓が栓子となり、脳血管に塞栓が生じたもの。
 
(1)臨床症候
1.特定脳動脈領域の局所神経症候が突発し、急速に完成する。大脳皮質を含む病巣が多く、失語・失認などの大脳皮質症候を伴う事が多い。内頸動脈塞栓症では重篤な症状が突発する。
2.意識障害を伴う事が多い。
3.塞栓原と考えられる心疾患(心房細動、弁膜疾患、心筋梗塞など)の合併がある。
 
(2)CT・MRI所見
1.CT上、発症1~2日以内に責任病巣に相当するX線低吸収域(LDA)が出現する。
2.CT上、数日以内にLDA内に混在するX線高吸収域(HDA)(これは出血性梗塞の存在を意味する)が高頻度にみられる。
3.MRI上、拡散強調画像では発症早期から、FLAIR・T2強調画像でも数時間以内に高信号領域が出現する。
4.内頸動脈などの主幹動脈塞栓では画像上、早期から強い脳浮腫の存在を示す所見がみられる事がある。
 
(3)その他
塞栓原となる心疾患を診断する事及び神経症候が突発した事を確認する事が診断上、極めて重要である。発症後の時期にもよるが、出血性梗塞の存在も診断の参考になる。
 
4)その他の分類不能な脳梗塞
CT所見や臨床症候から脳出血は否定できるが、上記1)2)3)に該当しないものや、上記1)2)3)のうち2つ以上が混在する場合は分類不能とする。空気塞栓、脂肪塞栓、奇異性塞栓などもここに分類される。
 
2.出血群=頭蓋内出血
1)脳(実質内)出血
 
(1)臨床症状
1.通常、高血圧症の既往があり、発症時には著しく血圧が上昇する。
2.日中活動時に発症することが多い。
3.しばしば頭痛があり、ときに嘔吐を伴う。
4.意識障害をきたすことが多く、急速に昏睡に陥ることもある。
5.局所神経症候は出血部位によって左右され、多彩であるが、被殻、視床の出血の頻度が高く、片麻痺、片側性感覚障害が多い。
 
(2)CT所見
発症直後から出血部位に一致してX線高吸収域(HDA)が出現する。
 
注:確定診断は脳実質内巣を証明することである。高血圧による脳細動脈の血管壊死もしくは類繊維素変性が原因となり出血する高血圧性脳出血が一般的である。小出血では頭痛、意識障害を欠き、脳梗塞との鑑別が困難なものがある。臨床障害による診断は蓋然的なものであり、確定診断はCTによる血腫の証明が必要である。
 
2)くも膜下出血
 
(1)臨床症状
1.突発する激しい頭痛(嘔気、嘔吐を伴うことが多い)で発症する。
2.髄膜刺激症状(項部硬直、Kernig徴候など)がある。
3.発症直後は局所神経症状が出現することは少ない(ただし、ときに発症当初より一側性の限局性の動眼神経麻痺を呈する)。
4.発症時に意識障害をきたすことがあるが、しばしば一過性である。
5.網膜前出血をみることがある。
6.血性髄液(注)
 
(2)CT所見
1.くも膜下腔(脳槽、脳溝など)に出血を認めるX線高吸収域(HDA)を認める。
2.ときに脳実質内の出血を合併することがある。
 
(3)その他
脳血管撮影では脳動脈瘤、脳動脈奇形などの血管異常を認めることが多い。
 
注:確定診断はくも膜下腔への出血の確認であるが、CTで出血が証明される場合は髄液検査の必要はない。
 
参考にした診断基準:
厚生省循環器病委託研究班(平成元年度)による研究報告を平成17年に日本脳卒中学会により修正
 
 
 
14.閉塞性動脈硬化症
 
動脈硬化症は全身性疾患であるが、それに伴って腹部大動脈末梢側、四肢の主幹動脈、下肢の中等度の動脈等に閉塞が見られる場合であって、以下の状態のうち、Ⅱ度以上に該当するもの。
 
Ⅰ度 冷感、しびれ感
Ⅱ度 間歇性跛行
Ⅲ度 安静時痛
Ⅳ度 潰瘍、壊死
 
参考にした診断基準:
Fontaineの分類
 
 
 
15.慢性閉塞性肺疾患
 
以下の状態に該当するものをいう。
 
慢性気管支炎あるいは肺気腫による気流閉塞を特徴とする疾患である。気流閉塞は通常は進行性であり、ときには、気道反応性の亢進を伴い、また部分的には可逆的な場合もあるが、特異的な原因によるものを除外する。
 
(1)慢性気管支炎
気管支からの過剰な粘液分泌を特徴とし、喀痰を伴う咳(Productive cough)が慢性あるいは繰り返し起こるもの。慢性とは1年に3ヶ月以上続き、それが2ヶ年(2冬連続)以上にわたる場合。但し、特異的肺疾患、新生物、心疾患などによるものは除外される
 
(2)肺気腫
呼吸細気管支より末梢の肺胞の異常拡張
 
(3)気管支喘息
種々の刺激に対して気道の反応性が亢進した状態で広範な気道の狭窄を特徴とし、この閉塞性障害が自然にあるいは治療により変化するもの。ただし、肺、心、血管系の病変に由来するものは除く。
 
(4)びまん性汎細気管支炎
 
参考とした診断基準:
アメリカ合衆国胸部学会作成診断分類
 
 
 
16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
 
(1)両側の膝関節に著しい変形を伴う変形性関節症
両側の膝関節にX線所見上、骨棘形成、関節裂隙の狭小化、軟骨下骨の骨硬化、骨嚢胞の形成等の著しい変形を伴い、日本整形外科学会変形性膝関節症治療成績判定基準において何らかの障害が認められるもの。
 
a.変形性膝関節症治療成績判定基準
 
①疼痛・歩行能
   
1)1km以上歩行可、通常疼痛はないが、動作時たまに疼痛を認めてもよい。
30
30
2)1km以上歩行可、疼痛あり。
25
25
3)500m以上、1km未満の歩行可、疼痛あり
20
20
4)100m以上、500m未満の歩行可、疼痛あり
15
15
5)室内歩行又は100m未満の歩行可、疼痛あり
10
10
6)歩行不能
7)起立不能
②疼痛・階段昇降能
   
1)昇降自由・疼痛なし
25
25
2)昇降自由・疼痛あり、手すりを使い・疼痛なし
20
20
3)手すりを使い・疼痛あり、一歩一歩・疼痛なし
15
15
4)一歩一歩・疼痛あり、手すりを使い一歩一歩・疼痛なし
10
10
5)手すりを使い一歩一歩・疼痛あり
6)できない
③屈曲角度及び強直・高度拘縮
   
1)正座可能な可動域
35
35
2)横座り・胡座可能な可動域
30
30
3)110度以上屈曲可能
25
25
4)75度以上屈曲可能
20
20
5)35度以上屈曲可能
10
10
6)35度未満の屈曲、又は強直、高度拘縮
④腫脹
   
1)水腫・腫脹なし
10
10
2)時に穿刺必要
3)頻回に穿刺必要
総 計
   
 
b.記入要項
ア.疼痛・歩行能
・歩行はすべて連続歩行(休まずに一気に歩ける距離)を意味する。
・疼痛は歩行時痛とする(疼痛は鈍痛、軽度痛、中等度痛をふくむ)。
・ある距離までしか歩けないが、その範囲では疼痛ない時は、その1段上のクラスの疼痛・歩行能とする。
・ある距離で激痛が現れる時、その1段下のクラスの疼痛・歩行能とする。
・「通常疼痛ないが、動作時たまに疼痛あってもよい」は買物後、スポーツ後、仕事後、長距離歩行後、歩き初めなどに疼痛がある状態をいう。
・「1㎞以上の歩行」はバスの2~3停留所間隔以上歩ける、あるいは15分以上の連続歩行可能をいう。
・「500m以上、1㎞未満の歩行」は買物が可能な程度の連続歩行をいう。
・「100m以上、500m未満の歩行」は近所づきあい程度の連続歩行をいう。
・「室内歩行又は100m未満の歩行」は室内又は家の周囲、庭内程度の連続歩行をいう。
・「歩行不能」は起立はできるが歩けない、歩行出来ても激痛のある場合をいう。
イ.疼痛・階段昇降能
・疼痛は階段昇降時痛をいう。
・疼痛は鈍痛、軽度痛、中等度痛をいう。
・激痛があるときはその1段下のランクとする。
・筋力低下などで「出来ない」状態であるが疼痛のない時は「手すりを使い一歩一歩(1段2足昇降)で疼痛あり」とする。
ウ.屈曲角度及び強直・高度拘縮
・「110°以上屈曲可能」は110°以上屈曲可能であるが、正座、横座り、胡座は出来ない状態をいう。
・「75°以上屈曲可能」は75°以上110°未満の屈曲可能をいう。
・「35°以上屈曲可能」は35°以上75°未満の屈曲可能をいう。
・「高度拘縮」は肢位の如何にかかわらずarcofmotionで35°以下をいう。
エ.腫脹
・「時に穿刺必要」:最近時に穿刺を受けている、又は時にステロイドの注入を受けている、など。
・「頻回に穿刺必要」:常に水腫がある。
 
(2)両側の股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
両側の股関節にX線所見上、関節裂隙の不整狭小化、軟骨下骨梁の骨硬化、骨棘形成、骨嚢胞の形成、骨頭変形等の著しい変形を伴い、日本整形外科学会股関節機能判定基準において何らかの障害が認められるもの。
 
a.股関節機能判定基準
 
①疼痛
   
1)股関節に関する愁訴が全くない。
40
40
2)不定愁訴(違和感、疲労感)があるが、痛みはない。
35
35
3)歩行時痛みはない(ただし歩行開始時あるいは長距離歩行後疼痛を伴うことがある)。
30
30
4)自発痛はない。歩行時疼痛はあるが、短時間の休息で消退する。
20
20
5)自発痛はときどきある。歩行時疼痛があるが、休息により軽快する。
10
10
6)持続的に自発痛又は夜間痛がある。
具体的表現
 
 
 
②可動域(記入要項を参照)
 
角 度
屈曲    
伸展    
外転    
内転    
点 数
屈 曲    
外 転    
 
 
③歩行能力
 
1)長距離歩行、速歩が可能、歩容は正常。
20
2)長距離歩行、速歩は可能であるが、軽度の跛行を伴うことがある。
18
3)杖なしで、約30分又は2km歩行可能である。跛行がある。日常の屋外活動にはほとんど支障がない。
15
4)杖なしで、10-15分程度、あるいは約500m歩行可能であるが、それ以上の場合、1本杖が必要である。跛行がある。
10
5)屋内で活動はできるが、屋外活動は困難である。屋外では2本杖を必要とする。
6)ほとんど歩行不能。
具体的表現
 
 
 
 
 
 
容易
困難
不能
④日常生活動作
     
1)腰掛け
2)立ち仕事(家事を含む)
※持続時間約30分。、休息を要する場合、困難とする。
5分くらいしかできない場合、不能とする。
3)しゃがみこみ・、立ち上がり
※支持が必要な場合、困難とする。
4)階段の昇り降り
※手すりを要する場合は困難とする。
5)車、バスなどの乗り降り
 
b.総計評価:
 右、左 
(   )+(   )
両側の機能
(         )
 
c.股関節機能診断基準の記入要項
 
ア.疼痛について
・左右別々に記入する。
・40点は全く正常な股関節を対象とするので注意を要する。
・記載に際しては欄外に「具体的表現」の項があるので、ここに患者の表現をできるだけ記入する。
 
イ.可動域について
・可動域は5°刻みで記載する。配点は下表の通り外転の10°未満を除き、10°刻みとする。
・拘縮のある場合はこれを引き、可動域で評価する。
 
屈 曲
配 点
0°~10°未満
0点
10°~20°未満
1点
・・・
110°~120°未満
11点
120°~
12点
外 転
配 点
0°~5°未満
0点
5°~10°未満
2点
10°~20°未満
4点
20°~30°未満
6点
30°~
8点
 
*拘縮のない場合
(例)屈曲
外転
100°
20°
、伸展0°
   
→10点
→6点
 
計16点
 
*拘縮のある場合
(例)屈曲拘縮20°、外転拘縮5°で屈曲100°、外転20°可能な場合
屈曲
外転
100°
20°
―20°
― 5°
= 80°
= 15°
→8点
→4点
 
計12点
 
ウ.歩行能力について
・両側の機能として記入する。
・20点、18点の項に表記される「速歩」とは「小走り」と理解する。これと同類の動作はすべて速歩とする。
・内容に関しては欄外の具体的表現の所に記入する。
 
エ.日常生活動作について
・両側の機能として記入する。
・立ち仕事、しゃがみこみ・立ち上がり、階段の昇り降りについては注に準じて困難を判断する。
・車、バスなどの乗り降りについては本人の訴えで判断する。
 
オ.表記法について
・両側機能と片側機能に分けられる項目で得点をそれぞれ記載して見られるようにした。
 右、左 
疼痛と可動域の合計
とし、満点は、
60、60
両側の機能
歩行能力と日常生活動作の合計
40
となる。
・たとえば、人工股関節置換術の両側例(あるいはカテゴリーB)で、左のみ手術が施行された場合、評価点が
35、48
28
であったなら、カテゴリーBで左術前××点が術後76点になった、という表現となる。
 
 
参考にした診断基準:
日本整形外科学会 評価基準・ガイドライン・マニュアル集に基づき、平成18年に日本整形外科学会において一部修正
 
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